46話 星の停止と不安
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「おい!こっちだ!出口まで一気に走るぞ!」
ヒカリ達は外に出るために必死に走っていた。先頭がジェード、そのすぐ後ろが
ヒカリ、ジェードとヒカリから少し離れたところでヒルビが走っていた。
「おい!もっと全力で走れ!」
「これでも全力なんだよ!いちいち命令しないでよ!それより、ジェード!」
「なんだ?」
「ここはもしかして......未来なの?」
少し離れたところにいるヒルビにジェードがそう言い、ヒルビはそれを言い返し、
ジェードに聞きたかったことを聞いた。
「そうだ。よく分かっているじゃないか。」
「ううっ.....やっぱりそうなんだ...。僕達....元の世界に帰れるかなあ.....。」
ジェードはその言葉を肯定し、ヒルビは暗い顔をして言った。
「さあな。それより、今は逃げることだ!捕まったら、元の世界も何もない!もっと
早く走れ!」
「無理だよ!もう疲れたよ......はあはあ....。」
急かすジェードにヒルビは息切れしながらそう言い返した。
「ヒルビ!もう少しだよ!ほらっ!出口が見えてきたよ!頑張って!」
「はあはあ...。はあはあ.....。やった!やっと外だぁ!!」
ヒカリはそんなヒルビを応援し、ヒルビは息切れしながら外に出れることを喜んだ。
ヒカリも少しほっとしていた。
「わっ!」
「こ、これって!」
しかし、その気持ちも外の光景を見て、驚愕に変わった。夜のように真っ暗で、岩が
宙に浮いている。それに、風も何も感じない。物に色がなく、モノクロのような光景
だった。
「ここが......未来の...世界なの?岩とか浮いていて、随分不思議なところだ
けど.......。なんか真っ暗だし.....風も吹いていない....。」
「......まるで、全ての動きが止まっているみたい...。もし、ルーアの予想が全て
正しかったのなら.........。」
ヒルビは外の光景に驚き、ヒカリは外の光景を見て、ルーアが言っていたことを思い
出した。
『これはあくまで予想なんだけど....聞いてくれる?』
『う、うん。いいよ。』
『...星の停止について.....ディアノは妙に詳しいのが気になるの。この時代の情報
でも名前は知っているが、詳しいことは分かっていないの。未来でそのことについて
情報があるってことは実際に起きているということ......。星の停止についての
文献が見つかったという可能性もあるけど、昔から私達の時代まで星の停止は一度も
起きていないの。私達の時代からディアノやジェードのいる未来で星の停止が起きて
いるということ....。何の確信もないし、ただの私の勘違いかも...。』
ルーアと話し合った時、あの時のルーアの言葉がヒカリの頭の中で聞こえた気がした。
「.....ねえ、ジェード。.......未来では星の停止が起きているの...?」
ヒカリはこれは絶対に聞いた方がいいと思い、ジェードに聞いた。
「その通りだ。この未来では星が停止している。」
「ええーーーーーーーーー!?」
「やっぱり......。」
ジェードの言葉にヒルビはさらに驚き、ヒカリはやっぱりルーアの予想は勘違いでは
なかったと思った。
「「「「「「
ウイイイーーーー!」」」」」」
その時、ヤミラミ達の声が遠く離れたところから聞こえた。
「わわっ!ヤミラミ達の声が.......。」
「早く逃げるぞ!」
ヒカリ達はすぐに走って、その場から去った。
「......はあはあ。はあはあ。ねえ、ジェード。僕、もう疲れたよ。」
「休んでいる暇はない!捕まったらおしまいだ!根性で走れ!」
「そんなこと言っても.....はあはあ...。だめだ。僕、もう休むよ。」
「仕方がないな。」
しばらくして、ヒルビはまた息切れし、ジェードは根性で走れと言うが、ヒルビは
もう疲れて、岩影がある場所で休んだ。
「はあはあ....。はあはあ......。」
「ここは岩影になっている。ここだと奴らも発見しにくいだろう。少し休んだら、
すぐに出発するぞ。」
「ちょ「休んでいる間に聞きたいことがあるの。この世界について詳しく教えてくれ
ない?」」
ヒルビは息を整え、ジェードは周りを見渡した後、すぐに出発すると言った。その話を
聞き、ヒルビが何か言おうとするが、その前にヒカリは心の中でヒルビに謝りながら
聞きたかったことを聞いた。
「この未来は暗黒の世界......。日が登ることはなく、したがって、朝も来ることは
ない。ずっと暗いままだ。」
(この話はディアノさんの説明と同じね....。ディアノさんは時の歯車が原因って
言っていたけど...やっぱりルーアの言う通り、原因は別にある。)
「確かに、ディアノさんの説明と同じ感じだけど......しかし、それにしても.....
