悠久の風と輝く光 〜時の風と未来と宝石の光〜








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第4章 謎の探検家
44話 未来への帰還とディアノの本性
........................



 ヒカリが回復し、ルーアも一緒にいられるようになり、再び6匹で依頼をこなすように
 なった。それから数日後、ディアノ達がどうなったか、ジェードが捕まったかどうか等
 の情報は一切来なかった。

 「えー、ジェード捕獲についてだが.....ジェードが捕まったという報せは未だ来て
  いない。みんな、やきもきしているようだが、ここは我慢して....いつも通り仕事
  に励んでくれ♪」

 リコラが朝礼でそう言っていると、突然サイレンが鳴り始めた。

 「おや!このサイレンは!?」

 全員の視線がラチアに集まった。

 「コイルさんからです。『ジンバー保安官より連絡です!この度、ジェードを遂に
  捕まえることができました!!』」

 「おお!とうとう!」

 「ジェードを捕まえたでゲスか!」

 「きゃー、やりましたわ!」

 ラチアはコイルの伝達を言い、弟子達全員がそれに喜んだ。

 「『それで、ジェードを捕らえたディアノさんは、ジェードを連れて未来に帰って行く
   そうです。』」

 「ディ、ディアノさんが.......。」

 「帰っちゃうんだ......。」

 続いての伝達を聞き、弟子達とヒルビ達はショックを受けた。

 「でも、未来に帰るって、どうやって帰るんだろうな?」

 「『...それは私もよく分からないんですが、なんでも、時空ホールというトンネル
   を潜って行くそうです。そして、その時空ホールをトレジャータウンの広場に
   開いたそうです。ディアノさんは帰る前に皆さんにお別れをしたいとおっしゃって
   います。ですので、是非トレジャータウンの広場に来てほしいとのことです。』」

 「ヘイ!こうしちゃいられねえ!」

 「早く行こう!トレジャータウンへ!」

 コゴムの疑問をラチアがコイルに伝え、コイルはそう答えて伝達を全て伝え、ヒカリは
 聞き終えた後、すぐにトレジャータウンの広場に向かった。

 「ヒカリ。この時しかなさそうよ。」

 「分かってる。」

 向かっている途中、ヒカリとルーアがそんな会話をしていることに誰も気づいて
 いなかった。




............................





 「皆さん、もう集まっていますわ!」

 「でも、ディアノさんはまだ来ていないみたいだな。ヘイヘイ!」

 ヒカリ達が広場に着いた時には既にたくさんのポケモン達が集まっていた。周りを
 見渡すが、ディアノの姿はなく、代わりに、ブラックホールのような真っ黒の物体が
 浮いていた。

