43話 ジェードとディアノ
「........う、うーん......。」
「ヒカリ!」
「うん....。また目覚めて最初に見たのがルーアの顔だね.....。」
「ふふっ。そうね。」
ヒカリが目を開けると、ルーアの顔が見え、ルーアにまただねと言って笑うと、ルーア
も笑った。周りを見渡すと、寝ていたのはヒカリだけのようだった。
「みんなは?アルサは?」
「大丈夫よ。ヒカリが起きる前にヒルビ達は起きてギルドのみんなといるよ。アルサは
もう回復してすっかり元気よ。」
「そう。良かった。」
ヒカリの質問にルーアは答え、みんな無事だと言われ、ヒカリはほっとしていた。
「ヒカリ。ヒカリが寝ている間にあったことを話したいんだけど......いい?」
「う、うん。」
ルーアが先程と違って真剣な顔をして言い、ヒカリはそれに少し驚きながらもしっかり
と頷いた。
.........................
ヒカリが起きる前、ヒルビ達が目を覚ましてから.........
「ええっ!?なんだって!?ディアノさんがジュプトルを....実は前から知っていたん
じゃないかって〜〜〜!?」
「うん。2匹が戦う時にそんな話をしていたんだよ。」
ヒルビは起きてすぐに、ギルドのみんなにこの話をした。
「それで......ディアノさんは今、どうしているのだ?」
「ジュプトルが逃げたんで、たぶんその後を追っているんだと思うけど.....。」
プルトの質問にヒルビは気を失う前のことを思い出しながら言っていると、突然
サイレンが鳴った。
「おや?緊急のサイレンだ!」
「おい!ラチア!どうしたのだ?」
「コイルさんからです。ジンバー保安官より至急の連絡だそうです。今からすぐに皆、
トレジャータウンの広場に集まってほしいとのことです。そこで重要な話があるそう
です。ギルドだけでなく、周辺に住むポケモン達にも集まるように声がかけられて
いるそうです。以上です。」
サイレンに素早く反応したコゴムとプルトがラチアに聞くと、ラチアはコイルからの
伝言を言った。
「何があったんだろう....。」
「重要な話って何でしょうね?」
「ヘイ!とりあえず行ってみようぜ!トレジャータウンの広場にさ!ヘイヘイ!」
伝言を聞き、何事かとみんなで話し合い、とりあえずトレジャータウンの広場に行く
ことにした。
「あ!ヒカリはどうしようか?」
「まだ眠っているから、そのまま寝かしておきましょう。私が残るから。」
「いや。僕が残るよ。ダメージが残っていてあんまり動けないし...。」
「そう。分かった。タイガに任せるよ。」
広場に向かおうとした時、ヒルビがヒカリのことを思い出し、ルーアがヒカリは
寝させたまま自身が残ると言うと、タイガが変わりに残ると言った。ルーアはタイガの
言葉に甘え、タイガを残して広場に向かった。
...........................
「あっ!ギルドのメンバーよ!」
「ギルドのポケモン達もやってきたのか!」
「彼らも呼ばれるということは.....やっぱり大変なことが起こっているのかなぁ。」
ルーア達が広場に着くと、そこにはもう何匹か集まっていた。
「アルサ!」
「カルサ!エルサ!」
広場にはカルサとエルサの姿もあり、アルサを見ると、カルサとエルサはアルサに
駆け寄った。
「大丈夫?怪我はない?」
「うん。大丈夫。」
「時の歯車は?」
「水晶の湖にあるよ。」
「放っておいて大丈夫?とられたりはしないの?」
「うん。とりあえずは平気だよ。時の歯車は水晶が覆うように守っているよ。簡単には
奪えないよ。」
カルサとエルサはアルサの無事と時の歯車のことが心配で、アルサはとりあえず全部
大丈夫だと答えた。
「あ!ディアノさん!」
ヒルビがディアノの姿を見つけ、ディアノのところに駆け寄った。
「おおっ!ヒルビさんにエメリさんにサロファさん!それと、後ろにいるのが
確か......。」
「ルーアです。はじめまして。」
「こちらこそ。」
ディアノはヒルビ達に気づいて声をかけ、初対面のルーアと挨拶した。ルーアは心の中
でタイガがいなくてよかったとほっとしていた。
「無事だったのですね。良かった。」
「ディアノさんも帰ってきてたんだね!あの時は助けてくれてありがとう!それで、
