34話 エレキ平原
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次の日、タイガも復活し、ヒカリ達はいつも通り起き、朝礼に出て、今日の予定を
話し合っていると...
「何?どうしたって?」
突然コゴムの声が聞こえ、その場にいた全員がコゴムの方を向いた。
「.....むっ、そうか。じゃあ、ちょっと待っててくれよ。...おーい!ジュエルの
6匹!」
穴の中にいるラチアと少し話をした後、ヒカリ達を呼んだ。
「ん?なあに?どうしたの?」
ヒルビが返事をして、ヒカリ達はコゴムに近づいた。
「お前達にお客さんだ。」
「お客さん?」
「ギルドの入口で待っている。ちょっと行ってきてくれ。」
「......誰だろう?」
コゴムの話を聞き、ヒカリ達は疑問に思いながら梯子で上に上がった。上に上がると、
アウルとアイルが並んで待っていた。
「あ!ヒカリさん!ヒルビさん!タイガさん!エメリさん!サロファさん!......えーと.
......あの.....」
「ヒカリ、説明して。」
アイルがヒカリ達の名前を呼んでいたが、ルーアのことは知らず、困惑していた。
ルーアはヒカリにすぐ説明を求めた。
「彼女はルーア。私達の新しい仲間よ。この子達はアウルとアイル。色々あって知り
合ったの。ルーア、後で詳しく説明するから...。」
「はじめまして。私がルーアよ。よろしくね。」
「よろしく。」
「よろしくお願いします。」
ヒカリが紹介し、ルーアとアウル達は互いに挨拶し合った。
「えーと......僕達を待っていたのって....もしかして、君達なの?」
「そうです。実は僕達、ジュエルの皆さんにお願いがあって、来たんです。」
ヒルビが聞きたかったことを聞き、アウルが返事をしてそう言った。
「お願い?」
「はい。みずのフロートを取ってきてほしいんです!」
タイガが聞き返すと、アイルがはっきりとそう言った。ヒカリ達は首を傾げた。ヒカリ
とヒルビとエメリとサロファは昨日海岸で見つかったはずの物を取ってきてほしいと
言われたことを疑問に思って、タイガとルーアはどういうことかと状況が分からず、
ヒカリ達の方を見ていた。
「みずのフロートって、あなた達が探していたものよね?昨日、海岸で見つかったん
じゃないの?」
「はい。海岸に落ちているって聞いたんで、行ってみたのですが.....そしたら、
代わりにこんなものが...。」
エメリがそう聞くと、アウルが暗い顔をして言い、ヒカリに紙切れを渡した。
「紙切れ?......何か書いてある....えーと.......『海岸にあったみずのフロート
は、我々が預かった。取り返したければ、エレキ平原の奥まで来い。しかし、力の
弱いお前達に、果たしてそこまで来ることができるかな?クククッ。無理なら精々
頼もしい仲間に頼るこったな。クククッ。』.....これって........。」
「脅迫じゃないの!?」
「君達!絶対に行っちゃだめだよ!何かのワナかも知れない。」
ヒカリが声に出してその紙切れを読み、エメリが怒りを露わにし、ヒルビも少し怒り
ながら言い、ヒカリとサロファとタイガとルーアは怒りが湧き上がりながらも顔を
見合ってコンタクトをとった。
(絶対にあの3匹ね...!今度はアウルとアイルも巻き込んで.....!)
ヒカリはそう思いながら怒りがさらに湧き上がってくるのを感じ、深呼吸をして気持ち
を落ち着かした。
「でも、みずのフロートは大切なものなんです。だから、絶対に取り返したいんです。
けど、アイルは危険な目には合わせられない。」
「アイルも一緒に行くって言ったんだよ!」
「お前はまだ無理だよ。怖い目に合わせたくないんだ。なので、僕1匹でエレキ平原に
挑んでみたのですが、あそこは電気タイプのポケモンが多くて、僕にはとても歯が
立たなくて....だから、何度行ってもすぐに倒されちゃうんです...。僕は......
