第三章 再会と遠征
18話 リンゴと虫と再会と
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 リンゴの森

 「ギャアアアアアアーーー!!」

 「うん。このリンゴもおいしい。」

 状況が理解できないだろう。始まりは、森に入ってすぐのことだった。エメリが口では
 色々言っていたが、本当はリンゴを食べたかったらしく、入ってすぐ、エメリは、
 さっさとヒカリ達より前に出て、先に進んでしまった。

 「おい!エメリ!離れるな!!」

 「そうだよ。ここは..............!?」

 サロファとタイガは、慌ててエメリを止めようとした。次の瞬間、エメリがピタッと
 止まった。サロファとタイガの言ったとおり止まったが、サロファとタイガは、顔が
 ひきつっていた。ヒルビも、エメリの目の前にいるポケモンを見て、顔を真っ青にし、
 エメリを見た。そこにいたのは、キャタピーだった。ヒルビが顔を真っ青にしている
 一方、ヒカリには、何が何なのか分からず、ヒルビと同じように、エメリを見た。
 すると、エメリの足がガタガタと震え始め、そして、

 「ギャアアアアアアーーー!!」

 エメリは、大きな悲鳴を上げ、それと同時に、つるのムチを放った。つるのムチは、
 あちこちに放たれ、ヒカリ達は、巻き込まれないように、エメリから離れた。エメリの
 つるのムチでキャタピーが倒れても、エメリは、止めようとせず、そのまま暴れ
 まくった。この騒ぎで他のポケモン達が向かってくるが、エメリのつるのムチによって
 倒された。エメリのつるのムチは、木も叩きつけ、リンゴが落ちてくる。ちなみに、
 そのリンゴは、ヒルビがのんきに食べている。

 「......これは.....どうする?......」

 「.....さすがに、まだ一階にいるのは......。」

 「...ああ、日が暮れるな.........。」

 ヒカリがそう言いながらエメリの様子を見ていると、突然エメリがまたピタッと
 止まり、バタッと倒れた。ヒカリ達は、突然のことに驚きながらも、エメリに近づ
 いた。エメリから寝息が聞こえた。眠っているようだ。

 「......眠っている?」

 「...ああ。おそらく、原因はあれだろう。」

 サロファが指を指した方を見ると、そこには、パラスが倒れていた。そのパラスは、
 他のポケモン達同様、エメリに倒されたようだった。

 「...なるほど、エメリは、パラスが倒れる前に放った技か、パラスの特性のほうしに
  よって、眠ってしまったということね。...それにしても、エメリが、虫ポケモンの
  ことが苦手だなんてね.......。」

 「ハハハ。僕達も、初めてそれを知った時は大変だったよ。でも、エメリに虫ポケモン
  を見せなければ暴れないことが分かって注意していたんだけど、今回は、間に合わな
  かったな。」

 ヒカリは、それを見て納得し、タイガは、苦笑いしながらエメリを背負い、エメリの虫
 ポケモン嫌いでの暴走の時のことを思い出していた。

 「エメリが目覚めるまでに、さっさと行くぞ。ヒルビ!いつまで食べているんだ!!」

 「ええええ〜〜〜!?」

 ヒカリとタイガの様子を見ながら、サロファはそう言い、未だにリンゴを食べている
 ヒルビを引きずった。ヒルビは、不満そうな声を上げていた。




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 その後、ヒカリ達は、森の奥に向かって進んでいった。特に、ここは草や虫ポケモンが
 多く、相性の良いヒルビを先頭にし、またサロファもつばめ返しを使ったため、敵を
 ものすごい勢いで倒していき、ヒカリ達は、凄いスピードで最奥部近くまで進むことが
 できた。ただ、ヒカリは、スピアーを見た瞬間、スピアーに襲われていて、誰かに助け
 られた光景が頭に浮かんだ。そのことが、ヒカリにとっては気がかりに思っていたが、
 ダンジョンの中ということを思い出し、ダンジョンの中を進むことに集中した。

 「ふう........大分進んだけど、まだかな?そろそろ最奥部のセカイイチの成る木
  かな?」

 「近づいてきていると思うが、気を抜くな。速くこの森を抜けないと、エメリがいつ
  起きて、また暴れるか...................」

 「.....?......うーん?............あれ?...あたし、何していたんだっけ?」

 「「「「!?」」」」

 ヒルビの言葉に、サロファはそう言って、速くここを抜けようと急かそうとした時、
 エメリが目を擦りながら起きてしまった。ヒカリ達は、エメリが起きたことに驚き、
 まずいと思っているが、すぐに動くことができなかった。

