19話 親友 ルーア
「久し振りね。ヒカリ。」
「本当に久し振り、ルーア。」
ヒカリとルーアは、懐かしそうにそう言った。ヒルビ達は、その様子を見て、驚いて
いたり、喜んでいたり、感情がごちゃ混ぜになっていた。ヒカリのことを知っている
ポケモンに、こんなところで会うなんて思わなかったからだ。
「.....なんだ?お友達のために、俺様達に喧嘩売ったのか?おめでたいやつだ。
クククッ。」
「そうですね、アニキ。あいつらと一緒に、そいつもやりませんか?」
「ケッ、そりゃあいいかもな。」
一方、ルブンク達は、邪魔をしたルーアがヒカリの知り合いだと分かり、ルーアも倒そ
うと考えていた。ヒカリとルーアにも、その声が聞こえ、ルブンク達の方を向いた。
「ヒカリ、久し振りに一緒に戦う?」
「うん。そうするつもりだよ。でも、最初は私が戦うから。」
「分かった。私は、ヒカリの手助けと後処理をするわね。」
ヒカリとルーアも、戦う気満々にそう話し合い、ヒカリが一歩前に出た。
「もう一回だ。くらえ!俺様とクンスの毒ガススペ............」
「10万ボルト。」
それを合図に、ルブンクとクンスが毒ガスを放とうとしたが、それより先に、ヒカリが
電撃を放った。ルブンク達は、いったん攻撃を止め、ヒカリの電撃をかわした。
「クククッ。こんなの簡単だ。改めてもう一度くら...........」
「ぎゃあああああああ!!?」
ルブンクがヒカリの電撃を鼻で笑い、再び毒ガスを放とうとした時、ツァイトが突然
叫び声を上げた。ツァイトの方を見ると、かわしたはずのヒカリの電撃を喰らって
いた。さらに、他にも電撃が2つに分かれ、ルブンクとクンスそれぞれの目の前まで
迫っていた。
「ちっ!何が.........」
「どうなって.........ぐわああああああああ!!?」
ルブンクとクンスは、なんとかかわしたが、電撃がUターンして、ルブンク達に再び
向かってきた。クンスは、電撃を喰らってしまい、ルブンクは、その様子を見て、驚き
ながらも電撃をかわした。
(.....こいつ...電撃をコントロールしてやがる...。しかも、精密に...!?)
ルブンクは、再びUターンしてくる電撃を見て、そう思いながら必死でかわした。
すると、ルブンクを攻撃する電撃が2つに分かれ、ルブンクは、電撃に囲まれた。
「...ちっ!!」
「ぎんいろのかぜ。」
「ぐわあああああああああああ!!?」
ルブンクは、舌打ちをしながら毒ガスを放ったが、風によって吹き飛ばされた。その
風は、ルーアが放った風だった。毒ガスが吹き飛ばされたのと同時に、ヒカリは、再び
電撃をコントロールし、ルブンクは、電撃を喰らった。
「.....ちっ。...おの、れー........」
「...思ったより丈夫みたいね。ヒカリ、久し振りにやってみる?」
「うん。」
しかし、ルブンクは、電撃を喰らってもまだ立ち上がろうとした。そんなルブンクの
様子を見て、ルーアは、少し感心しながらヒカリに提案し、ヒカリは、その提案に
頷いた。
「「"風雷"」」
「ぐわあああああ!?......」
ヒカリとルーアは、同時にそう言い、雷を帯びた風を放った。その風を喰らい、
ルブンク達を叫び声を上げたが、すぐに修まった。風が止むと、そこには、電撃で
痺れさせられ、凍らされているルブンク達の姿があった。
「ん?ルーア、どうしてこごえるかぜを?」
「それは、氷状態にしておいた方が動くことは難しいからよ。しばらくの間、あいつら
は動けないわ。」
「....うーん...でも、ルブンク達がいないと...リコラが心配すると思う.....。」
「それなら、リコラというポケモンに、朝礼までには戻ってきますと言って、ルブンク
達は、朝までに氷状態から解放するのはどうかな?」