 「おっ!なんだ、あれは?」

 「コレハジクウホールデス。」

 コゴムがそれに気づいて聞くと、ジンバーが答えた。

 「時空ホール?ああ。さっきコイルが説明してたものですわね。」

 「へえ〜!これが!なるほど〜!この中に入ると、未来に行けるんでゲスかね?」

 全員が時空ホールを見ていると、マックが興味を持って時空ホールに少し近づいた。

 「アブナイ!チカヅイテハイケマセン!ココニハイッタラサイゴ、ミライニトバサレテ
  シマイマス!チュウイシテクダサイ!」

 「ううっ...。」

 すると、ジンバーがマックを止めて注意し、マックは注意されたことで少し暗い表情に
 なった。

 「それにしても、あの時空ホールっていうの、なんか不気味ね。」

 「そうだな.....。中が真っ暗だからだと思うが......近づきたくないな....。」

 エメリとサロファが顔をしかめて言い、それを聞いたヒカリも心の中で同意した。

 「あっ!カルサ!エルサ!そして、アルサも!」

 「ヒルビさん!」

 ヒルビがカルサ達に気づいて声をかけ、カルサも声を上げた。ヒカリ達もそれでカルサ
 達のことに気づき、カルサ達に近寄った。

 「カルサもエルサもアルサも元気そうね。」

 「無事だったんだね!良かった〜!」

 「当然よ♪」

 ルーアとヒルビは無事なことにほっとし、エルサは当然だと胸を張って言った。

 「それで、作戦は成功したの?」

 「うん。さすがディアノさんだ。完璧だったよ。ジェードは捕まえた。それに、あいつ
  に盗まれた時の歯車も全部奪い返したよ。」

 「やった!よかった!」

 ヒカリが気になったことを聞くと、アルサがそう答え、ヒルビはそれを聞いて喜んだ。

 「まもなく、ディアノさんもここに着くと思いますよ。」

 「おっ!あれは!?」

 「ディ、ディアノさんだー!!」

 「ディアノさんが来ましたよー!」

 カルサがそう言った時、周りから歓声が聞こえてきた。どうやら、ディアノが来た
 ようだ。

 「みんな!道を開けろー!!」

 コゴムの声で全員が道を開け、そこをディアノ達が通る。ディアノが先頭を歩き、後ろ
 をヤミラミとジェードが歩く。ジェードは手と腕と口を縛られ、ジェードの前後を
 ヤミラミが歩いて逃げないようにしている。

 「あ...あれが......。」

 「ジェードですか.....。」

 「いかにも悪そうな奴だな。」

 「へっ、捕まってよかったよな。」

 「そうね。あいつのせいで世界が滅ぶところだったしね。」

 周りのポケモンの声にヒカリは胸が痛んだ。

 (どうして?.......ジェードへの非難の声を聞くと、胸が痛む...。何でかな?
  ジェードが悪いポケモンじゃないかもしれないから?それとも............。)

 ヒカリがそう思っていると、1匹のポケモンの姿が見えた。周りの声を聞き、露骨に
 顔をしかめるツタージャの姿だ。ヒカリはその姿を不思議に思いながらもジェードの
 方に視線を向けた。

 「ヒカリ......。」

 「大丈夫...。私から声をかけるから。」

 「....分かった。」

 ルーアがヒカリを心配して声をかけた。ヒカリは大丈夫だからと言ってルーアを見て、
 ヒカリの覚悟を決めた目を見て、ルーアは静かに頷いた。

 「みなさーん!今日は皆さんに良い報告があります。この度、ようやく....この
  ジェードを捕まえることができました!」

 ディアノの声で全員が拍手をした。タイガも拍手し、ヒルビ達は慣れたのかと思い
 ながらもほっとしていた。

 「これも皆さんが協力してくれたおかげです!ありがとうございました!ジェードは
  見ての通り凶悪なポケモンです。皆さんの世界の平和もこれで守られるでしょう。」

 「!!........!!......!!ーーーーーーーーーー!!」

 ディアノの話を聞き、ジェードは何かを必死に伝えようとするが、口を縛られている
 ので喋れず、周りのポケモン達にうるさいと言われた。

 「ジェード.....口を縛られてるみたい。」

 「普通、口まで縛るか?」

 「あれじゃ、何も喋れないよね。」

 サロファとタイガは口まで縛ったことを不思議に思っていた。

 「しかし......同時に悲しい報告もあります。それは私も未来に帰らねばならない
  ことです。皆さんとは...ここでお別れです。」

 「やっぱりそうなのかぁ....。ヘイヘイ......。」

 「か...悲しいでゲス.....。もっと色々教わりたかったでゲス......。」

 ディアノのお別れという言葉に周りのポケモン達が悲しい表情をした。

 「カルサさん、エルサさん、アルサさん...。後のことはお任せしました。」

 「うん。」

 「分かっているわ。」

 「取り返した時の歯車は私達3匹が手分けして、必ず元の場所に戻します。」

 「よろしくお願いします。」

 ディアノはアルサ達に声をかけ、アルサ達は分かっていると言い、ディアノは頭を
 下げた。

 「あの!ディアノさん!」

 ヒカリは今しかないと思い、声を上げた。

 「何でしょうか?」

 「聞きたいことがあるので、聞いてもよろしいですか?」

 「......どうぞ。」

 今度はヒカリの代わりにルーアが答えた。ディアノに許可をもらい、ヒカリとルーアは
 前に出た。

 「すみません。ジェードに少し聞きたいことがあるのです。」

 「ジェードと?」

 ヒカリの話にジェードは不思議そうに聞き、周りのポケモン達やヒルビ達は驚いて
 いた。

 「どうしてですか?」

 「知りたいことがあるからです。ディアノさんが嘘をついているので、ジェードに
  聞いた方がいいと思ったので。」

 「......嘘ですか?」

 ディアノの質問にルーアは挑発するように答え、ディアノはルーアの話に眉を潜めた。

 「こ、こら!す、すみませ「今回は探検隊としてではなく、別の仕事の方でこのような
  話をしています!上からの指示なので、私では取り消せません!」....ちょ、
  ちょっと待ちなさい!ルー「リコラさん。すみませんが、ここは穏便に...。」「話
  を遮っちゃだめよ!」.....へっ?」

