第4章 謎の探検家
33話 探検家の訪問
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 あの事件からしばらくして、ヒカリ達は依頼をこなしているうちに、ゴールドランクに
 上がった。まあ、ゴールドランクに上がっても仕事は変わらないけどね。
 今日もいつも通り起き、朝礼を終えて今日のことを話し合っていると、リコラが話し
 かけてきた。

 「おお。朝から気合いが入っているじゃないか♪感心、感心♪その調子で依頼をこなす
  んだよ♪その前に、今日は一つ........」

 「何!?足形が分からない!?」

 コゴムの大声が聞こえ、全員がコゴムの方を向いた。

 「分からないってどういうことだよ!?」

 「だってぇ〜。わかんないものはわかんないよう......。」

 コゴムの怒鳴り声に、ラチアはそう答えた。

 「どうした?」

 あまりの騒がしさに、リコラがコゴムに近づいて聞き、ヒカリ達も近づいた。

 「足形の不明なポケモンが来ているらしいんだ。ラチアは優秀な見張り番だ。足形が
  分からないなんて滅多にないんだが...。こいつらみたいな素人が見張り番なら、
  それも分かるんだがな。」

 「何よ!珍しいって言ってたけど、あたし達がここに来た時だって、ヒカリの足形が
  分からなかったじゃない?」

 コゴムの言葉に、エメリがコゴムに負けじと大声で言った。

 「....えっ?親方様に会わせてほしいんですか?」

 ラチアの言葉に、全員がラチアの声がした穴を見た。

 「お名前は......ディアノさん!?少々お待ちくださいね。」

 「ディ、ディアノだって!?」

 「ディアノって!?あ、あの有名な!?」

 ラチアが聞いた名前に、リコラとコゴム達が反応し、慌てたり興奮したりしながら動き
 出した。ヒカリとヒルビとエメリは首を傾げ、タイガは苦笑いして後退りし、サロファ
 はため息を吐き、ルーアは何か考えるような素振りをしていた。




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 「訪ねてきてくれてありがとう〜♪」

 「いえいえ!滅相もない!お礼を言うのは、こちらの方です。かの名高きプクリンの
  ギルドに来れて、誠に光栄です。」

 モルガが目の前のヨノワール、ディアノに挨拶し、ディアノは礼儀正しく挨拶した。
 ちなみに、ヨノワールはゴーストタイプであるため........

 「...............。」

 タイガは無言で気絶してしまった。倒れたタイガをルーアのサイコキネシスで宙に
 浮かせ、ヒカリ達はモルガとディアノの会話を見ていた。

 「ねえ、コゴム。あれは誰?」

 ヒルビは誰なのか気になって近くにいたコゴムに聞くと、コゴムに周りにいたマックと
 アマラが勢いよく振り返った。

 「なにぃ!?お前、ディアノさんを知らんのか!?とても有名な探検家だぞ!?」

 「そう言われても.....。僕、本当に知らないんだもん。」

 コゴムが驚愕してそう言い、ヒルビはその勢いに気後れし、視線でヒカリ達に助けを
 求めていた。

 「まあ、無理もないと思う。知られるようになったのもつい最近のことだから。」

 「突如彗星の如く現れて、一躍有名になった探検家だからな。それぐらいの探検家と
  しての能力は凄いんだとか。」

 ルーアが苦笑いしながらヒルビのサポートをし、サロファもため息を吐きながらルーア
 と一緒に説明し始めた。

 「ふうん。そんなにすごいの?ディアノって。」

 「ああ。これは聞いた話だが、まず、特徴的なのはチームを持たず、単独で行動する
  ところだ。」

 「一匹で?」

 「腕に相当な自信があるみたい。でも、それより凄いのはその知識の多さ。噂だけど、
  世の中で知らないものはないというぐらい色んな物事を知っているらしい。その知識
  で探検を次々と成功させていって、今では、ディアノを尊敬するポケモンもかなり
  いると聞くから、あながち嘘ではないかもね。」

 エメリとヒカリの質問に、サロファとルーアは答えた。一通り話し終えると、ヒカリ達
 は会話しているディアノとモルガの方を見た。ディアノとモルガは楽しそうに会話して
 いた。

