10話 お尋ね者現れる
ヒカリ達が歩いていると、アウルとアイルとスリープがいた。アウル達は、何か話して
いるようだ。
「わ〜い!」
「ありがとうございます!」
「いやいや。御安いごようですよ。」
アウルとアイルは、嬉しそうにしていて、スリープも、笑顔で言っていた。ヒルビが
気になって、声をかけた。
「どうしたの?」
「あ!さっきの!........えーっと...............」
アイルは、さっき会ったことを覚えていたが、名前が分からず、なんて言おうか悩んで
いた。ヒルビは、何のことか分からず、疑問符を浮かべていた。
「僕はタイガ。」
「私はヒカリ。」
「俺はサロファ。」
「あたしはエメリ。」
「あ!僕はヒルビ。よろしく。」
タイガは、ヒルビが分かっていないことに気づき、自分から名乗った。ヒカリ達も、
タイガに続いて名乗り、ヒルビも、ヒカリ達が名乗って、ようやく気づき、名乗った。
「僕達、前に、大切な物を落としちゃって、それで、ずっと探していたんですが、
なかなか見つからなくて、............でも........そしたら、このトープさん
が、その落とし物なら、どこかで見たことがあるかもしれないって!それで、一緒に
探してくれるって言うんです。僕達、もう嬉しくて!」
「そっかあ!それは、良かったね!」
(何か、見た目的には怪しそうなんだけど、.........まあ、見た目で判断する
のは、良くないわね。)
アウルは、嬉しそうに説明した。ヒルビは、そのことを聞いて、笑顔で言い、エメリ
は、スリープ、トープのことを見て、思った。
「ありがとう!トープさん!」
「いやいや。君達みたいな幼い子が、困っているのを見たら、ほっとけないですよ。
早く探しに行きましょう!」
アイルがお礼を言うと、トープは、微笑んで言った。アウルとアイルが行き、トープ
も、その後に続こうとした時、トープとヒカリがぶつかった。
「おっと。これは、失礼。」
「い、いえ。こちらこそ、すみません。」
トープは、頭を下げ、ヒカリも、頭を下げた。トープは、アウルとアイルのいる方に
向かい、ヒカリは、その様子を見ていた。その時、
(......うっ....こ、これは?......ま、また.......あの....眩暈..が.....)
「トープって、親切なポケモンだよね。関心しちゃうなあ。」
「まあ、世の中、悪いポケモンが増えているっていうのに、なかなかできないこと
よね。見た目的には、怪しかったけど。」
「エメリ、悪く言うのは止めよう。」
ヒカリに、再び眩暈が襲ってきた。ヒルビ達は、トープのことを話していたが、ヒカリ
の耳には、何も聞こえなかった。すると、ヒカリの目の前が、また真っ暗になり、音も
何も聞こえなくなり、そして、一筋の閃光が通った。その後、山の頂上みたいな場所
で、そこには、トープとアイルがいる光景が見えた。アウルの姿はなく、トープは、
先ほどとは違い、悪い笑みをし、アイルは怯え、ふるえていた。
『言うことを聞かないと、痛い目にあわせるぞっ!』
『た........助けてっ!!』
(い、今の!?)
ヒカリは、その光景を見て、驚きながら、アウル達の方を見た。
「ん?どうしたんだ?ヒカリ。そんな深刻な顔をして......。」
「......話があるの!早くしないと.........。」
サロファは、ヒカリの様子に気づき、声をかけると、ヒカリは、いきなり声をあげた。
ヒルビ達は、驚いていたが、ヒカリは、そんなこと、構わないという感じで、先ほどの
光景のことを話した。ヒルビ達は、驚愕の表情をした。
「大変だけど、でも、ヒカリのことを信用していないわけじゃないんだけど、トープ
は、すごく親切そうなポケモンだったじゃん。」
「すごく仲良さそうにしていたしね。」
「まあ。見た目的には、怪しかったわ。」
「疲れているんじゃないか?悪い夢でも、見たのかもしれないしな。マックが待って
いるし、ギルドに戻るぞ。」
ヒルビ達は、それぞれ意見を言い、マックを待たせているからという理由で、ヒカリ達
は、ギルドに戻った。ギルドに戻る途中、ヒカリは、気のせいや悪い夢じゃない、
でも、言われてみれば、トープは、悪いポケモンには、見えなかったと思いながら、
モヤモヤとした気持ちでいた。
.................................
