25話 ゲンシカイキと不思議な進化
「.....ゲンシカイキ!?」
「...ほう。お前は知っているのか.....。」
ヒカリの言葉に、グラードンは、関心したように言った。
「ゲンシカイキってなあに?それ?」
「グラードンは、はるか昔、さっきよりも力が強く、姿も違ったの。でも、ちょっと
したきっかけで力を失い、姿もさっきの姿に変わったの。ゲンシカイキっていうの
は、現代で本来の姿に戻るということなの。.....気をつけて!本来の姿に戻っ
て、力も強くなっているから!」
「........そうだね。威圧も変わってきているし...」
エメリの質問に、ヒカリは簡単に説明し、忠告した。ヒカリの忠告に、タイガは、
グラードンを凝視しながら頷いた。
「...ソーラービーム。」
「10万ボルト。」
「はどうだん。」
「はっぱカッター。」
グラードンの攻撃にヒカリ達も技を放ったが、先程とは違い、押し返すことができず
弾かれた。ヒカリ達は、そのことに驚きながらも、グラードンの攻撃をぎりぎりかわす
ことができた。
「じしん。」
「!!アイアンテール。」
グラードンは休ませずに次の攻撃を放ち、ヒカリは技名を聞いて、アイアンテールを
地面に叩きつけて跳び、慌てて空中に避難することができた。
「でんこうせっか。...アイアンテール。」
ヒカリは、また同じようなタイミングで、でんこうせっかで近づき、尻尾を振り上げ
攻撃した。
「はっけい。」
「つるのムチ。」
タイガとエメリも、地震に耐えながらヒカリと同じように攻撃を仕掛けた。
「............。」
「......ううっ。」
「...ぐっ。」
「.....きゃあ。」
グラードンは、無言でヒカリ達の攻撃を受け止め、押し返した。ヒカリ達は、地面に
叩きつけられた。地震はまだ続いていたため、ヒカリには、大ダメージだ。
「....もう一回、つるのムチ。」
「......ヒカリはダメージが大きいから、ここで耐えていて!.....いざというときは
オレンのみを置いとくから、これを使って!」
エメリは再びグラードンに突っ込み、タイガは、ダメージを受け続けているヒカリに
声をかけ、ヒカリのそばにオレンのみを置き、エメリを追いかけるように、グラードン
に立ち向かった。
「はっぱカッター。」
「かわらわり。」
エメリとタイガが連続で攻撃しているのだが、グラードンは、ダメージはあると思うが
平気そうな顔をしていた。地震はずっと続いており、エメリもタイガも疲労が見えて
きた。
「.....エメリ。...ヒカリの方は動けそうにないけど、エメリは大丈夫だよね...?
手伝ってくれるかな?僕がグラードンに近づけられるように......。」
「.........いいわよ。まだまだ戦えるんだから.......。」
タイガは肩で呼吸しながらエメリに聞くと、エメリも肩で呼吸しながら頷いた。
「...ふう。......はっぱカッター。つるのムチ。」
エメリは息を整えた後、グラードンに向かって、連続で攻撃をしながら突っ込んで
いった。グラードンは、それらの攻撃を全て受け止めた。そうしていると、グラードン
に急接近したポケモンがいた。タイガだった。
「きしかいせい!」
きしかいせいは、体力が少ない時の方が威力が上がる技だ。タイガは、体力が消耗した
今ならと思い、賭けのような気持ちでグラードンに攻撃した。しかし、
「.....だんがいのつるぎ。」
グラードンが一瞬雰囲気を変え、オーラのようなものを出した後、攻撃を放った。
タイガの攻撃を吹き飛ばし、近づいていたタイガもエメリも諸に喰らい、壁にぶつか
り、重力に従い地面に落ちた。攻撃が修まり、グラードンだけが立っていた。いや...
「....ゲホッ...ゴホッ......ゲホッ..間、一髪....だった......。」
ヒカリも意識が立ち上がった。実は、だんがいのつるぎが放たれる前、ヒカリが危ない
と感じ、咄嗟に置いてあったオレンのみを食べ、耐えることができた。グラードンは、
ヒカリのことに気づき、ヒカリと向き合った。だんがいのつるぎを放った時に地震も
修まったが、タイガとエメリは気絶し、ぴくりとも動かない。
(....攻撃も防御も、素早さ以外全部上がっている...。タイガとエメリはこれ以上
戦えないし..回復させたくてもさせてくれなさそう.....。私も相性が悪いから、
有効なのは、でんこうせっかとアイアンテールと.........!!そうだ!あれを
使って.........)