 「ディアノさんって、ここに何度か来たことがあるの?」

 「いや、初めてだ。ラチアが分からなかったぐらいだからな。親方様も会うのは初めて
  なんじゃないかな......。」

 「それじゃ、なんであんなに仲良さそうなんだろう...?」

 ディアノとモルガの様子を見て、ヒルビが思ったことを聞き、コゴムが答えた。コゴム
 の答えに、ヒカリは疑問の声をあげた。

 「親方様は、ああいう方だからな。初めて会おうがなんだろうが関係ない。」

 コゴムのモルガだからという言葉で決まり、ヒカリ達は苦笑いしながら納得していた。

 「......なるほど。それは残念でしたね。」

 「うん。今回は大失敗。何も分からなかったよう♪」

 「プクリンのギルドがきりのみずうみに挑戦するとお聞きしましたので、その成果を
  伺おうとここへ来たのですが...。」

 「ごめんね〜♪何も分からなくて〜♪」

 どうやら今回のきりのみずうみでの遠征について話していたようだ。カルサとの約束
 で、モルガはきりのみずうみについて何も分からなかったとディアノに言い、約束を
 守っていた。

 「いえいえ。いいんです。それより、これも何かのご縁。私は、しばらくトレジャー
  タウンに滞在する予定ですので、その間、たまにここへお伺いしても構わないでしょ
  うか?ここは新しい情報がたくさん入るので、私の探検にも役立ちそうなのです。」

 「それなら!全然オッケー!ここは他の探検隊も普通に出入りしているし、もう大歓迎
  だよ♪」

 ディアノがまたここに来てもいいか聞くと、モルガは快く許可した。

 「というわけで、みんな!このディアノさんが、しばらくトレジャータウンにいると
  思うからよろしくね♪ディアノさんは有名だし、物知りだから、みんなも色々相談
  したいことがあると思うけど、でも、そこはあまり迷惑かけない程度にお願いね♪」

 「みんな!有名だからといって、間違ってもサインとかねだらないようにな!」

 モルガが弟子達にディアノに迷惑をかけないようにと伝え、モルガが言い終えた後、
 リコラも他の弟子達にそう言った。

 「...いや。サインぐらいお安いご用ですよ。私の知識など拙いものですが......。
  それでも、皆さんのお役に立てれば幸いです。何か相談があれば、遠慮なく聞いて
  くださいね。」

 「そ、そうですか!」

 「こ、光栄でゲス!」

 「こちらこそよろしくですわ!」

 ディアノのサインは構わないという言葉に、リコラは嬉しそうにした。他の弟子達も、
 ディアノの言葉に興奮していた。

 「じゃあ。みんな♪解散♪」

 リコラの言葉で、弟子達はそれぞれの仕事の持ち場に戻った。

 「では、私はトレジャータウンの辺りでも散歩してます。何かありましたら、いつでも
  呼んでください。では。」

 ディアノもモルガとリコラに挨拶してから、ギルドを出た。

 「ああ、お前達。そうそう。さっき言いかけていたが.....今日は仕事の前に一つ頼み
  たいことがあるんだ。」

 「頼みたいこと?」

 「そう。ちょっとしたことだ。カクレオンの店に行って、セカイイチの入荷予定を
  聞いてきてほしいんだ。」

 ディアノが去ってからリコラはヒカリ達に頼みたいことを思い出し、ヒカリ達にその
 頼み事を言った。

 「セカイイチの入荷予定?それって、つまり....カクレオンのお店で、セカイイチを
  売り出す予定があるのかを聞けばいいってこと?」

 「そうだ。ギルドの倉庫には、たくさんのセカイイチが保管されているはずなのだが、
  ちょっと目を離すと、親方様が食べてしまい、すぐ足りなくなってしまうのだ。
  セカイイチがなくなると、親方様は......。かといって、セカイイチが底を着く
  たび、いちいちリンゴのもりへ取りに行くのも大変だし。」

 ヒルビの質問に、リコラは頭を悩ましながら答えた。

 「.....それで、カクレオンの店で売っているようだったら、買っちゃおうという
  わけですね?」

 「そのとおりだ♪」

 「分かりました。ちょうどカクレオンの店で買い物しようと思っていましたので。」

 「頼んだぞ♪よろしくな♪」

 ヒカリはリコラの言いたいことを簡潔にまとめ、リコラの頼みを受けた。リコラも大変
 だなと思いながら、ヒカリ達はトレジャータウンのカクレオンの店に向かった。





.........................




