45話 処刑と未来の世界
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「お待たせいたしました。ディアルガ様....。少し苦労はしましたが、ようやく
捕まえることができました。」
ディアノが闇の前でそう言うと、ディアノの前の闇の中から赤い何かが見えた。
「グルルルルルルルルルルルル...。」
「......十分心得ております。歴史を変えようとする者は.....消すのみ。すぐに
排除します。他のまだこの世界にいる者達も必ず捕まえます。.......そして、あの
者もいますので、これで終らすことができます。散々邪魔をし、ディアルガ様に
歯向かう最後の者もようやく排除できます。」
「グルルルルルルルルルルルル....。」
「........分かりました。必ず.....。では。」
闇と赤い何かの唸り声にディアノは報告し、そディアノの報告を聞き終わり、その赤い
何かは消えていった。ディアノはそれを見た後、その場から去った。
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「......ねえ。ヒカリ、起きて。起きてってば。」
「うう....。こ、ここは...。」
ヒルビの声が聞こえ、ヒカリは目を覚ました。ヒカリが辺りを見渡すと、そこは岩に
囲まれた部屋だった。出入り口と思われる鉄格子があり、それ以外は何もないようだ。
「気がついた!ここはどうやら牢屋みたいだよ。」
「牢屋!?」
ヒルビが暗い表情をしてそう言い、ヒカリは牢屋という言葉に驚いた。
「僕もさっき起きたばかりでよく分からないけど......あの扉を開けようとしたんだ
けど、閉まったままなんだ。他に出口はなさそうだし、僕達、多分閉じ込められて
いるんじゃないかな.....。ううっ...。」
「大丈夫よ。とりあえず私も調べてみるね。」
ヒルビが泣きそうになり、ヒカリはヒルビを慰め、部屋を調べ始めた。でも、部屋は
さっき見た通り何もなく囲んでいる岩しかなく、出入り口と思われる鉄格子を調べる
が、鍵がかかっていて開かなかった。
「だめ。確かに開かない。閉じ込められているとしか思えないね。やっぱり。」
ヒカリは間違いなく閉じ込められていると確信し、ヒルビの隣に戻った。
「うーん....。どうしてこうなっちゃったんだろうね?あの時は確か、ディアノさんに
首を掴まれて、そのまま時空ホールに引き摺られていって.....ええっ!?ということ
はもしかして...ここは未来の世界ってこと!?そんな!信じられないよ!だって、未来
だよ!僕達、なんだってそんなところに......。」
「......でも、この部屋の造りを見ると、今まで見たことがない造りをしている
から、やっぱり未来の世界だと思う。」
ヒルビは少し前のことを思い出し、未来に来たことを信じられない様子だった。ヒカリ
は冷静に部屋を見て、ここは未来の世界だと伝え、現実を認めるよう諭した。
(......きっとディアノは私とルーアが薄々勘づいていることに気づいて、口封じの
ために私達を未来の世界に連れてきたんだと思う。まさかヒルビを捲き込んで、未来
の世界に連れて来るなんて、私もルーアも想定外だった.....。けど、私とルーアの
話を聞いて、過去のポケモンを未来に連れて来るなんて余程のこと....。それは
つまり...ルーアの予想は当たっていたということね.......。となると、未来
では.........)
