悠久の風と輝く光 〜時の風と未来と宝石の光〜








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第4章 謎の探検家
42話 ジュプトルとの戦い
.......................



 ヒカリ達は大水晶の道を進んでいた。水晶の洞窟とは違ってハブネークはいなかった
 が、ミノマダムはいたので、ヒカリ達はエメリとミノマダムに気をつけて先に進んだ。


 「あっ!見てよ!湖だよ!」

 少し広い場所に出ると、そこには湖が広がっていた。湖から水晶があちこちに見え、
 とても綺麗だった。

 「.....凄い。」

 「湖から水晶が突き出しているね。」

 「やっぱりここがアグノムのいる湖なのかしら...。」

 「...あそこにあるのは時の歯車のようだな。」

 ヒカリ達は湖の景色に感動していたが、サロファの声で全員がその方を向いた。

 「本当だ!その近くの湖の真ん中の......島みたいなところ!あそこ!誰かいるみたい
  だよ!行ってみよう!」

 ヒルビの声にヒカリ達は頷き、湖の島のようなところに向かった。

 「ああっ!!あれは!?」

 「あ、あれは!?ジュプトル!!」

 島に着くと、ジュプトルがアグノムを倒していた。ヒカリ達はそれを見て驚いていた。

 「うぐぐっ.......うおっ....。」

 「もらっていくぞ。時の歯車を。」

 「だめだ.....あれをとっては.....。絶対に........。」

 (時空の叫びで見た光景と同じ!あの時見た光景は未来の出来事だったのね!)

 ジュプトルとアルサの様子を見て、ヒカリは時空の叫びで見たものと同じだと確信
 した。

 「あそこにいるの!アグノムかな!?」

 「だとすると、アグノムが危ない!!」

 「早く助けに行くわよ!」

 ヒカリ達は慌ててジュプトルとアルサのところへ走った。

 「あそこに沈むのが...時の歯車だな。では、アルサとやら。悪いが、時の歯車は
  もらっていくぞ。」

 「....ううっ......ま、待て.....。待つんだ...ジュプトル....。」

 「........俺のことを知っているのか?」

 ジュプトルが湖を見てからアルサにそう言って飛び込もうとした時、アルサの声が
 聞こえ、ジュプトルは動きを止めて聞いてきた。

 「盗賊ジュプトル...。お前がここに来ることは、カルサとエルサから聞いていた。
  本当は僕の手でお前を倒せれば良かったんだけど、もしだめだった時のためも考え
  て、ある仕掛けをしておいたんだ。」

 「何!?」

 アルサの話にジュプトルが振り向いた時、アルサが宙に浮き、アルサの目が光った。
 その瞬間、地面が揺れ始めた。

 「何を.....何をした!」

 ジュプトルは動揺し、周りを見渡していた。

 「わわっ!地響きが!?」

 その地響きは離れたヒカリ達のところにも影響した。湖から水晶が突き抜け、時の歯車
 を守るように覆った。

 「こ、これは...。湖が水晶に覆われて、時の歯車をとることができない.....。」

 ジュプトルは悔しげに湖を見ていた。

 「ジュプトル....。時の歯車は絶対に渡さない...。僕の命にかえても........
  絶対に......。」

 「き、貴様!俺はなんとしてでも手に入れる!時の歯車を!アルサ!貴様を倒して
  でもな!」

 「でんこうせっか!」

 「何!?」

 アルサの声を聞き、ジュプトルがアルサに攻撃しようとした時、ヒカリがアルサを背中
 に乗せ、ジュプトルの攻撃を避けた。ジュプトルは新手に驚いていた。

 「ジュプトル!お前に時の歯車は渡さない!」

 ヒルビ達もジュプトルのところに着いた。

 「アルサ!大丈夫?」

 「......大丈夫だ...。もしかして、ヒカリなのか....?」

 「うん。そうだよ。」

 ヒカリはアルサを離れた場所に移動させ、アルサに話しかけ、回復させようとバッグを
 開けた。

 「お前達に用はない。退け!」

 「嫌だ!絶対に退くもんか!」

 「本気で言っているんだな!どうしても退かぬと言うのなら、仕方がない!!お前達から
  倒してやる!!行くぞ!!リーフブレード!」

 ジュプトルとヒルビが言い争い、ジュプトルが攻撃を仕掛けてきた。

 「かえんほうしゃ!」

 「はどうだん!」

 ヒルビ達はジュプトルの攻撃を避け、ヒルビとタイガが攻撃を放つが、ジュプトルに
 避けられてしまった。

 「つるのムチ!」

 「つばめがえし!」

 ジュプトルが避けてすぐにエメリとサロファが攻撃するが、これも避けられた。

 「ほのおのうず!」

 「はっけい!」

 「リーフブレード!」

 ヒルビが攻撃を放ち、ジュプトルが避けた先でタイガが攻撃するが、ジュプトルの片腕
 で受け止められてしまった。力はジュプトルが強く、ジュプトルの片腕にタイガが両手
 で受け止めていた。

 「なかなか良かったが、おしかったな。」

 ジュプトルがそう言ってもう片方の腕で攻撃しようとし、タイガは来ると思い、目を
 閉じた。

 「きりさく!」

 サロファが間に入り込んで攻撃を受け止めたが、サロファも押し返されそうになり、
 両手に力を込めた。

 「つるのムチ!」

 タイガとサロファが振りなのに気づき、エメリはつるのムチでジュプトルの両腕を
 押さえた。しかし.........

