悠久の風と輝く光 〜時の風と未来と宝石の光〜








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第三章 再会と遠征
17話 助っ人
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 次の日の朝

 ヒカリ達は、いつもどおりに起きた。だが、ヒルビとエメリが、昨日、大量に依頼を
 こなしたことにより疲れていて、起こすのがいつもより大変だった。(最終的に、
 サロファが強制的に起こした。)


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 「みんなっ♪今日は、仕事にかかる前に.....新しい仲間を紹介するよ♪」

 「仲間?また弟子入りかな?」

 「どんなポケモンでゲスかねえ?」

 リコラの話に、弟子達はざわめいた。

 「おーい。こっちにきてくれ♪」

 リコラは翼を羽ばたかせ、弟子達を静かにした後、梯子の方を向き、呼んだ。すると、
 梯子の方からとてつもない臭いがしてきた。

 「うぐっ......こ、この臭いは!?」

 「きゃー!なんか、おならくさいですわー!」

 「あっしがしたんじゃないでゲスよ〜!」

 「この臭いって..........」

 「まさか...」

 「そのまさかだな。」

 弟子達があまりの臭いに騒ぎだすなか、ヒカリとタイガとサロファは、新しい仲間が
 誰か気づき、嫌な予感しかしないと思いながら鼻をおさえていた。そうしていると、
 梯子から3匹降りてきた。その3匹は、スカタンクとズバットとドガースだった。

 「あ、あいつらは!!?」

 ヒルビは、思わず声を上げ、エメリは、ものすごい形相で睨み、ヒカリ達も他の弟子達
 も不満そうな顔をしていた。

 「この3匹が新しい仲間だ♪」

 「ケッ、クンスだ。」

 「へへっ、ツァイトだ。よろしくな。」

 「そして、俺様がこのチームドクローズのリーダー、ルブンクだ。覚えておいて
  もらおう。特にお前達にはな。ククククッ。」

 リコラがそう言うと、スカタンク、ルブンク達が自己紹介をした。最後にルブンク達が
 こっちを見ると、ヒカリ達全員、ルブンク達を睨んだ。

 「なんだ。顔見知りなのか?それなら、話ははや............!?」

 ヒカリ達とルブンク達の様子を見て、リコラは、知り合いだと思い、笑顔でルブンク達
 とヒカリ達の顔を見た瞬間、表情が強張った。エメリがものすごく不機嫌そうに睨み、
 今にも、つるのムチを出すんじゃないかと思う程だ。他の弟子達も、巻き込まれない
 ように、エメリから距離をとった。

 「おほん。この3匹は弟子ではなく、今回遠征するための助っ人として、参加して
  もらうことになったのだ♪」

 「ええええ〜〜〜〜〜〜〜〜!!?」

 「ちょっと!なんでこいつらなの!!最悪なんだけど!!!」

 リコラが空気を変えようと咳払いをし、続きを言うと、ヒルビから驚きの声が上がり、
 エメリは、つるのムチを地面に思いっきり叩きつけて、怒鳴った。

 「な、なんで、そんなに驚いたり、怒ったりするんだ?」

 「リコラさん。あいつは、一々大げさなだけで、そいつは、怒りっぽいだけなんです
  よ。ククククッ。」

 リコラは、顔を真っ青にしながらそう言い、ルブンクは、そんなリコラを見て、これ
 以上この話をすると、少々まずいと思い、誤魔化した。

 「........ごほん。まあ、いい。とにかく。今回、親方様は、遠征にこの3匹がいて
  くれた方が戦力になると判断された。ただ、いきなり一緒に行動しても、チーム
  ワークはとれない。なので、遠征までの数日間、共に生活してもらうことになった
  のだ。短い間だが.....みんな、仲良くやってくれ♪」

 リコラは、再び空気を変えようと咳払いをし、そう説明した。

 (........。リコラは、臭いと思わないのかな......。)

 (親方様もですわ.........。)

 (ううっ......早く遠征が終わってほしいでゲス......。)

 (.....それより、エメリからの殺気がすごいんだが...こっちの方も何とかして
  くれよ......。)

 (普段から怒らないヒカリとタイガも睨んでいるくらいなんだから、絶対に何かあった
  んだろう......。)

 リコラの説明を聞いて、ヒカリ達以外の他の弟子達はそう小声で話し合い、ヒカリ達と
 ルブンク達とリコラとモルガを見て、ため息を吐いた。

 「それではみんな♪今日も仕事にかかるよ♪」

 「「「「「「「「「「「「「おーー.........。」」」」」」」」」」」」」

 リコラは、そんなこと知らずに、いつも通りの笑顔で言ったが、弟子達は、いつもとは
 違うとても小さな声だった。

 「あれ?なんか、今日は元気ないね。」

 「だって!こんなに臭うのによォ!元気だせっていう方が無理............」

 リコラが不思議そうに聞き、コゴムは、リコラに反論しようとした時、突然、ギルドが
 揺れ始めた。ヒカリ達は、突然のことに驚き、辺りを見渡すと、リコラと他の弟子達が
 顔を青ざめ、ある一点を見つめていた。リコラ達の目線を辿り、その目線の先には、
 モルガがいた。