 トレジャータウン

 「あ!」

 「あれ?あそこにいるのは?」

 ヒカリ達がカクレオンの店に着くと、カミルとディアノが楽しそうに話していた。
 ヒカリは顔を真っ青にしてタイガの方を見ると、タイガが気絶して後ろから
 倒れ、ルーアがタイガを受け止めていた。

 「...タイガを部屋に戻しに行ってくるね。」

 「うん。お願い。」

 ルーアはヒカリに一言言い、ヒカリは頷いた。ヒカリが頷いてすぐ、ルーアはタイガを
 連れて、ギルドの部屋に戻った。ルーア達がいなくなったのを確認してから、ヒカリ達
 はカクレオンの店に近づいた。

 「おお。あなた達は確かギルドの。」

 「うん。僕達はジュエル。ギルドで働いているの。よろしくね!」

 「よろしくお願いします。...私の記憶が確かなら、もう2匹いらっしゃったと思い
  ますが......。」

 「....その2匹は......今、別行動をしています。」

 ディアノがヒカリ達に気づき、ヒルビが挨拶した。ヒルビが挨拶すると、ディアノも
 挨拶してタイガとルーアのことに気づいた。ディアノがタイガとルーアについて聞き、
 ヒカリは咄嗟にそう言った。あなたを見て1匹が気絶して、もう1匹がその1匹をギルド
 に連れて行ったと言うのはと思い、ヒカリ達は本当のことを言わなかった。

 「ところで、ディアノさんはどうしていたんですか?買い物ですか?」

 「いえいえ。単におしゃべりしていただけですよ。」

 話題を変えるため、サロファが聞くと、ディアノがそう答えた。

 「私が呼び止めたんです。ディアノさん、有名ですから。そしたら!もうびっくり!
  ディアノさんって本当にいろんなことを知っているんですよね!もう感激しました
  よ〜♪」

 「ふうん。みんなも噂してたけど、やっぱり物知りなのね。」

 サロファとディアノの会話を聞いてカミルも話に加わり、エメリはカミルの話を聞いて
 小さな声でそう言った。

 「ところで、どうしたんですか?もしかして♪何か買いに来てくれたとか?ワクワク♪」

 「ははっ...すみません。オレンのみをください。」

 カミルが商売モードになって聞き、ヒカリは、カミルの切り替えに苦笑いしながら
 注文した。ヒカリはお金を払い、カミルからオレンのみを受け取った。

 「あの....リコラに頼まれたんだけど、セカイイチを入荷する予定とかありますか?」

 「えっ?セカイイチですか?う〜ん。申し訳ありませんね〜。うちの店で、セカイイチは
  まだ入荷する予定がないんですよ〜。」

 ヒカリはリコラの頼み事を思い出して聞くと、カミルは申し訳なさそうにそう言った。

 「ううっ。そうなんだ。残念。リコラが聞いたらガッカリするだろうな...。」

 カミルの話を聞いて、ヒルビが落胆し、リコラがそれを聞いた時のことを想像した。

 「アイル、早くー!」

 「お兄ちゃん、待ってよー!」

 すると、幼い子供の声が聞こえてきた。声の聞こえた方を見ると、アウルとアイルが
 走っていた。

 「あれ?アウルちゃんにアイルちゃん!」

 「あ!カミルさん!」

 「ヒカリさん達も!」

 カミルが声をかけると、アイルとアウルはカミルとヒカリ達に気がついた。

 「どうしたの?そんなに急いで。」

 「僕達、ずっと落とし物を探していたのですが...。」

 「ああ。あの時探してた落とし物ね。」

 ヒルビが聞き、アウルは説明し始めた。アウルの落とし物という言葉に、エメリはあの
 時の事件でアウルとアイルが言ってたことを思い出して言った。

 「そうです。みずのフロートっていう道具です。」

 「みずのフロート?それはまた、貴重なものですね。」

 エメリの話に頷いてアウルが落とし物について話すと、ディアノがそれに反応した。

 「はい。ですので、僕達もずっと探していたのですが、なかなか見つかりません
  でした。」

 「でも!今日、海岸でみずのフロートが落ちているのを見たって誰かが!」

 「それで、海岸に急いでいるんです。」

 ディアノの話にアウルが頷き、アウルとアイルはみずのフロートが見つかりそうだと
 嬉しそうに話した。その様子を3つの影が見ていたと気づかず........。

 「ア、アニキー...。遠征では見事にやられちまいましたね....。ううっ......。」

 「クククッ.....モルガには参ったぜ.....。このままじゃ気が収まらねえし....
  なんとか仕返ししたいが、でも、あのモルガが相手じゃ....正直、お手上げ
  だぜ.......。クククッ...クククククククククッ......チクショー。」