ギルドの地下一階
「おおっ!準備完了でゲスね!それじゃ、一緒に、お尋ね者を選ぶでゲス。さてと、
この中から選ぶでゲスよ。」
ヒカリ達は、ギルドに戻り、マックに話しかけた。マックの言葉で、ヒカリ達は、
掲示板を見た。
「ええっ〜と........どれ選べばいいんだろう?」
「じゃあ、ここは、先輩として、一つ、あっしが選んであげるでゲス。」
ヒルビが悩んでいると、マックは、咳払いしてから言った。
「あまり怖そうなの選ばないでね!!」
「分かっているでゲスよ。ええと.......どれに...........」
ヒルビの言葉に、マックは頷き、掲示板を見た時、警報のようなものが鳴った。ちなみ
に、ヒルビの言葉を聞いた時、エメリがため息を吐き、ヒカリは、それを見て、苦笑い
していた。
『情報を更新します!危ないですので、下がってください!』
「な........なんだ?」
「何が起こっているの?」
アナウンスの声が聞こえると、地響きが起き始めた。ヒカリ達は、突然のことに驚き、
辺りを見渡していた。
「ああ。これは、情報の入れ替えでゲスよ。」
「.....情報の.......入れ替え?」
一方、マックは、日常茶飯事のように普通に言った。ヒルビが、マックの言葉について
聞いた瞬間、掲示板が、バンという大きな音をたてて、ひっくり返った。ヒカリ達は、
驚いた。
「ひゃあー!!壁が回転して、裏側になっちゃったよ!!?」
「もう、うるさい!!」
ヒルビが驚いていると、エメリが、ヒルビのうるささに怒り、つるのムチでヒルビを
叩いた。その様子を見て、サロファはため息を吐き、ヒカリ達は苦笑いをしていた。
「これって、どういうことですか?」
「お尋ね者ポスターや掲示板は、このように、壁が回転式になっているんでゲス。それ
で、壁をひっくり返している間に、プルトが情報を書きかえているんでゲス。情報を
新しくするのは、プルトの役割でゲス。プルトは、トンネルを掘って、ギルドまで
進み、壁を回転させて、新しい情報に変えるんでゲス。地味だけど、とても重要な
仕事なんでゲス。だから、プルトも、この仕事に、誇りを持っているんでゲスよ。」
「へえ、そうなんだ。」
ヒカリが聞くと、マックは、掲示板とプルトの仕事について説明した。ヒルビは
マックの説明を聞いて、掲示板の仕組みとプルトに関心しながら、ひっくり返って、
裏側になった掲示板を見た。すると、
『更新終了!危ないですので、下がってください!』
「あっ、終わったみたい。」
アナウンスの声が聞こえ、ヒルビが呟くと同時に、またバンという音をたてて、掲示板
がひっくり返った。
「さあ、情報が新しくなったでゲス。お尋ね者も新しくなったんで、選び直すで
ゲスよ。」
マックは、そう言って、お尋ね者ポスターを見た。ヒカリも、少し近づいて、お尋ね者
ポスターを見た。
(本当ね。新しくなっている。更新したっていうことは、更新する前のお尋ね者
ポスターは、もう別の探検隊が受けたということなのかな?.....分からないけど、
さっき見たお尋ね者ポスターがなくなって、代わりに、別の新しいお尋ね者
ポスターがある...か、ら!?)
「う、嘘.......まさか....あれは、.....これから、起こる、こと、な、の...?」
「ヒカリ、どうしたの?」
ヒカリは、お尋ね者ポスターを見て、そう思っていると、ある一枚のお尋ね者ポスター
を見て、目を見開き、一歩下がり言った。ヒカリは、凄く動揺していた。タイガは、
ヒカリの様子に気づき、心配して、声をかけた。ヒルビ達も、心配と不思議そうな顔を
していた。
「........みんな、あれ、見て。........一番左上の......ところの......。」
ヒカリは、指差しして、そう言った。ヒルビ達は、ヒカリの言って、差している場所を
見ると、そのお尋ね者ポスターには、こう書かれていた。
『お尋ね者ーーートープ』
「ト.....トープだよ!」
「あいつ、お尋ね者だったのか!?」
「......と、いうことは......アイルが..................!?」
「急がないと......!!」
ヒルビ達が驚いているなか、ヒカリは、大急ぎで梯子を上った。ヒルビ達も、慌てて
追いかけた。
「わわっ!?急にどうしたんでゲスか!?どこに行くんでゲスか!?」
「ごめん、後で!」
「帰ったら、説明するわよ!!」
どういうことなのか、よく分からないマックが聞くと、ヒルビが謝りながら言い、
エメリは、怒鳴るような大きな声で言った。
....................................
交差点
「あっ!あそこに、アウルが!!」
ヒカリ達が階段を降りていると、おろおろしながら、階段の前にいるアウルを見つけ
た。だが、アウルの近くには、アイルも、トープもいなかった。
「アウル、どうしたの?アイルやトープは?」
「そう!そうなんです!!あの後、三匹で落とし物を探していたのですが、気がついた
ら、トープさんが、アイルをどこかに連れていっちゃって、呼んでも戻ってこない
し、それで、不安になってきちゃって、ギルドに相談しようか悩んでいたんです。」
ヒカリは、アウルに近づいて、アイルとトープのことと何があったのか聞くと、アウル
は、ヒカリ達に気づき、状況を説明した。
「そ、それで!二匹は、どこへ!?」
「こ、こっちです!」
ヒルビが聞くと、アウルはヒカリ達を案内した。走っている時に、アウルに、トープ
がお尋ね者だということを教えた。アウルはとても驚き、顔を真っ青にした。
.......................................
