56話 ギルドのみんなと信実 前編
いつからだったのかな?
『見て!綺麗だよ!』
いつの間にか夢の中で聞こえてくる声.........
『ーーー!』
『どうしたの、ーーー?』
誰かが呼ぶ声.........誰かを呼ぶ声.........。どこか聞き覚えがある.......。
『本当に綺麗ね.....。』
『そうね....。』
何度も見る光景.........別の場所で見ても素晴らしい光景.........。
どこか見覚えがある.........。
『ありがとうね。...本当に嬉しいよ!』
『どういたしましてだよ。』
誰かが笑っている.........誰かが笑いかけている.........。顔が思い出せない
けど.........とても大切だった.........。
『また見ましょう!約束よ!』
『『うん!』』
約束し合った.........。大切な.......本当に大切な約束.........。
........................
「プクリンのギルドだよ。なんか随分久しぶりな気がするね...。」
ヒカリ達はギルドの前に立っていた。久しぶりのギルドに、ヒカリ達は懐かしさを
感じていた。
「でも......ううっ....。いざ来てみると、なんか入りづらいよね.....。」
「なに弱気なことを言ってるの!」
「痛い!?だって僕達、突然いなくなっちゃったわけだし.......いきなりただいま
って入っていくのもなんか恥ずかしいような.....。」
ヒルビはギルドに入るのに悩んでいると、エメリから一発叩かれた。まあ。確かに
気まずくなる気持ちは分かるけど、今はそれどころじゃない.....。
「恥ずかしがっても駄目だよ。みんなに会って事実をちゃんと話さないと。....私が
見張り穴の格子の上に乗るね!みんなはいい!」
「いいよ。」
「「うん!」」
「ああ。」
「ええ。」
ヒカリはヒルビにそう言い、ルーア達にも確認すると、全員が頷いた。
「ポケモン発見!!ポケモン発見!!」
ヒカリが格子の上に乗ると、久しぶりに聞くラチアの元気な声が聞こえた。
「誰の足形?誰の足形?」
「足形は!足形は...。こ、この.....足形は.......。」
コゴムの声が聞こえ、ラチアが答えようと足形を見た時、ラチアの声が途切れた。
「おい!どうした!ラチア!応答せよ!おっ....おいこら!ラチア!穴を掘ってどこに
行く!?」
ラチアの行動にコゴムは慌てているようだった。
「だって........この足形は.....ヒカリさんなんです!!」
「な...」
「な......」
「「「「「「「「なんだってええ〜〜〜〜〜〜!!」」」」」」」」
ラチアの言葉に全員が驚愕した声が外まではっきり聞こえた。そのすぐ後、ラチアが
見張り穴の近くから顔を出した。
「やっぱりヒカリさんだ!それにヒルビさんも!ルーアさんも!タイガさんも!エメリ
さんも!サロファさんも!」
「ラチア!久しぶり!」
「元気だった?」
ラチアに会ったことにヒルビは目を輝かせて喜び、タイガも嬉しそうにラチアに話し
かけていた。
「わわっ!なんだ?」
すると、いきなり地面が揺れ始め、鉄格子が開いた。鉄格子が開くと、ギルドのみんな
が一斉に出てきた。
「ヘイヘイ!本当だあ!」
「ヒカリ達ですわ!」
「お前達、生きてたんだあ!」
「心配していたんですよ!」
「ううっ.......あっしは......あっしは....。」
ギルドのみんなが笑ったり喜んだり泣いたり(泣いたのは主にマック。)してヒカリ達
の無事を喜んだ。
「み、みんなぁ...。ただいま.....。」
ヒルビは涙目になって言い、他のみんなも久しぶりのギルドに安心感を抱いていた。
「おい!お前達♪道を開けろ♪」
しばらくすると、リコラが弟子達に道を開けるように言った。みんなは道を開け、その
道をモルガが通った。
「お帰り♪ジュエル♪」
暖かい御迎えがヒカリ達の胸を暖かくした。
........................
