35話 レントラー達とエメリの覚悟
「ほうでん。」
先に仕掛けたのは、ヒカリだった。ヒカリは電撃を複数の方向に飛ばし、レントラーと
ルクシオ達の距離を離した。
「つるのムチ。」
レントラーが離されたことに気づき、すぐにルクシオ達と合流しようとしたが、その前
に、エメリがつるのムチをレントラーに向けて放ち、レントラーは後退した。
「"氷精の風"」
「もう一回、ほうでん。」
レントラーが近づけないことが分かり、ルクシオ達が近づこうとするところを、ルーア
とヒカリが邪魔し、さらにルクシオ達の距離を離した。何体か避けたが、2、3体はその
攻撃が当たり、倒れた。
「つばめがえし。」
「はどうだん。」
「かえんほうしゃ。」
残った一体ずつに分かれたルクシオ達をサロファやヒルビやタイガが順々に倒して
いく。すぐに勝敗が決まったと思ったが、倒れる直前にあげた雄叫びで、ルクシオ達が
次々と集まってきた。倒しても次から次へと増えていくので、勝敗はなかなか決し
なかった。
「.....きりがない。」
「これは長期戦になるな...。」
「幸い、ピーピーマックスを多めに持ってきているから、技を使い続けても大丈夫だと
思う。」
「けど、エメリの援護は難しいよ。」
次々と集まってくるルクシオ達の様子を見て、ヒカリ達がそう話し合っていた。
「エメリ。大丈夫かな....。」
ヒルビは少し不安そうな様子でエメリが戦っている方を見た。
......................
「はっぱカッター。」
「甘い!かみなりのキバ。」
エメリが技を放つが、レントラーはその攻撃を全て避け、エメリに攻撃を放った。
エメリはそれに横に動いて避け、ヒカリ達の様子を見た。ヒカリ達は次々に襲いかかっ
てくるルクシオ達と戦っている最中のようだ。
(ヒカリ達はルクシオ達で精いっぱいだわ...。ヒカリ達の援護は諦めて、あたしだけ
でレントラーを倒さないとね......。)
エメリがそう思って余所見していると、その隙にレントラーが近づいてきた。エメリは
直前に気がついて避けたが、わずかに頭の葉をかすった。
「...!はっぱカッター。」
エメリはレントラーに集中して攻撃するが、レントラーはエメリの攻撃を避けては
近づき、エメリは避けてつるのムチで攻撃するが、レントラーはこれも避ける。エメリ
もレントラーもこれを繰り返していた。
(.....もう!素早いわね!攻撃が全然当たらないわ!体力が互いに続けるつもり!....
早く終わらせて........!?)
エメリが心の中で悪態をついていると、何かが体に当たって驚いて見ると、それは岩
だった。それを見て、エメリは誘導されたことに気づいた。周りを見ると、岩に囲まれ
ていた。
(しまった!......ここなら逃げ場はないと思ったのね...。それなら........。)
エメリがそう思っていると、レントラーが突進してきた。エメリはそれを見て身構え、
当たる直前に後ろに跳び、後ろの岩壁を蹴った。エメリの体は宙に浮き、レントラーの
真上まで飛んだ。
「つるのムチ。」
エメリは飛んだ際に、レントラーの背中につるのムチで叩き込んだ。
(ふふん♪どうよ!あたしだって.........!?)
エメリが得意気になっていると、突然レントラーの尻尾が背中に当たり、エメリは元の
場所に弾き飛ばされ、岩壁に激突し、地面に落ちた。
(...ちょっと!....何よ!あたしにはそんな長い尻尾ないわよ!ずるいわ!)
エメリは立ち上がりながら心の中でメチャクチャな悪態をついていた。
(.....まあ。こんなことを考えても、何かが変わるわけでもないし...あたしが怠っ
ていたことだというだけ......。思えば、家出する前もこんな感じだったわ....。
ギルドの親方の娘って言われて、ギルドのメンバーに期待され、お世辞だとしても
誉められては天狗になって、失敗したら他人のせいにして、あたしは悪くないと
言う。おかげで、あたしの周りにはあたしに媚びを売るのしかいなかった。.......