 「カルサ!エルサ!」

 リコラがルーアを止めようとしてディアノに謝ろうとするが、ルーアはそれを遮って
 そう言った。ルーアがカルサ達に視線を向けながら言うと、カルサ達は何かに気づいた
 様子を見せた。リコラはルーアを叱ろうとするが、カルサに止められ、ルーアを止め
 ようとしたポケモン達はエルサに止められ、周りのポケモン達は困惑していた。

 「アルサ!どういうことなの?」

 「アルセウス様がヒカリとルーアに指示したんだと思う...。」

 「えっ!?アルセウスが!?」

 どういうことか分からないヒルビ達は後ろにいたアルサに聞くと、アルサは真剣な顔で
 そう言った。アルセウスという名はヒルビもサロファ達も驚いた。

 「ルーアの言う上はアルセウス様しかいないからね。アルセウス様やルーアとヒカリが
  何を考えているか分からないけど、アルセウス様の考えだから、僕達は黙って見る
  しかないよ。ルーア達がアルセウスの使いとして来るくらいだ。余程のことだと
  思う。」

 「うん...。」

 アルサの話を聞き、ヒルビ達は心配そうにヒカリとルーアの方を見た。実は、ヒカリと
 ルーアはディアノの追求に関してアルセウスに話し、許可をもらっていたのだ。ヒカリ
 とルーアが気づいたことがそれほど重大なことなのかもしれないが、ルーアは予め許可
 をもらい、誰にも止められないようにしたのだ。

 「私達は未来のことを知りませんので、ジェードのことやディアノさんのことが嘘か
  どうかは分かりません。」

 「それなら、何故嘘と?」

 「この世界で既に起きたことは嘘であったらバレますよ。」

 ルーアの話にディアノが聞くと、ルーアは笑みを浮かべてそう言い、ヒカリはバッグ
 からある記録書を出した。

 「これは?」

 「時が狂い始めたときの記録です。ディアノさんは言いましたよね。最近、時が狂い
  始めたのは時の歯車が盗まれた影響だと。ですが、記録によると、時が狂い始めたの
  は時の歯車が盗まれるずっと前です。他の記録を見ても、全て時の歯車が盗まれる前
  と記録されています。」

 「つまり、時の歯車が盗まれたことは時が狂い始めた原因ではない。時が狂い始めた
  原因は別にあるということです。ディアノさんの話とは違います。」

 ヒカリが記録書を捲り、他の記録書も出して捲りながら話し、ルーアが続けてその結論
 を言った。周りが少し騒ぎ始めた。

 「それは.........。」

 「それに、ジェードが逃げ延びるために過去に来て、星の停止を起こそうとしている
  という話も嘘ですよね。ジェードが本当に逃げ延びるために過去に来たなら、それは
  あり得ません。星の停止を起こそうとしている.......それは未来を変えるという
  こと....ジェードにはメリットがありません。ジェードが何のために過去に来て、
  時の歯車を盗んでいたのは分かりませんが、星の停止を起こそうとはしていません。
  おそらく、ジェードの行動はディアノさん達にとって何かまずいことではないでしょ
  うか?ジェードの口を縛っているのはジェードに話されるとまずいことがあるから、
  星の停止を起こそうとした凶悪なポケモンに仕立てあげたいからでしょう。明らかに
  口まで縛るのは不自然です。」

 ディアノが何か言おうとするが、ルーアはそれを遮り、そう言い放った。ヒカリが視線
 をジェードに向けると、ジェードが驚いたように目を見開いていた。ジェードの目が
 少し潤んでいるように見えて、ヒカリはそれが気のせいではないと思った。それと同時
 に、やっぱり悪いポケモンではないんじゃないかと思った。

 「ディアノさん。上が聞きたいのはこれとは別のことですが、よろしいですか?答え
  たくないのなら、私達は勝手にジェードに聞きますが........。これは私の予想
  ですが、最近の時が狂い始めているという現状と、ディアノさんが言っていた星の
  停止.....もしかして、「フッ...フッ、ハハハハハハハハハハハハハッ!!」!?」

 ルーアはさっきから黙っているディアノに聞き、本題を聞こうとした時、ディアノが
 突然笑い始めた。ディアノが突然笑い始めたことに、ルーアもヒカリも周りにいた
 ポケモン達全員が驚き、呆然とした。

 「.....やはり、貴女を騙すのは無理でしたか。」

 (まずい....!)