あの後はどうなったの?ジュプトルは?ジュプトルはどうなったの?」
「あの後、私もジュプトルを追ったのですが、残念ながら逃がしてしまいました。」
ディアノがヒルビ達の無事にほっとし、ヒルビは気になっていたことを聞いた。残念
ながらジュプトルには逃げられたようで、ディアノは悔しそうだった。
「あの、ディアノさん。水晶の湖でジュプトルと戦った時、ディアノさんはジュプトル
を知っていたみたいだけど、あれは?」
「アア!ソノハナシナラ!ソレモフクメテコレカラディアノサンガミンナニセツメイスル
ソウデス。ナノデミナサン。コッチニアツマッテクダサイ。」
ヒルビがもう一つ聞きたかったことを聞くと、ジンバーが後で話すと言い、ヒルビ達
は広場に集まった。
「いったい何の話でゲスかねえ?」
「さ、さあな......。儂に聞くなよ...。」
しばらくして、広場に溢れるくらいのポケモン達が集まり、何を話すのかと騒いで
いた。
「エー、ミナサンアツマッタヨウナノデ、コレカラハナシヲハジメタイトオモイマス。
ハナシトハ、サイキントキノハグルマガヌスマレルジケンニツイテデス。トキノ
ハグルマハジュプトルトイウポケモンガヌスミツヅケテオリ、トキノハグルマガ
ヌスマレタチイキハジカンガトマッテシマイ、トテモモンダイニナッテイタノハ、
ミナサンゴゾンジダトオモイマスガ、コンカイ!ジュプトルノマノテカラ、トキノ
ハグルマヲマモルコトガデキマシタ!」
「おおっ!!」
「そうなのか!!」
ジンバーが集まっているポケモン達全員に報告し、その報告に全員が喜びの声を
上げた。
「マモッタノハソコノアルササン!ソシテ、ソノアルササンヲスクイ、ジュプトルヲ
オイハラッタノガ、ココニイルディアノサンデス!!」
「す、凄い!」
「さすが有名な探検家だな!」
ジンバーの話に全員の視線がアルサとディアノに集まり、称賛の声を上げた。エメリは
頑張ったのに手柄を横取りされたと不満そうに愚痴り、サロファがそんなエメリを
殴った。
「ジンバー保安官。すみません。ここからは私がお話を.....。」
「ワカリマシタ。ヨロシクオネガイシマス。」
ディアノはジンバーにそう言い、ジンバーはディアノに譲った。
「皆さん!時の歯車を守れたのは確かに良かったのですが、しかし、ジュプトルには
逃げられてしまいました。ですので、まったく安心できません。ジュプトルはまた
必ず時の歯車を奪いにきます。」
ディアノの発言にルーアとサロファとモルガ以外の全員が騒ぎ出したが、ディアノは
気にせず話を続けた。
「そして、また....私は皆さんにある重大なことを伝えなければいけません。それを
今からお話します。まず、先程ヒルビさんが私に聞いた質問、私がジュプトルのこと
を知っているんじゃないかという質問ですが...その通りです。私は前から
ジュプトルのことを知っています。」
「「「「「「「「「「「「「「「「「ええっ!!」」」」」」」」」」」」」」」」」
ディアノがジュプトルのことを知っているという発言にルーアとサロファとモルガ以外
の全員が驚いた。
「今からするお話は......皆さんにはとても信じられないものかもしれません。
しかし、事実です。しかも、このまま放っておくととんでもないことになるのです。
ですので、真剣に聞いてください。まず、ジュプトル....彼の名はジェード。
ジェードは未来からやって来たポケモンです。」
「み、未来ですって!?」
「お父さん。未来ってなあに?」
「1年後とか、2年後とか......これから先の時間のことだ。」
「でも、あり得るのか?そんなことが!?未来からポケモンが来るなんてよお!」
ディアノの話を聞き、今度は全員が驚いたり信じられないという声を上げたりして
いた。未来の言葉の意味を知らないラチアは父であるプルトに聞き、プルトはラチアの
質問に答えていた。
「未来世界でのジェードはやはりものすごい悪党で、指名手配中のポケモンです。
そして、未来世界から逃げ延びるためにこの過去の世界へとやってきたのです。
さらに、この世界にやってきたジェードはある悪巧みを企てました。」
「な、なんですか!?その悪巧みって!?」
ディアノは再び話し出し、騒いでいたみんなは黙り、ディアノの話を聞いていた。
