第4章 謎の探検家
36話 時空の叫びと盗賊
 「お兄ちゃん!みずのフロートが返ってきたよ!うわーい!本当にありがとう!」

 「アイルを助けていただいたうえに、今度もまた.....本当になんてお礼を言って
  いいか......。本当に...本当にありがとうございました!」

 「いやいや。そんなあ。」

 みずのフロートが戻ってきて、アイルがとても喜び、アウルは目を潤ませながら
 お礼を言った。ヒルビは首を横に振りながらそう言った。ちなみに、このカクレオン
 のお店にはアウルとアイル、カミルとカムル、ディアノとタイガとヒカリがいた。
 タイガがディアノを見て気絶してしまったため、サロファがタイガをギルドに運び、
 エメリも疲れたらしく、タイガとサロファについて行ってギルドで休んでいる。
 それで、残ったヒカリとヒルビでみずのフロートをアウル達に返したということだ。

 「ディアノさんが飛び出して行った時は驚きましたが、皆さんが無事で良かった
  ですよ〜♪ディアノさんは流石だと思いますけど、ジュエルも素晴らしいと思い
  ますよ〜♪今回もしっかり依頼を成功させましたし......アイルちゃんを助けた
  時だって、すぐに場所を突き止めて、いち早く駆けつけましたし♪」

 カミルはみずのフロートのことを喜びながらディアノのことやジュエルのことも
 褒めていた。

 「ああ。アイルの時は、カミルの言うとおりだとカッコいいんだけどね。」

 「ちょっと違うんです。アイルの時は場所を突き止めたというよりは、偶然夢を見て、
  その夢でアイルの危機が分かったんです。」

 「ん?夢?夢ってどういうものですか?」

 カミルの話を聞いて、ヒルビとヒカリが訂正していると、ヒカリの夢という言葉に
 ディアノが聞き返した。

 「あっ!そっか。もしかして、ディアノさんなら分かるのかな?何かに触れた瞬間、
  眩暈に襲われて、過去や未来の出来事が見える....そういうものなんだけど...。」

 「!!そ.....そ....それは!!時空の叫びでは!」

 ヒルビが軽い気持ちでヒカリの能力のことを少し話すと、ディアノはその能力に関して
 何か知っている様子で、驚愕しながら時空の叫びと言った。

 「えっ!?なんだって!?ディアノさん、何か知っているの!?そうだ!それだったら!
  ねえ!あのことをディアノさんに聞いてみようよ!?」

 (あ、あのことって?......あっ!失われた私の過去のことね....。ルーア達でも
  分からなかったことを知ってるかどうか分からないけど、聞いてみる価値は
  ある......。)

 ディアノの言葉に、ヒルビが驚愕と興奮が混ざった様子でディアノに近づいて聞き、
 何かを思いついた様子でヒカリにも言った。ヒカリは驚愕で混乱していたが、すぐに
 何のことか分かり、どうするか考え込んだ。

 「ヒカリ。いいよね?」

 ヒルビの声にヒカリは頷いた。

 「ディアノさん。実は、相談したいことがあるんです............」




........................




 「........なるほど。ここに倒れていたわけですか。」

 「そう。ちょうどこの場所だよ。」

 アウル達と別れ、ヒカリとヒルビは浜辺に移動しながらヒカリが記憶喪失なこと、
 何故か浜辺に倒れていたことなどをディアノに話した。浜辺に着き、ディアノは砂浜を
 見て、何か考えているようだった。ヒルビはディアノの言葉に頷いて、ディアノの様子
 を見ていた。

 「それで、貴女はこの場所で気がつき....でも、それまでの記憶は亡くしてしまった
  と......。」

 「うん。その時、覚えていたのは自分の名前と、元々はポケモンではなく、人間だった
  ってことみたい。」

 「ええ〜〜!?に、人間!?」

 ディアノの確認にヒルビが頷き、ヒルビはヒカリが元は人間だったことを告げた。
 ヒルビの言葉にディアノが驚いた。当然の反応だ。ディアノはヒカリのことを見た。

 「......でも、どっからどう見ても、ポケモンの姿をしてますよ!?」

 「そうなんだよね...。うーん。さすがにディアノさんにも分からないかあ。でも、
  きっと何かの原因で記憶を失って、人間からポケモンになっちゃったんだと思うんだ
  よね.....。」