 「..........あー....確か.....あの鳥に言われて、食料調達でここにきて......
  それで、森の中に入ってすぐ、キャタピーに.........キャタピー?........虫!?
  ギャアアアアアア〜〜〜〜!!」

 エメリが頭を手で抑えながら、眠るまでのことを振り返り、キャタピーのことを思い
 出した途端、エメリは、悲鳴を上げながらタイガの背から飛び降り、走り出した。

 「エメリ!待って!!」

 「おい!落ち着け!!」

 「エメリ!離れたら危ない...........」

 ヒカリ達は、突然のエメリの行動に驚きながらも、エメリを追いかけ、止まるように
 言うが、また遅かった。止まったエメリの目の前には、スピアー2匹とバタフリー1匹が
 いた。森に入ってすぐのことと同じだった。

 「ギャアアアアアアアアアアアア〜〜〜〜〜!!」

 エメリは、さっきよりも大きな悲鳴を上げ、つるのムチを滅茶苦茶な方向に放った。
 ヒカリ達は、すぐにエメリから離れ、無事だったが、スピアーとバタフリー達は、
 エメリの猛攻ですぐに倒されたが、エメリは、またしても止めようとせず、そのまま
 続けた。状況は、何もかも滅茶苦茶で大変なことになろうとしていた。

 「......サロファ...これは............」

 「...ああ。.......まずいな.....。」

 「えっ!?おいしいよ。」

 タイガとサロファがエメリの様子を見て、頭を抱えている中、ヒルビは、またエメリの
 つるのムチによって落ちたリンゴを食べていた。それを見て、ヒルビは、サロファから
 拳骨をくらい、文句を言うが、サロファは、聞き入れなかった。

 「.....あの。...エメリには悪いけど、これを使うのはどうかな?」

 ヒカリは、少しおどおどしながらバッグから何か出した。ヒカリが出したのは、
 すいみんのタネだった。

 「うん。エメリには悪いけど、いいと思う。」

 「ああ。被害が最小限に留められる。」

 タイガとサロファは、それを見て賛成した。サロファは、ヒカリからすいみんのタネを
 受け取り、エメリに少し近づいた。タイガも近づき、サロファの隣に並んだ。

 「....いくよ!はどうだん。」

 「そりゃあ!」

 タイガは、サロファに合図をしてからはどうだんを放ち、そのあとすぐ、サロファは、
 エメリに向けて、すいみんのタネを投げた。タイガのはどうだんが前を突き進み、タネ
 は、はどうだんの後を追う。エメリのつるのムチがくるが、タイガのはどうだんに
 ぶつかり、その隙に、タネはエメリに向かって飛んでいき、エメリの口の中に入った。
 その瞬間、エメリは、バタッと倒れ、眠ってしまった。ケロムースを投げることがある
 ので、サロファのコントロールはばっちりだった。

 「.....よかった。」

 「これで、少し時間がある。」

 「急ぐぞ!ヒルビ、もう食べるのは止めろ!!」

 「え〜!?もうちょっと!!」

 エメリの暴走が止まったことに、ヒカリがほっとし、タイガもほっとしながらエメリを
 背負い、サロファは、先を急がせ、ヒルビにリンゴを食べるのを止めるように言い、
 ヒルビは、まだ不満そうにリンゴを頬張っていた。その時、ヒカリ達の周りから殺気を
 感じた。ヒカリ達がそのことに気づき、周りを見渡すと、スピアーとバタフリーの大群
 がヒカリ達を取り囲んでいた。

 「.........これってやっぱり、エメリが暴れ過ぎが原因だよね......。」

 「.....うん。...どうやら、エメリを止めるのが遅かったみたいだね...。」

 「それより!この状況、どうすればいいの!!?」

 「....仕方ないだろう。.....もう戦うしかなさそうだ。いざという時には、道具も
  ある。」

 ヒカリとタイガは、顔をひきつらせながらそう言い、ヒルビは、さすがのこの状況の
 ため、リンゴを食べるのを止め、慌てながらそう言い、サロファは、覚悟を決め、戦闘
 態勢に入った。サロファの言葉で、ヒカリ達も戦闘態勢に入った。

 「タイガ、エメリを背負っているから、不思議玉を使ったり、私達を回復させたり、
  攻撃を避けたり、遠くにいる敵を攻撃したりして、なるべくエメリを起こさない
  ようにして。さすがに、ヒルビとサロファと私じゃ、ちょっと..............」

