悠久の風と輝く光 〜時の風と未来と宝石の光〜








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第6章 元の時代で
55話 異変
 「さてと。時の歯車を取りに行くわけだが....まず最初に、どこの時の歯車を狙うか
  だな。」

 「地図を見てみよう。」

 朝になり、ヒカリ達も起きて準備をして、ルーアが行った後、ジェードを中心に話し
 合っていた。全員がヒルビの広げた地図を見ていた。

 「ここからだと.......地底の湖が一番近そうかな...。」

 「キザキの森はどうだ?俺が最初に時の歯車を取った場所だ。ここからはちょっと遠い
  が、その代わりにカルサのように時の歯車を守る番人がいない。」

 タイガが近いところから行った方がいいと言って地底の湖を指すと、ジェードはキザキ
 の森はどうかと意見した。

 「確かに。時の歯車を巡って下手に戦ったりすると騒ぎが大きくなるが、キザキの森
  にはその心配がないということだな。」

 「その通りだ。」

 ジェードの意見にサロファは納得しながら言い、ジェードは頷いた。

 「じゃあ!決まりね!早くキザキの森に行きましょう!」

 「あっ!待ってよー!」

 「「ははは.....。」」

 「はあ......。」

 「相変わらず元気だな!」

 「そうねー!」

 話がまとまったと気づき、エメリはすぐに外に出た。ヒルビはそれを追いかけ、ヒカリ
 とタイガは勝手に行動するエメリとヒルビに苦笑いし、サロファはため息を吐き、
 ウェンディとウォーブはその様子を見て、元気だなと呑気に思っていた。




.......................





 「ここだ。キザキの森の入り口だ。....おや?」

 「ジェード。どうした?」

 キザキの森の入り口の前に着き、ジェードが森の入り口を見ると、なにやら怪訝そうな
 顔をした。フウヤはジェードの様子を心配して聞いた。

 「なんか前に来た時と雰囲気が違うような...。いや。たぶん気のせいだろう。」

 ジェードが気のせいだと言うので、ヒカリ達はすぐに時の歯車のことに集中し、森の中
 に入っていった。




........................




 「100万ボルト!」

 「かえんほうしゃ!」

 ヒカリ達は森の奥へと進んでいった。しかし......

 「ちょっと!なんで目隠しするのよ!早く「はっけい!」...タイガ!あたしの話を遮ら
  ないで!」

 エメリが目隠しされて大騒ぎしていた。エメリが騒いでいるが、タイガ達はそれを無視
 して襲いかかってくるポケモン達を倒していった。

 「えーと.....エメリはどうして目隠ししているの?」

 一方、何故エメリに目隠しするのか分からないウェンディ達は近くにいたサロファに
 聞いた。

 「あー......エメリは虫ポケモンを見ると、大暴れして手がつかなくなるんだ。
  だから、エメリに虫ポケモンを見せないようにしているんだ....。」

 「なるほど.....。ヒルビのようなものか...。」

 「ああ....。エメリはヒルビよりも被害がひどいんだ......。」

 サロファは途中から現れるようになったビークインを指さして話した。サロファの話を
 聞き、ジェードはイワークの時のヒルビを思い出し、サロファは頷き、遠くを見て
 いた。

 「ああ...。」

 「よく探検隊を続けてられたな....。」

 「「本当にそれな(ね)。」」

 ジェードはそんなサロファの肩に手を乗せ、フウヤはもっともなことを言った。フウヤ
 の言葉にウェンディやウォーブも同意した。

 「ヒカリ!ビークインが群れで来てる!急いで!」

 「うん!ほうでん!」

 タイガの声にヒカリは頷き、すぐに電撃を放った。ヒカリ達は森の奥へどんどん進んで
 いった。




........................