 ディアノが最もなことを言い、ヒルビは困ったような悩ましげな様子でそう言った。

 「..........。時空の叫びを持つ....人間......。」

 ディアノは何か思案している様子でそう呟いていた。

 「貴女は.....自分の名前は覚えているとおっしゃってましたよね?して....その
  名前は?.......。」

 「ヒカリです。」

 「!!....ヒカリ...さん.....。」

 ディアノの質問にヒカリが自身の名前を言うと、ディアノが息を呑んだ。ヒカリは
 ディアノの様子に疑問を覚えた。

 「どうお?何か分かったの?」

 「........いや。残念ながら....何も.....。」

 ヒルビの質問にディアノが答えた。その時、ディアノは一瞬不吉な笑みを浮かべて
 いた。何かに気づいて、思わず漏らしてしまったような、そんな奇妙な笑みだった。

 (...えっ?....今、かすかに.....ディアノが笑ったような.......。気のせい
  かな......?)

 ディアノの笑みに気づいたのは、ヒカリだけだった。ヒルビは気づいていない様子で、
 ヒカリはヒルビの様子を見て、それが本当なのか見間違いなのか分からなくなって
 いた。

 「お役に立てず申し訳ないです.....。でも...ヒカリさんの持つ能力については
  知っています。」

 「ええ〜〜〜!?なんなの!?それは!?」

 ヒカリの様子を気にせず、ディアノは申し訳なさそうにしながらそう言った。ヒカリの
 能力について知っていることに、ヒルビは驚きながら聞いた。

 「物に触れることで未来や過去が見える能力......それは、時空の叫びと呼ばれて
  いるものです。」

 「時空の.....叫び?」

 「はい。どのようなきっかけでそうなるかは分かりませんが、物やポケモンを通して
  時空を越えた映像が夢となって表れる.......そんな稀な能力があると聞いたことが
  あります。」

 ディアノが話し始め、ヒルビは時空の叫びについて聞き返した。ディアノは時空の叫び
 について説明した。

 「時空の叫び.....ヒカリにはそんな能力が.......。」

 「.........。」

 ヒルビの呟きに、ヒカリも同じことを思っていた。自身にそんな稀な能力があるなんて
 思っても見なかった。

 「うん!よろしい!これも何かのご縁です。ヒカリさんが何故ポケモンになってしまった
  のか...その謎を解くのに、私も協力しましょう!」

 「えっ!?本当に!?」

 「はい。まあ。正直申しますと、私に分からない物事があるのはくやしい!.....と
  いうのが本音なんですが!ハハハハハハハハ!」

 ディアノが思いついた様子で言い、ヒルビはその話に嬉しそうな様子だった。

 「やった!ディアノさんが協力してくれるなら、すごく心強いよね!よかったね!
  ヒカリ!.........ん?あっ!ペリッパーだ!」

 ヒルビが喜んでいると、ヒカリ達の上をペリッパーが通った。ヒカリ達が空を見上げる
 と、たくさんのペリッパー達が飛び回っていた。

 「......いつもより....やけにたくさん飛んでいるよね...。」

 「そうね.....。」

 「何かあったんでしょうか?」

 「お〜〜〜〜〜〜〜〜い!」

 ヒカリ達がたくさんのペリッパー達を見て不安に感じていると、マックが大きな声で
 ヒカリ達を呼び、走ってきた。

 「あっ、マック!」

 「ここにいたんでゲスね......。はあはあ...。」

 ヒカリ達を探しまわっていたらしく、マックは息を切らしていた。

 「どうしました?そんなに息を切らすなんて、何かあったのですか?」

 「召集がかかっているのでゲス!弟子達全員、すぐにギルドへ集まるようにと!」

 ヒカリがマックに聞くと、マックは慌てた様子でそう言った。ヒカリ達はその話を
 聞いて、互いに顔を見合わせた。

 「やっぱり何かあったんだ!」

 「私も行きましょう!」

 「急ぐでゲス!みんなー!速く来るでゲスよ〜!」

 ヒカリ達がギルドに向かおうとすると、ディアノがヒカリ達について行くと言い、
 ヒカリ達はディアノを連れて急いでギルドに向かった。




....................