ディアノの話を聞き、リコラが質問した。
「それは.....星の停止です。」
「星の....停止?」
「そうです。星の停止とは星自体の動きが止まってしまうことです。時の歯車をとる
と、その地域の時間も止まりますよね?いろんな地域の時が止まっていき、ついには
この星自体の動きも止まりしまう......その成れの果てが星の停止なのです。」
ディアノは少し間を空けて言い、リコラはその言葉に首を傾げ、聞き返した。リコラの
聞き返した言葉にディアノは頷き、また話し始めた。
「星が停止すると、この世界はどうなるの?」
「星が停止した世界は...風も吹かず、昼も来ないし、春も夏も来ない....まさに
暗黒の世界......世界の破滅と言っても言い過ぎではありません。」
「せ、世界の破滅だってぇ!?」
「時の歯車がなくなると、そんな風になっちゃうのかよ!?」
ディアノが質問に答え、星の停止について詳しく話すと、全員が驚き、さっきより
騒ぎ出した。
「最近、時が狂い始めたのも、全ては時の歯車が盗まれた影響です。このまま、時の
歯車を奪われ続けたら、世界は破滅してしまうのです。」
「そ、そうだったのか.....。」
「しかし、まずいぞ!それは!」
「な、なんとかしないと!」
「ヘイ!質問!」
ディアノはまた再び話し始め、全員が騒ぐのを止めて聞いた。ディアノが話し終わって
全員がさらに混乱したり、焦ったりした時、アズニが手を上げてディアノに質問した。
「ちょっと分からないことがあるんだけど...。」
「なんでしょう。」
アズニの声を聞き、ディアノがアズニと向かい合った。
「今が大変なのはよく分かったんだけど.....でも、分からないのはディアノさんの
ことだよ。ディアノさんはなんでそんなに詳しく知っているの?いや。ディアノさん
が物知りだってのはよく分かっているし、尊敬もしているけどさ.......。でも、
いくら物知りだってさ....未来のことまでは分からないんじゃないの?ヘイヘイ!」
「そういえば......。」
「そうだよな...。」
アズニの質問に周りも確かにと頷いた。
「いや。アズニさんのおっしゃる通りです。普通なら知りようがない。でも、何故私が
そんなことを知っているのか?それは.....私も未来からやって来たポケモンだから
です。」
「「「「「「「「「「「「ええ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!?」」」」」」」」」」」」
「ディアノさんも未来からやって来たポケモンだってぇ〜〜〜!?」
「ひゃー!あっしにはややこしくて頭が変になりそうでゲス!」
ディアノの話に全員が驚愕の声を上げた。ヒルビは大声で叫び、マックは情報を整理
できず頭の中が混乱していた。ちなみに、ヒルビはあまりの声の大きさにサロファと
エメリに頭を殴られた。
「私の目的。それはジェードを捕まえることなのです。そのために、私は未来から
やって来たのです。また、私はジェード捕獲を成功させるため、未来でこの世界の
ことを色々調べました。私がこの世界に詳しいのもそのおかげなのです。」
「...な、なんで今まで黙っていたんだよ?」
ディアノの話を聞いた後、一匹のポケモンがそう言った。
「す、すみません....。それについても私も心苦しかったのです。今まで黙ってて
本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。ただ、もしいきなりそんなことを言ったと
して....私は未来から来ましたといきなり言ったとして、いったい誰が信用して
くれたのでしょうか?」
「うぐっ......。」
「またジェードに感付かれないないようにするためには、この話は秘密にしたまま
行動した方がいいと思ったのです。」
「た、確かに.....。」
ディアノの話にそのポケモンは黙り、リコラは納得していた。
「しかし、今まで皆さんに隠していたことも事実です。皆さんにはずっと黙ってて、
本当に申し訳ありませんでした。」
「いやいやいやいやいやいやいや!謝らないでください!そういうことなら仕方ない
でしょう!」
