悠久の風と輝く光 〜時の風と未来と宝石の光〜








小説トップ
第一章 始まりの光
1話 出会う光
 「うーん.........。いや。こんなことしてちゃダメだ。今日こそ、勇気をふりしぼ
  らなくちゃ。」

 夕方、プクリンというポケモンの形をした建物の前に、4匹のポケモンの姿があった。
 4匹のポケモンは、夕日に照らされながら、立っていた。4匹のポケモンのうち、
 ヒトカゲは、前にある穴(その穴には、落ちないように、鉄の格子をしている。)を
 見て、固まりながら、言った。

 「ヒルビ!いつまでやっているんだ。もう何時間も、経っているんだ。早くしろ。」

 「サロファ、そんなに焦らなくても。ヒルビ!頑張れ!!」

 「こんなに待っても、応援できるとは、相変わらず凄いな、タイガ。」

 そんなヒトカゲ、ヒルビの様子を見て、ケロマツ、サロファは、少しイライラしながら
 言い、リオル、タイガは、サロファを落ち着かせ、ヒルビを応援した。実際、何時間も
 経っていたので、何時間も応援できるタイガに、サロファは、呆れを通りこしていた。

 (大丈夫。今回は、宝物を持ってきたし、大丈夫。)

 ヒルビは、そう思いながら、恐る恐る穴の鉄の格子に乗った。今回ということは、
 初めてということは、ないのだろう。ヒルビの両足が乗った瞬間、

 「ポケモン発見!!ポケモン発見!!」

 「!?」

 突然、ポケモンの声が聞こえた。それと同時に、ヒルビの身体が震えた。
 
 「誰のあしがた?誰のあしがた?」

 「わわっ!!び、びっくりしたあ〜!!」

 声は、そのまま続けたが、ヒルビが耐えられなく、格子から降りてしまった。

 「.........また見失ってしまいました。」

 「......まったく、これで何度目か...。」

 ヒルビが格子から降りると、声は、ため息をつき、言った。

 「ふう.............だめだ。結局、入るふんぎりがつかないや。今日こそ.....
  と思って来たんだけど.........。」

 ヒルビは、息を吐くと、地面に座って落ち込み、懐から何らかの欠片を取り出した。

 「この宝物を持って行けば、勇気も出るかと思ったんだけど.................。」

 ヒルビは、そう言うと、欠片を懐に入れ、ため息をついた。

 「......誰の声か知らないけど、本当に、その声のとおりよ!!まったく、何回やって
  いるのよ!!」

 タイガとサロファが、ヒルビに声をかけるより先に、別の声が先に、ヒルビに向かって
 怒鳴りつけ、緑色のものが、ヒルビの頬を叩いた。

 「いたっ!?何するんだよ、エメリ!!」

 ヒルビは、頬に手を当て、それをやったチコリータ、エメリをにらみつけた。しかし、
 エメリは、ヒルビの様子を気にせず、ヒルビに近づき、自分のつるを、ヒルビの身体に
 巻きつけ、宙に浮かし、締め付けた。

 「もう何度も同じことしているのよ!!いい加減、覚悟を決めなさい!!」

 「ちょ、ちょっと、く、苦し........................」

 「エメリ!さすがに、ヒルビが窒息死するから!!ねえ、いつもどおり、あそこに行っ
  て、落ち着こう!!」

 「ふん。まあ、いいけど。...まったく、誰のせいで、いつもどおりのことになって
  いるのか............。」

 エメリは、怒鳴りながら、締め付ける力を強くし、ヒルビを振り回した。ヒルビは、
 そのことによって、さらに、息苦しくなり、それを見て、タイガは、慌ててエメリに
 近づき、エメリを説得し、落ち着かせた。エメリは、ヒルビを解放したが、まだ納得が
 いっていないようで、ぶつぶつ何か言いながら、階段を降りていった。一方、エメリに
 締め付けられ、振り回されたヒルビは、咳こんでいた。

 「エメリの言うとおりだが......ハア。エメリとヒルビには、困ったものだ。」

 「はは、確かに大変だけど、もう馴れたから。それより、大丈夫、ヒルビ?」

 「馴れるべきではないのだと思うが............ハア。」

 サロファは、エメリとヒルビの様子を見て、ため息をつきながら言い、タイガは、
 サロファの話に、思わず苦笑いし、まだ咳こんでいるヒルビのところに近づいた。
 サロファは、タイガの言葉に呟きながら、またため息をついた。