未来では星が停止してたなんて....。」
ジェードの話を聞き、ヒカリとヒルビは同じことを思った。しかし、ヒルビの方は
まだ信じられない様子だった。
「俺の話を信じるのかどうかはお前達の自由だ。早く出発するぞ。」
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
すぐに出発しようとするジェードをヒルビが止めた時、
「「「
ウイイーーーー!」」」
またヤミラミ達の声が聞こえた。
「わわっ!ヤミラミ達だ!」
「早く逃げるぞ!」
ヒカリ達はすぐに洞窟の中に入った。
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空間の洞窟
「ぎゃあああああああーーー!!」
「ヒルビ!落ち着いて!」
洞窟に入ってしばらくは順調だったが、イワークと現れ、ヒルビが絶叫した。イワーク
は岩蛇なので、ヒルビが大の苦手な体の細長いポケモンなのだ。ヒカリは絶叫している
ヒルビを落ち着かせようとするが、ヒルビは叫ぶばかりだった。
「......そいつ、本当に探検隊か?」
「ヒルビは蛇のような細長いポケモンに首を絞められたのがトラウマになって、それ
以来、そういうポケモンが苦手で見ただけで叫ぶようになってしまったの。」
「.....そうか。お前も大変だな。」
イワークを倒したジェードがヒルビを指さして呆れて言い、ヒカリはその言葉に苦笑い
しながら説明し、ジェードはヒカリに同情した。その一件で、ジェードはイワークを
見つけると、すぐに倒してくれて、ヒカリは感謝した。
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「はあはあ....。はあはあ...。」
「あいつらを引き離せたようだな。だが、油断するな。俺は準備してるから、お前達
も少し休んだ後、すぐに準備しろ。」
洞窟を無事に抜け、ヒルビは息を整え、ジェードは洞窟を見た後、そう言って準備し
始めた。
「あっ!あそこに水がある!」
ヒルビを辺りを少し見渡すと、近くに小さな滝が見えた。ヒカリとヒルビはその滝に
近づいて見ると、その滝は水の流れが止まっていて、水飛沫も跳ねたまま固まって
いた。
「あ、あれ?......この滝、よく見ると、水の流れが止まっているね....。」
「水飛沫も跳ねたまま固まっているから、やっぱり未来では時が止まっているのね。」
その滝を見て、ヒルビもヒカリもこの世界の時が止まっていることを実感させられた。
「...あんなに親切だったディアノさんが......どうして....。せめて、真実を解く
手がかりがあればいいんだけど.......。」
ヒルビはディアノのことを思い出し、どうしてと言い、ヒカリも何かヒルビを励ます
方法はないかと考えた。
「そ、そうだ!ヒカリ!真実を突き止める方法があるよ!」
「えっ?」
すると、ヒルビは何か思いついた様子で振り返った。
「時空の叫びだよ!ヒカリの時空の叫びを使うんだよ!この水飛沫に触ってみてよ。
そうしたら、何か見えるかもしれないよ!?」
(......確かに...やってみる価値はある....。あの流れない水飛沫に触ることで、
未来で何が起きているのかも分かるかもしれない。)
ヒルビの提案を聞き、ヒカリはなるほどと思った。
「のんびりしていると、ヤミラミ達が来ちゃうし、ジェードに早くしろって言われる
よ!早くやろう!」
ヒルビに言われ、ヒカリは流れが止まっている滝を触ってみた。
「.........。ヒカリ、どうお?何か見える?」
(.........。..........だめだ。何も感じない......。)
ヒカリが集中するが、時空の叫びは発動せず、何も感じなかった。
「ごめん。何も見えなかった。」
「だ、だめかぁ〜。いや。ヒカリは悪くないよ。...ただ、残念....。少しでも何か
分かることがあれば安心できたんだけど.....。結局、何も分からないままかあ。」
ヒカリは謝り、ヒルビはヒカリが謝らなくていいと言っているが、残念そうな様子
だった。
「おい!早く出発するぞ!」
「大分、時間が経っちゃったね。早く準備して、先を急がないと...。」
ジェードの声でヒカリとヒルビはすぐに準備し、暗闇の丘を登っていった。