 「ケケッ。それでも、なんとか仕返しできないですかねえ....。」

 3つの影はヒカリ達を悔しそうに、恨めしそうに見ていた。

 「へへっ。こうなりゃ腹いせだ。モルガの代わりに、せめてジュエルの奴らに仕返し
  できれば.....。」

 「おっ!それはいい考えだな!クククッ。」

 「ケケッ。ジュエルなら弱いしな!」

 1匹が自棄になって言った言葉に、他の2匹も同意した。

 「早速作戦を考えようぜ。ちょうどいいのがあるしな。クククッ。」

 最後にアウルとアイルの方を一瞬見てから、3つの影はその場を去った。

 「そっかー!見つかったのならよかったね!」

 「はい!」

 「うん!」

 ヒルビ達は3つの影が見ていたことに気づかずに話し続けていた。

 「さあ。アイル。早く行こう!」

 「うん!お兄ちゃん!」

 しばらく話し続けた後、アウルとアイルは浜辺に向かって走り出した。

 「......あの2匹の探し物がちょっと気にはなってたんだけど、でも、なんか
  見つかったようだし、よかったね。」

 「そうね...。そういえば、みずのフロートって何かしら?」

 「....みずのフロートというのは、私も知らないですよ〜!どんな道具なんですか?」

 走るアウルとアイルの後ろ姿を見ながらヒルビが呟き、エメリは疑問に思って、カミル
 に視線を向け、カミルは首を横に振ってからディアノに尋ねた。

 「みずのフロートとは、ルリリの専用道具なんですが、貴重なお宝を繰り返しトレード
  することでやっと手に入れることができるという、とても稀な道具だと言われている
  んですよ。」

 「ひゃー!そうなんですかー!商売をしている私ですら知らないんですから、相当
  珍しいものなんでしょうね〜。」

 ディアノの説明を聞き、カミルから驚きの声が上がった。ヒルビとエメリもカミルと
 同じように驚き、ヒカリとサロファはディアノの知識の多さに関心した。

 (.....けど、なんだろう?なんか違和感が...あまり近寄りがたい感じがする....。
  なんでかな.....?)

 ヒカリは1匹でそんなことを思い、自分の世界に入って考えていた。

 「そんな物を私の店に入荷することなんか...一生無理なんでしょうね〜。トホホ。」

 「入荷する?....そうだ!思い出した!セカイイチ.......」

 「そうよ!セカイイチのことをあの鳥に報告して、さっさと用を終わらせるわよ!」

 「えっ!?待ってよ!」

 「はあ。ディアノさん、カミルさん達も失礼します。行くぞ。」

 「えっ?あ!待って。」

 カミルの言葉で、ヒルビがおつかいのことを思い出し、ヒルビのセカイイチという言葉
 でエメリも思い出し、慌ててギルドに帰った。サロファはその2匹の様子を見てため息
 を吐き、ディアノ達に挨拶してからヒカリに声をかけ、サロファの声で現実に戻り、
 サロファ達がギルドに向かっていることに気づき、慌てて追いかけた。




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 「ええ〜〜〜!?セカイイチの入荷予定はないって!?」

 ヒカリ達は戻ってすぐにリコラに報告し、リコラはそれを聞いて大きな声を上げた。
 ちなみに、サロファはタイガの様子を見に、部屋に戻っている。

 「.....ううっ。ガックリ。どうしよう.......。」

 「あのう...。今日は僕達が取ってこようか?りんごのもりの依頼のついでに....。」

 リコラの落ち込んだ様子に見かね、ヒルビが少し遠慮がちに言った。

 「おおっ!それは助かる♪」

 ヒルビの話に、リコラは上機嫌にそう言った。

 「.....で、話は済んだか?」

 話が終わると同時に、サロファが戻ってきた。

 「ええ。勝手に場所を決めたから、そこの依頼を探さないといけないのよ!」

 「りんごのもりにセカイイチを取りに行くのなら、一緒に依頼も受けることに
  したの。」

 エメリが不機嫌そうに言った。りんごのもりに行くのは構わないが、勝手にヒルビに
 決められたことを怒っているようだ。ヒカリはサロファに簡潔に説明した。

 「タイガの容体は?」

 「...うなされていたよ。今はルーアが看病してくれているから平気だ。だが、今日は
  タイガとルーア抜きで依頼を受けることになった!.....まったく、あいつはそんな
  にゴーストタイプが嫌いか!」

 「ま、まあ。誰にも苦手なものはあるから........。」

 ヒカリがタイガの容体を心配すると、サロファは少しいらつきながら言い、ヒカリは
 それを苦笑いを浮かべながら止めた。
 そのあと、ヒカリ達はりんごのもりの依頼を受け、その依頼をこなしてから、
 セカイイチをバッグいっぱいに入れて、ギルドに持って帰った。







グラシデア ( 2020/05/31(日) 23:49 )