第三章 再会と遠征
26話 きりのみずうみ
 「......はあ...。」

 グラードンが倒れるのを見て、ヒカリは安心とともに息を吐くと、疲れが出て、その場
 に座り込んでしまった。

 「ヒカリ、大丈夫?」

 その声と同時に、ヒルビとサロファとルーアがヒカリに近づいた。

 「ヒルビ、回復したんだね....。」

 「うん。ルーアのおかげで、すっかり元気になったよ。」

 「ヒカリは、オレンのみを食べさせれば大丈夫そうね。私は、タイガとエメリの様子
  を見てくる。」

 「ああ。ヒカリ、オレンのみだ。」

 「ありがとう。」

 ヒカリはヒルビの様子を見てそう言い、ヒルビは元気になったとポーズをして、ルーア
 はヒカリとヒルビの様子を見て微笑みながらタイガとエメリの方を見て、サロファに
 伝え、サロファは返事をし、バッグからオレンのみを取り出し、ヒカリに渡した。
 ヒカリは、お礼を言いながらオレンのみを食べた。

 「....ヒカリ。そういえば、あの姿はなんだったの?」

 「あの姿?」

 「グラードンと戦っている時だ。本当はもう少し早くここに着いていたんだが、見知ら
  ぬポケモンがいて、警戒して様子を見ていたら、ヒカリに戻ったから驚いた。あの時
  はヒカリとは分からなかったが、冷静に考えると、あの姿はヒカリが進化した姿だ。」

 「し、進化!」

 ヒルビは思い出したかのように聞き、ヒカリは何のことを言っているか聞き返し、
 サロファが捕捉と説明した。ヒルビは、サロファの言葉に驚いた。

 「...ごめんね。私も分からない。....ただ進化をする前にペンダントが光ったの。」

 「ペンダントが?」

 「うん...。」

 ヒカリは少し考えてからそう言い、ヒルビがヒカリに聞き返し、ヒカリは頷き、自分の
 ペンダントを見た。ヒルビも難しそうな顔をしているサロファも、ヒカリのペンダント
 を見た。今は光っていないが、そのペンダントはどこか不思議な感じがした。

 「タイガとエメリも回復したよ。......?どうしたの?」

 「僕達がグラードンを倒したんだって凄いよ!」

 「ええ。本当に.........」

 ルーアがタイガとエメリを回復させ、ヒカリ達のところへ戻り、ヒカリ達がペンダント
 を凝視していることを怪訝に思って聞くが、タイガの声に遮られた。タイガとエメリが
 興奮した様子で言っていると、突然グラードンの体から光が溢れた。

 「うわあ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

 その眩しさに、ヒカリ達は目を瞑り、修まったと感じ目を開けた時には、グラードンの
 姿は跡形もなく消えていた。

 「あれ?グラードンがいない!?」

 「あれは、本物のグラードンではありません。あのグラードンは、私が作り出した幻
  です。」

 ヒカリ達が困惑していると、突然辺りから声が聞こえた。

 「い、今の声は!?...。」

 「私はここを守るユクシーというもの。この先を通すわけにはいけません。」

 「えっ!?ユクシーってあの!?」

 ヒルビが驚いて聞くと、声、ユクシーはそう答え、襲いかかろうとした。ヒカリ達が
 ユクシーの言葉を聞き、さらに驚いた。しかし、ユクシーは、問答無用という感じで、
 ヒカリ達は慌てて戦闘態勢を構えた。

 「....ちょっと待ちなさい、カルサ。私達は悪いことをしないわよ!」

 「...その声はルーア!?......ということは、そこのピンクリボンを耳に身につけて
  いるピカチュウはヒカリですね?.....」

 「正解よ。今は探検隊だけど、カルサが困ることはしないから。」

 「.........分かりました。ルーアとヒカリに免じて、あなた達を信じましょう。」

 ルーアは、その雰囲気のなか周りを見渡し、親しい友人のように話しかけ、ユクシー、
 カルサはルーアがいることに驚き、少し考えヒカリがいることにも気がついた。ルーア
 は笑みを浮かべながらそう話し、カルサはその言葉に少し考え、その言葉を信じ、
 ヒルビ達のことも信じることにした。すると、目の前に光が集まり、一匹のポケモンの
 姿になった。そのポケモンは、頭が黄色く目を瞑っていて、宙に浮いていた。

 「はじめまして。私はカルサ。きりのみずうみの番人です。」

 カルサはヒルビ達に挨拶し、そのあとヒカリとルーアを見た。

 「あなた達が何故、探検隊をやっているのですか?仕事はどうしたのですか?」

 「色々あったの。後で詳しく説明するから、今は番人の仕事をしてくださいね。」

 カルサの問いに、ルーアは、後で説明するからと言い、話の続きを促した。一方、
 ヒカリは、カルサとルーアのやり取りに困惑していたが、会話の内容からヒカリ自身も
 カルサと知り合い、それもアルセウスの使いのことを知っていると分かった。