「確かにその方が邪魔されないし、ルブンク達がそう言っていたと言えば、リコラも
心配しなくていいよね。」
ヒカリとルーアは、凍ったルブンク達を見ながら普通に話し合っていた。話がまとまる
と、ヒカリは、凍ったルブンク達に触れ、目を瞑った。すると、氷が一瞬だけピカッと
光り、そのすぐ後、ヒカリは、ゆっくりと離れた。
「...えーっと......ヒカリ、その子.........誰?」
話がトントン拍子に進んでいくため、なかなか話せなかったヒルビ達は、きりがよさ
そうなところで話しかけることができた。
「あ、ごめん。紹介するね。私がヒルビ達と出会う前に一緒にいた子で、私の親友の
ルーア。ルーア、こちら、今、私と一緒に探検隊をやっているヒトカゲのヒルビで、
リオルのタイガで、チコリータのエメリで、ケロマツのサロファ。」
「はじめまして。ルーアよ。」
「こちらこそはじめまして。助けてくれてありがとう。」
ヒカリが紹介し、ルーアもヒルビ達も挨拶し合った。
「そういえば、ルーアはどうしてここにいるの?」
「ヒカリを追って、ここまで来たの。ヒカリ達は、どうしてここに?」
「僕達は、食料調達のために、セカイイチと採りに......あ!」
ヒカリは、ルーアがここにいることに疑問に思い、そう聞くと、ルーアは、当たり前の
ようにそう答え、尋ねた。ヒルビが代わりに答えている間に、目的を思い出し、セカイ
イチの木に近づいた。
「あ!あった!!...でも、無事なのは2つしかない。」
ヒルビは、無事だったセカイイチ2つを抱えてそう言った。他は、毒ガスで腐っていた
り、ドロドロになってしまっていたりした。
「2つでも採れただけでもいいが、リコラは、文句を言いそうだな。だが、木にはもう
成っていないし、あきらめるしかないか。」
サロファは、周りを見渡しながら、あきらめたようにそう言い、帰ろうとした。
「...それなら大丈夫よ。ヒカリ、できそう?」
「......できると思う。試しにやってみたかったから、ちょうど良かった。」
「えっ!?」
帰ろうとするサロファ達を、ルーアが止めた。ヒカリとルーアは、何やら相談し合い、
少し経つと、ヒカリは、セカイイチの木の前に立ち、木に触れ、目を瞑った。すると、
木から実ができ、次第に赤く熟していった。
「何が起きているんだ!?」
「...ヒカリ!それくらいでいいと思うよ。.....それにしても、相変わらずヒカリの
能力はさすがね。」
ヒルビ達が驚き、ルーアは、動じずにそう言い、セカイイチの木を見ていた。先程まで
何も成っていなかった木に、セカイイチが大量に成っていた。
「サイコキネシス。......ヒカリの能力とか色々聞きたいことはあると思うけど、
それは後でね。セカイイチをギルドに届ける方が先でしょう?」
「ルーアは、この後どうするの?」
「私もテレポートでギルドに行くわ。ギルドに行く予定があってね。」
ルーアは、念力でセカイイチを採りながらそう言った。ヒカリ達は、ルーアの採った
セカイイチをバッグに詰め、いくつか手に持ち、ヒカリ達はバッチを使い、ルーアは
テレポートで、その場を去った。
..............................
ギルドに帰り、ヒカリ達がセカイイチを渡すと、リコラは、泣いて喜んでいた。その
時、ルーアも近くにいて、ルーアのことを聞かれたが、ルーアが少し運ぶのを手伝った
という感じで話をして、ルーアも、ヒカリ達の部屋に入ることができた。
「...さて、いくつか話しましょうか。」
ルーアはそう言い、どこかに隠し持っていた一つのセカイイチを、数枚の葉(マジカル
リーフ)で、六等分に切り分けた。ヒカリ達は、切り分けられたセカイイチを手に
取り、食べ始めた。
「そうね...。まず、今から話すこと全てを誰にも言わないって、約束してくれない?
