第4章 謎の探検家
37話 砂漠の謎
 「......そう。もうギルドにも情報がまわって来たのね...。それで、ギルドの方は
  ジュプトルの捕獲のために動いている、と.......。」

 建物や木の影で隠れて、ヒカリとルーアはテレパシーで会話していた。

 「....ギルドのみんなは違うと思う。」

 「...そうね。確かにギルドから漏れたんじゃない。ジュプトルのことで調べてみた
  んだけど、私達から漏れたとしたら少し矛盾があるの。」

 「矛盾?」

 ヒカリの言葉にルーアが頷いてそう言い、ヒカリが聞き返した。

 「他の時の歯車が盗まれた場所を調査してみたんだけど、三つの時の歯車を盗んだ時期
  と次の時の歯車がある場所に着くまでの距離が不自然なのよ。初めに時の歯車が
  盗まれたキザキの森から二番目の時の歯車がある場所まで距離が結構あるうえに、次
  の時の歯車の場所を知っているかのように動いている。時の歯車を盗んでから次の
  時の歯車の情報を得ているとしたら速すぎるし、確実に前々から情報を知ってから
  行動していると思う。それに、ジュプトルが来た時期と予測したジュプトルの速さ
  から考えるに、私達が帰った二日後、ジュプトルが来たんだと思う。距離から考え
  て最短距離で....たまたまなのかもしれないけど、時の歯車がある場所に全て最短
  距離で来ていることから明らかに、ジュプトルは時の歯車の在処を把握しているの
  ではと思っているの。」

 「なるほど......。でも、どうしてジュプトルは時の歯車の場所を知っているの
  かな?」

 ルーアが説明し、ヒカリが疑問に思ったことを聞いた。ルーアが息を呑んだ。

 「.....それはまだ分からないの。時の歯車の場所は見つけられないような場所らしい
  から普通は見つけることができない。稀に見つかることはあっても時の歯車のことを
  知っているから、近づこうとしない。最初の時の歯車が盗まれたときは、どこかの
  時の歯車を知らないポケモンか時の歯車だと分からず盗んだポケモンの仕業なのかと
  思っていた。時の歯車を盗んでも、時の歯車が盗まれた影響でその場所の時が止まる
  から、盗んだポケモンも盗んだ時には時を止められて動けなくなっていた。だから、
  時の歯車が盗まれたときはそこまで慌てていなかった。だが、時の歯車を盗んだ犯人
  はいなかったうえに、別の時の歯車が盗まれた。二つも盗まれたときは捜索を始め、
  ある疑念が生まれたの。今回のことで、それが確信されたの...。」

 「......ある疑念って何?」

 ルーアが言いづらそうに話し出し、ヒカリも聞きづらそうにした。ヒカリはルーアの話
 で気づいたのだが、嘘であってほしくて聞いた。

 「ジュプトルが時の歯車の在処をどうやって知ったのかということよ。一つだったら
  見つけたポケモンが言っていたのを聞いたのではないかと思ったんだけど、三つも
  盗まれたとなると、いくら何でもおかしい。それに、今回のきりのみずうみの時の
  歯車、カルサが守る時の歯車の場所を知っていた。カルサが記憶を消すから、きりの
  みずうみにたどり着いたとしても、私達ギルドみんな以外の記憶は消されたから、
  外部に漏れることはない。時の歯車の全ての場所を知っているのは、番人以外に
  アルセウス様の使いであるポケモンの一部だけが知っている。.....情報はそこから
  漏れたのではないかと思って現在調査中よ。」

 「誰かがジュプトルに情報を漏らしたということ?」

 「確証はないけど、その可能性が高いのよ。私とヒカリは時の歯車の場所を一つも
  知らなかったし、兄さんは今回の事件で初めて知ったから除外されたんだけど、
  ....姉さんは.........」