「うわぁ!ヒカリ!僕達、本当に未来に来ちゃったのかも!?」
「とりあえず、一旦落ち着こう。ヒルビ。」
ヒカリはディアノと未来の世界について考えていたが、ヒルビの声でヒルビを落ち
着かした方がいいと思い、ヒルビを落ち着かした。
「ううっ.....まいったね....どうしよう...。もしも、ここが本当に未来なら、
僕達、どうやって元の世界に帰ればいいんだろう........。」
(.......そうよね。ここは未来の世界......。過去に戻るには、時空ホールの
ような時の越えられるようなものを探さないと.........。)
ヒルビの暗い声にヒカリがどうすればいいか考えていると、突然鉄格子が開き、
ヤミラミ達が入ってきた。
「起きてたのか。丁度いい。おい。手っ取り早くやるぞ。」
「て...手っ取り早くって何を?」
ヤミラミの言葉に戸惑っている間に、ヒカリとヒルビはヤミラミ達に囲まれた。
「な、何!?」
「うわっ!目隠しされた!何も見えないよ!」
「こっちに来るんだ。」
「いて!押さないでよう!」
ヒカリとヒルビは目隠しされ、何も見えない状態でヤミラミ達に押され、どこかに
連れて行かれた。
「ううっ......目隠しされているから分からないけど、どこに連れて行かれるん
だろうね.....。」
ヒルビがそう言っても何も言えず、ヒカリとヒルビは歩いていた。
「着いたぞ。」
その言葉と同時に何かで縛られ、身動きが取れなくなった。目隠しを取られると、
ライトで照らされているのかとても眩しかった。
「........こ、ここは!?ううっ。縛られて動けないよ....。ど、どうしてこんな
ことに.....。」
「ヒルビ、大丈夫?」
「あっ!よかった!無事だったんだね!」
縄で何重にも重ねられ、柱に縛りつけられているので、身動きは取れないが、ヒカリは
左隣にいるヒルビに声をかけ、こんな状態だが互いの無事を確認できたことにほっと
した。
「ふん!これからどうなるかも分からないのに、随分と呑気なんだな。」
「えっ!?」
「この声って....。」
「ジェ、ジェードーーー!!」
すると、ヒカリの右隣から声が聞こえ、その声の方を見ると、ジェードもヒカリ達の
ように縄で柱に縛りつけられていた。
「お前達。ここがどこか知っているのか?」
「し、知らないけど......。」
「ここは.......処刑場だ。」
「ええーーーーーーーーーー!?しょ、処刑場だってぇー!?」
ジェードの言葉に、ヒカリとヒルビは驚いた。
「ちょっと待ってよ。ジェードが処刑されるのは分かるよ?でも、なんで僕達が!僕達、
何もしてないよ?」
「ごめんね....。私とルーアが原因よ...。」
「えっ?」
「まあ。確かにな。俺達の目の前であそこまで言ったんだ。知り過ぎたということだ。
そんなこと言っている間にほら.......お出ましだ。」
ヒルビがどうしてと言っていると、原因が分かっていたヒカリは謝った。ヒルビは
不思議に思い、ジェードが確かになと言っていると、ジェードが何かに気づいた。
前を見ると、出入り口のような場所からヤミラミ達が現れた。
「わわっ!あいつらは!?」
「奴らは処刑場の執行人であり、そして、ディアノの手下だ。」
「ええ!?ディアノさんの!?」
ヒルビがヤミラミ達について聞き、ジェードの話にヒルビは驚いた。そんな話をして
いる間に、ディアノが処刑場に入ってきた。
「あ!ディアノさん!」
「ディアノ様。3匹を柱に縛り上げました。」
「よろしい。」
ヒルビがディアノを呼ぶが、ディアノはヒルビを無視してヤミラミ達の方を見た。
「ディアノさん!僕だよ!ヒルビだよ!」
「では、ヤミラミ達よ。これから、3匹の処刑を始める。」
「ええーーーーーーーーーーー!?」
「それでは、処刑準備用意!」
「「「「「「ウイイイーーーーーーーーーー!」」」」」」
ヒルビが幾ら呼びかけても、ディアノは反応せず、ディアノの指示でヤミラミ達は
処刑の準備をし始めた。
「ちょっと待ってよ!ディアノさん!いったいどうしちゃったの!?僕達、どうして
こんなことに!」
「あいつに何を言っても無駄だ!それより......(ここからはあいつらに
聞かれないように小さな声で話せ。)」
「うぐっ....(ち、小さな声で?)」
ヒルビはディアノの様子に困惑し、ジェードはそんなヒルビに小声で話すように言い、
ヒルビは素直にそれに従った。
「........(お前達。もしお前達も生き残りたかったら、俺に協力するんだ。)」
「......(ええっ?ジェ、ジェードに?)」
「.........(ヒルビ。ジェードに協力した方がいいと思う。)」
「!?...(ヒ、ヒカリ!?)」
ジェードの提案にヒルビは驚き、ヒカリは賛成した。ヒルビはヒカリが賛成したことに
さらに驚いていた。
「....(迷っている暇はない。このままだとここでくたばるだけだぞ。......おい!