 「タア............タアアアアアアア...........」

 モルガは、悲しそうに声を上げていた。モルガの声が大きくなればなるほど、大きく
 揺れる。ヒカリ達も、まずいということが分かり、青ざめた。

 「いかん!親方様のいつもの怒りが......親方様を怒らしたら、とんでもないこと
  に!!みんな、無理にでも元気を出すんだよ!!!みんな♪今日も仕事にかかるよ♪」

 「「「「「「「「「「「「「おおーーーーーーーーーー!!」」」」」」」」」」」」」

 リコラが慌てて声を上げ、弟子達も声を張り上げた。すると、ピタッと揺れが修まり、
 モルガは、いつものように、にこにこと笑っていた。その後、弟子達全員、逃げるよう
 に仕事に向かった。

 「モルガの声で、ギルドが揺れたのは驚いたよ。」

 「うん。間違いなく声に反応して、揺れていたね。」

 梯子を上りながら、タイガとヒカリは、モルガとギルドが揺れたことについて話し合っ
 ていた。

 「.....先に依頼を選んだ方がいい。準備は、そのあとだ。」

 「えっ!?どうして?」

 ヒカリ達が梯子を上り終えてすぐサロファがそう言い、依頼を選びに行った。その様子
 を見て、ヒルビは、疑問の声を上げた。エメリも分からず、首を傾げていた。

 「昨日のようなことが起こるかもしれないからね。」

 「それに、あいつらとあんまり一緒にいたくないだろう?」

 サロファの言葉の意味が分かるヒカリとタイガは、サロファの代わりに説明した。意味
 が分かり、ヒルビとエメリは納得し、頷いた。それと同時に、サロファが戻ってきた。

 「昨日と大体同じくらいだが、いいな。」

 「もちろんよ。あいつらとあんまりいたくないし、さっさと行くわよ!」

 サロファは、持ってきた依頼を見せながら、ヒカリ達に確認した。エメリは、当然と
 いった感じで言い、ヒカリ達も頷いた。ヒカリ達は、荷物を整理し、仕事をした。その
 後、夕食で、ルブンク達と共に食事することになり、弟子達全員、今まで以上に速く
 夕食を食べ終えた。中でも、ルブンク達と近かったヒカリ達が一番速く食べ終わった
 そうだ。




...........................


 その夜、

 「夕飯食ったばかりだけど、なんかはらへったな。」

 「ケッ、あんな飯じゃおなかいっぱいになりゃしねえ。」

 「よし。ギルドの連中も寝静まったところだし、今からちょっと探しに行くか。」

 「へ?探すって何を?」

 「ギルドの中の食料に決まっているだろう。食べ物を見つけて、盗み食いするのだ。」

 「さすが、アニキ!!」

 「よし、行こうぜ!」

 ルブンク達がそんな会話をして、食堂に向かったことは、誰も気がつかなかった。食料
 が減っていることに気づいたのは、ルブンク達が去り、リコラが確認した朝だった。




.............................


 次の朝、ヒカリ達は、いつも通り起き、朝礼に向かった。他の弟子達もいて、そこは
 いつも通りだったが、ルブンク達がいることと、そのせいで臭いが充満していること
 と、さらにそのことが原因で、弟子達の機嫌が悪いことは違った。

 「ああ、お前達。」

 朝礼が終わり、依頼を受けに行こうとした時、リコラがヒカリ達のことを呼んだ。

 「何?」

 ヒルビはそう言いながらリコラに近づき、ヒカリとタイガもヒルビに続き、リコラに
 近づいた。エメリは、ルブンク達の臭いで不機嫌になり、リコラを無視しようとした
 が、サロファに引きずられて、リコラのところに、無理矢理近づかせた。ちなみに、
 サロファも、ルブンク達の臭いで不機嫌になり、かなり強引だった。

 「今日は、ちょっと食料を調達してきてくれ。」

 「食料?........食べ物のこと?いいけど......なんで?」

 リコラの頼みに、ヒルビは、頷きながら疑問に思った。ヒカリ達も、いきなり食料の
 調達に疑問を持っていた。食料の調達は、リコラがやっているのだから。

 「今朝、倉庫を見たら、ギルドの食料が何故かいきなり減っていたのだ。しかも、
  セカイイチだけが全てなくなっていた。」

 リコラの話に、ヒカリとタイガは、誰かが盗み食いをしたんじゃないかと思った。

 「.........まさか...。」

 「......まさか、ね。」

 ヒカリとタイガは、頭の中にあるポケモン達が思い浮かんだが、考えないことにし、
 小声で呟きあった。エメリとサロファは、あまりに不機嫌過ぎて、頭が回らず、
 イライラしていて、話を聞いていない。