 「私は、きりのみずうみである物を守っているのです。今から、そのきりのみずうみへ
  案内します。どうぞ。こちらへ。」

 ヒカリが困惑している間に、カルサがそう話し、案内した。ルーアは普通について
 いき、ルーア以外は少し困惑しながらも、カルサとルーアについていった。

 「ねえ、ルーア。私とカルサって知り合いなの?私とルーアがアルセウスの使いだって
  知っていたし......。」

 「ええ。カルサは、アルセウスの使いの仕事で知り合ったの。ここには来たことは
  なかったけどね。来るのはカルサの方だったから。私もヒカリも、カルサとは昔から
  の仲なの。今のヒカリは覚えてないみたいだけどね...。」

 ヒカリはルーアに近づき、疑問に思ったことを聞いた。ルーアは頷きながら懐かしそう
 に話した。

 「私、ここに来たことないんだよね?」

 「ええ。ここに来たことはないけど、どうしたの?」

 ヒカリは確認するように聞き、ルーアは、その反応に驚きながら答え、聞き返した。

 「.....えーと...私、何故か知らないけど、ここに来たことがある気がするんだよ
  ね。でも、ルーアといた時は、ここに来たことはなかったから、もしかしたら、
  人間だった時の私が来たことがあるんじゃないかなと思ったんだけど.......。」

 「.........何か考え込んでいると思ったけど、そういうこと考えていたのね。確か
  に気になるわね。.....後でカルサに聞きましょう。」

 ヒカリは言おうかどうか迷いながらも最初から説明し、ルーアは、ヒカリの話に少し
 驚きながらも考え、そう言った。

 「わあっ。辺りがすっかり暗くなっているよ。」

 ヒルビが周りを見ながらそう言った。どうやら、ヒカリとルーアが話している間に、
 湖に着いたようだ。

 「もう夜なので、少し見づらいですが、ご覧ください。ここがきりのみすうみです。」

 カルサの話を聞き、ヒカリ達は湖を見た。

 「わあ〜〜〜!」

 ヒカリ達が見たのは、広々とした湖の上を無数のバルビート達が空を飛び、湖の真ん中
 から緑色の不思議な光があり、とてもきれいな光景だった。

 「す、すごい!」

 「まさかこんな高台に、こんなにも大きな湖があるとはな.....。」

 「うん。あと、バルビートやイルミーゼが飛んでて、なんてきれいなんだろう...。」

 ヒルビが目を輝かせ、サロファもタイガも、この湖には感嘆の声が出た。

 「ここは、地下から水が絶えず湧き出ることで、大きな湖になっているのです。
  ....湖の中央に光っているものが見えでますしょうか?」

 「うん。見えるよ。湖の底から伸びている青緑色の光のことでしょ?」

 カルサは説明をしながら少し考え、そう聞くと、ヒルビが頷いて答えた。

 「前に行って、よく見てください。」

 カルサに言われ、ヒカリ達は前に行き見てみると、歯車の形をした不思議な物が湖に
 あった。

 (.........なんだろう、あれは.....。分からないけど.......あれを見ている
  と.....何故かドキドキする!何なの?この胸騒ぎは.....。なんでこんなにドキドキ
  するの......?)

 ヒカリは、歯車のような物を見ながらそう感じることに困惑していた。

 「わあ!すごくきれい!だけど...なんだろうね、あれ....。」

 「なんか、不思議な感じがするわね.....。」

 一方ヒルビ達は、歯車のような物の美しさに目を輝かせ、それが何なのか不思議に
 思っていた。

 「あれは....時の歯車です。」

 「えっ?ええっ!?」

 「あれが時の歯車!?」

 「嘘でしょ!?」

 「マジか!?」

 カルサは、普通にそう言い、ヒルビ達は驚愕した。

 (時の歯車って......時を動かしている要因だよね.....。)

 「なるほどね...。」

 ヒカリは、前にヒルビ達が言っていたことを思い出し、ルーアは何故か納得していた。

 「ルーア、どうしたの?」

 「納得したのよ。私達はカルサに会ったことはあっても、ここに来ることは許され
  なかった....。それは、時の歯車の情報を漏らさないためだったのよ。話もしても
  くれないのもできる限り知られたくないからだと思う。」