今思うと、あの時のあたしは最低だったわ.....。そして、親と喧嘩して、あたしに
媚びを売っていた一匹があたしの陰口を話していたのを聞いた時、あたしは家出する
ことにした...。それからは、色々なところに行ったわ.....。家を出る時、ポケを
いっぱい持ってきていたから、生活に困ることはなかった。道も安全な方を通り、
宛もなくぶらぶら旅をして、トレジャータウンにたどり着いた。.....あの時は、旅
の疲れと空腹でいらいらしていた。突然ぶつかったポケモンに、不機嫌だったあたし
は強くあたった。すると、そのポケモンもあたしの態度に腹をたてたらしく、あたし
の言葉に反論してきた。あたしはそれが衝撃だった。ギルドの親方の娘のあたしに
反論したら、親に言いつけられるんじゃないかと思い、皆あたしの言葉を肯定し、
あたしのことを嫌っているのはあたしに関わらなかった。だから、あたしに親以外に
あんな態度をとったのは...ヒルビが初めてだった....。あたしはヒルビの行動に
ひどく混乱し、さらに強くあたった。そこからあたしとヒルビの喧嘩が始まり、
タイガに落ち着くように言われ、浜辺について行った。タイガに止められたことも
親以外に初めてだったから、また混乱してヒルビにあたり、喧嘩はヒートアップして
いた。そうしていると、突然あたしの頭に強い衝撃が走った。浜辺にいたサロファに
頭を殴られた。殴られたことは親にもなく、サロファに殴られたことはその日の中で
一番の衝撃だったわ.....。その衝撃で、あたしもヒルビも落ち着くことが出来た。
あたし達は落ち着いて話し合うことができ、ヒルビとタイガから探検隊になるため
にギルドに弟子入りすることを聞いた。ギルドの話を聞くと、あたしの身体が緊張
したことを感じたが、あたしは弟子入りしたいと思った。探検隊になりたいという
より、今まで会ったポケモンと違うヒルビと一緒に、親のギルドと違うギルドに
入れば何か変わるかもしれないと思った。あたしもサロファもギルドに弟子入りする
ことにし、ヒルビ達と一緒にいるようになった。あたしにとって、初めての友達
だった...。)
エメリはヒルビ達に出会う前のことを思い出し、その時の自身に呆れたと思った。
ヒルビ達との出会いの時のことも思い浮かべ、エメリは足に力を籠めた。
(ヒルビ達と過ごす日々で、あたしは本当の友達との接し方を知った。あたしと普通に
対等に話し、互いに注意し合い、いざという時は止める.....これが本当の友達
だった....。ヒルビ達と出会う前のあたしは、あたしの言うことをなんでも聞き、
あたしの言うことを全て肯定し、あたしを敬うのが友達だと思った。......
まったく、あの時のあたしは、自身は偉いと疑わなかったわ。偉いのはあたし
じゃなくてあたしの親。あたしの周りは、ギルドの親方の娘としかあたしを見て
いなかったと....ヒルビ達に出会って、やっと気づいたわ。)
エメリはヒルビ達のことを振り返りながらバッグからオレンのみを出して、それを
食べた。エメリの身体に力が籠った。
(ヒカリとも出会って、ギルドに入って、依頼を受けて、ルーアにも出会って.......
あたしがわがままなのも、どれだけ無知だったかも、威勢がよかっただけなのも
分かった。違う。ヒルビ達と出会った.....いや、それよりもずっと前に心のどこか
で気づいていた。けど、あたしは、それを意地で認めなかった。......このことに
気づいてから、あたしは確かに少し変わったけど、ヒカリとルーアのような強さも
賢さも優しさもない。...まあ。ヒカリとルーアが単に強すぎなんだと思うけど....
