第1話 互いの気持ち〜旅の準備と誕生日〜
「ふぁ〜あぁ……よく寝たなぁ……。」
レイは目覚めると隣に座っているアブソルの頭を優しく撫でる。これは5年前からずっと続けている習慣だ。
よし!今日も毛並みはサラサラだ!アブソルも嬉しいらしく俺にすり寄ってくる。尻尾もブンブン振っている。やっぱり可愛い。
それに6年前と比べて人に対する恐怖心も無くなってきた。だが、まだ初対面の人には慣れないらしいけどな。
それにしても何でこんなに可愛いのに暴力なんてクズみたいな事をするんだろうか…?全く理解できない!
「ご主人様、お誕生日おめでとうございます!」
そういえば今日は俺の18の誕生日だな。
「アブソル、俺の誕生日覚えててくれたんだな。嬉しいよ。ありがとな!」
そう言うとアブソルは照れて顔が赤くなってしまった。うん。やっぱり可愛いな。
今の俺があるのはアブソルのおかげだもんな…。アブソルと出会ってなきゃ今もずっと引きこもりのままだっただろうし。
それより…俺が18になったときにやるって決めてたことがあったな。
「アブソル。ちょっとこっちに来てくれ。」
走ってやって来たアブソルを俺の横に座らせた。
「はい。なんですか?」
「俺は今日親父との約束を果たすため。
まあ、自分の目で世界を見てみたいからっていうのもあるんだが…
旅に出ようと思うんだ。そこでだ!お願いがある。アブソル…俺と一緒に旅しないか?もちろん強制はしない。やりたいことがあるんだったらそっちを優先しても構わない。だけど…」
「私はご主人様についていきます。」
俺がしどろもどろになりながら話しているとアブソルはきっぱりと言い切った。
「本当にいいのか?言っておくが今回の旅は辛いものになる。義務とか責任とかが理由ならついてこなくていいんだぞ。出来れば俺はお前を危険な目に」
念には念を入れて改めて聞いたのだが
「
何を言われようとついていきます!いや、付いていかせてください!私はご主人様と出会い色々な経験をしました。人間の優しさも教えてくれました。ですが、これからもずっと一緒にいたいです!ご主人様と同じ事を経験したいです!ご主人様と一緒にいるから楽しいんです!!」
アブソルは今までで一番の大声で反論した。
俺と一緒にいるから楽しい…。そうだよ…。そうなんだよ。
俺は何も分かっちゃいなかった。アブソルは俺と一緒にいるから楽しいんだ。俺もアブソルがいてくれるから楽しいんだ。
「そうか…。ごめんな。俺はそんなことにさえ気づいてなかった。俺もアブソルが一緒だと楽しい。だから言い方を変えるよ!
アブソル、一緒に旅をしよう!」
「はいっ!」
「それじゃあ旅の準備をしよう。傷薬10個にモンスターボールが10個、タウンマップに親父が使ってたポケモン図鑑、最後にキャンプセット…と。よし。準備完了!」
おっと、一番重要なことが残ってたな!
「アブソル!今日からお前の名前はルナだ!どうだ?」
「はいっ!最高の名前ですっ!」
アブソル改め、ルナはとびっきりの笑顔で答えてくれた。
目標はポケモンリーグ制覇!最高のパートナーとの旅の始まりだ!!