 ルーアの声を聞き、ヒカリがなるほどと言った意味が分からず、ルーアに尋ねると、
 ルーアは、簡単に気づいたことを説明し、ヒカリもその説明で分かり、無言で頷いた。

 「そうです。あそこにある時の歯車を守るために、私はここにいるのです。アルセウス
  様の使いと言われているポケモン達にもできるだけ知らないようにしているのです。
  これまでにも、ここに浸入してきた者がいましたが、そのたびに、グラードンの幻影
  で追い払ってきたのです。」

 ルーアの話を聞き、カルサは静かに頷きながらそう話し出した。

 「グラードンよね?.....あれは、いったいなんなのよ!」

 「私の念力で生み出したものです。このように........。」

 カルサの言葉に、エメリが疑問を問いかけ、カルサはそう話し、一瞬だけ光った後、
 突然グラードンが現れた。

 「「うわ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」」

 突然のことに、ヒルビとタイガが驚きの声を上げ、ヒカリとエメリとサロファは
 身構え、ルーアは平然としていた。

 「驚くことはありません。先程も申しましたが、これは私が造り出した幻なのです。
  あなた達は幻と戦っていたのです。本物のグラードンには、既に許可をいただいて
  いるので、私も気にせずこの幻を造り出して使っています。本物に限りなく造り出し
  たのですが、ヒカリに倒されてしまいましたが......ヒカリも手を抜いてください
  .....。」

 カルサはそう説明していたが、途中からヒカリに、造り出した幻のグラードンが倒され
 たことを思い出し、だんだん不貞腐れてきた。

 「....えーとね...。カルサ、ここにピカチュウか人間が来たことはありますか?」

 「えっ?.....いえ。ここまで浸入してきた者達の中にピカチュウはいません。人間が
  ここに来たことも一度もありません。」

 「...そうなんだ.....。」

 ヒカリは少し言いづらそうにそう聞き、カルサは、その質問を聞いた後、少しここまで
 来たのがどんなポケモン達だったか記憶を探り、首を横に振りながら答えた。ヒカリは
 残念そうに呟いた。

 「.......ねえ。そういえば、カルサはどのくらいまでの記憶を消せられるの?」

 「私が記憶を消せるのは、きりのみずうみに来た記憶のみです。全ての記憶を消す力
  は、私にはありません。」

 ヒカリの様子を見て、ルーアがカルサに聞くと、カルサは、そう答えた。ルーアはその
 答えを聞いて頷き、ヒカリに近づいた。

 「.....どうやらヒカリが記憶をなくして、ポケモンになってしまったのは、別の原因
  みたいね...。ここに来たような感じがする理由は分からないけど....今は納得して
  おきましょう...。」

 「....うん。そうだね、分かった。」

 ルーアがヒカリの耳元でそう言い、ヒカリは少し考え、その話に頷くことにした。

 「時の歯車かあ♪残念♪」

 すると、突然後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。ヒカリ達が驚いて振り返ると、
 そこには、モルガがいた。

 「時の歯車は、さすがに持って帰っちゃダメだもんね♪」

 「モ、モルガ!」

 モルガが残念そうにそう言い、ヒルビは、モルガがここにいることに驚き、思わず
 叫んでしまった。

 「わあ〜♪すごーい♪」

 「.....この方は?......」

 しかし、モルガはヒカリ達の反応を気にせず、湖を見て跳び跳ねて嬉しそうだった。
 カルサはモルガを見て、困りながらヒカリ達にそう聞いた。

 「僕達のギルドの親方だよ。」

 「はじめまして〜♪友達♪友達〜♪」

 タイガが苦笑いしながら答え、モルガは、それを聞いた後カルサに挨拶した。

 「わーい♪君、凄いね♪はじめまして〜♪友達♪友達〜♪」

 (((((((げ、幻影に話しかけている.....。)))))))

 モルガは、グラードンの幻影に近づいてそう言い、ヒカリ達は、同時に同じことを
 思っていた。

 「それにしても、すばらしい景色だね〜♪来てよかったよ〜♪ルンルン♪」

 モルガは、再び湖を見て、鼻歌混じりにそう言った。



......................



 一方、他の弟子達は......