「ええっ!?なんだってええ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!?ちょ...ちょっと待て。話を整理
させてくれ。」
「うん....。」
「何よ。」
「まあまあ。」
ヒカリ達は未来であったことを全て話した。ギルドのみんなはヒカリ達の話に驚愕し、
リコラは話を整理したいと言った。ヒルビは素直に頷き、エメリは不満そうにしたが、
ヒカリとルーアとタイガで止めた。
「......えーと。今までの話をまとめると...まず、ジェードは実は良い奴で、世界
を救うために時の歯車を集めてたと。」
「うん。」
「逆に、ディアノさんは親切そうに見えたのは表の顔で、実は極悪非道な悪者だと。」
「そうよ。」
(((((極悪非道までは言っていない.....。)))))
リコラがジェードやディアノのことを確認し、ジェードのことはヒルビが頷き、
ディアノのことはエメリが頷き、エメリ以外は心の中でツッコんでいたが、口には
しなかった。
「ヒカリは実はジェードの仲間で、ルーアは未来ではヒカリとジェード達のリーダーの
ような存在だったと。」
「はい。」
「そうです。」
ヒカリとルーアのことは自身のことなので、ヒカリとルーアが頷いた。
「ディアノさんはそのヒカリとジェードともう1匹の仲間のフウヤと未来で邪魔となる
ルーアの命を狙って、未来へ連れて行ったと。そして、お前達はディアノさんから
逃げ出し、未来からこの世界へ命からがら帰ってきたと。」
「うん。」
「そして、この世界はもうじき星の停止が起きる。だから、それを止めるために、
ジェードは再び時の歯車を集め、お前達は幻の大地という場所を探していると。
こういうことだよな?」
「大体そんな感じです。」
リコラの確認に今度はタイガが頷き、最後にサロファが返事をした。
「........ははっ、はははははははははは!ジュエル。お前達はきっと悪い夢でも
見たのだろう。」
「えっ?」
リコラはしばらく黙った後、急に笑い出してそう言った。
「自分の部屋で休んできなさい。」
「ちょっと待ちなさいよ!あたし達、嘘を言ってないわよ!」
「今話したことは全部本当なんだよ!」
リコラの言葉にエメリは怒鳴り、ヒルビは必死に訴えた。
「分かってる、分かってる♪大分お疲れのようだけど、一晩寝れば治るから♪」
「この鳥!......」
「落ち着け。」
それでも変わらないリコラの様子にエメリが飛びかかろうとし、サロファがそれを
止めた。
「しつこいな!お前達の話のどこが本当だって言うんだ!?幻の大地なんて場所......
情報屋の私ですら聞いたことがないよ?大体!あの親切なディアノさんがそんなこと
するわけないだろう!」
「ディアノのことは僕だって信じられなかったし.....ショックだったし....受け
入れがたかったよ!?でも!」
「うるさーーーーーい!!とにかく、ディアノさんが悪者なんて信じられるかあ!!」
リコラは何度も言うヒルビとエメリに怒鳴り、ヒルビが説得しようとするが、リコラは
それを遮り、大声で怒鳴り散らした。
「.......すみませんけど...証拠はありますよ?」
「「「「「「えっ?」」」」」」
リコラが落ち着いたと同時にルーアがそう言った。これにはヒカリ達もみんなも
驚いた。ルーアが取り出したのはフウヤ達が言っていたフリズムだった。そのフリズム
は白くなっていて声が録音されていた。ルーアはそのフリズムを暖めると、白いところ
が溶け、声が聞こえてきた。その声は途中からだったが時の回廊のところでのヒカリ達
とディアノとのやり取りだった。その声をみんなは茫然と聞き、ヒカリ達はルーアの
ところに集まっていた。
「ルーア!いつの間に!?」