 「わかった。」

 「もう!エメリ、やり過ぎだよ!!」

 「まったくだ。この森を抜けたら、エメリには、色々と言わないといけなさそうだ。
  それより、そろそろ攻撃してくるようだ。行くぞ!!」

 ヒカリは、眠っているエメリとそのエメリを背負っているタイガのことが心配になり、
 エメリを背負っているタイガにそう言いながら不思議玉2つとオレンのみ3つを渡し、
 タイガは、ヒカリの話にそう返事し、不思議玉2つとオレンのみ3つを受け取った。
 ヒルビは、もはやヤケクソの状態でエメリに文句を言い、サロファもそれに同意
 しながら、ヒカリ達にかけ声をかけた。サロファの声と同時に、敵がヒカリ達に襲い
 かかり、それを見て、タイガは、持っている敵縛り玉を投げた。敵縛り玉から光が溢れ
 出ると、ヒカリ達は、敵に近づいた。そして、しばらくの間、何かを斬るような音が
 聞こえ、炎と雷が飛び散るのだった。





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 リンゴの森の奥地

 その後、ヒカリ達は、スピアーとバタフリーの大群を倒し、森を抜けることができた。
 森を抜けてすぐ、エメリが起き、エメリは、サロファに滅茶苦茶怒られた。サロファの
 説教が終わると、ヒカリ達は、セカイイチの成っている木を探した。

 「...広々としている。ここがリンゴの森の一番深いところなのかな?」

 「リコラの話によると、ここにセカイイチがあるはずなんだけど。」

 「あっ!あそこを見て!あの大きな木についているの、あれがセカイイチじゃないの
  かな?」

 ヒカリ達が辺りを見渡していると、他の木より大きな木の姿が見え、その木に成って
 いるリンゴも、他のリンゴと比べて、とても大きかった。

 「さてと。どうやってセカイイチを採ろうか?」

 「そうね。けど......ちょっと待って、そこにいるのは誰!!」

 「ここまで追いかけてくるなんて、何か用でもあるのか!!」

 ヒルビの疑問に答えながら、ヒカリは、セカイイチの木を見上げて言った。タイガも
 気づいていたらしく、畳み掛けるように言った。

 「クククッ。気づいていたのか。それと、そんなの簡単じゃねえか。」

 そんな声が聞こえたのと同時に、三匹のポケモンが木から飛び降りてきた。その三匹
 は、ヒカリ達にとって見覚えのあるポケモン達だった。

 「お、......お前達は!?」

 「クククッ!ドクローズ参上!」

 「へへっ。お前達、来るのが遅かったな。」

 「俺達は、ここでセカイイチを食べながらお前達が来るのを待っていただぜ。ケッ。
  来るのが遅いんで食い過ぎちまったよ.........ゲップッ!」

 ドクローズは、木から飛び降りてきて早々好き勝手に言い、ゲップしていた。

 「な、なんだって〜〜〜〜!!」

 「落ち着け、ヒルビ。あいつら、セカイイチを食べたって言っているけど、まだいくつ
  か木に残っている。あいつらを倒して、セカイイチを持って帰るぞ。」

 「そうか......そうだね。」

 ドクローズの話を聞いて動揺したヒルビを、サロファが落ち着かせ、サロファの話を
 聞き、ヒルビは、落ち着きを取り戻し、ドクローズと戦えるように構えた。

 「クククッ。俺様達を倒すだと?失礼なやつだな。俺様は、お前達の仕事に協力して
  やろうと考えてたんだぞ。」

 「えっ!?」

 「さっき、どうやってセカイイチを採ろうかって言ってたよな?そんなの簡単なこと
  だ。見てみろ。」

 ルブンクが笑いながらそう言い、ヒルビは、その言葉に少し動揺しながらも身構え、
 ルブンクは、ヒルビの様子を気にせず、木の前まで移動すると、物凄い勢いで木に
 頭突きした。すると、木が揺れ始め、セカイイチが落ちてきた。