 ルーアの話を聞いて、ヒカリが聞き返すと、ルーアの声が震え出した。

 「ルーア?」

 「...姉さんは知っていたから、疑われているの。他にも知っているポケモンはいる
  から、そこまでの事になってないけど、色々あって手いっぱいになって、動くのが
  難しくなったの。それで、ジュプトルの捕獲を私達だけではなくて他のポケモン達
  にも情報がきているの。時の歯車を盗んだジュプトルを今の私達では捕まえるのは
  難しい。だから、探検隊や保安官に協力してもらうことにしたの。時の歯車が盗まれ
  たことは本当に深刻なことだから、このまま放っておくわけにもいかないからね。
  ヒカリはジュプトルの捕獲に集中して。私と兄さんはこの事件について調べて、
  姉さんの疑いを晴らして、真実を突き止めないといけないから。ヒカリ、ごめんね。
  しばらくの間、私はそっちには戻れない。ジュプトルの捕獲、頑張ってね。」

 「うん。ルーアも気をつけてね。ルイさんがそんなことしないって、私は信じている
  から。私もジュプトルを捕まえて、真実を吐かせるから。お互いに頑張ろうね。」

 ヒカリがルーアの名前を呼ぶと、ルーアは落ち着いたように話した。けど、ヒカリは
 ルーアが本当は泣きそうだということに気づいた。顔を見なくても、ヒカリには声だけ
 で分かった。ヒカリはルーアを元気づけるようにそう言い、ルーアはヒカリの優しさに
 気づき、ありがとうと言ってテレパシーを切った。




.........................




 「みんな、集まったようだな♪」

 ヒカリはルーアと連絡をとった後、ヒルビ達にルーアのことを話し、ジュプトルの捕獲
 の準備を済ました。リコラに準備が終えたこととルーアのことを報告した。ヒカリ達が
 最後だったらしく、ヒカリの報告を聞いた後、すぐに全員を集めた。

 「.....これは当たり前のことなのだが...ジュプトルは時の歯車がある場所に
  現れる。ただ、その時の歯車がどこにあるのか....私達には分からないのだ。そこ
  で、ディアノさんにも協力してもらって、時の歯車がありそうな場所の目星をいくつ
  かつけた。みんなはグループに分かれて、それぞれそこを調査してくれ。まず、
  コゴムとアズニは東の森を頼む。東の奥深くにある森だ。」

 「おう!」

 「頑張るぜ!ヘイヘイ!!」

 リコラが説明し始め、行動するグループの名前を呼んだ。最初に呼ばれたコゴムと
 アズニはやる気いっぱいに返事した。

 「次に、マックとプルトとアマラは水晶の洞窟をお願いしたい。」

 「はいでゲス!」

 「承知した!」

 「頑張って探しますわ!」

 次に呼ばれたマック達もやる気十分のようだ。

 「そして....ヒカリ、ヒルビ、タイガ、エメリ、サロファには北の砂漠を頼む。」

 「北の......砂漠?」

 リコラの指示を聞き、ヒルビが行き先を聞き返し、タイガは即座に不思議な地図を
 出し、サロファが北の方の雲が覆っている場所を指差し、この場所だと言った。

 「そうだ。ちょうどこの周辺から乾燥地帯が始まっていることから、きっとこの先は
  広大な砂漠が続いているのではないかと言われている。この砂漠の奥に
  もしかしたら.....時の歯車があるかもしれないので探してみてくれ。」

 「うん!分かったよ!」

 リコラは北の砂漠について説明し、ヒルビは大きな声で返事をした。ヒカリ達も頷いて
 いる。

 「あのー。....僕は......。」

 「ラチアはギルドでお留守番だ。見張り番までいなくなるのは、さすがにまずい
  からな。」

 「私やトリクもお留守番よ。ギルドでやる仕事も大切なのよ。一緒に頑張りましょ!」

 「は、はい!」

 ラチアがリコラに聞くと、リコラにそう言われ、ラチアは留守番することになった。
 ラチアが少し不満そうにしていると、ルリラが笑顔で言い、ラチアの不満もなくなって
 いった。

 「それではみんな!時の歯車を探すよ!たあーーーーーーーーーーー!!」

 「「「「「「「「「「「「「おおーーーーーーーーーー!!」」」」」」」」」」」」」

 モルガのかけ声に続いて、弟子達全員はそれに負けないくらいの大声を上げ、出発して
 いった。





........................




