13話 初探検と再び
見張り番をした日から数日後、いつもどおり、朝早く起き、朝礼にきた。リコラは、
最初の方は、普通の話をしていたが、途中で、真剣な顔をし、咳払いをした。
「え〜、今日は、みんなに伝えたいことがある。ここから遠く、北東にいったその
奥に、キザキの森という場所があるのだが、そのキザキの森の時が、どうやら、
止まってしまったらしいのだ。」
「「「「「「「「「「「「「えっ!?」」」」」」」」」」」」」
リコラの話に、弟子達全員が、驚きの声をあげた。
「時が止まっただって!?ヘイヘイ!!」
「そうだ......。時が止まったキザキの森は、風が吹かず、雲も動かず、葉っぱに
ついた水滴も落ちず、ただその場で、ただずむのみ。そう。キザキの森は、時間
そのものが、停止してしまったらしいのだ。」
アズニが聞き返すと、リコラは、静かに頷くと、今のキザキの森の様子を話した。
「じ、時間が止まってしまったのか......。」
「でも、いったい、どうして、そんなことになってしまったのでしょうか?」
「ま、まさか、時の歯車!?」
リコラの話を聞き、弟子達全員が、一気にざわめいているなか、ヒカリは、数日前の話
のことを思い出し、リコラを見た。
「そう。そのまさかだ。何故、キザキの森の時が止まったのか、それは、キザキの森に
ある時の歯車が、何者かによって、盗まれたからだ。」
「「「「「「「「「「「「「ええ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!?」」」」」」」」」」」」」
リコラは、頷きながら、そう言い、弟子達全員が、また大きな声を上げた。
「時の歯車が盗まれた!?」
「それで、時間も止まったのかよ!ヘイヘイ!」
「そんなウワサを聞いたこともありましたけど、本当だったんですね。」
「しかし、信じられん!時の歯車を盗むやつがいるなんてよ!」
弟子達がざわめくなか、リコラは、バサバサと羽を動かし、周りを静かにした。
「みんな、静かに!すでに、ジンバー保安官が、調査に乗りだしている。時の歯車を
盗むものがいること事態、信じられないのだが、盗まれたからには、他の時の歯車も
危ないかもしれない。不審なものを見つけたら、すぐに知らせてくれと言っていた。
だから、みんなも、何か気がついたら、すぐに知らせてくれ。以上だ。それでは、
みんな♪今日も仕事にかかるよ♪」
「「「「「「「「「「「「「おおーーーーーーーーーー!!」」」」」」」」」」」」」
リコラは、そう言い、弟子達は、掛け声を言い、仕事に向かった。
「ああ、お前達。お前達は、こっちに来なさい。」
ヒカリ達が依頼を見に行こうとすると、リコラに呼び止められ、リコラの方に来た。
「お前達、だいぶ仕事に慣れてきたな。特に、この間、トープを捕まえたのは、見事
だったぞ♪そこで!今日は、いよいよ探検隊らしい仕事をやってもらおう♪」
「ほ、本当!?やった〜!!」
リコラの言葉に、ヒルビは、喜んだ。ヒカリとタイガは、その様子を微笑ましく見て、
エメリとサロファは、早く話を進ましてくれというオーラを出していた。
「不思議な地図を出してくれ。今回、調査してほしい場所は、ここ。ここに、滝が流れ
ているだろう♪一見、普通の滝に見えるのだが、この滝には、何か秘密があるのでは
ないかとの情報が入った。そこで、お前達に、この滝に、何があるのか調査して
ほしいのだ。以上だ。今回の仕事、分かったかな?」
「はい。分かりました。」
「了解です。」
「ええ。いいわよ。」
「うん。ねえ、ヒル...............」
ヒカリが不思議な地図を広げると、リコラは、地図に書いてある滝を指さし、説明
した。リコラが確認すると、ヒカリは、不思議な地図を仕舞いながら返事をし、
サロファとエメリとタイガも頷き、タイガが、ヒルビの様子を見て、驚いた。ヒルビ
は、目に涙を溜め、体が震えている様子だった。
「.............大丈夫。武者震いだよ。僕、初めて探検隊の仕事ができるんで、
感動していたんだ。」
「僕も同じ気持ちだよ。楽しみになってきたね。」
「うん。僕、すごくワクワクしてきたよ!」
「......それなら、早く準備しに行った方がいいと思うよ。」
「「うん。そうだね。」」
盛り上がっていくヒルビとタイガを見て、ヒカリが、このままだと時間がかかると
思い、声をかけると、ヒルビとタイガは、同時に頷き、梯子を上っていった。その様子
を見て、ヒカリは、苦笑いを浮かべ、サロファとエメリは、ため息を吐きながら、
ヒルビとタイガの後を追った。
............................