 「...残念だが、これでは俺を止められないな。」

 「うわっ!?」

 「くっ!?」

 「きゃあ!?」

 ジュプトルはそう言ってタイガ達の攻撃を振り払い、タイガとサロファは体が宙に
 浮き、エメリは水晶のところまで弾き飛ばされた。

 「リーフブレード。」

 「うっ!?」

 「ぐっ!?」

 ジュプトルはすぐにタイガとサロファの懐に近づき、攻撃した。タイガとサロファは
 攻撃を受け、エメリとは正反対の方向の水晶にぶつかった。

 「タイガ!サロファ!」

 「他人を心配する場合か。」

 「いつの間に!?」

 「シザークロス。」

 「きゃあ!?」

 「うっ!?」

 エメリがタイガとサロファの方を向いている隙に、ジュプトルはエメリの後ろをとり、
 エメリが声を聞いてすぐに振り返るが、ジュプトルの攻撃を受け、サロファのところに
 飛ばされた。

 「タイガ!サロファ!エメリ!」

 「...僕....は......大丈夫......サロファとエメリは.....気絶して、いるよ...
  それ、より.......ヒルビの方が.....。」

 「その通りだ。」

 ヒルビがタイガ達のことを呼び、タイガは途切れ途切れになりながらもそう言った。
 サロファとエメリはタイガの言う通り気絶しているようだ。タイガが言った時には、
 ジュプトルは既にヒルビの背後にいた。ヒルビは声が聞こえてすぐに振り返ったが、
 ジュプトルはもう腕を振り上げていた。ヒルビは動けず、ジュプトルの腕を見つめる
 ことしかできなかった。

 「アイアンテール!」

 「ヒカリ!」

 そのヒルビとジュプトルの間に、ヒカリが割って入り、ジュプトルの攻撃を受け止め、
 跳ね返した。

 「遅れてごめんね。」

 「僕は大丈夫だけど、タイガとサロファとエメリが......。」

 アルサの簡単な治療を終え、ヒカリは戻ってきてヒルビに声をかけ、ヒルビはヒカリに
 タイガ達のことを説明した。ヒカリはジュプトルを警戒しながらタイガ達の様子を
 見た。

 「サロファとエメリは気絶しているけど、タイガはバッグからオレンのみを出そうと
  しているから、回復すると思う。今は私とヒルビで頑張るよ!」

 「うん!」

 「でんこうせっか!」

 ヒカリがそう言い、ヒルビが頷くと、ヒカリが先に動き出した。

 「リーフブレード。」

 「アイアンテール!でんこうせっか!」

 ジュプトルの攻撃をヒカリは受け止めながらもジュプトルに近づき、ジュプトルは
 近づいてくるヒカリを攻撃するが、受け止められて離れるが、すぐに距離を
 つめられる。それを繰り返していると、ジュプトルが避けた先にヒルビがいた。

 「ヒルビ!今よ!」

 「ほのおのうず!」

 ヒカリの合図でヒルビは攻撃を放つが、ジュプトルはすぐにヒルビから離れ、ヒルビの
 攻撃を避けた。

 「残念だったな。」

 「それはどうかな?」

 「何?」

 「かえんほうしゃ!」

 ジュプトルの言葉にヒカリがそう言い、ジュプトルは疑問に思って周りを見渡した。
 それと同時にヒルビが技を足元に放つと、ジュプトルの周りを炎の壁が包んだ。

 「あのほのおのうずはこのためか!」

 ジュプトルは炎の壁を見て気がついた。あの時、ヒルビの放ったほのおのうずは攻撃の
 ためのものではなく、ジュプトルの動きを制限するためのものだったのだ。それに
 かえんほうしゃを加え、火力を上げて炎の壁ができたのだ。

 「エレキボール!」

 「リーフブレード!」

 ヒカリが攻撃を投げ入れると、ジュプトルはそれを真っ二つに切った。その動きで、
 ジュプトルの腕が見えると同時に、ヒカリは近くにあった水晶を踏み台にして飛び
 上がった。