 「ここから先が北の砂漠か。」

 「もしここに時の歯車があれば、ジュプトルも必ずやってくるはずだよ。」

 ヒカリ達は北の砂漠の入口に着き、辺りを見渡した。周りは砂漠や岩が広がっている
 くらいで、それ以外の物はなかった。

 「それじゃあ、さっさと時の歯車を見つけるわよ!」

 エメリの声にヒカリ達は頷き、北の砂漠に入っていった。




.....................




 「でんこうせっか!」

 「ドラゴンクロー!」

 北の砂漠には地面タイプが多く、ヒカリとヒルビは相性が悪いため、主にサポートに
 まわっていた。

 「はどうだん!」

 「はっぱカッター!」

 「みずのはどう!」

 相性の良いタイガ達が中心となっているが、いつもより進むスピードが遅かった。
 ヒカリとヒルビが電気技と炎技を使えないのもあるが、ルーアがいないことも原因の
 一つだ。

 (......ルーアは何しているのかな...?)

 ヒカリはルーアのことを思いながら少し上を向いた後、前に進んだ。




....................




 一方.........


 「.....来ると思っていましたが、やはり来ましたか。」

 1匹のポケモン、カルサが何もないところを見てそう呟いた。すると、その場所が歪み
 始め、2匹のポケモンが現れた。

 「...久しぶりですね....。こんなに早く再会するなんて思わなかったよ....。」

 「今回の件について少し聞きたい。いいか?」

 現れたのはルーアとライドだった。ルーアは挨拶し、ライドは聞きたいことを聞いた。

 「.......まずはそちらから話してください...。」

 「.....ギルドは情報を漏らしてない。時の歯車を短時間で集めたのを考えて、あの
  ジュプトルは元から知っていたわ......。」

 カルサの言葉に、ルーアはカルサの思っていることに対する答えとその根拠を話した。

 「.........ということなの。こっちも調べているけど、カルサの方はあの
  ジュプトルに心当たりがある?」

 「.......残念ですが、初めて見た顔でした....。やはりルーアがヘマをするはずが
  ないと思っていましたが、他から漏れていましたか...。貴女のギルド以外は
  しっかりと記憶を消して、ちゃんと記憶が消えたか確認していました。ですから、
  情報は漏れなかったと思います。」

 ルーアが説明し終えて聞くと、カルサは少し考えてからそう答えた。ルーアはライドと
 顔を見合わせ、有力な情報はなさそうだと判断した。ルーアの考えに、ライドは無言で
 頷いた。

 「....そういえば、ヒカリはどうしましたか?」

 「ヒカリはジュプトルを追っているよ。...そうね。カルサ、ジュプトルの戦い方とか
  に何か特徴がなかった?ジュプトルと戦う時に役立つと思うの。」

 「そうですね.....。一撃でやられてしまったため、よく分かりませんでした。あの
  ジュプトルは本当に速かったです。」

 「......素早い動きで一撃で仕留める...という感じの戦い方なのかもね.....。
  教えてくれてありがとう。」

 カルサにヒカリのことを聞かれ、ルーアはヒカリの現状を話したと同時に、ジュプトル
 のことを聞いたらヒカリにも役に立つかもしれないと思い、カルサに聞いてみた。
 カルサはその質問に悩み、正直に話した。ルーアはカルサの話から分析し、簡単に
 まとめた結論を出して、カルサにお礼を言った。

 「それと、もう1つ聞きたいことがあるんだけど........」




...........................




 その頃......