「ソウデスヨ。ディアノサンハマチガッテイナイ。ニクムベキハジェードデス。
ナントカシテツカマエナクテハ。」
頭を下げて謝るディアノにリコラとジンバーがそう言った。
「そうだ!ジェードをこのままにしておいては危ない!」
「世界が大変なことになる前に、なんとかしてでも捕まえなくちゃ!」
「ディアノさん!私、ディアノさんに協力します!」
「ぼ、僕も!」
「あっしも!」
「ヘイ!おいらも!」
「私達も協力します!」
「盗まれっぱなしじゃ、納得いかないしね!」
「もう盗ませないよ!絶対に!」
ジンバーの言葉に全員が賛同した。
「皆さん、ありがとうございます。皆さんの......ポケモン全員の力を合わせて、
ジェードを捕らえ、ジェードの悪巧みをなんとかしてでも阻止しましょう!!」
「「「「「「「「「「「おおーーーーーーーーーーーーー!!」」」」」」」」」」」
ディアノがそう言うと、全員が声を上げた。
「ディアノさん。水晶の湖にある時の歯車を手に入れるためには、僕を倒せばいいこと
をジェードは知っている。だから、もし手に入れようとするなら、ジェードは僕を
倒しに来るんじゃないかな。」
「そこで、私とエルサとアルサの3匹が水晶の湖に行き、時の歯車を二度と奪われない
ように封印するという噂を流せば.......。」
「ジェードはまた必ず現れるんじゃないかな?」
「.....なるほど。囮作戦ですね。」
「うん。」
アルサ達は考えた作戦をディアノに話し、ディアノはその作戦を瞬時に理解した。
「しかし、それだとあなた達が危険な目にあってしまいますが....。」
「望むところだわ!」
「それでジェードを止められるのなら!」
「私達、覚悟はできています!」
「.........分かりました。」
ディアノは心配そうに言うと、アルサ達は覚悟はできていると言った。ディアノは
アルサ達の様子を見て頷いた。
「皆さん!今から作戦を言います!ですので、しっかり守ってください!」
ディアノは全員に向けてそう言い、全員がディアノに注目した。
「まず、皆さんはいろんな場所に噂を広めてください。『カルサさん、エルサさん、
アルサさんの3匹が時の歯車を封印するために水晶の湖に帰っていった』....と。
とにかく、その噂を広めてください!」
「なるほどー。ジェードの耳にも入るようにするわけですね。」
「そうです。でも、ジェードは噂だけじゃ騙されない。ですので、カルサさんとエルサ
さんとアルサさんの3匹には、本当に水晶の湖に行ってもらいます。」
「そっか!そして、ジェードがアルサ達に近づいたところを捕らえるってわけだね!」
ディアノの話にリコラは納得し、ヒルビも作戦を理解した。
「よし!」
「きゃー、燃えてきましたわ!」
「タイホ!タイホ!」
「ヘイ!ジェードを捕まえるのはおいらだぜ!」
「イヤ。オタズネモノヲツカマエルノハ、ワタシノシゴトデス!」
「みんなに遅れをとりたくないよ!僕達も頑張ろうね!」
「もちろんよ!」
「ああ!」
「...........。」
作戦を聞き、全員が気合いを入れていた。ヒルビも全員の様子を見て気合いを入れ、
それはエメリもサロファもだ。しかし、ルーアだけは下を見て何かを考えている様子
だった。
「いや、せっかくですが......ジェードの捕獲は私1匹でやらせてください。」
「「「「「「「「「「「ええ〜〜〜〜!?ど、どうして〜〜!?」」」」」」」」」」」
周りが盛り上がっているなか、ディアノが申し訳なさそうに言い、全員がその言葉に
驚いた。
「ジェードは非常に用心深い性格です。アルサさん達が本当に水晶の湖に帰っている
ことが分かったとしても、相当警戒するはずです。なので、そこで、もし水晶の湖に
たくさんのポケモンが見張っているのを知ってしまったら、ジェードはアルサさん達
に決して近づかないでしょう。ですので、すみませんが、ここは私1匹でジェードを
捕まえます。」
「う〜ん、そっかぁ...。残念....。」
「すみません。ヒルビさん。今度こそジェードを確実に捕らえたいのです。我慢して
ください。」
ディアノの話を聞き、ヒルビが落ち込んだ様子を見せた。ディアノはヒルビに謝り
ながらそう言った。
「そういうわけだ。ギルドのみんな。これまでは、ジュプトルを捕まえるよ!
