第0話 運命〜2人の出会い〜 アブソルサイド
私の母は人間に殺された…。その人間はバトルに負けるといつも「負けたのはお前のせいだ!」と言い母に暴力を振るった。
そして、私自身も人間に、災いだ、災厄の訪れだ、などと罵られ、虐げられて瀕死にさせられた…。
「誰か…助…けて……っ!」
私はなんとか歩き続け、必死に助けを求めた。
しかし、ここは人間の街だ。ポケモンの数は少ない。
もうだめか…。私は諦めて路地裏に座り込んだ。
すると、大通りの方から
タッタッタッタッ!とこちらに向かって走ってくる音が聞こえた。
何だ…?誰かが来てくれたのか…?
「えっ………!」
私に近づいてきたのは1人の人間だった。
人間は私を見て驚いているようだ。
「な…っ!にん…げん……!?」
マズい…!このままでは母と同じように殺されてしまう…!
「ち、近づくな…!それ以上…来るなら、攻撃するぞ…!」
私は唸りつつ、立とうとするが…立てない。後ろ足の傷が予想以上に酷いようだ。
人間はまだ近付いてくる。私はゆっくりと後ずさりをしながら余力を振り絞りサイコカッターを発動した。
「ぐ…っ!」
サイコカッターは高速で飛んでいき、人間の左目をかすって壁にぶつかった。
「大丈夫だ…。大丈夫だよ…。」
人間はなおも近付いてくる。だが、もう技は使えない。
終わりか…。私はそう思った………が、
「つらかっただろ…。その傷…悪い人間にやられたんだろ?だけど…もう大丈夫だ。」
そう言って人間は私を優しく撫で始めた。その瞬間私は人間には良い奴もいるということを初めて知った。何故だか涙が止まらなかった。
その後、私はこの人間、レイに連れられポケモンセンターに行った。私は2日間の治療により完治した。だが、レイは私のつけた傷が原因で左目が失明してしまった。いくら謝っても許される事ではないが、せめてもの罪滅ぼしとしてレイと行動を共にする事を決めた。
レイは気にしなくていいと言ってくれたが、正直な気持ちを言うと
私はレイと一緒に居たかった。レイを守りたかった。
それを伝えるとレイは少し笑って、
「俺もお前と冒険してみたいぜ。」と言った。
お母さん…。世の中には悪い人間ばかりでは無いようです。私はこの人間と暮らしてみます。どうか見守っていてください。