 「10万ボルト!」

 「はどうだん!」

 「ぐわっ!?」

 ちょうどタイガが回復し、ヒカリの作戦に気づいて加わった。ヒカリの電撃に合わせ、
 近くにあった水晶を踏み台にしてヒカリとは反対の方向から攻撃を放った。ヒカリと
 タイガの攻撃が当たったらしく、ジュプトルの声が聞こえた。

 「僕が中で戦うから援護して!」

 「分かった!」

 タイガはそのまま壁の中に入り、ヒカリは着地してすぐにまた近くの水晶を踏み台に
 して飛び上がった。

 「ほうで......!?」

 ヒカリが電撃を放とうと体に電気を流した時、ヒカリの背中から攻撃を受け、水晶に
 体をぶつけた。

 (!?.......今のは....エナジーボールとみずのはどうに...かえんほうしゃ!?...
  ...でも、エメリは気絶しているし、ヒルビも攻撃していなかった........
  まさか.....。)

 ヒカリはダメージを受けながらも攻撃が飛んできた方向を見た。その方向の遠くに
 ポケモンの影が見えた。

 (!?......まさか、ジュプトルに仲間がいたなんて....!)

 ヒカリが心の中で動揺していると、何かが降ってきた。ヒカリがなんとかして顔を
 上げると、雨が降っていた。

 (雨!?......あまごいを誰かが........いや。誰かが雨玉を使った...!いけない!
  このままだと、炎の壁が......。)

 ヒカリが突然降った雨について考え、慌てて炎の壁の方を見た。炎の壁は雨でだんだん
 小さくなっていた。

 「ヒカリー!!何!?何が起きたの!?それにこの雨もいったい.........。」

 ヒルビが状況が分からず混乱していると、炎の壁から何かが飛んできて水晶に
 当たった。それはダメージを受けたタイガだった。前のダメージも残っていたらしく、
 タイガは気絶しているようだった。

 「タイガ!」

 「隙だらけだ。」

 「うわっ!?」

 ヒルビがタイガの方を向いていると、後ろからジュプトルが近づき、ヒルビが振り向く
 前に攻撃し、ヒルビは攻撃を受けて倒れた。

 「どうやら運は俺を味方にしたようだ。」

 「うぐぐっ.....。」

 ジュプトルがヒルビを倒し、アルサの方に向かおうとするが、ヒルビは立ち上がって
 ジュプトルの行く手を阻んだ。

 「そこを退くんだ!」

 「退くもんか!時の歯車は絶対に渡さない!」

 ジュプトルに何を言われてもヒルビはそこから動かなかった。

 (もう嫌なんだ!地底の湖のように時が止まるのを見たくないんだ!時が止まった地底の
  湖は見ててすごく悲しくて寂しかった!だから、もうあんなことにならないように
  頑張るんだ!勇気を、力を振り絞るんだ!)

 ヒルビが強くそう思った時、ヒルビのルビーのペンダントが光り始め、その光がヒルビ
 を包み込んだ。光が修まると、そこにいたのはリザードンがいた。さらに、リザードン
 の体が光り出した。再び光が体を包み込み、光が修まると、リザードンの姿が変わっ
 た。色は同じだったが、姿形は普通のリザードンとは違っていた。

 「何!?」

 「ブラストバーン!」

 「ぐわああああ!?」

 ヒルビの姿にジュプトルが驚いている間に、ヒルビは攻撃を放った。ジュプトルは咄嗟
 のことで避けられず直撃し、後ろに飛ばされ、その場に倒れた。

 「はあ...はあ......。や、やった......。」

 その安心感でヒルビの姿は元に戻り、ヒルビはジュプトルを倒したことに息切れし
 ながらも喜んだ。ヒカリもジュプトルが倒れたことにほっとしていたが、ジュプトルの
 手が何か持っていることに気づいた。

 「!.....ヒルビ....待って...ジュプト、ルが......ふっかつのたねを.....。」

 ヒカリがジュプトルが持っている物が何か気づき、ヒルビに途切れ途切れながらも教え
 ようとしたが、遅かった。ジュプトルは回復し、立ち上がっていた。ヒルビは表情に
 焦りが見えた。

 「体力は限界のようだ......。もう一度言う。そこを退くんだ!」

 「!!.........。(声が出ない...。でも.....絶対に退くもんか!)」

 ジュプトルに言われ、ヒルビは言おうとするが、ダメージや疲れで声が出なくなって
 いた。しかし、それでもヒルビは意思を強く持ち、そこから一歩も動かなかった。

 「退かぬというのか!ならば!仕方がない!」

 (いけない!このままだとヒルビがやられる!......で、でも、体が.......。)