それくらい他言無用にする必要がある話なの。」
「.....そんなに言ってはいけない話なんだ...。」
「ええ。けど、この話をする必要があり、許可も貰えたから話せることなの。絶対に
言わないでね!」
「う、うん。分かった。」
ルーアは、他には話さないように念押しし、ヒルビ達は頷いた。
「...実は、ヒカリの記憶喪失は二度目なの。ヒカリが人間からポケモンになった時
に、記憶を失った後、私とヒカリは出会ったの...。だから、私は、人間だった時の
ヒカリは知らないの。」
ルーアの話を聞いて、ヒルビ達は驚いた。ヒカリが二度も記憶を失っているとは、
さすがに思ってもいなかったからだ。
「......次に私達のことを話すね..。私とヒカリは、探検隊ではないけど、主に依頼
された地域やダンジョンやポケモンの調査、悪事を働くポケモンを倒したり、依頼
された物を捜し、取りに行ったり、情報を集めたりする組織のようなものに所属して
いるの。」
「話を聞くと、探検隊に似ているけど......この話も話しちゃいけないんだよね?」
「ええ。ここまでの話だと探検隊のようで違うことをしていると言っていて、話して
も大丈夫そうだけど、問題は、ここからよ。私達は、あるポケモンの依頼というより
命令で行動しているの。」
「あるポケモン?」
ルーアは、誰かが来ないか確認しながら静かに話した。ヒルビの質問も、予想して
いたかのように答えていた。サロファの質問で、ルーアは、いったん息を吸い、
「アルセウス様よ。」
そう言った。
「ア、アルセウスだと!?」
「.....ねえ、......アルセウスって.........」
「ドアホ!!あんた、知らないの!?」
「この世界を造ったという神と言われるポケモンなんだよ!」
「えええ!?つまり、神様っていうこと!?」
ルーアの言葉に、ヒルビ以外が驚き、ヒルビは何なのか分からず、尋ねようとしたら、
エメリに怒鳴られ、タイガに説明された。タイガの話で、やっと分かったヒルビは、
絶叫した。
「...私達は、アルセウス様の命令で、この世界に害があるかどうかを調べ、害がある
と確定されたら阻止をし、必要とされた物、危険と判断された物を回収するのが仕事
なの。私達のようなポケモンは他にもいて、そういうポケモン達を、アルセウスの
使いと呼ばれているの。」
「...アルセウスの使い、伝説で聞いたことがある。この世界の創造神とされる
アルセウスの命令で、この世界の秩序を守る、アルセウスの手となり、足となる
ポケモン達。アルセウスの使いと言われるポケモン達は、とてつもなく強いとされて
いる。...ヒカリとルーアの実力を見れば頷けられる。あの時の戦い、圧倒的な実力
だったが、二匹ともまだ余力を残していた。」
ルーアは、ヒルビ達が落ち着くのを待ってから言い、サロファは、アルセウスの使いと
いう言葉に反応し、ルーアに確認するかのように言った。
「...そういえば、ヒカリ、あの時、電撃をコントロールしたり、木にセカイイチを
成らせたりしていたけど、今まで見たことなかったし、あれは......」
「電撃のコントロールは、練習してできたことなの。セカイイチの木の時のあれは、
私の能力。木の時間を進ましたの。」
「時間を?」
ヒルビが、サロファのあの時の戦いという言葉で思い出し、そう尋ねた。ヒカリは、
自分の能力について話し出した。ヒカリの言葉に、ヒルビは疑問に思い、そう尋ねた。
「ヒカリには時間を止めたり、進ましたり、戻したりする能力があるの。」
「今まではそのことを忘れていて、あの時、能力と電撃のコントロールのことを思い
出したの。と言っても、全て思い出した訳ではなくて、ルーアのことと、時間を操る
ことができることと、電撃をコントロールすることができることしか思い出せなかっ
たの。」
ルーアは、ヒカリの代わりに話し、ヒカリは、今まで使えなかった理由を話した。
「...時を操る能力......だから、ヒカリは、過去や未来を見ることができたんだ。」
「......ん?...過去や未来を見ることができる?どういうことなの?私と一緒にいた
時、ヒカリにそんなことはできなかったはずよ。」
「えっ?」
ヒルビが、ヒカリとルーアの説明で納得していると、ルーアがそう言った。ルーアの
言葉に、ヒルビ達は驚いた。
「僕達と一緒にいた時、ヒカリに不思議なことがあったんだ。何かに触れることに
よって、それに関する過去や未来を見ることができたんだ。それも、すでに4回も
起きているんだ。」
「!.......もしかしたら...ヒカリが記憶を失ったことにより、能力が少し変わった
のかもしれない。」
タイガの話に、ルーアは、驚きながらも考え、そう答えた。
「能力が変わる?」
「ええ。ヒカリも実感しているでしょう?能力を使った時.....。」
「...うん。記憶を失う前は、技名をつけて、それを言わないと、発動しなかったし、
コントロールもできなかったんだけど、今は、意識するだけでできるようになって
いるの...。記憶を失ってから、何らかの変化が起きたんだと思う...。.........