 「はあはあ.....。」

 息を切らしてギルドの一階に来ると、掲示板の前に全員集まって騒いでいた。サロファ
 や休んでいるはずのエメリとタイガも集まっていた。

 「あ!もうみんな集まっているでゲス!」

 マックの声で全員がヒカリ達に気がついた。

 「ヒカリ!ヒルビ!大変なことになって.......あ!」

 「.....?タイガ?どうしたの?」

 タイガがヒカリ達に近づいて何か伝えようとした時、タイガが何かに気づいて
 固まった。ヒカリが首を傾げていると、タイガの後ろをついてきたサロファがため息を
 吐いて、ヒカリの隣を指さした。ヒカリが隣を見ると、ディアノがいて、ディアノが
 隣にいたことを思い出し、タイガが固まった理由が分かった。

 「頼むから馴れてくれ...。」

 サロファのため息混じりでタイガにそう呟き、ヒカリは苦笑いした。

 「みんな、おまたせ!集合って聞いてとんできたんだけど、一体何があったの?」

 ヒルビはタイガのことをヒカリとサロファに任せ、他の皆に聞いた。

 「時の歯車が........また盗まれたのだ。」

 「「「ええ〜〜〜〜!?」」」

 リコラが言いにくそうにそう言い、ヒカリ達は驚いた。

 「またでゲスか〜〜〜!?」

 「今度はどこの?どこの時の歯車が盗まれたの?」

 「そ、それが......。」

 ヒルビの質問に、リコラがさらに言いにくそうな様子になった。

 「ん?どうしたんでゲスか?なんか言いにくいことなんでゲスか?」

 マックの質問に、周りも言いにくそうな様子になった。

 「それって、まさか....きりのみずうみのですか?」

 ヒカリは周りの様子で気づき、信じたくない、聞きたくないことを聞いた。周りは暗い
 顔をしていた。

 「.....そうだ。そのまさかだ。」

 「今回盗まれたのは、きりのみずうみの...時の歯車よ。」

 「「ええ〜〜〜〜〜〜!?」」

 周りが話したがらなかったため、サロファとエメリが代表で言い、ヒルビとマックが
 驚いた。

 「ど、どうして!?きりのみずうみの時の歯車のことは、私達で秘密にしたはず...」

 (それに、ルーアがこんなミスをするわけない....。まさか!ルーアが呼ばれたの
  って.......。)

 ヒカリが真っ青になりながら言い、途中で動揺しすぎて無意識に言っていることに
 気づき、口を塞いで、心の中で呟いて考えていた。

 「それなのに、どうして!?まさか......ギルドの誰かが?....いたっ!?」

 「同じギルドの仲間を疑うな。」

 「信用しなさいよ。」

 ヒルビの言葉を聞いて、サロファがヒルビの頭を殴り、サロファとエメリでヒルビを
 叱った。周りのみんなも少し怒っているようだ。

 「ううっ.....ごめん。そうだよね。この中の誰かが秘密を喋っちゃうなんて
  あり得ないもんね。よく考えてみたら分かることなのに...。ごめんね。」

 「まあ。でも、そう思うのも仕方ないですわ。私達が遠征に行った直後に、こうなった
  わけですし。」

 サロファとエメリに叱られて冷静になり、ヒルビはみんなに謝った。みんなは仕方が
 ないことだとヒルビを許した。

 「ちょ、ちょっと待ってください!私、よく分からないですが....。きりのみずうみ
  に時の歯車があるなんて.......私、初めて聞きました。そもそも、今回のギルド
  の遠征は、きりのみずうみへの遠征は失敗したんじゃなかったのですか?」