 「セカイイチ?何、それは?」

 「とても大きく、とてもおいしいリンゴだ。そして何より、親方様の大好物なのだ♪
  セカイイチがないと、親方様は.....................」

 一方、ヒルビは、リコラのセカイイチという言葉の方に興味を持って聞き、リコラは、
 セカイイチの説明をしていくうちに、モルガの話になり、突然黙った。ヒルビも、
 ヒカリとタイガも、不機嫌だったエメリとサロファも、リコラの様子に、疑問符を
 浮かべた。

 「親方様は...............。親方様は.....................」

 「?セカイイチがないと、モルガはどうなっちゃうの?」

 「お、親方様は.............................................なのだ。」

 同じことを繰り返し言うリコラに、ヒルビが尋ねると、リコラは、何かを言ったが、
 聞き取れず、ヒカリ達は、全く分からず、怪訝そうな顔をした。

 「だから、頼む。セカイイチを取ってきてくれ。」

 「えー!?なんだよ!全然分からないよう!気になるなあ。でも、まあいいか。うん。
  取ってくるよ。任せておいて!」

 リコラは、ヒカリ達の様子を気にせず、そのまま話を進ませ、ヒルビは、反論したが、
 前向きにやってみようと思った。ヒカリとタイガは、ヒルビらしいと思いながら
 頷いた。ただ一匹だけ、納得がいかないという顔をしていたが、

 「ちょっと!あたしは.......................」

 「ここは、ヒルビに合わせろ。それに、今から行くと、あいつらと会う。」

 エメリが反論しようとした時、サロファが小声でエメリに言い、大人しくさせた。
 エメリも、あいつらという言葉でもう嫌らしく、渋々頷いた。

 「よし♪セカイイチは、リンゴの森の奥深くにある。いいかい?これは簡単のようだ
  が、大事な仕事だ。何しろ、親方様の...............。だから、しっかり頼む
  ぞ♪」

 「うん。よし、頑張ろう!」

 リコラは、その様子を見て、小さくガッツポーズをした後、嬉しそうに、セカイイチの
 場所を話した。ヒルビは、元気よく返事をして、梯子を上っていった。エメリも、
 ヒルビの後をゆっくり追いかけ、梯子を上った。ヒカリも追いかけようとした時、
 タイガとサロファが何かを考え込んでいるらしく、動かなかった。

 「......タイガ?サロファ?」

 「.........あ!?ごめん、ちょっと考え事しちゃっていて......サロファ、森って
  言っていたけど...............」

 「...ああ。いると思っていいだろう。」

 ヒカリの声で、タイガとサロファは、ヒカリにそう誤魔化しながら歩き、互いに小声で
 話した。ヒカリは、わずかに聞こえた話に、何を話しているのか疑問に思いながら、
 何も聞かず、梯子を上った。そんなヒカリ達の様子を後ろから3匹が見ていた。

 「ケッ、あいつら、食料を取ってくるみたいだぜ。」

 「昨日、俺達が盗み食いしたせいで、とんだとばっちりだな。クククククッ。」

 「へへっ、少しちょっかい出してやるか?」

 そんなルブンク達の会話に、ヒカリ達も、他の弟子達も気づくことはなかった。



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 ヒカリ達は、準備を終え、リンゴの森の前に着いた。

 「ここが、リンゴの森の入り口だね。リンゴがたくさん成っているね。リコラの話だと
  この森の一番深いところに、セカイイチがあるって言ってたね。頑張ろう!...あの
  リンゴ、美味しそう!!」

 「目的が変わってきていないかしら?」

 ヒルビが一歩踏み出し、そう言いながらリンゴを見て、嬉しそうに言った。ツッコミを
 入れたエメリも、木に成っているリンゴに目を奪われていた。

 「.........大丈夫かな?」

 「これも心配だが、これよりあれの方が面倒だ。仮とはいえ、可能性は大きい。」

 「そうだね......。」

 そんなヒルビとエメリの様子を見て、タイガとサロファは、心配そうな顔をして、
 会話しながらリンゴの森に入っていった。ヒカリは、タイガとサロファの話している
 ことが何なのか分からないが、嫌な予感がしながら、ヒルビ達の後を追って、森の中に
 入った。ヒカリ達が森に入ってしばらくして、3匹のポケモンがやってきた。

 「ケッ、あいつら、行ったようだな。」

 「へへっ、俺達も追おうぜ。」

 そう言いながら、ルブンク達は、森の中に入っていった。その後、ルブンク達に気づか
 れず、シュンという風が吹いたような音が聞こえ、それと同時に、一匹のポケモンが
 姿を現した。

 「やっと許可をもらえました。ようやくですね。......何故かおかしなポケモン達に
  絡まれているようですが、この前と同じで、安心しました。....さて、私も行き
  ますか。」

 そのポケモンは、森の入り口を見つめながらそう言い、意を決したような感じで、森の
 中に入っていった。






グラシデア ( 2020/02/11(火) 12:46 )