間章
28話 ヒルビとタイガの家族 後編
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 「はあ〜!疲れたわ!」

 アンデュ達が帰った後、ヒカリ達は、自分の部屋に戻った。エメリは、ベッドに横に
 なり、大きく息を吐いた。

 「ごめんね。ヒカリ達までまきこんで.........。」

 「ううん。気にしてないよ。」

 「いや、僕達が悪いよ。お義父様に許可をもらって弟子入りができれば、いくらなんで
  も、お義母様も手出しはしないだろうと甘く見ていたよ。」

 ヒルビがベッドに座ってすぐ謝り、ヒカリは気にしないでと平気そうな顔で言い、
 けど、タイガは座って、膝の上の拳を強く握った。

 「ヒルビ、タイガこんな状況になったからこそ、色々と話してくれる?」

 「うん。いいよ。」

 「分かっているよ。」

 ルーアは、そんなタイガの様子を見て、言いにくそうに聞いた。ヒルビとタイガは、
 快く承諾した。

 「.....まずは、......何から話せばいいかな?僕のことからでいいかな?」

 「ああ。俺達は、ヒルビとタイガが昔からの友達だと聞いていたが、義兄弟だとは
  聞いていなかった。」

 「...うん。そうだね。僕達は話さなかった........いや、話せなかったんだ。
  ヒトカゲとリオルが義兄弟だと知ったら、そんなに多くないからすぐにバレてしまう
  と思ったから。」

 タイガが話し出し、サロファが返事しながら疑問に思ったことを聞いた。タイガは、
 真剣にその時のことを思い出して話し、サロファも、タイガの話で納得した。

 「.....僕は、タマゴから孵ったばかりの赤ちゃんだった時に捨てられたんだ...。
  事情があって、育てられなくなったらしく、すぐに僕を拾って育ててもらおうと人目
  のつく場所に生まれたばかりの僕を置いていたみたい...。僕の近くに手紙と4つの
  ペンダントがあったらしく、手紙には、代わりに育ててくださいとか、僕の名前、
  タイガと書かれていたらしい。その手紙の通り、実の息子のように育ててくださり、
  ヒルビと義兄弟というより友達になって、小さい頃からずっと一緒に遊んでいたん
  だ。4つあったペンダントはポケの代わりで、僕を育てても大丈夫なようにしていた
  らしいけど、そんな必要がないから僕がもらったんだ。4つのペンダントのうち、1つ
  目は僕が身につけ、2つ目はヒルビにあげて、残った2つは、初めてできた友達に
  あげたんだ。それがエメリとサロファのペンダントだよ。」

 タイガはそう話し、ペンダントを指差した。ヒカリとルーアはペンダントを見つめ、
 エメリとサロファはペンダントのことを知らず、驚いているようだ。

 「ちょっと!そんなの聞いてなかったんだけど......」

 「別にいいよ。4つあっても僕には多いし、それに、初めてできた友達だからいいよ!」

 エメリが何か言おうとする前に、タイガがそれを遮り、きっぱりとそう言った。

 「...えーと.........初めてできた友達って......。」

 「....うん。正確に言えば、ヒルビ以外の友達かな?......昔は特に何も言われずに
  過ごしていたんだけど、ヒルビが蛇のような細長いポケモンに襲われた時からだった
  かな?」

 「お母様は、その時からさっき見たとおりとても過保護になって、僕達は、敷地内で
  しか遊べなくなったんだ。外に出れなかったから、他の友達もできなかったんだ。」

 タイガの言葉に、ヒカリが疑問に思って聞くと、ヒルビとタイガは、少し悲しそうに
 答えた。

 「.....でも、僕には夢があった。探検隊になって、いせきのかけらの謎を解いて、
  その欠片がぴったりはまる場所を見つけるっていう目標があった。......。」

 「だから、ヒルビは、お義母様を何度も説得しようとしていたんだけど、何度も断られ
  て、それでも、ヒルビはあきらめないで説得していたら、その様子を見ていたお義父
  様が、そこまでやりたいのなら、行ってきなさい、アンデュには内緒でなと申し上げ
  てくださり、お義母様には内緒に、お義父様が許可を出してくださり、僕達は、外に
  出て、探検隊になるために、ここに来たんだ。探検隊になる前に、エメリとサロファ
  に出会って、仲良くなったお礼にペンダントをあげたんだ。出会い方はちょっとあれ
  だったけどね.........。それに、ヒルビが原因で、探検隊に入るのが遅れた
  けど、ヒカリにも出会えて、探検隊『ジュエル』を結成して、依頼をこなしたり、
  冒険したり、ルーアに出会うことができて、きりのみずうみを探検して、...今に
  至るんだ......。」

 ヒルビとタイガの昔の話を、ヒカリ達は、静かに聞いた。

 「せっかく探検隊になって、仲間もできて、色々な冒険してきて、毎日とっても楽し
  かったのに、.........僕は、止めたくない!」

 「...僕もヒルビと同じ気持ちなんだ。家族の問題に捲き込むのは悪いと思うんだ
  けど、協力してくれないかな.....?お義母様を納得させるには、この対決に乗るの
  が一番なんだ。....だから、...その......お願いします!」