 「あっ!セカイイチが!」

 「ほら、簡単だろ?さあ、セカイイチを拾って、早くギルドに戻るがいい。クククッ。」

 「ケケッ。」

 「へへっ。」

 ルブンクは、そう言いながら笑みを浮かべていた。クンスもツァイトも、後ろで笑みを
 浮かべていた。

 「............。」

 「.....ん?どうした拾わないのか?せっかく、親切にしてやっているというのに。
  クククッ。」

 しかし、ヒカリ達は、一歩も動かず、ドクローズを睨み、身構えていた。ルブンクは、
 そんなヒカリ達の様子に不思議そうに聞いた。

 「......どうせ、また何か企んでいるんだろ?僕は、騙されないぞ!!」

 ヒルビがそう叫ぶと、ルブンクは、驚愕の表情を浮かべた。

 「驚いた!こいつら全然騙されねえ!」

 「なんだ。つまんねえ。」

 「クククッ。ひっかからなかったのは、少し残念だが、しかし、それでお前達はどう
  するというのかね?」

 ルブンク達は、ヒカリ達にも聞こえるくらいの大きさの声で話し合い、そのあと、
 怪しげな笑みを浮かべ、ヒカリ達にわざとらしく問いかけた。

 「そんなの決まっているじゃない!あんた達を叩きのめして、セカイイチをギルドに
  持って帰るだけよ!!」

 「そうだ!そうだ!」

 エメリは、自信満々にそう言い放ち、一歩前に出た。ヒルビは、エメリの話に賛成し、
 やる気充分だ。

 「ほお、今日はやけに威勢がいいな。初めて会った時は、ビビっていたというのに。
  クククッ。」

 「ううっ......。あの時確かにひるんじゃったし、今も少し怖いけど、でも、もう
  負けない!絶対に怯むもんか!!」

 ルブンクの挑発に、ヒルビは、強く言い返した。ヒルビの成長に、ヒカリが少し喜んだ
 後、すぐにルブンク達を睨んだ。

 「.....よかろう。お前達のその勇気に免じて、俺様達も本気で相手をしてやろう。
  クククッ。」

 ルブンクは、怪しげな笑みを浮かべながらそう言い、ツァイトが後ろに下がり、
 ルブンクとクンスが前に出た。ヒカリは、それを見て、何か仕掛けてくると予感し、
 警戒した。

 「クククッ。果たして、お前達にこの攻撃が耐えられるかな?俺様とクンスの
  毒ガススペシャルコンボを!!」

 (!?まずい!このままだと............)

 ルブンクがそう言うと同時に、クンスとともに毒ガスを放った。ヒカリは、毒ガスを
 見て、危機感を直感で感じ取り、突破口を考えていた。だが、なかなか思いつかず、
 毒ガスがヒカリ達に近づいてきたその時、


 『ヒカリ!伏せて!!』


 「えっ!?.........!?みんな!伏せて!!早く!!」

 「「「「えっ!?」」」」

 ヒカリの頭に少女のような声が響いた。ヒカリは、夢で見たその懐かしい声に少し考え
 込んだが、すぐに今の状況を思い出し、ヒルビ達に伏せるように言いながら伏せた。
 ヒルビ達は、ヒカリの言葉に驚きながらも、ヒカリと同じように伏せた。

 「マジカルリーフ。」

 「ぐわああああ!?なんだ!?」

 次の瞬間、無数の葉がルブンク達を襲った。ヒカリは、その様子を見た瞬間、突然頭痛
 が襲い、記憶のような光景が頭に浮かんだ。とても古くて、懐かしいと思える光景...


 『......危ない!』

 『マジカルリーフ。』


 誰かが襲われる直前に助けてくれた............


 『ヒカリ、........伏せて!』


 私も、......も助けてくれた.............後ろを見ると、そこにいたのは......
 ラルトスの............


 「"氷精の風"」

 その声とともに、強力な風が吹き、ルブンクとクンスの毒ガスを吹き飛ばした。ヒカリ
 の目に涙が浮かんだ。

 (......この風は.........間違いない......!!)

 「てめえは!?何者だ!?」

 ヒカリは、その風で確信した。一部だけど、記憶が少し戻っていた。そのおかげで、誰
 が助けてくれたのか分かった。ルブンク達は、ヒカリ達の後ろのポケモンに気づき、
 そのポケモンを睨んだ。ヒルビ達もそのポケモンを見た。ヒカリもゆっくりとその
 ポケモンを見た。そこにいたのは、キルリアだった。ヒカリは、その姿を見て、涙が
 溢れそうになった。

 (姿が変わっていても...分かるよ......。)

 ヒカリは、声に出すことができず、心の中でそう思った。

 「...あ、あの...。助けてくれて、ありがとう....。.....えーと.......君は?」

 「気にしないで。......私は、友達のためにやっただけだから。」

 ヒルビは、助けてくれたキルリアにお礼を言い、名前を尋ねた。キルリアは、当たり前
 のようにそう言った。

 「と、友達?」

 「ねえ、ヒカリ。」

 キルリアの言葉に、ヒカリ以外は疑問符を浮かべ、キルリアは、ヒカリを見ながら
 名前を呼んだ。ヒルビ達は、驚きながらヒカリとキルリアを交互に見た。

 「.....うん。思い出したよ....。」

 ヒカリは、涙を拭いながらそう言って、立ち上がった。

 「....私の親友.......ルーア。」

 ヒカリは、まだ目に涙を浮かべながら笑顔でそう言い、キルリア、ルーアも優雅そうな
 笑顔で、

 「久し振りね。ヒカリ。」

 そう言った。




グラシデア ( 2020/02/16(日) 20:30 )