 「大丈夫だから。........ごめん、何度も同じことを繰り返して.....。ああ、
  ダメだ。僕って、ほんと臆病者だな.........。情けないよ..............。」

 「大丈夫、大丈夫。僕は、気にしていないから、気持ちを切り替えて、また次、
  頑張ろう!!」

 「.......................。」

 「もう遅い!ほら、早く行くよ!!」

 ヒルビは、自分を心配して近づいてきたタイガに、申し訳なく思い、謝った。タイガ
 は、笑顔で、ヒルビに気にしなくていいと慰めていた。サロファは、無言で、ヒルビと
 タイガの様子を見ていると、エメリが、下から呼んでいた。

 「さっきまで、文句を言っていたが、切り替えが早いな。」

 「エメリが呼んでいるし、早く行こう。」

 「あっ、待ってよ。」

 サロファは、エメリの声を聞いて、ため息交じりに呟き、タイガは、そんなサロファの
 様子を見て、苦笑いしながら、ヒルビに声を掛け、階段を降りた。ヒルビは、慌てて
 タイガ達の後を追った。ヒルビ達がいなくなった後、建物の裏から、2匹のポケモンが
 出てきた。

 「おい、ツァイト。今の見たかよ。」 

 「ああ、勿論だぜ。クンス。」

 ズバットのツァイトとドガースのクンスは、ヒルビ達を見ながら話していた。

 「さっきうろうろしていたやつら............その中にいたヒトカゲ、何か持って
  いたよな?」

 「ああ。ありゃあきっと、お宝か何かだぜ。」

 ツァイトとクンスは、何か良からぬことを考えて顔で、ニヤニヤしながら言った。

 「狙うか。」

 「おう。」

 2匹は、顔を見合して、互いに頷き、ヒルビ達の後を、こっそりつけていった。





..............................





 海岸

 夕方、クラブ達が泡吹きしている。泡と海が重なりあい、キラキラと光っている。

 「わあ〜!きれいだあ!」

 ヒルビ達が海岸に着くと、ヒルビは、目を輝かせて言った。

 「ここは、天気がいいと、いつもクラブ達が、夕方に泡をふくんだけど、昨日は、
  嵐だったが、この景色に変わりはないな。」

 「夕日の海にたくさんの泡が重なって、本当にいつ見ても、きれいよね。」

 「.........落ち込んだ時は決まって、ここに来るんだけど、今日も来て、
  良かった。」

 サロファは、海岸の様子を見て言い、エメリは、海岸の景色を見て、さっきの不機嫌さ
 から一変し、笑顔になっていた。ヒルビは、海岸の景色を見ながら呟いた。

 「まあ、あんたが何度も失敗しているから、今日もになっているんだけどね。」

 「言っていることは正しいが、その辺にしておけ。」

 「二人ともひどい。」

 ヒルビの呟いた言葉に、エメリは、少し不機嫌そうに言い、サロファは、冷たく言い
 放った。ヒルビは、少し落ち込んだように、サロファとエメリを見て言った。

 「..........?タイガ?」

 「......あれ?なんだろ。...............あ!?ごめん。」

 「何かあったのか?」

 いつもなら、喧嘩などを止めに入ったり、ヒルビを慰めたりするタイガが、何もしない
 ので、おかしいと思って、タイガの方を見て呼び、少しして、タイガが反応して、
 謝った。サロファは、タイガの見ていた方を見て、タイガも、再び見始め、ヒルビと
 エメリも、同じように見始めた。よく見ると、岩陰に何かがあった。そこにあった
 のは、黄色い尻尾だった。

 「わっ!誰か倒れているよ。」

 ヒルビ達は、そのことに気づくと、慌てて近づいていった。近づいていくと、稲妻の形
 に、その先のところが二つに割れた黄色い尻尾(見た目からして女の子)、首に黄色い
 ペンダントをかけ、左耳にピンクリボンをつけたピカチュウが倒れていた。

 「きみ、どうしたの!?大丈夫!?」

 「起きて!!返事して!!」

 倒れているピカチュウに、タイガが声をかけ、ヒルビが体をゆすった。

 「...............!」

 すると、ピカチュウは、体をピクリと動かし、ゆっくりと目を開けた。







グラシデア ( 2019/10/20(日) 19:57 )