ヒカリは、周りの状況を見ながら考えていると、何かを思いついたかのようにバッグの
中から何かを探し始めた。だが、グラードンは、黙って見ることをせず攻撃を仕掛け、
ヒカリは、バッグの中に手を突っ込みながら攻撃をかわし、グラードンに近づいた。
「!あった!!」
ヒカリはバッグからディスクを取り出し、何か技を覚えた。
「.....よし!覚えたてだけど...さっそく使ってみないと.........!」
「マッドショット。」
ヒカリはディスクを閉まって、グラードンに近づいた。グラードンは、攻撃を仕掛けて
くるが、ヒカリに全てかわされた。ヒカリは、グラードンに近くとも遠くもない場所で
「くさむすび。」
ヒカリはそう言い、グラードンは、それにより転びそうになった状態ではあるが、大
ダメージを喰らった。
「アイアンテール。」
ヒカリは、空かさずディスクを出してグラードンに近づき、グラードンのバランスを
とっている足を攻撃し、グラードンを大きく転ばせた。
「やった!」
(この前依頼の報酬でもらった技マシンのことを思い出せてよかった。くさむすびは、
草タイプの技で、相手が重ければ重いほど威力が上がる。......くさむすびを
覚えるのに、アイアンテールを一回忘れたけど、再び技マシンで覚えて、くさむすび
を忘れる。...相性が良い技だけど、タイプが一致していないし、大きなダメージを
与えられなかった......でも............)
ヒカリはそれを見て、うまくいったことに喜びの声を上げ、グラードンの様子を見て、
そう考えた。グラードンは、ゆっくりと立ち上がった。ヒカリの思った通り、ダメージ
はあるが、決定的ではなかった。
「でんこうせっか。」
ヒカリは、すぐにグラードンに近づき、口の中に何かを入れた。
「ばくれつのタネ。」
ヒカリは爆風をグラードンに当てたが、やはりグラードンには、少しぐらいしか効いて
いなかった。
(.....やっぱり少しずつだけど、ダメージを当たえられる。...この調子で....
次は............)
「.....何故だ?」
ヒカリがグラードンの様子を見て考えていると、グラードンが尋ねてきた。
「何故お前は相性が悪い相手に、仲間も倒れた今も戦う。諦めてここを去ればよいの
ではないか?」
グラードンの質問に、ヒカリは少し驚きながらも笑みを浮かべた。
「たとえ、相手との相性が悪くても、仲間が倒れても、私達は諦めない!ここまできた
んだから、ここを乗り越えて先に行きます!私を助けてくれたり、私を庇ってくれた
りしてくれた仲間達のために!!」
「助ける?...庇う?......ああ。こいつらやあの時お前を庇ったあいつか。」
「そうよ!だから、私はここで負けるわけにはいけません!」
ヒカリは当たり前のように言い、グラードンは、ヒカリの話で、倒れているタイガと
エメリを見て、ヒルビのことを思い出した。ヒカリは頷きながら、強い意思の光を
秘めていた。
「...そうか。それなら、これはどうだろうか!だんがいのつるぎ。」
グラードンはヒカリの話を聞くと、笑みを浮かべ攻撃を放った。ヒカリではなく、
すでに気絶しているタイガとエメリに向けて......。
「!10万ボルト!!」
ヒカリはすぐに気がつき、タイガとエメリの前に立ち、攻撃を放った。しかし、
グラードンの方がヒカリより威力があり、ヒカリは、押されていった。
(...ううっ!....まずい!押し返される!!でも、ここで押し返されたら、私だけじゃ
なくて、タイガもエメリも気絶しているのに......!攻撃も力もグラードンの方が
上。.....時間を操っても、有効な手立てにならないし.........どうしよう。私に
もっと。.........やっぱり諦めたくないよ!!)
ヒカリは、それでも押し返そうと踏ん張り、そう強く思っていると、突然ヒカリの胸の
ペンダントが光り始めた。
(!?何!?何!?)
ヒカリが驚くなか、ペンダントの光はどんどん強くなり、ヒカリを包み込んでさらに
強くなり、グラードンの攻撃を吹き飛ばした。
「グオォ!?何だこれは!?」
グラードンもその光の眩しさに目を瞑った。光が修まり、そこにいたのは.........
(あれ?目線が高くなっている気がする?)
ライチュウだった。いや正確に言えば、進化したヒカリだった。
(何これ!?体が大きく!?......オレンジ色に近い色になっている!?尻尾も長い!?
えっ!?)
ヒカリは、困惑しながら自身の体を見て驚いていた。
「何が起こったのか知らないが.........行くぞ!」
(えっ!?えっ!?)