そういえば、ルーアも普通は使えないぎんいろのかぜを使っていたけど........」
「...ええ。私もヒカリと離れてから色々あって、使えるようになったの...。」
ヒルビの疑問に、ルーアは、ヒカリを見ながら聞き、ヒカリは、頭を抑えながらそう
答えた。ヒカリは、記憶を辿っていて疑問に思ったことをルーアに聞き、ルーアは、
事情があって詳しく話せないという雰囲気でそう答えた。
「ねえ、ルーア。ヒカリの記憶喪失に心当たりある?」
「...あるけど........ごめんなさい。さすがに、これに関しては話せないわ。」
「私も記憶にないんだけど、このことは言ってはいけないという気がするの。」
「...まあ、そういう事情もあると思うし、だからいいよ。」
エメリの質問に、ルーアは、申し訳なさそうに言い、ヒカリもそう言ったので、タイガ
達は、それ以上聞かなかった。
「......ヒカリの記憶は完全に戻ってないけど、ヒカリは、アルセウスの使いに
戻るの?」
「戻るとなると、探検隊を止めることになるんじゃないか....?」
「そうだね...。」
「えっ!?ヒカリ、探検隊を止めるの!?」
エメリの話に、タイガとサロファは今後のことを考え、ヒルビは、サロファ達の話を
聞いて、驚いた。
(...そうか....。探検隊になる前に、アルセウスの使いだったから、探検隊を止める
ことになるのかな...?......でも...ヒルビ達とお別れしたくないな......。)
ヒカリは、ヒルビの様子を見てそう思いながら、自然とルーアを見ていた。
「...大丈夫よ。これに関しては、もう手を打っているから。」
「「「「「えっ?」」」」」
ルーアは、ヒカリの視線に気づき、微笑みながらそう言い、ヒカリ達は、何のことだか
分からず、疑問符を浮かべた。すると、リコラが藁のベッドを持ち、部屋に入って
きた。
「ほれ。お前のベッドだ♪」
「ありがとうございます。」
リコラがルーアにベッドに渡し、ルーアは、受け取りながらお礼を言った。リコラは、
ベッドを渡すと、すぐに部屋を出た。
「ル、ルーア?」
「勝手なことをして悪いけど、私も探検隊『ジュエル』に入ることにしたの。」
「「「「「ええっ!?」」」」」
ヒカリが聞くと、ルーアは、さらっととんでもないことを言いながら藁のベッドを机の
上に置いた。ヒカリ達は驚いた。
「実は、既に許可を貰っているの。ヒカリ達が何故だか知らないけど、上から落ちて
きた時、ヒカリが探検隊バッチをつけていたから、探検隊になっていることが分かっ
たの。」
「やっぱりあの時、私達をサイコキネシスで温泉まで運んだのは.........」
「私よ。ヒカリ達が何故上から落ちてくるのかよく分からなかったけど、ヒカリ達は
濡れていたし、温泉が近くにあったから、ヒカリ達を温泉まで運んだの。」
ルーアの話に、ヒカリは、あの時のことを確信し、ルーアは頷いた。
「ヒカリが探検隊をやっているということは、それなりの事情があるっていうこと
だから、ヒカリに関して少し調べた後、ヒカリに会って話しても、ヒカリは探検隊を
続けたいと思うんじゃないかと思って、ヒカリが探検隊を続けられるように、ヒカリ
に休暇をとっていいか許可を貰えるようお願いしたの。」
「休暇?」
「休暇にしたら、アルセウス様の使いとしての仕事を休みにして、しばらく探検隊を
続けられるわ。ただ休暇の条件として、私も休暇することになったから、ヒカリも
いるし、私も探検隊になることにしたから、よろしくね。ギルドの方には、既に話を
つけているから。」
ルーアは、これまでのことと探検隊に入る理由を率直に説明した。ルーアの話を聞き、
ヒカリ達は互いを見合い、頷いた。
「...まあ、別にいいんじゃないか。」
「僕達を助けてくれたし、ヒカリの親友だし、大賛成だよ!」
「ヒカリとも一緒にいたいと思うし、条件という理由だとしても、仲間が増えるのは
賛成だよ。」
「あたしも、メス3匹になるのは嬉しいわ。」
「ルーア、色々ありがとう。よろしくね。」
「こちらこそ突然だけど、よろしくね。」
ヒカリ達は賛成し、こうして、ルーアは、ヒカリ達の探検隊に入ることになった。
ルーアは、ヒカリ達が探検隊を始める時に貰ったリボンの中で余った濃いピンクリボン
を記念に貰い、身につけた。その時、ヒカリ達は、ルーアがヒカリ達と同じような
ペンダント、ブルーアパタイトのペンダントに気がついたのだった...。
...........................
翌朝、ルーアは、朝礼で弟子全員に自己紹介をした。朝礼には、ルブンク達も参加して
いたが、疲労が凄く貯まっていた。実は、リンゴの森の時、ヒカリが朝に氷状態が解け
るように時間設定したことにより、ルブンク達は氷状態から解けた後、もうすぐ朝礼が
始まるため、ダメージとかもそのままの状態でここに来たのであった。