僕は、弱い自分が悔しくて.....ううっ...。」
アウルが紙切れを読んだ後のことを話し、アイルが自分も一緒に行けなかったことに
不満を漏らし、アウルはそんなアイルを嗜めた。アウルはエレキ平原を攻略できない
自身の弱さに悔しくて涙が溢れてきた。ヒカリ達はそんなアウルの様子を見て、互いに
顔を見合わせて頷き合った。
「分かった。大丈夫だから!私達がみずのフロートを取り返してくるからね!」
「本当!?」
「本当ですか!?」
ヒカリはアウルとアイルを元気づけるように言い、アウルとアイルは嬉しそうに顔を
上げて元気に言った。
「うん!だからもう泣かないで。」
「はい!ううっ......でも、すみません。ありがとうございます。」
「喜んだり泣いたりで顔がくしゃくしゃだよ。大丈夫。絶対取り返してくるよ。」
ヒルビの言葉に、アウルが再び泣き始め、タイガがそんなアウルに笑顔でそう言った。
「じゃあ。行ってくるね。」
ヒカリ達はアウルとアイルに見送られ、エレキ平原に向かった。
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「でんこうせっか。」
「シャドーボール。」
「はどうだん。」
「みずのはどう。」
「はっぱカッター。」
ヒカリ達はエレキ平原を進んでいた。次の階に行く階段をすぐに見つめ、比較的に速い
スピードで進んでいるが、本来ならもう少し速いはずだった。エレキ平原には、電気
タイプの技を無効にする避雷針の特性をもつポケモンがいる。そのせいで、ヒカリは
電気タイプの技が使えず、それ以外のタイプの技を使っていた。戦いにあまり支障は
ないが、電気タイプの技が使えないのは少し痛手だった。だが、急がないといけ
なかった。
「ヒルビ、急げ!」
「かえんほうしゃ!」
ヒルビの炎でメガヤンマが倒れ、それをサロファがエメリから隠した。エレキ平原は
メガヤンマがいるのだ。メガヤンマは虫タイプだから、エメリには見せずに倒し、
さっさと進んでいた。エメリがメガヤンマに気づかず、早く最奥部に着けることを祈り
ながら、ヒカリ達はスピードを落とさず、エレキ平原の最奥部の近くまで来ていた。
「もうすぐ最奥部ね...。」
「ああ。」
エメリの言葉に、サロファが頷きながら少しほっとした。ヒカリ達もエメリが
メガヤンマに気づかずにここまで来れたことに少し安心したが、すぐに気を引き
締めた。ダンジョンの中というのもあるが、この先のことを考えると、自然と辺り
を警戒する。
「どんな奴か知らないけど....でも、あんなに幼い兄弟を脅すなんて、ひどいよね。」
「絶対取り返して、ぼこぼこしてやるわ。」
「えっ!?」
ヒルビとエメリの言葉に、ヒカリが驚きの声を上げ、タイガとルーアは苦笑いし、
サロファはため息を吐いた。どうやら、ヒルビとエメリは脅迫した犯人の正体に
気づいていないようだ。正体を知ったら、完全にキレるだろうと考えていると、道が
少し広くなってきた。
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一方、その頃、トレジャータウンでは........
「.........なるほどー。みずのフロートがねー....。そんなことがあったんだ。
それで、今はジュエルが向かっているんだね。」
「うん!」
「僕達の代わりに取ってきてくれるって!」
アウルとアイルがカミル達にみずのフロートのことを話していた。
「よかった!ジュエルなら安心できるものね♪」
「はい。本当に.....。アイルも助けてもらったし、本当に感謝しています。」
「皆さん。どうしたのですか?」
カミルとアウルが話していると、ディアノがその様子を見て、声をかけてきた。
「あっ!ディアノさん!いやね......前にアウルくん達の落とし物について、ここで
一緒に話していたの覚えています?」
「ああ。みずのフロートのことですよね?確か、海岸に落ちてたとか...。」
「そうです。そうです♪ただ、それがですね。こんなことに............。」
カミルはディアノに気づき、みずのフロートのこと、これまでの経緯を話した。
「......。なるほど。そんなことが....。誰がどういう目的で、そんなことをする
のか分かりませんが、しかし、悪質な輩ですね。」
「でしょう!?こんな幼い子を相手にいじわるするなんて、私や許さないですよ!
ぷんぷん!」
ディアノの話に、カミルは同意して、アウルとアイルを脅した輩に怒っていた。
「それで、ジュエルは今、どこに行っているのですか?」
「エレキ平原です。」
ディアノの質問に、アウルが答えると、ディアノが驚愕の表情を浮かべた。
「えっ!?エレキ平原ですか?エレキ平原は......この時期は確か...........!!