 「こ、これは!?」

 ヒカリ達は森の奥にたどり着き、その光景に驚愕した。風も吹かず、葉についた水滴も
 落ちず、全てが止まっていた。キザキの森の時が止まっていたのだ。

 「時が.....止まっている...。」

 「でも....確かジェードや僕達が未来に連れていかれる前のあの時、カルサ達は確か
  に言ってたよね?時の歯車を元の場所に戻すって。」

 ヒルビの言葉にヒカリは自分達が未来に連れていかれる前のカルサ達の会話を思い
 出し、ヒルビに頷いた。

 「しかし......ここの時間は止まったままだ。」

 「...ということは、時の歯車はまだ元の場所に戻されてないのかもしれないね。」

 「見に行こう。時の歯車があった場所はこっちだ!」

 ヒカリ達はとりあえず時の歯車があった場所に行こうということにして、ヒカリ達は
 時の歯車があった場所に向かった。

 「こ、これは......!」

 「時の歯車だ。間違いない。」

 そこには間違いなく時の歯車があった。

 「だが、ここの時間は止まっているようだな...。」

 「風も吹いていないし....近くの草木も止まっている......。」

 しかし、キザキの森の時は止まっているようで、ヒカリが手を上げるが、風が通り抜け
 た感じはせず、近くの木を見るが、何も動いた様子もない。

 「やっぱり時は止まっているんだよ!」

 「でも、時の歯車は元の場所に戻っているのに.....。」

 「ジェード....これは...。」

 「...........。」

 時の歯車があるのに、キザキの森の時が止まっていることにヒカリ達は困惑し、フウヤ
 は何かを訴えるかのようにジェードに視線を向け、ジェードは無言でいきなり時の歯車
 を取った。

 「ああ!何するの!?」

 急なことにヒカリ達は驚いた。時の歯車が取られ、辺りは先程よりも暗くなって
 いった。

 「既にここの時は止まっているんだ。今更、時の歯車を取ったところで変わりは
  ない。それに.......もっと気になることがある。」

 「気になること?」

 「とにかく。ここは引き上げよう。」

 ジェードに言われ、ヒカリ達はキザキの森を去った。何やら良くないものを感じた
 まま.........。




.....................




 「お帰り。みんな。」

 「ルーア!」

 ヒカリ達がサメハダ岩に戻ると、ルーアが既に戻っていた。

 「時の歯車は取って来れた?」

 「うん。取っては来たんだけど.....。」

 ヒカリはルーアにキザキの森でのことを話した。すると、ルーアは顔を曇らせ、顎に
 手を当てた。

 「やっぱり.......。」

 「やっぱりって?」

 「アルセウス様に連絡した後、姉さんや兄さん達に色々聞いてきたの。」

 「どうだったの?」

 ルーアは自分達が未来に連れていかれてから今起きている状況を話すために来たと
 言い、全員がルーアの話に耳を傾けた。

 「あまり良くない状況よ。私達が未来に行った後、カルサ達が時の歯車を元の場所に
  戻したの。それで、みんなはこれで元に戻るって喜んでいたんだけど....でも、
  それでも時は止まったまま。しかも、それどころか時が止まる場所が他にも増えて
  いっているみたい。」

 「えっ!?」

 「それは本当か?」

 ルーアの話に全員が驚愕した。

 「うん。みんなもさすがになんでそうなるか分からなくて狼狽えているのよ。
  ジェード。フウヤ。もしかして、これは.........」

 「........ああ。そうだ。」

 「.....時が止まる場所が増えているということは...ただ一つ......時限の塔が
  壊れ始めたということだ。」

 「時限の塔が....壊れ始めた?」

 「やっぱり......。つまり、時間を司る時限の塔が壊れ始めたことによって、各地の
  時も破壊され、星の停止に向けて世界が加速し始めたということなのね。」

 「.......そうだ。」

 ルーアがジェードとフウヤに話を振ると、ジェードとフウヤは互いに顔を見合わせ、
 重々しく話し始めた。ジェードとフウヤの話にヒカリ達が首を傾げるなか、ルーアは
 確信した様子で聞き、ジェードは頷いた。

 「ええっ!?そんな!」

 「急がないといけないじゃない!」

 「落ち着け!」

 ヒルビとエメリが騒ぎ出すが、サロファがすぐにヒルビとエメリを止めた。

 「早くしないと、この世界は星の停止を向かえることになる。時の破壊を止める方法は
  ただ一つ。時の歯車を集め、ディアルガのいる時限の塔に時の歯車を納めることだ。
  ただし問題がある。時限の塔は幻の大地といわれるところにあるのだが、幻という
  その名の通り....どこにあるのか分からないのだ。」