 話について来れなかったディアノが全員に聞いた。約束で言わなかったからね.....。

 「ごめんね。ディアノさん。実はある約束があって、ディアノさんには言えなかった
  んだよ......。」

 モルガはディアノに申し訳なさそうに謝った。

 「兎も角、きりのみずうみに来た侵入者はカルサを倒し、時の歯車を盗んでいった。」

 「カ、カルサは!?カルサは大丈夫なの!?」

 「大丈夫。無事だ。」

 「今はジンバー達に保護されているよ。心配しないで。」

 リコラがカルサの話をし、ヒルビはカルサのことを聞いた。リコラとモルガの話を
 聞き、ヒカリはほっとした。隣でヒルビも無事でよかったと言っている。

 「それに、カルサの証言から......その侵入者の詳細が分かった。」

 「ええ〜〜!?ど、どんな奴なんでゲスか〜!?」

 「既におたずねものとしてポスターに貼り出されている。おたずねものポスターを見る
  のだ。」

 リコラの話に、マックもヒカリ達も驚いた。リコラに言われ、おたずねものポスターが
 貼られている掲示板を見た。そこに載っているポケモンは、ジュプトルだった。

 「ジュ、ジュプトル....っていうポケモンなのか...。」

 「ううっ.....見るからに凶悪そうな顔でゲスねえ。」

 ヒルビとマックが敵を見るような目でポスターを見て言っているが、ヒカリだけは
 違った。

 (違う。悪いポケモンじゃない。........あれ?なんで、私、そう思ったんだろう
  .....。時の歯車を盗んだんだよ...。それなのに....どうして......?)

 ヒカリは心の中で困惑していた。

 「このおたずねものポスターは、カルサの証言から先程一斉に指名手配された
  ものだ。」

 「なるほどー。ペリッパーがたくさん飛んでいたのは、それを伝えるためだったんで
  ゲスね。」

 「ジンバー達も、これ以上放っておくことはできないらしい。今度のジュプトルには、
  多額の報償金をかけたようだ。」

 ヒカリが困惑しているなか、話は進んでいた。リコラの話に、マックもヒルビも先程の
 ペリッパーの様子に納得していた。

 「......僕達はカルサと....きりのみずうみの秘密を守ると約束したんだ.....。
  それなのに...。こんなことになるなんて.......。」

 「わたくし達が秘密を漏らしてないにせよ.....。カルサには顔向けできないです
  わね....。」

 「ヘイ!あんな綺麗な景色が壊されるなんて、絶対許せねえよ!ヘイヘイ!」

 ヒルビは暗い顔をし、他のみんなも暗い顔をしていた。

 「うう......。」

 「あっ!親方様...。」

 すると、モルガが声を上げ、全員がモルガの方を向いた。

 「うう....うううう.......。うううううう.....。」

 「お、親方様!」

 モルガのただならぬ様子と揺れる地面に、全員が慌て始めた。

 「ううううううううううううう...たあーーーーーーーーーーーーーー!!」

 「うわーーーーーーーーー!」

 「ひえええええぇぇ.....。」

 突然大きな声を出したモルガに、全員が驚いた。

 「みんな!ジュプトルを捕まえるよ!プクリンのギルドの名にかけて、
  絶対捕まえるよ!!リコラ!!」

 「は、はい!!みんな!今から全ての仕事をジュプトル捕獲にシフトする!ジュプトルを
  捕まえるために全力を尽くしてくれ!!」

 モルガは全員の顔を見て、張り上げた声でそう言ってリコラを呼び、リコラはモルガの
 様子に驚きながら指示した。

 「い、言われなくても!!」

 「これ以上盗まれるわけにはいかねえぜ!ヘイヘイ!」

 「みんなで協力しましょう!カルサのためにも!」

 モルガとリコラの声に、弟子達全員が気合いをいれた。

 「モルガさん。大体の事情は分かりました。ジュプトルの捕獲.....私もお手伝い
  しましょう!」

 「あ、ありがとう!ディアノさん!」

 ディアノもギルドの全員の様子を見て、事情を把握して協力すると言い、モルガは
 お礼を言った。

 「わあ!ディアノさんがついているのは心強いでゲス!」

 「よろしくです!ヘイヘイ!」

 「こちらこそよろしくお願いします!」

 弟子達全員もディアノの協力は賛成だった。

 「では、これから私と親方様とディアノさんで、ジュプトルを捜す段取りを決める。
  みんなはその間に探索の準備を整えてくれ。各自、準備ができたらまたここに
  集まってくれ。では、みんな!」

 「「「「「「「「「「「「「おおーーーーーーーーーー!!」」」」」」」」」」」」」

 リコラの声で全員が掛け声を上げて動き出した。ヒカリもそれで状況に気づき、慌てて
 動いた。
 まずは、ルーアに連絡しないと........。






グラシデア ( 2020/06/22(月) 00:07 )