 「ルーア!」

 「分かってる!」

 ディアノの様子にヒカリの頭の中で警告音が鳴った。ヒカリとルーアは後ろに下がる
 と、先程ヒカリとルーアがいたところに2匹のヤミラミがいた。

 「穏便に済ませようと思ったが、仕方あるまい!やれ!」

 ディアノの指示でヤミラミ達がヒカリとルーアに襲いかかろうとした時、

 「ルーアさん!」

 1匹のポケモンがヤミラミの攻撃を弾いた。そのポケモンは、ジェードを非難する声に
 顔をしかめていたあのツタージャだった。

 「フウヤ!」

 「ウェンディ!ウォーブ!ルーアさん達を守るぞ!」

 飛び出したツタージャ、フウヤを追って、ミジュマルのウェンディとポカブのウォーブ
 がフウヤに近づき、フウヤはウェンディ達にそう言って戦闘態勢になった。フウヤの声
 を聞き、ウェンディ達もすぐに戦闘態勢になった。

 「大丈夫!?」

 ヒルビがヒカリとルーアを心配して前に出てきた。後ろにはタイガ達もいた。

 「......では、こうしよう!」

 「うわっ!」

 「ヒルビ!」

 ディアノはヒルビを見て何か思いつき、お腹の口を開いた。それにヒルビが驚き、一瞬
 怯えんだ隙にディアノはヒルビの首を掴んだ。

 「ヤミラミ!」

 「ジェード!!」

 ディアノがジェードの左右にいるヤミラミに合図すると、ヤミラミはジェードを時空
 ホールに突き落とした。ジェードが時空ホールの中に入った瞬間、フウヤが大声で
 叫んだ。ヤミラミ達はその間に時空ホールの中に入っていった。

 「お前達も一緒に来るんだ!!」

 「うわあああああぁぁぁぁ!」

 「ヒルビー!!」

 「ヒカリ!!」

 ディアノがそう言ってヒルビを引き摺り時空ホールの中に入り、ヒカリはヒルビが入る
 前にヒルビの腕を掴み、ヒルビと共に時空ホールに引き摺り込まれた。それと同時に
 どこからか光が現れ、全員が光で何も見えない状態になった。すると、時空ホールが
 まるでブラックホールのように周りを吸い込み始め、近くにいたルーアもタイガ達も
 フウヤ達も体が時空ホールに引き摺られていった。

 「ま、まずい....!」

 「「「うわあああああぁぁぁ!」」」

 「くっ!」

 「「「きゃああああああぁぁぁ!」」」

 光で何も見えず、何が起きているかも分からず、抵抗することができないルーア達は
 時空ホールの中に入ってしまった。

 「わわっ!」

 「ヒルビさん!!ヒカリさん!!ルーアさん!!タイガさん!!サロファさん!!エメリ
  さん!!」

 光が修まり、他のポケモン達がやっと見えるようになった時には前に誰もいなくなり、
 叫び声が聞こえていたので、時空ホールの中に入ったことは分かり、時空ホールに
 近づくが、その前に時空ホールは閉じて消えてしまった。

 「い、今のは.....。」

 「何が起こったのでしょう...。」

 その場にいたポケモン達は何が起きたのか分からず、茫然としていた。その様子を
 見て、2匹のポケモンがその場から立ち去った。

 「うわああああぁぁぁぁぁ!」

 ヒカリとヒルビは時空ホールを潜り、どこかに辿り着いた。

 (.....うう........どこなの、ここは....だ、だめ...い、意識が........。)

 ヒカリは状況を確認したかったが、意識がだんだん薄れ、手放してしまった。







グラシデア ( 2021/04/10(土) 20:10 )