それに、あたしの母さんが来たとき、あたしの母さんは、あたしの変化にすぐに
気づいた。あたしはこのギルドにいたいと言い、母さんに今までのことを謝罪する
と、母さんはあたしに驚いていたが、微笑んで優しい声で言ってくれた。『エメリは
もうエメリの道を見つけられたから、それでいいの。エメリはちょっと遅かった
だけ。エメリが他と違っても、エメリにはエメリなりの強さと優しさがあるし、この
先も学ぶことができる。やり方が少し間違っても、エメリが気づいてくれたことが
嬉しい。これからは、エメリらしくやりなさい。』と言ってくれた.....。)
ヒカリとルーアのことを、ギルドでのことを、そして、一昨日母が言ってくれたことを
思い浮かべ、エメリは真っ直ぐレントラーを見据えた。
(あたしが昔やったことはアウル達にこんなことをした奴と似たようなことだった
けど、今のあたしには許せないことよ!今のあたしはあたしなりに戦える!あたしの
やり方であたしらしく絶対勝ってみせるわ!)
エメリは心の中で気合いをいれて叫びながらレントラーに向かってかけ出した。
レントラーはエメリが動いたと同時に、エメリに突進した。
(......きたわね...。)
「つるのムチ。」
レントラーがエメリを突き飛ばすかと思ったが、エメリは直前でつるのムチを横の岩に
巻きつけ、自身の体を岩に寄せて避けた。エメリは横の岩壁に足をつけた後、つるの
ムチを岩から離し、岩壁を蹴った。レントラーの真上に来たところで再びレントラーの
背中につるのムチを叩き込んだ。すると、レントラーはまた尻尾を使い、エメリを叩き
落とそうとした。しかし、エメリはレントラーの行動に驚きも焦りもせず、笑みを
浮かべていた。
「....あんたと違って、あたしには長い尻尾はないけど、頭に大きな葉があるわ!
はっぱカッター!」
エメリはそう高らかに言い、レントラーに技を放った。尻尾で叩き落とそうとエメリに
近づいたレントラーに無数の葉が襲った。レントラーは無数の葉の攻撃で視界が狭く
なり、ダメージもかなり受けたため、レントラーはエメリの攻撃を中断した。エメリは
無事に着地を成功し、レントラーの後ろをとった。
(ふふん。あんな自棄になった行動、するわけないでしょ。同じ行動をしても無駄に
なるんだから、その裏をかくに決まっているじゃない。)
エメリは心の中で得意気になりながらもつるのムチを使って警戒していた。
「......ハッハッハッ!私の技に反撃するとは、なかなかだ。だが....これは
どうだ?ほうでん!」
レントラーは笑いながらそう言って電撃を放つが、エメリは顔色を変えず、むしろ笑み
を浮かべながらつるのムチを地面に刺した。そして、電撃を浴びるが、レントラーの
電撃はつるのムチを通して地面に流れていた。エメリはダメージを受けていない様子
だった。
「何!?」
「あたしには効かないわ。ヒカリやルーアのようなことはできないけど、あたしだけで
も勝てる!あたしのやり方で、あんたに絶対勝つわ!」
エメリの様子にレントラーが驚き、エメリはその様子を見て鼻で笑い、レントラーに
そう宣言した。すると、エメリのエメラルドのペンダントが光り出し、その光がエメリ
の体を包み込んだ。エメリを包み込んだ光がさらに見ることができないくらい光り
輝いた。光が修まると、そこにはチコリータの姿はなく、その最終進化形メガニウムの
姿があった。
「はなびらのまい。」
その言葉が聞こえた瞬間、レントラーの体を無数の花びらが襲いかかった。
「ぐわっ!?....くっ!貴様......!」
「悪いけど、いつまでもあんたの相手をしている暇はないわ!何故だか知らないけど、
今のあたしは体中から力が沸き上がってくるわ!ハードプラント!!」
レントラーはその攻撃を諸に受けたらしく、体中傷だらけの状態で息を激しくしながら
叫ぶように言い、メガニウム...エメリはそう言いながら体中の力を一点に集め、それ
を放った。
「ぐおおおおおおおぉぉぉぉ!」