 「ここが砂漠の一番奥なのかな....。」

 ヒカリ達が北の砂漠を抜けると、そこには流砂が発生していた。流砂はたくさん発生
 していて、大きなものもあれば小さなものもある。

 「わわっ!流砂だよ!」

 「砂漠の砂が所々吸い込まれている.....。」

 「この先に行けば、俺達も流砂に巻き込まれるな...。」

 「ここは危険そうね...。辺りを見渡しても時の歯車はなさそうよ。残念だけど、ここ
  には何もないということよね。」

 ヒルビ達は辺りを見渡し、時の歯車がないことを知って落胆していた。そんな中、
 ヒカリは流砂を見つめて、ぼーとしていた。

 (......この感覚は.......依然きりのみずうみで感じたものと...同じだ.....。
  私は....この場所を知っている!知っているだけなのか...それとも、実際ここに
  来たことがあるのか......それは分からないけど.....。とにかく、私はここを
  知っている....。)

 「ヒカリ、どうしたの?」

 ヒカリがそんなことを考えていると、ヒルビがヒカリの様子に気がついて声をかけた。
 ヒカリはヒルビ達に感じたことを伝えた。

 「ええ〜〜〜〜〜〜〜!?ここで、きりのみずうみと同じ感覚を感じるだって!?」

 ヒルビはヒカリの話に驚いていた。

 「......けど、ここにあるのは、広がるように続いている白い砂漠と流砂しかない
  よ。当たり前だけど。ここには、いったいどんな謎が隠されているというのかな。」

 タイガはそう呟くと、冷静に辺りを見渡した。エメリとサロファもだ。

 (.....すごく微かなものだけど、やっぱり感じる...。私はここを知っている....。
  でも、こうやって見渡すと、確かに砂漠と流砂以外何もないよね.....。流砂以外
  には......何も........!!)

 ヒカリも考え込みながら辺りを見渡していると、ふと気づいた。

 (......!流砂しかないっていうことは.....ここの突破口は........この場所で
  やれることというのは一つしかないじゃない!)

 「どうする?ヒカリ。どこを調べようか?」

 ヒルビが話しかけたことをきっかけに、ヒカリはヒルビ達に気づいたことを話した。

 「ええ〜〜!?なんだって!?流砂の中に飛び込むだってぇぇ〜〜〜〜〜〜!?」

 「本気なの?本気であそこに入っていくの?」

 「......確かに。ここでできることと言ったら、それしかないね....。」

 「.....ああ。」

 ヒカリの提案にヒルビは叫ぶくらい驚き、エメリはヒカリに何度も聞き、タイガと
 サロファは驚きながらも納得していた。

 「.........分かった。僕、ヒカリを信じるよ。僕がここまで頑張ってこれたのも
  ヒカリのおかげだから...。初めての探検の時だって、ヒカリを信じたから、ヒカリ
  がいてくれたから勇気を出して先に行けたんだ。その思いは今も変わらない。」

 「そうね。仲間なんだから、信じないとね。行くわよ!あの流砂の中へ!」

 ヒルビは覚悟を決めてそう言い、エメリはヒルビの言葉に頷き、タイガとサロファも
 頷いた。ヒカリ達は流砂の前に横一列で並んだ。

 「3つ数えたら行くよ!1....2....3!それ!!」

 「うわああああああああああ!!」

 ヒカリが3つ数えると、ヒカリ達は流砂に飛び込んだ。

 「ひゃっ!?」

 「「わっ!?」」

 「きゃっ!?」

 「おっ!?」

 ヒカリ達は流砂の中の空洞のようなところに落ちた。ヒカリとタイガとエメリと
 サロファは無事に着地したが、ヒルビは着地に失敗した。

 「いてて......。お尻打ったよ...。」

 「大丈夫?」

 お尻を擦るヒルビにヒカリが声をかけた。

 「こ、ここは!?」

 「.....洞窟なのかしら?」

 「俺達があそこから落ちてきたからな...。」

 タイガ達は辺りを見渡して状況を確認していた。

 「それじゃ、やっぱり流砂の中に秘密があったんだよ!行こう!この先へ!時の歯車を
  探しに!」

 ヒルビの声にヒカリ達は頷き、先に進んでいった。






グラシデア ( 2020/06/29(月) 00:53 )