 「.......。(ううっ...。)」

 ジュプトルがそう言ってヒルビに近づいているが、ヒカリもヒルビも体を動かせず、
 バッグも開けられなかった。

 「全ては時の歯車を取るためだ!許せ!」

 「.........!!(うわあああああああああ!!)」

 ジュプトルがヒルビに向かって腕を振り上げ、ヒルビは目を瞑り、心の中で叫んだ。

 「させないよ!」

 その時、ルーアがヒルビとジュプトルの間に現れた。

 「「!!(ルーア!!)」」

 「シャドーボール!」

 「くっ!」

 ルーアはジュプトルが驚いた隙に攻撃を放ち、ジュプトルは攻撃を避けるため、ルーア
 達から離れた。

 「!!....もしや、ルーアか!」

 「そうよ。」

 アルサがルーアに気づき、ルーアは頷いた。その時、ヒカリはジュプトルがルーアを
 凝視して驚愕の表情を浮かべていることに気がついた。ヒカリはジュプトルの様子を
 不思議に思ったが、ルーアとアルサのことが気になり、ルーアの方を見た。

 「時の歯車は無事ね?」

 「うん。僕の力で時の歯車を守っているから、時の歯車は無事だ。」

 「それなら、アルサを連れてここを出るのが良さそうだけど......"氷精の風"!」

 ルーアとアルサは時の歯車について話し、ルーアが周りを見渡した時、ヒカリに攻撃
 を放たれた方向に攻撃を放った。しかし、攻撃が当たる前に逃げたらしく、誰もいな
 かった。ルーアはそれに悔しそうな顔をし、ヒカリとヒルビはそれよりもアルサのこと
 をお願い、自分達は大丈夫だからと口パクで伝えた。

 「分かった。後で来るから。」

 ルーアはそれに驚いた後、すぐに頷いてそう言い、アルサを連れてテレポートした。

 「.......言われていたとはいえ.........やはり.....。」

 ルーアがいなくなり、ヒカリとヒルビがジュプトルの方を見ると、ジュプトルが何か
 小さな声でぶつぶつと呟いていた。ヒカリとヒルビはその様子を不思議に思いつつも
 警戒していた。

 「大丈夫ですか!?ヒルビさん!!ここは私に任せてください!」

 「!!(ディアノさん!!)」

 すると、ディアノの声が聞こえ、ヒルビの前にディアノが現れた。ヒルビはそれに驚き
 ながらも喜んだ。

 「シャドーパンチ!」

 「うおっ!!」

 ディアノの攻撃を受け、ジュプトルはディアノを見て驚いた。

 「き、貴様は!?」

 「久しぶりだな!探したぞ!ジェード!」

 「!?.........。(えっ?どういうこと、それは!?ディアノさんはジュプトルを
  知っているってこと!?)」

 ジュプトルとディアノの会話は会ったことがあるような口振りで、ヒカリとヒルビは
 驚いてジュプトルとディアノを交互に見た。

 「くっ!.....ここまで追ってきたというわけか...。随分と執念深いんだな。」

 「ジェード!もう逃がさんぞ!」

 ディアノはジュプトルを捕まえようとジュプトルに近づいて行った。

 「ディアノ......。貴様がこの世界に来たのは驚いたが....しかし!」

 「戦うのか。いいだろう。しかし、勝てるかな?この私に?それに.....あいつのことも
  気づいているのだろう?


 「!?ちっ!」

 (何?........誰のこと?)

 ジュプトルとディアノが互いに戦闘態勢になり、ディアノが小声で何か言い、それを
 聞いたジュプトルは舌打ちをした。ヒカリはディアノが小声で何を言ったのか聞こえ、
 どういうことだとディアノを見ていた。ディアノがジュプトルに攻撃しようとした
 瞬間、ジュプトルが不思議玉を投げ、次の瞬間、ジュプトルの姿はそこにはなかった。

 「!?(ジュプトルが消えた!?)」

 ヒルビはジュプトルがいなくなったことに驚き、ヒカリはなんとか顔を動かし、
 ジュプトルがどこか見渡した。

 「ジェードめ!始めから戦うつもりはなかったな!逃がすものか!」

 ディアノは悔しそうにそう言うと、影のような姿になって消えた。

 「!?............。.........。(ディ、ディアノさんも消えた!?何が何だか
  さっぱり分からないけど....。ぐっ...。動こうとしても、体が......。だめだ
  .....。意識が.......。)」

 (!?ヒルビが......。どうしよう.....。)

 ヒルビが意識が失って倒れ、ヒカリはどうしたらと考えていた。

 「あ!あそこですわー!」

 「ヘイ!みんな、早く!」

 「わわっ!倒れているでゲスよ!」

 「だ、大丈夫か!」

 「かなり傷ついているぞ!」

 「早くギルドに運んで手当てしましょう!」

 「よし!」

 (よ、よかった......。みんなが....来て、くれた.........。)

 ギルドのみんなの声が聞こえ、ヒカリが安心し、意識を手放した。






グラシデア ( 2021/03/28(日) 19:18 )