レントラーはエメリの攻撃が直撃し、レントラーは倒れた。
「.....はあ。やったわ...。」
エメリが大きく息を吐いてそう呟くと、エメリの体が再び光り、光が修まると、
チコリータの姿に戻っていた。
「エメリ!」
後ろから声が聞こえ、エメリは後ろを振り向いた。ヒカリ達がルクシオ達を全員倒し、
エメリの方に向かっていた。ヒカリ達の後ろで倒れているルクシオ達の数を見て、
エメリは思わず笑みを浮かべ、流石だわと心の中で呟いていた。
「エメリ、大丈夫?」
「ええ。大丈夫よ。」
「念のために、オレンのみを渡しておくね。」
ヒカリがエメリのことを心配し、エメリはそう答えた。ルーアも少し心配した様子で、
エメリにオレンのみを渡した。
「本当に大丈夫?」
「もう!うるさいわね!大丈夫だって言ってるでしょう!」
「いたっ!?」
ヒルビにも心配され、エメリはヒルビにまで言われたことで怒鳴るように言い、ヒルビ
の頭をつるのムチで叩いた。ヒルビはその痛さに声を上げ、ヒカリとルーアはその様子
を見て、苦笑いしていた。
「.....さっきのエメリの姿、ヒカリの時と似ていた...。」
「うん...。波動があの時と同じだった。ヒカリの時と同じだと思う....。」
一方、サロファとタイガは、少し前に起きたエメリの進化したような変化について
話していた。エメリに起きたことは、遠征の時に起きたヒカリのことと同じようなもの
だったと話し合い、サロファとタイガは、一体何が起きて、ヒカリとエメリのような
ことがあったのかと悩んでいた。
「おのれぇぇぇぇ!よくも!」
声が聞こえ、ヒカリ達は声が聞こえた方を向いた。そこには、傷だらけの状態で足が
震えながらも立っているレントラーの姿があった。レントラーは体毛が電気を帯び、
今にも電撃を放とうとしていた。
「ちょ、ちょっと待ってよ!僕達、ここを荒らしにきたんじゃなくて......」
「うるさい!これでもくらえーーーーーー!!」
「仕方ありませんね...。」
ヒルビが慌てて弁解しようとするが、レントラーは聞く耳を持たず、溜めていた電撃を
放とうとした。その時、ルーアが一言呟き、1つの玉をレントラーに向けて投げた。
すると、玉が光り出し、辺りから花の匂いがしてきた。レントラーは攻撃を止め、少し
落ち着いた様子になった。
「落ち着きましたか?私達はここを荒らしにきたわけではありません。貴方達の後ろに
あるみずのフロートを取りに来ただけです。ここで貴方達が受けた仕打ちのことを
考えて、無断でここに入ってきた私達に対して攻撃的になるのは分かります。貴方達
にとって安らぎを与えているこの場所に土足で入ってきたことは謝罪します。私達は
みずのフロートを取り次第、すぐにこの場から去ります。」
「.....私達のことをよく知っているようだな....。確かに、私達の後ろにみずの
フロートらしきものがある...。本当に......脅かしにきたわけではないのだな。
.......よかろう。信じてやろう。しばらく時間をやる。その間に、ここから立ち
去るのだ。...いくぞ。」
ルーアの話を聞き、レントラーは落ち着いた様子で辺りを見渡し、後ろのみずの
フロートを見た後に冷静に考え、ルーア達を信じることにし、ルクシオ達を連れて
去っていった。
「ふう〜〜〜〜〜!」
「ルーア。みずのフロートってこれで合っている?」
「うん。間違いない。これがそうだよ。」
レントラー達がいなくなり、ヒルビは緊張が抜けたのか地面に座り込んだ。ヒカリは
すぐにみずのフロートを取りに行ってルーアに確認してもらい、ルーアはみずの
フロートを隅々まで見た後、間違いないと言って頷いた。
「いつまで座っているんだ。行くぞ。」
「ちょ、ちょっと待って!」
ずっと地面に座っているヒルビに、サロファがそう言って進むと、ヒルビは慌てて立ち
上がって、サロファの後を追いかけた。ヒカリ達もその後ろから歩き出し、エレキ平原
の奥地から出た。
「ねえ、ルーア。さっき投げたあの玉は何?」
歩いていると、ヒルビがルーアに質問してきた。