そこのお前!)」
「....!!(私?)」
「(教えてくれ!お前は今、何が使える!?一瞬で使えるものだ!)」
「(えっ?何が使えるって?一瞬で使えるって......こ、攻撃かな?)」
ジェードの質問にヒカリは焦りながらも考えてそう言った。
「(それだ!それでいい!)」
「.....(攻撃なら僕もできるよ!)」
「(よし!)」
ヒカリの答えでジェードは何か思いつき、ヒルビは自身もできると答えた。
「処刑の準備ができました!」
「よろしい。しかし、最後まで油断するんじゃないぞ。」
「「「「「「ウイイイーーーーーーーーーーー!」」」」」」
その時、ヤミラミ達の準備が終わった。
「では......始めろ!」
「「「「「「ウイイイーーーーーーーーーーー!」」」」」」
「(わわっ!こっちに来たよ!)」
ディアノの指示でヤミラミ達はヒカリ達に近づいてきた。
「....(よく聞いてくれ。ヤミラミ達は処刑の時、邪悪な爪を使う。)」
「(ひえっ!なんだか怖そう!)」
「(ただ、そこに突破口がある!ヤミラミはみだれひっかきを無差別に繰り出す。
しかし、その時...その攻撃が一つでも俺達を縛っている縄にヒットすれば。)」
「(そっか!縄が緩むかも!)」
「(そうだ!そして、その瞬間、攻撃を繰り出して脱出する!)」
ジェードの作戦にヒルビは少し希望が湧いてきた。
「(でも、それって......もしみだれひっかきが縄にヒットしなかったら...
それよりも、もしヤミラミ達がみだれひっかきを使って来なかったらまずいん
じゃないの?)」
ヒカリは作戦が失敗した時はどうするのかとヒルビには聞こえないような小さな声で
ジェードに聞いた。
「「「「「「ウイイイーーーーーーーーーー!」」」」」」
「その時は!俺達はおしまいだ!!」
ジェードの声と同時に、ヤミラミ達が飛びかかり、ヒカリ達に攻撃を繰り出した。
「うわあああああああ!」
「うぐぅ!」
「た、耐えるんだ!チャンスが来るまで!」
「でも、このままじゃ.......チャンスが来る前にやられちゃうよ!」
ヒカリ達は必死にヤミラミ達の攻撃に耐えていた。すると、ヒカリ達の縄に亀裂が
入り、身動きが取れるようになった。
「あっ!」
「縄に亀裂が!」
「今だ!攻撃を繰り出すんだ!!」
「いっけぇぇぇぇーーーーーーーー!!」
ジェードの合図でヒカリ達は一斉に攻撃を繰り出した。
「「「「「「ぐわぁ!」」」」」」
「な、何事だ!?」
「それっ!」
ヤミラミ達が攻撃を受けて吹き飛び、ディアノがそれに驚いた瞬間、ジェードは何かを
地面に叩きつけた。すると、辺りが光で何も見えなくなった。
「うわあああぁぁ!」
「ま、眩しい!!」
「狼狽えるな!ただのひかりのたまだ!すぐに元に戻る!」
ヤミラミ達が困惑しているなか、ディアノは冷静に状況を分析し、光が修まるのを
待った。光が修まると、ディアノ達の目の前には誰もいなくなっていた。
「し、しまった!ジェードめ!ひかりのたまのフラッシュのみ利用して、この場から
逃げたな!逃がすものか!いくぞ!」
「「「「「「ウイイイーーーーーーーーーーーー!」」」」」」
ヤミラミ達は驚いて辺りを見渡し、ディアノはすぐにジェード達を追うため、ヤミラミ
達に指示し、ヤミラミ達を連れて処刑場を去った。しばらくして、ディアノ達がいなく
なったことを確認し、ジェード達が土の中から出てきた。
「げほっ!げほっ!土が口の中に....。」
「でも、そのおかげで助かったね...。それにしても、ジェードはあなをほるが使える
のね.....。いろんな技を持っているのね......。」
ヒルビは口の中に入った土を吐き出すために咳き込み、ヒカリは道具を使った後のこと
を思い出し、感心していた。
「とりあえずはしのいだが、危険が去ったわけではない。早くここを脱出しよう。」
ジェードの話を聞き、ヒカリ達は辺りを警戒しながら処刑場を去った。
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どこか違う場所で.........