たあーーーーーーーーーーーー!!.....で、きたわけだが、今回は我慢して、
裏方に撤してくれ♪」
「まあ......。」
「そういうことなら...。」
「仕方ないですわね。」
リコラが前に出て弟子達に言い、みんなも納得して我慢することにした。
「....それで、よろしいですよね?親方様。」
「うん♪」
「かしこまりました。(ふ〜、よかった〜!今度はちゃんと起きていたよ〜〜!)」
リコラがモルガに確認すると、モルガはニコニコと笑ったまま頷き、リコラは内心で
起きていたことにほっとしていた。
「それでは、皆さん。色々お願いしてすみませんが、よろしくお願いします!そして、
なんとしてでも、ジェードを捕まえましょう!」
「「「「「「「「「「「「「おおーーーーーーーーーー!!」」」」」」」」」」」」」
再びディアノの号令で全員が大声を上げた。
.....................
「.......と、いうことがあって、アルサ達はディアノと共に水晶の湖に向かって、
他のみんなは噂を必死に流しているの。」
「そうなんだ...。私が眠っている間にそんなことがあったのね......。」
ルーアはヒカリが寝ている間の出来事を全て話し、ヒカリは頭の中でルーアの話を整理
しながら頷いた。
「そういえば、水晶の湖の時、ジュプトル......じゃなくて、ジェードを助けた
ポケモンに関して、ディアノさんは心当たりはなかった?」
「アルサが広場での話の後聞いたらしいんだけど、心当たりはあるみたい....。」
「どうしたの?」
ヒカリが気になったことを聞くと、ルーアはそう答え、何か考えている様子だった。
ヒカリがルーアの様子が気になり、どうしたのかと聞いてみた。
「.......ディアノの話、どうもおかしいのよね......。」
「おかしいって?」
「ジュプトル...ジェードの情報が何も掴めなかったのも.....あの後、ディアノの
情報を調べて探検家としての活動する前のことは何も分からなかったのから見て、
未来から来たというのなら全て辻褄が合う........でも、嘘をついているのよ。」
「嘘?」
「そう。おかしいのよ。だって...............」
ルーアはヒカリに自身がおかしいと思ったこと、考えていることを全て話した。
「....確かに。それはおかしい......。」
「そうなのよ。」
ルーアの話を聞き、ヒカリはルーアの話に同意した。ヒカリの頭に自身のことを話した
時にディアノが浮かべた怪しげな笑みを思い出した。あの時、時空の叫びのことが
分かったが、自身のことを話したのは間違いだったかもしれないとヒカリは思った。
「私達は未来のことを知らない...。未来のことを知っているのはディアノとジェード
だけ。私達は知らないから、ディアノは未来のことで嘘をついても、私達はそれを
嘘だと分からない。」
「それじゃ、ジェードが悪いポケモンじゃないかもしれないんだね.....。」
「ヒカリ?」
ルーアの話を聞いて、ヒカリはそう呟き、下を向いた。ルーアはヒカリの様子に
気づき、声をかけた。
「....心のどこかでジェードは悪いポケモンじゃないって何故か思ったの......。
時の歯車を盗んで、カルサ達やヒルビ達を傷つけたポケモンなのに...。」
「ヒカリ......。」
ヒカリはずっと心の中で思っていたことを伝えた。ルーアはそんなヒカリの話を静かに
聞いていた。
「...ジェードが悪いポケモンかどうかは分からないけど、他のことでディアノに
問いつめようと思うの。兄さんに協力して情報を提供してもらって、絶対に本当の
ことを話させたいの!」
「うん....。私もジェードと話したい。」
「そうね。ヒカリは今は休んでいて。次にディアノに会う時、問いつめるよ!」
「うん!」
ルーアの話にヒカリも少しノリ気で頷き、ルーアは部屋を出て、ヒカリは目を瞑った。
ジェードが悪いポケモンなのか、ディアノが悪いポケモンなのかは分からないが、絶対
に真実を知ろうとヒカリは心の中で決心した。