滝
「ここが、何か秘密があるという滝か........。」
サロファは、そう呟き、目の前を見た。今、ヒカリ達の目の前には、流れの勢いが
凄く、大きな滝があった。
「わわっ!!水の勢いが凄いよ!」
ヒルビは、その滝に近づき、滝に触れると、吹き飛ばされた。ヒカリとタイガが、心配
そうに、ヒルビに近づいた。
「ヒカリも、タイガも、滝の側に立ってごらん。」
「滝の水の流れとお前の様子を見れば、分かるだろう。」
「まあまあ。体験した方がいいかもしれないから......。」
ヒルビの言葉に、サロファは、ため息を吐きながら言った。ヒカリは、サロファを宥め
て、そう言い、滝に近づいた。
(本当、これは、凄い。今にも、吹き飛ばされそう。)
ヒカリは、そう思いながら、滝に触れた。すると、ヒカリも、ヒルビと同じように、
後ろに吹き飛ばされた。だが、ヒルビと違って、数歩下がったような感じだ。
(確かに、凄い。こんなに、勢いがあるなんて、思わなかったよ。この滝に打たれた
ら、危ないな.........うっ!?)
ヒカリが、滝を見ながら、そう思っていると、突然、眩暈が襲ってきた。
(こ、これは、......前、アイルとトープの時にあったあの眩暈.........。)
ヒカリが考えていると、辺りが真っ暗になり、音も聞こえなくなった。そのあとすぐ、
一筋の閃光が通り、滝の目の前に、一匹のポケモンが立っている光景が見えた。その
滝は、さっき、ヒカリ達がいた滝だった。
(........何をしているの?)
ヒカリは、影のような感じで、シルエットになっているポケモンを見て、そう思って
いると、そのポケモンは、滝の前から何歩か下がり、勢いをつけて、滝に飛び込んだ。
(...えっ!?危な............!?)
ヒカリが慌てるが、そのポケモンは、滝にぶつかって、ペシャンコになることなく、
洞窟のようなところに転がった。
(......滝の裏に.........洞窟!?............)
ヒカリが驚いている間に、ヒカリの耳に、滝の音が聞こえ始め、ヒルビ達が、どこを
調べるか、悩んでいる様子が見えた。
「どうしたの?ヒカリ?」
「何か意見があるのか?」
「...えーと、.........さっき、アイルとトープの時と同じような感じの夢を
見て、今度は、一匹のポケモンが、この滝に突っ込んだの。そうしたら、滝の向こう
に洞窟があって、そのポケモンが転がってきたの。」
ヒカリの様子に気がついて、ヒルビ達が声をかけた。ヒカリは、ヒルビ達に話すか
どうか迷いながらも、ヒルビ達に、さっき見た滝の裏の洞窟について話した。
「ええ〜〜〜〜〜〜〜!?一匹のポケモンが、この滝に突っ込んでいたんだって!?」
「しかも、この滝の裏側は、洞窟に通じている!?」
ヒルビ達は、ヒカリの話に驚いていた。そのあと、しばらく考えていた。
「.........やってみる?」
「ああ、そうだな。前のアイルとトープのこともあるからな。」
「まあ、やる価値は、あるわね。」
「えっ!?」
タイガの言葉に、サロファとエメリは頷き、まだ考えているヒルビは、驚いていた。
「僕もだよ。ヒルビは、どう思う?」
「......うーん。滝の勢いは、このとおり凄いし、もし、滝の裏側に何もなく、ただ
の壁だったら、そして、僕達、そんなところに突っ込んでいったら、そこで、
ペシャンコだよ?.........ヒカリ達は、この滝の奥に、洞窟があるんだと思って