トゲトゲ山
「トープとアイルは、こっちの方に消えていったんだね?」
「はい......。」
(私が、夢の中のようなもので見たトープとアイルは、山のような場所にいた。ここ
は、その場所にそっくりだから、この先に、トープとアイルかいる気がする。)
タイガが確認すると、アウルは、頷いた。ヒカリは、周りを見渡して、あの時、起こっ
たことを思い出し、そう思った。
「アウルは、ここで待っていてね。相手は、お尋ね者だから、巻き込まれたら、大変
だよ。もし、僕達が戻ってくるのが遅かったら、ギルドに、このことを伝えて
くれる?」
タイガは、アウルに、優しく言い、アウルは、アイルのことが心配で、待っていること
に抵抗があったが、タイガの言葉で頷いた。
「早く行こう!」
ヒルビの言葉で、ヒカリ達は、トゲトゲ山に入っていった。
....................................
(.........やっぱり、この場所、あの場所にそっくり。....夢のようなもので見た
場所は、ここの頂上なのかもしれない。)
ヒカリは、ドードーを倒し、周りを見ながら、そう思った。
「......うう。今、思ったけど、なんか成り行きで、ここまで来たけど、相手は、
お尋ね者なんだよね?怖くなってきた。」
「あんた、また弱音を吐いて..................」
「ヒルビ、頑張ろうよ!お尋ね者と戦うけど、アイルもが危ないし、相手がお尋ね者
だと思わないで、ここまで来れたんだから、お尋ね者のことを考えなければいいん
だよ!」
「う、うん。」
ヒルビが不安そうに言うと、エメリが怒鳴り、つるのムチで叩こうとしたが、タイガが
間に入り、ヒルビに言うと、ヒルビは、小さく頷き、新たに現れたムックルに、ひのこ
を放った。
....................................
トゲトゲ山の頂上
「あれ?行き止まり......。」
アイルとトープは、トゲトゲ山の頂上に着き、アイルが少し歩くと、そこには、大きな
壁があった。
「ねえ、トープさん。落とし物は?落とし物は、どこにあるの?」
「ごめんな。落とし物は、ここにはないんだよ。」
アイルは、不思議そうな顔をして、トープに聞くと、トープは、優しそうな笑みでは
なく、怪しげな笑みを浮かべて、言った。
「えっ!?.......お兄ちゃんは?お兄ちゃんは、後から、すぐ来るんでしょ?」
「いや。お兄ちゃんも来ないんだ。実は、お前のことを騙していたのさ。」
「ええっ!?」
アイルは、トープの言葉で、恐怖を感じ、後ずさりながら言った。トープは、気に
せず、そのまま言い続けた。アイルは、ますます恐怖を感じた。
「それより、ちょっと頼みがあるんだ。お前の真後ろに、小さな穴があるだろう?あの
奥には、実は、ある盗賊団が、財宝を隠したんじゃないかという噂があるんだ。
ただ、俺の身体じゃ、大きすぎて、穴の中には入れねえ。だから、小さなお前を、
ここに連れてきたというわけさ。」
トープは、アイルの真後ろにある穴を指差して言い、アイルは、真後ろにある穴を見な
がら、恐怖で震えていた。
「大丈夫。言うことさえ聞いてくれれば、ちゃんと帰してやるからよ。さあ、行くん
だ!穴の中に入って、財宝を取ってこい!」
「お、お兄ちゃっーーーーーーーーん!!」
「こっ、こらっ!待て!」
トープは、一歩ずつ近づきながら言い、アイルは、ますます恐怖を感じ、泣き出して、
逃げようとしたが、トープに、先回りされてしまった。
「まったく!ちゃんと帰してやるって言っているだろう!言うことを聞かないと、痛い目
にあわせるぞ!」
「た........助けて!!」
トープが脅すと、アイルは、叫び声をあげた。その時、
「待ちなさい!!はっぱカッター。」
「そんなことは、させないよ!はどうだん。」
エメリとタイガが攻撃を仕掛け、トープは、その攻撃をかわすため、アイルから
離れた。それと同時に、ヒカリ達が出てきた。
「お尋ね者トープ!俺達は、探検隊だ!お前のような悪いやつ、見逃さない!!」
「な、なぜ、ここが!?た、探検隊だと!?じゃあ、俺を捕まえに........あ、あれ?」
サロファが怒鳴ると、トープは、慌てた様子だったが、震えているヒルビを見ると、
余裕そうな笑みを浮かべた。
「.......そうか。お前達、探検隊といっても、まだ新米なんだな。お前達にできる
のかな?俺を捕まえることが!」
トープは、そう言うと、戦闘体勢をとった。
「ヒルビ!カブトの時は倒すことができたんだから、大丈夫。」
「ヒルビ!後で、エメリに何されるか分からないから、気合いを入れろ!」
「は、はい!!」
ヒカリはヒルビの様子を見て言い、サロファは、それでも、まだ不安そうなヒルビに
向かって、そう言うと、ヒルビは返事をし、気合いを入れた。ヒカリ達も構えた。