いけない!!このままでは、ジュエルが危ない!!」
「ええ〜〜〜〜〜〜!?」
「私、これから、エレキに行ってきます!!」
ディアノが少し思案してからそう叫び、カミル達がそれに驚いた。ディアノはその様子
を気にせず、切迫つまった様子でエレキ平原に向かっていった。
「ええ〜!?ちょっと!?ちょっとぉ〜〜!?」
カミルはどういうことか分からず、ディアノを引き止めようとするが、ディアノには
聞こえていなかった。
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「ううっ.....なんか怖そうなところだね...。うわっ!?すごい....。今にも、ここ
に雷が落ちそうだよ。こんな怖いところは早く.........」
「弱気になっているんじゃないわよ!」
ヒカリ達はエレキ平原の最奥部に着いた。その場所は黒い雲に覆われ、所々雷の音が
聞こえた。ヒルビがビクビクしていると、エメリがそう言ってつるのムチで叩いた。
「ねえ。どう思う?」
「絶対ワナだと思う。」
「だな。わざわざここに呼び出したんだ。ここで何か仕掛けているだろ。」
「そうじゃないと、あそこに分かりやすく置いてある意味ないよ。」
「あそこ?」
ヒカリの問いにルーアが答え、その答えにサロファとタイガが同意した。ヒルビは
ヒカリ達の会話のあそこという言葉が気になり、ヒカリ達の視線が向いている方を
見た。そこには、水色の石がついたリングのようなものが分かりやすく置いてあった。
「あ、あれは!もしかして、あれがみずのフロートじゃ.....近づいてみよう。」
「ヒルビ!待て!」
ヒルビが置いてある物に気づくと、すぐに近づいていった。サロファが慌てて止める
が...遅かった。
「ここへ何しに来た!」
「わわっ!?」
空がさらに暗くなり、突然声が聞こえた。ヒルビは驚きながらも周りを見渡したが、
誰もいなかった。
「ここは、我々の縄張りだ!!」
「誰かいる!」
「みんな!隠れて!」
「隠れても無駄だ。私の目は、あらゆるものを透視できる。この目で物陰に隠れた獲物
を見つけ......そして....仕留めるのだ!」
「...!離れて!」
声が怒っているように聞こえ、ヒカリ達は近くの岩陰に隠れたが、声の主にはヒカリ達
の位置が分かっている様子だった。声と同時にルーアが嫌な予感がして、離れるように
言い、ヒカリ達が隠れていた岩から離れた瞬間、その岩に雷が落ち、岩は木っ端微塵に
砕けた。
「....お前は誰だ!隠れてないで出て来い!」
「フフフ!私の名はレントラー!そして...ルクシオ一族のリーダーだ!」
ヒルビは震えを必死に耐えて声の主に向かって叫び、声はその様子に笑いがこぼれ、
ヒルビの叫び声に答えて岩陰から飛び出した。現れたのはレントラーと8体のルクシオ
だった。レントラーとルクシオ達は現れてすぐにヒカリ達を囲み、逃げられないように
出口を塞いだ。
「覚悟!」
レントラーの言葉で、ルクシオ達が一斉に襲いかかってきた。
「ヒカリ、レントラーやルクシオ達なら電気タイプの技を放っても大丈夫よ。」
「うん。みんな、分かれていくよ!」
「俺はルクシオ達と相性が悪いから、一体を相手にする。他はレントラーとルクシオ達
を分裂させて戦った方がいいだろう。」
「確かに囲まれているし、この状態でサロファがダメージを受けたら不利だから、その
方がいいと思う。レントラーはリーダーだと言っているから、ルクシオ達より強いと
思うし、ルクシオ達を倒してから全員で戦えばいいんじゃないかな...。」
ヒカリ達は互いに背中合わせにしながら話し合った。
「あたしがレントラーを相手するわ!」
「えっ!?それって、だいじょ.......」
「文句あるかしら?」
「ありません!」
エメリがレントラーの相手をすると志願し、ヒルビがそのことに驚き、エメリの心配を
したら、エメリに威圧され、背筋を正してはっきり返事した。
「.....確かにエメリと相性はいいが...大丈夫か?」
「大丈夫よ!」
エメリとヒルビの様子を見て、サロファがため息を吐いてエメリに確認すると、エメリ
は大きな声ではっきり答えた。そう答えたエメリの目は覚悟を決めたような感じが
した。
「...エメリ。無茶はしないで。終わったら、私達もすぐに援護するから......。」
「当然よ。」
エメリの目を見て、サロファ達はリーダーのヒカリに視線が向き、ヒカリはそれらに
気づいてため息を吐きながら言い、エメリは分かっているというような様子で言った。
その言葉をきっかけに、ヒカリ達も動き出した。