 「お願いします!」

 ヒルビの言葉に、タイガは頷き、そう言って頭を下げ、ヒルビも頭を下げた。しばらく
 静寂に包まれた。

 「ヒルビ、タイガ、顔を上げて。」

 その静寂を破ったのは、ヒカリだった。ヒカリにそう言われ、ヒルビとタイガは、顔を
 上げた。

 「もう既に、対決は私が引き受けたんだから、頭を下げて言わなくていいの。止めたく
  ないんだったら、そんなこと言ってないで、明日に向けて、気合いを入れておかない
  といけないでしょう...。」

 「ヒカリ....。」

 ヒカリは、笑顔でどこか自信がある様子で、強くそう言った。ヒルビとタイガは、
 ヒカリの名前を呟いていた。

 「私も、ヒルビとタイガの気持ち、分かるよ......。私もヒルビとタイガと同じ
  ような状況があったの。.....でも、最後まで自分の本音を言い続けて、チャンス
  をうまく使って、やっと説得できたことがあったの。.........自分の本音を
  あきらめずに言っていれば、チャンスが来る。そのチャンスを逃さないようにして、
  認めてもらえるように頑張らないとね.......。この対決で、どれくらい強くなった
  か証明して、大丈夫だってお義母さんに見せて、認めてもらおうよ。」

 「ルーア......。」

 ヒカリに続き、ルーアは、何かを思い出しているかのような表情で、ヒルビとタイガを
 励ますようにそう言った。ヒルビとタイガは、力強く言うヒカリとルーアの様子を
 見ていた。ちなみに、ルーアの話に、ヒカリが反応していたが、ヒルビ達は疑問に思っ
 ていたが、特に何も言わなかった。

 「あたしも、あんた達の親に言いたいことがあるのよ!窮屈で何も苦しいことが
  なくて、つまらないじゃないのよ!大体、ヒルビの臆病は、あんたが原因なのよ!...
  って!」

 「.....言いたいことは分かるが、その言い方はまずいからな。.....まあ、ヒルビの
  親に一言言いたいっていう考えは、エメリと同じだからな。さすがに過保護過ぎだ。
  ヒルビを甘やかすから、臆病を直せないんだとな....。」

 「なんか、お母様じゃなくて、僕が貶されてない?」

 「ははっ。...エメリ......サロファ...........。」

 エメリとサロファの話に、ヒルビは不満そうに文句を言い、タイガはそれを見て、
 いつも通りになったと笑い声を上げ、エメリとサロファの名前を呟いた。

 「私達は、引き受けた時点で既に覚悟は決まっているの!.....ヒルビとタイガはどう?
  覚悟は決まっている?」

 ヒカリの言葉に、ヒルビとタイガは互いを見て、そのあと、ヒカリ達を見た。ヒカリ達
 の顔には曇りがなく、自信が溢れているような、威風堂々としたような表情をして
 いた。それを見た後、再びヒルビとタイガの互いを見つめ、頷いた。

 「うん!」

 「もちろんだよ!」

 ヒルビとタイガは、元気良く返事をした。ヒルビとタイガの表情は不安が消え、覚悟が
 決まっているような表情に変わった。

 「うん。みんな!」

 「「うん!」」

 「「ええ!」」

 「ああ。」

 ヒカリが声と同時に手を出し、ヒルビ達も頷きながら手を出し、ヒカリの手に重ねた。

 「明日、絶対に勝てるように頑張ろう!」

 「「「「「おおーーーーーーーー!!」」」」」

 ヒカリの言葉と同時に、ヒカリ達全員が手を上げ、掛け声を上げた。

 「......で、どうするの?」

 「お義母様が自信を持って言うほど、あのポケモン達は強いよ。護衛と僕達の教育係
  を任されているから...。」

 「護衛と教育係を任せられるとなると、相当の実力と信頼を持っているということ
  か......。」

 「そんなの関係ないわ!勝つのみよ!」

 ヒルビの質問とタイガの話に、サロファが考え込んだ。そんなサロファと違い、単純に
 どんな敵でも勝つと思っているエメリがそう言っているが、それは、スルーした。

 「......それより、問題は対決の内容ね。虫ポケモンとゴーストポケモン、あと
  細長い体のポケモンが相手になるかもしれない。」

 「ああ。その可能性は充分あり得る。...エメリが大暴れしたり、タイガが気絶した
  り、ヒルビが絶叫したりするのは、さすがにまずいな........。」

 ヒカリは対決のことを思い出し、そのことについて悩んだ。サロファも同様だ。

 「大丈夫。それについての対策は、すでに考えているから。」

 ルーアが自信満々にそう言った。

 「えっ!?それって、どういう.........」

 「だけど、これには準備が必要なの。これから、必要な物を倉庫から出したり、買った
  りするよ。」

 ヒカリが聞こうとするが、ルーアはそれを遮り、ヒカリ達を連れて、トレジャータウン
 に向かった。





グラシデア ( 2020/04/26(日) 21:48 )