 「......そうね。時間を司る時限の塔を隠すための場所だから...こちらもあまり
  情報はなさそうね.....。」

 「ああ....。未来のルーアさんも幻の大地のことは頭を悩ましていたよ......。この
  世界が探るしかないって判断するまで........。」

 ジェードの話を聞き、ルーアは頷いてそう言い、フウヤも未来のルーアのことを思い
 出し、それに同意した。

 「でも、時間がないよね。」

 「そうだ。だから、ここは手分けしていこう。俺とフウヤ達は時の歯車を集める。その
  間に、ヒカリ達は幻の大地を探してくれ。」

 「分かった。」

 「みんなもそれでいいよね?」

 「「うん。」」

 「ああ。」

 「ええ。」

 ジェードの指示にヒカリ達全員が頷いた。

 「よし。では、頼んだぞ。」

 「幻の大地はこの世界のどこかにあるはずだが、ルーアさんの言う通り、手がかりが
  ない。」

 「まだ誰にも発見されてないことを考えていると、別の大陸とか遠いところにあると
  考えた方がいいかもね.......。」

 ジェードとフウヤの話にルーアはまた考え込んだ。

 「海の向こうに渡る手段も考えた方がいいかもね。」

 「確かに。マグナーゲートで幻の大陸に行くのは無理だから、他のことを考えた方が
  いいよな。」

 「海の向こう......。」

 ウェンディとウォーブの何気ない会話で、ヒカリも考え込んだ。

 「情報がなくてすまないが、頼んだぞ。では、俺達は時の歯車を集めてくる。
  じゃあな。」

 「集めて終わったら俺達も協力する。」

 「こっちは任せて。」

 「頑張ってね。」

 ジェード達はそう言って出て行った。

 「私も少し報告することがあるから.....報告が終わったらすぐに戻るね。」

 ルーアもテレポートで報告しに行った。

 「さてと。僕達も探しに行こうか。幻の大地を!」

 「........と言うが、どこから探すんだ?」

 ヒルビが元気良く言うが、サロファの言葉でヒカリ達の間に気まずい空気が流れた。

 「とりあえずは海を渡る手段を考えた方がいいんじゃないかな。」

 「そうだね。」

 その空気を破ったヒカリの言葉にタイガ達は同意し、なんとなく浜辺に行こうという話
 になった。




..........................




 「なんとなく浜辺に来てみたけど、一体どうするのよ!」

 「痛い!僕だって知りたいよ!」

 「うるさいぞ。」

 とりあえず浜辺に行き、すぐにエメリがそう言ってヒルビを叩き、ヒルビは叫んだ。
 サロファはため息を吐き、そんなエメリとヒルビを止める。

 「うーん。だめだー。海を渡る手段がやっぱり思いつかない。」

 「そうね...。幻の大地を探すって引き受けたけど、どこから探せばいいのか見当が
  つかないね。急がないといけないのに.....。情報がなさすぎる......。」

 「でも、のんびりもしていられないよ。一刻も早く幻の大地の場所を突き止め、そこに
  ある時限の塔に時の歯車を納めないと....。星の停止が起こるんだ.....。」

 「それだけはなんとしてでもくい止めないと......。」

 タイガとヒカリは海を見つめながら考えるが、良い案が思いつかずにため息を吐いて
 しまった。すると、そこへルーアが戻ってきた。

 「おまたせ。何か思いついた?」

 「おかえり、ルーア。それが......なかなか良い案が思いつかないのよね...。
  ただ....私達ができることにも限りがある....。そのためには、やっぱり.....」

 「協力が必要ね。」

 「「うん。」」

 ルーアの言葉にヒカリは考えていたことを伝え、ルーアがその続きを言い、ヒカリも
 タイガも頷いた。3匹ともそのことはとっくに分かっていた。

 「......私はもう既に姉さんと兄さんに協力してほしいって頼んだよ。」

 「ルイさんとライドさんに....。」

 「今は協力しあうべきよ。だからほら、行くよ!」

 「行くってどこに?」

 「ギルドよ。」

 ルーアはそう言ってギルドに行こうと言った。ヒカリ達は普通にそう言ったことに
 驚いた。

 「ええっ!?ど、どうして!?僕達、いきなり消えたことになってるんだよ!?」

 中でも、ヒルビが一番驚いていた。

 「そりゃ。みんな、凄く心配してくれていると思うし、僕もみんなに会いたいけど、
  今まで僕達が未来で見てきたこと.....ジェードのことやフウヤ達のこと.......
  ディアノのこと.........そして、ヒカリの過去とルーアの未来のことをギルドの
  みんなに話したとして、みんなは信じてくれるの?だって、この世界のみんなは
  ジェードが悪者で、ディアノは凄く良いポケモンだと思っているんだよ?みんなに
  本当のことを話しても、受け入れられないんじゃないかなあ....。」

 「私達の会話と私達が連れて行かれるところを見ているんだから、怪しいと思っている
  ポケモンもいるよ。それに、今はみんなの協力が必要よ。だからこそ、信実を全て
  話すべきよ。」

 ヒルビの話にルーアは自分の意見を曲げずにそう言った。信実を話しても信じてくれ
 ないかもしれない。けど、話さなくてはならない。しかし、ヒカリはそれよりもルーア
 の視線が気になった。ルーアの最後の言葉にはもう一つ別の意味があるように感じ、
 その視線をヒカリとタイガに向けていたことを.........。

 「確かに。そうしないと....星の停止にはとてもじゃないけど、間に合わない
  もんね......。」

 「とにかく。早くギルドに行くよ!」

 「「「うん。」」」

 「ええ。」

 「ああ。」

 ヒルビも納得し、ヒカリ達はギルドのみんなを信じ、ギルドに向かった。






グラシデア ( 2022/02/17(木) 00:48 )