「あの玉は私が作ったの。気持ちが落ち着くように、リラックス効果のある花の香りを
詰めて、発動した時にその香りが半径10メートルほどの距離に広がるようにしたの。
ああいう時には効果があるから、用意して持っているの。」
「ルーアは昔から自作の道具を作っては色々な場面で使っているんだよね。」
ルーアがバッグから1つ玉を出して、その玉を見せながら説明した。説明し終えると、
玉をバッグに戻した。ヒカリはルーアの様子を見て、懐かしそうに頷いていた。
「僕からもいい?ルーアはレントラー達のことを知っていたの?」
「レントラー達は雷が多いところが過ごしやすいらしく、そういった地域を求めて、
絶えず移動して生活しているの。この時期のエレキ平原は雷が多いので、レントラー
達は、必ずこの時期にエレキ平原で暮らしているの。戦っている最中に思い出したん
だけど、以前、レントラー達はここで何者かにいきなり襲われ、その時に大分傷を
負ったみたい。それ以来、レントラー達はここに来る者達に対して、ものすごく敏感
になったみたい。だからこそ、それを狙ったんじゃない?ここに入ったら、
レントラー達が襲ってくる。やられる前にやると掟となっているレントラー達なら
尚更ね。」
「なるほど、そういうことね。レントラー達が私達の話を聞かず戦うことになると
知っていて、そうなるように仕向けておいたのね...。でも、私達はレントラー達に
勝って、お互いに話し合えた.......計画は丸潰れになったから、もう私達の様子
を見なくていいじゃないですか?それとも、どこかで不意打ちを狙っていますか?」
タイガの質問に、ルーアは答えながら辺りを見渡し、ヒカリ達とその他にも聞かせる
ように聞いた。ヒカリはルーアの意図に気づき、納得した様子を見せた後、ルーアと
同じように辺りを見渡し、そう呼びかけた。しばらく辺りを見渡し、ある1つの岩を
見ると、それに視線を止めて見つめた。
「いい加減姿を現したらどうですか?」
「はどうだん。」
「みずのはどう。」
ヒカリの言葉と同時に、タイガとサロファもルーアとヒカリの意図に気づいて、その
岩の後ろに攻撃を放った。すると、見覚えのある3匹の姿が現れた。
「......ククククッ。分かっていたのか。じゃあ。しょうがねえな。」
「ケッ!」
「へへっ!」
ルブンクが笑みを浮かべてそう言い、クンスとツァイトも笑みを浮かべていた。
「ああ〜〜!?お、お前達は!?」
「あんた達!またなの!」
現れたルブンク達の姿を見て、ヒルビが驚き、エメリは怒りを顕にした。
「ケッ。お前達がレントラー達にズタボロにされた後を狙って、さらに、俺達が痛め
つけてやろうと思ってたんだが......。」
「へへっ。計算違いだぜ!まさか、あのレントラー達と和解するなんてなあ。」
「お前達だったのか。こんなことをしたのは!?」
クンスとツァイトの話を聞き、ヒルビもやっと気づいてルブンク達に向かって
怒鳴った。
「ククククッ。仕方がない。ここでやるしかねえな。」
「ケッ。」
「へへっ。」
ルブンクの言葉に、クンスとツァイトもやる気を見せた。
「......それは、こちらのセリフです。」
「貴方達より、私達の方が怒ってるんですよ。」
しかし、ルブンク達より先に、ヒカリがルブンク達の後ろを取り、ルーアがルブンク達
の前に出た。
「ほうでん!」
「"氷精の風"」
「しんくうは!」
「みずのはどう!」
ヒカリとルーアは間髪を入れずに攻撃を放ち、同時に、ヒカリとルーアの行動を見て
察したタイガとサロファも攻撃を放った。ルブンク達は対応できず、諸にそれを
くらった。
「エナジーボール!」
「か、かえんほうしゃ!」
ヒカリ達の様子を見てから一拍遅れて、エメリが怒りで、ヒルビが慌てて攻撃を
放った。連続で来るとは思わなかったルブンク達にまたその攻撃が直撃した。
「しばらくは、頭をしっかりと冷やしておいた方がいいですよ。.......それでは。」
攻撃が当たったのを見て、ルーアは今度は別の玉を出した。すかさず、ルーアは