グラードンはそんなこと関係なしという感じに近づき、ヒカリは、いまだに困惑し
ながらもかわそうとしたが、体が前よりも大きく重くなったことでうまく動けず転んで
しまった。ヒカリが起き上がった時には、もうグラードンが近くまで迫っていた。
(こうなったら......イチかバチか...!)
「アイアンテール!」
目の前でグラードンが右腕を上げ、ヒカリは、半場やけくそにグラードンの攻撃を受け
止めようと尻尾を振った。ヒカリは押し返されると思っていたが、その予想とは違い、
それを受け止め、押し返すことができた。
(...えっ!?えっ!?うそ!?)
「...うむ。先程よりも手応えがあるな。」
ヒカリはその状況に困惑し、グラードンは、押し返された右腕を見ながら感想を言い、
今度は左腕で攻撃してきた。そして、またヒカリが尻尾で受け止め、押し返した。
グラードンは押し返されたはずみに、そのまま地面に倒れてしまった。
(......吸って...吐いて.........よし!落ち着こう!今の私は、何故か強くなって
いる。力はグラードンより勝っている。でも、有効な技がない。体が大きくなった
影響で動きにくいし.......身動きの取りやすく、有効な攻撃ができる方法.....
何かないかな......?)
ヒカリは、気持ちを落ち着かせようと深呼吸をし、今の状況とグラードンの勝てる方法
について考えた。すると、再び突然体が光り、目を開けると、
(...ん?さっきより浮いているような.........)
ヒカリが違和感を感じ、自身の体を見ると、あまり変化はないが、尻尾をサーフィンの
ように乗って、浮いていた。
「ええええーーーーーーーー!?」
再びの変化に、ヒカリはとても驚き、声に出てしまった。
「.....ほう。また姿が変わるか。.....マッドショット。」
グラードンは、立ち上がりながらヒカリの姿を見てそう言い、少し考えてから技を
放った。
(えっ!?どうしよう?かわせるかな?相殺できるかな?.......えーい!もう!)
「10万ボルト。」
ヒカリはそれを見て、どう対処しようかと考え、またやけになって、かわしながら
10万ボルトをコントロールし、マッドショットと相殺するという滅茶苦茶なことを
し始めた。できないと思ったが、ヒカリはグラードンの真上に一瞬で移動でき、
10万ボルトはマッドショットを貫き、グラードンに当たろうとしたが、グラードンには
効果がないので、ヒカリが真上からグラードンを囲むように電撃をコントロールし、
グラードンの動きを封じた。
(やった。......驚くのはもう止めよう。驚いてもきりがなさそうだから、動じない
ように....。冷静に考えて.....ん?そういえば、動いた時のことを改めて考えて
みると...これって............。試してみよう...。)
ヒカリはその様子を見て、喜びと同時に困惑もあったが、気持ちを落ち着かせ冷静に
考えてみて、何かを思いつき、試すことにした。
「サイコキネシス。」
ヒカリは、サイコキネシスを使い、グラードンを壁に吹き飛ばした。そう、ヒカリは
移動した時に、ルーアのサイコキネシスで運ばれた時の感覚に似ていて、もしかしたら
使えるかもしれないと思い、試してみたらできたということだ。
(...勝てるかもしれない。......けど、体力は私もグラードンも限界に近い。....
次で決めないと.........)
ヒカリがそう思うのと同時に、グラードンがヒカリの方を向き、対峙した。
「これで終わらせてやろう!だんがいのつるぎ!」
「確かに終わりにします。ですが、勝つのは私達です!10万ボルト!サイコキネシス!」
ヒカリとグラードンは、互いに攻撃を放った。グラードンは全力で最強の攻撃を放ち、
ヒカリは、10万ボルトを放った後、威力不足かもしれないと思い、サイコキネシスを
放った。互いの攻撃はぶつかりあい、相殺した。それを見て、グラードンは、相手の
出方を見ようとヒカリの方を見たが、そこには、ヒカリの姿がなかった。
「何!?......どこに行った!?」
「.........でんこうせっか!!」
グラードンが辺りを見渡し探していると、突然上からヒカリの声が聞こえた。ヒカリ
は、攻撃を放ち終わった後、すぐに空の上に移動し、チャンスを待っていた。ヒカリ
は、凄いスピードでグラードンに近づき、全力で当たった。
「グオオ....グオオオオオオ......。グオオオオオオオオオオオオオオオォォォ!!」
グラードンは、呻き声を上げて倒れた。
「...や.....や、やった。ついに..................」
ヒカリがそう呟くと、体が再び光り、ヒカリは、元の姿に戻っていた。