「実はちょっと前に近くまで来ていたの。その時にヒカリ達とディアノの声がその場所
まで聞こえてきたから、そのやり取りをフリズムに録音したの。二つあって、一つは
アルセウス様達への報告ように、もう一つは誰かを説得するように用意したの。」
「ていうか、録音している暇があるなら助けなさいよ!」
「ごめんね。でも......私達がすぐにあそこに行っても状況は変わらないと思った
から、少し様子を見ていたの。本当にごめんね。」
ルーアの話を聞き、エメリが最もなことを言われ、さすがにルーアも謝った。まあ。
今、まさに役に立っているし.........。
「それに、私にはもう一つ別に話さないといけないことがあるの。」
「「「「「えっ?」」」」」
「話す時が来たと思ってね。.......これを。」
「これは?」
ルーアの言葉にヒカリ達が驚いている間に、ルーアは何か玉のような物を出し、ヒカリ
の前に出した。
「ヒカリの記憶よ。ヒカリが未来の記憶を失ってからの......私と冒険した時の記憶
を封じ込めた物よ。」
「ええっ!?」
ルーアの話を聞き、ヒカリ達全員が驚愕しながらルーアの持っている玉を凝視した。
どうしてヒカリの記憶を封じ込めた玉をルーアが!?
「私達は嘗て一緒に色々なところを冒険したり旅をしたりしていた.....。その時に、
私達はある事件に捲き込まれたの。私達はその事件を一時的に解決することができた
けど...その事件の黒幕は捕まえることができなかったの....。それで、遠い未来に
再びあの黒幕が現れることに気づいた私達はこの作戦を始めたの。」
「その事件とヒカリの記憶が何か関係があるのか?」
「うん。ヒカリも記憶を失うことを覚悟してこの作戦に参加したの。」
ルーアの話にサロファが質問すると、ルーアはサロファに頷き、ヒカリの方を見て
言った。
「私が.....記憶を失う覚悟を.........。」
「詳しく他のみんなに話す前にヒカリには思い出してほしいの。」
ヒカリはルーアの言葉に驚きながらも目の前に出された玉に意を決して触った。
すると、玉が光り出し、ヒカリの頭の中にある記憶が駆け巡った。ルーアはそれを見て
頷いた後、サイコキネシスでもう一つの玉を取り出した。その玉は宙に浮き、ぷかぷか
と誰かのところに向かっていた。その玉が向かう方向に1匹のポケモンが誘い込まれる
ように手を伸ばした。玉は真っ直ぐにそのポケモンの方に距離を縮めていき、ついに
そのポケモンの手が玉に触れた。その瞬間、玉がヒカリの物と同じように光り出した。
二つの玉の光により辺りは眩しさで何も見えなくなった。
........ああ。そうか。
そうだったね....。
夢の中で呼ぶ声も......たまに聞こえた声も.....
夢の中で見た光景も........懐かしく感じた光景も.......
全部思い出だった....約束し合った親友との...かけがえのない思い出.........。
「ヒカリ。思い出した?」
「.....うん。思い出したよ......。」
光が修まり、ルーアはヒカリに声をかけた。ヒカリは頷き、ルーアに微笑んだ。その目
には一筋の涙が流れていた。
「ねえ。ルーア........。」
「分かってる。ちゃんと渡したよ。触れたみたいだから、思い出してるよね.......
タイガ。」
ヒカリはルーアに聞こうとした時、ルーアはヒカリが何を知りたいか察し、その
ポケモン、タイガに視線を向けて言った。タイガはそれに気づくと、少し戸惑った
様子で頷いた。ヒカリはその様子を見て、また微笑んだ。
「久しぶりね、タイガ。.....いや、分かりやすくこう呼んだ方がいいかな......
ミュウ。」
「確かに分かりやすいけど、僕の名前はタイガだよ。....ヒカリ。ルーア。久しぶり
だね。」