 「ふうっ。やっと着いたですわ。」

 洞窟を抜け、アマラがそう言った。

 「一息ついてなんかいられないぞ。急ぐのだ!」

 アマラの言葉に、プルトがそう言って皆を急がし、全員が走り出した。

 「ヘイ!あっちに誰かいるぜ!」

 「行ってみよう!」

 すると、人影が見えてきて、アズニ達が近づくと、それは、グラードンだった。

 「ぎょええええええ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!?」

 「グ.....グ....グ......グウウウウ........。」

 「はっきり言ってよ!グラードンってえ!?」

 「きゃーーーーーーーーーーーーー!」

 「ヘ、ヘイ!おいら、食べてもまずいぞ!食わないでくれ〜〜〜〜〜〜!!」

 それを見て、弟子達全員が悲鳴を上げたり、何か言っていたり色々していて、パニック
 状態になった。

 「やあ、みんな♪どうしたの?」

 「お、お、親方様〜〜〜〜〜〜!」

 モルガがグラードンの横を歩きながら話しかけ、リコラは驚いて、モルガのことを
 叫んでしまった。

 「そんなことより、みんな、見てご覧よ♪今、ちょうど吹き出し始めたんだ♪すごく
  きれいだよ♪」

 「「「「「「「「「.......へっ?」」」」」」」」」

 モルガがニコニコ笑いながら湖の方を指して言い、弟子達全員は、何のことか
 分からず、変な声を出しながらも湖の方を見た。すると、そこには、湖の水が吹き
 出し、周りからバルビートとイルミーゼが照らし、真下からは時の歯車がライトアップ
 する、とても幻想的な光景が広がっていた。

 「うわ〜、きれい....。」

 「きれいでゲスねえ〜.....。」

 その様子を見て、弟子達全員が感嘆の声を出した。

 「この湖は、時間によって間歇泉が吹き出すんです。まるで、噴水のように。そして、
  水中からは時の歯車が......また、空中からは、バルビート達が噴水を
  ライトアップして、あのような美しい光景になるのです。」

 「きっと.....きりのみずうみのお宝って、この景色のことだったんだね♪」

 カルサの話を聞きながら、モルガはその光景を見て、そう言った。

 「.............ヒカリ、見ている?本当にきれいね...。ヒカリの過去は何も分から
  なかったけど....でも、手がかりらしきものをいくつかあったし、みんなと一緒
  に、こんなにきれいな光景を見れて、本当に嬉しかったし....ここに来れて
  よかったと思わない?」

 (うん。本当に来てよかったよね。確かに自分が何者なのかは分からなかったんだ
  けど、カルサは、全ての記憶を消すことはできないって言っていたし、アルセウスの
  使いの私と仲が良かったから、嘘もついていないだろう.....。だけど、それなら、
  どうして、私はここを知っていたんだろう?......それに.あの時の歯車を見た時、
  何で私は、こんなにもドキドキするんだろう?.......この胸騒ぎは、いったい
  何なの?......。)

 ルーアが今回のことを話し、ヒカリも、ルーアの話でこれまでのことを思い出し、
 心の中で色々と考えた。



.................



 「色々とお騒がせしました♪そして、本当に楽しかったよ♪ありがと〜♪友達♪
  友達〜♪」

 しばらくして、きりのみずうみの宝のとても美しい光景を見れたということで、ヒカリ
 達はギルドに帰ることにし、モルガがカルサに挨拶した。

 「私は、あなた達の記憶は消しません。あなた達を信頼しているからです。ですので、
  ここでのことは秘密にしていただけないでしょうか?」

 「うん。ありがとう!分かっているよ♪最近、時の歯車が盗まれる事件もあって、物騒
  だしね。ここのことは、絶対に誰にも言わないよ♪プクリンのギルドの名に
  かけて。」

 「よろしくお願いします。」

 カルサの話に、モルガはお礼を言いながら、快く引き受けた。カルサはその返事を
 聞いて、少し微笑み、そう言った。

 「それじゃあ。リコラ!」

 「はい!親方様〜!....それではみんな♪ギルドへ帰るよーーーーーーーーー!!」

 「「「「「「「「「「「「「「おおーーーーーーーーー!!」」」」」」」」」」」」」

 モルガがリコラを呼び、リコラが号令をかけた。弟子達全員が大きな声で叫んだ。こう
 して、長かったギルドの遠征も終わり、モルガとその弟子達は、無事ギルドへと帰って
 いくのでした。ただ、帰る間際のルーアとカルサの会話は、本人達以外の誰にも聞かれ
 ず、会話の内容は、本人達以外誰も知らなかった。



....................



 「.....................ということよ。」

 「.....なるほど。そういうことですか....。事情は分かりました。」

 ルーアが何かを説明をし終わり、カルサは、ルーアのその話に何やら納得した様子
 だった。

 「.....でも、大丈夫なの?ヒカリも彼も動けないから、今はルーアだけなのよ?
  ......それに、今回はかなり厄介そうよ。解決できるの?」

 カルサは、心配そうな面持ちでルーアに次々と質問してきた。

「.....全然平気よ。それに、必死に動いているのよ。私も。ヒカリも。彼も.....。」

 ルーアは、笑みを浮かべてそう言って、ヒカリ達の方に歩いていった。



 この時は、まだ止まっていた。でも、いずれ動き出すだろう....。
 これから先の出来事に...............。






グラシデア ( 2020/04/13(月) 00:55 )