いるんだよね?........分かっているよ。僕は、ヒカリのことを信じているよ。
だけど........................」
タイガも頷き、ヒルビに聞くと、ヒルビは、考えながら頷くが、ヒルビの目線は、自分
の尻尾の炎に向いていた。
「あっ、そうか。ヒルビの尻尾の炎は、ヒルビの命だから...............」
「この滝で、消えてしまうかもな。」
「うん。僕も、そのことが心配なんだよね。」
タイガとサロファが気づき、ヒルビも頷き、心配そうに尻尾の炎を見ていた。
「.......それなら、水に濡れづらくすればいいよね。」
「えっ!?」
ヒカリは、そう言いながら、バッグからランプのようなものを出した。ヒルビは驚き、
タイガ達も、疑問符を浮かべ、見ていた。
「......これをこうして......これで、固定したら.........うん、終わり。」
ヒカリは、ヒルビの尻尾の炎をランプの中に入れて、それを、前の探検で手にいれた
リボンで、尻尾を固定した。
「気休めかもしれないけど、少しは、水が入らないと思う。」
「ありがとう。ヒカリって、こういうことができたんだ。」
「うん。だって、これは................?」
ヒカリがそう言うと、ヒルビは、お礼を言った。ヒルビの言葉に、ヒカリは、何か
言おうとしたが、突然止まり、何かを考え始めた。
「どうしたの?ヒカリ?」
「........!?ううん、何でもない。」
ヒカリの様子に、ヒルビは、不思議そうに言い、ヒカリは、慌てて返事をした。
「ブルブル!怖がっちゃダメだ!怖がって、あそこに、中途半端にぶつかったら、どの
みち、大怪我をしてしまう!行くなら、思いっきりぶつからなきゃ。勇気を振りしぼ
るんだ!」
「行くよ!......3......2......1......それ!!」
ヒルビは、怖がりながらも、自分を奮い立たせ、タイガは、合図を出し、ヒカリ達は、
滝に突っ込んだ。ヒカリ達は、ヒカリが見たものと同じ洞窟に転がった。
「いたたた。」
「こ、これは!?」
「ど、洞窟!?」
「うん、間違いない。私が見たのは、この洞窟だよ。」
「ヒカリの見た夢のようなものは、やっぱり正しいんだね。」
ヒルビが痛がり、サロファとエメリが周りを見渡し、ヒカリが確認し、タイガが、
ヒカリの見た夢についての感想を呟いた。
「行こう!みんな!洞窟の奥へ!洞窟の奥へ探検だ!」
ヒルビが目を輝かせ、そう言い、洞窟の奥へ走っていった。
「......ヒルビの尻尾についたランプ、そのままでいいかな?」
「いいんじゃない。」
「ああ。ここで、何が起こるか分からないしな。」
「とりあえず、追いかけようか。」
ヒカリが聞くと、エメリ達がそう言い、タイガは、ヒルビの後を追おうと言い、洞窟に
走っていった。タイガも、洞窟を早く探検したかったらしい。ヒカリ達は、ヒルビを
追いかけた。
「タイガって、ヒルビと似ているところがあるよね。」
ヒカリは、追いかけながら、思ったことを呟いた。
「......そういえば、ヒカリは、知らなかったわね。」
「ヒルビとタイガは、兄弟なんだ。といっても、種族で分かると思うが、義兄弟なんだ
が、ずっと一緒だったからか、似ているところもあるんだ。」
「えっ!?そうだったの!?」
ヒカリの呟き声を聞き、エメリとサロファがそう言い、ヒカリは、すごく驚いた。それ
と同時に、だから、タイガは、ヒルビのことを慰めたり、落ち着かせたりすることに、
慣れているのねと納得していた。