「......うーん...。ここは....?」
「タイガ!無事か!」
タイガが目を覚ますと、サロファがタイガに声をかけてきた。
「サロファ!エメリとルーアは?」
「エメリはそこで気絶しているが.....ルーアは...はぐれたようだ。ルーアの姿が
どこにも見当たらないんだ。」
タイガがエメリとルーアのことを聞くと、サロファは近くで眠っているエメリを指さし
た後、ルーアについて言いにくそうしながらも答えた。タイガも辺りを見渡すが、
ルーアの姿は確かにどこにもなかった。
「そうなんだ...。エメリとサロファと一緒にいるのはよかったけど、ヒカリとヒルビ
とは離れて、ルーアともはぐれたとなったら......ここがどこか分からないけど、
時空ホールを潜っちゃったから未来っていうことだよね.....。」
「....ああ。そうだな......。未来なのは間違いないだろう...。おまけに、夜に
なったのか辺りも暗くてよく分からないし、ここが俺達の世界ではどの辺りなのかも
分からないしな.....。」
タイガはもう一つ気になっていたことを話し、サロファはタイガの話に同意した。互い
に暗い表情をしていた。
「とりあえず、エメリの起きるまで「ガササッ!」!?」
これからのことを話していると、近くの草むらから何か聞こえた。タイガとサロファは
警戒し、戦闘態勢になると、草むらからポケモンが出てきた。そのポケモンはゴースト
だった。ゴーストを見たタイガは.........
「ぎゃああああああああああああああ!!」
大声で悲鳴を上げ、どこかに走っていった。
「おい!タイガ!待て!!」
サロファが慌てて叫ぶが、タイガの姿はもう見えなくなっていった。
「......まずいな...。」
「...うーん?どうしたのかしら?」
サロファが頭を悩ましていると、さっきの騒ぎでエメリが起きた。
「起きたか。エメリ。寝起きで悪いが、戦うぞ!」
「へっ?何よ、これ?......ルーアは?....タイガは?」
「ルーアは俺達とはぐれた。タイガはこいつを見て逃げた。」
「何よそれ!!」
サロファの話にエメリは何がなんだか分からず、サロファが簡潔に説明すると、タイガ
が逃げたことにエメリは憤慨した。サロファとエメリがそんなやり取りをして、エメリ
が落ち着き、ゴーストと向き合った時、ゴーストが別の方向からの攻撃を受けて倒れ
た。サロファとエメリは突然のことに驚いていた。
「........大丈夫か?」
「君達は......。」
声が聞こえ、サロファとエメリが声が聞こえる方を警戒しながら見ると、そこには広場
でヒカリとルーアを助けたフウヤ達がいた。
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別のどこかの森では.........
「まさに、私の予想通りだった...ということね.....。」
ルーアは周りを見渡してそう呟いた。
「......ヒカリ達とも、タイガ達とも離れたみたい....。それに、元の世界に戻ら
ないと........!」
ルーアが考えていると、背後から気配を感じて振り向いた。
「誰!」
ルーアは警戒しながら気配のする方を見て尋ねた。