ルブンク達にその玉を投げ、玉が地面に当たると、光が出てきて、その光がルブンク達
を包み込み、光が修まると、ルブンク達の姿が消えていた。
「...さて、いなくなったようだから、早く戻ってアウル達に渡さないとね。」
「またさっき何投げたの?あれも自作?」
「あれは自作っていうより改造かな?ルーアがワープ玉を特定の場所に移動できる
ように改造した物よ。色々なところに行けるように大量にあるけど、ルーア。どこに
飛ばしたの?」
「氷山よ。あそこにいれば頭も冷えるし、なかなか戻って来れないからね。」
ルブンク達の姿が消え、ルーアが戻ろうと歩き出してヒルビが声をかけた。ヒルビの
質問にヒカリが代わりに答え、ルーアにどこに飛ばしたか聞いた。ルーアは淡々と
答えて歩き続けていた。
「罰は今くらっているし、まあいいか。そろそろ戻って、アウル達に......!ルーア、
どうした?」
タイガがそう言っていると、ルーアが突然止まった。タイガ達は驚きながらもルーアに
声をかけたが、ルーアは反応せず、何か呟いていた。
「.....はい。分かりました。今すぐそこに行きます!....ごめんね。アルセウス様
からちょっと呼び出しがあったの。」
「アルセウス様からっていうことは何か起きたの?」
「分からない。兄さん達と合流するように言われたから、その時に知らせると思う。
ヒカリは探検隊をそのまま続けていて。後で連絡を取り合って、もしかしたら、
ヒカリも動くことになるかもしれないから、いつでも出れるようにしてね。」
「うん。分かった。アルセウス様によろしくね。それと、気をつけてね、ルーア。」
ルーアは返事をすると、ヒカリ達の方を向いてそう言い、ヒカリはそれを聞いて、真剣
そうな顔で聞いた。ルーアは顔を曇らせた状態でヒカリに話し、ヒカリは頷いてルーア
を見送ることにした。ルーアはヒカリの様子を見て笑みを浮かべて頷いた後、ヒルビ達
の方も見てからテレポートでその場を去った。
「大丈夫かな...。」
「......ルーアのことだからきっと大丈夫。それより、早くアウル達にみずの
フロートを返さないと。」
タイガの心配する声にヒカリはそう言って元気づけ、早くアウル達のところに行こうと
いう言葉に全員が頷いて前を向くと、ディアノが目を見開いてこちらを見ていた。
「えっ!?ディアノさん!?」
「はっ。皆さん、無事で良かったです。」
ヒルビの驚いた声でディアノは正気を取り戻したようで、ヒカリ達に声をかけた。
「ディアノさん。どうしたんですか?」
「この時期のエレキ平原ではレントラーとルクシオの一族が暮らしているのを思い出し
たからです。彼らは縄張りに浸入してきた者を容赦なく襲いかかってくるので、心配
して来たのです。ですが、その心配は杞憂のようでした。それより、先程キルリアが
あなた達のそばにいたようですが.....確かルーアさんという名前でしたか?」
「うん。そうだよ。ルーアは......ちょっと用事があるみたいで別行動なんだ。」
「そうですか...。」
ヒルビの質問にディアノはそう答えた。どうやらヒカリ達のことを心配して、助けに
来てくれたようだ。ヒカリが少し申し訳なさそうな気持ちでいる間に、ディアノが
ルーアのことを聞き、ヒルビがアルセウスの名を使わないでなんとか誤魔化し、ヒルビ
の話に、ディアノが何か考え込んだ。
(どうしてルーアのことを....まさか、さっきのルーアとの会話を聞かれていた!?)
ルーアのことを聞くディアノを見て、ヒカリが聞かれたんじゃないかと不安そうな顔を
した。その時、タイガの体が揺れ出し、ヒカリが不思議そうな顔をして見たが、すぐに
顔色を変えた。タイガはゴーストタイプが苦手だ。そして、ディアノはゴーストタイプ
だ。サロファの方を見ると、サロファがまずいと呟いているのが見えた。タイガの体の
揺れがどんどん大きくなり、そして、タイガは大きな音立てて地面に倒れた。
「タイガーーーーーー!!」
ヒカリ達の声がエレキ平原に響いた。