53話 風は楽園を作る 後編
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それからというもの..........
「ううっ......少し寒いね...。」
「ああ。....ウォーブ。少し暖まらせてくれ。」
「うん。.....まずは家を建てる必要があるかもな.......。」
初めに家がなく、寒い思いをしたり..........
「私達は貴方に......家を建ててほしいの。」
「な、何!?本当にめでたい奴らだな!お前らはよ!俺はこの世に!仕事に!希望を
亡くした!背中の傷を見ろ!この傷のおかげで、体もろくに動けねえ!もう大工
なんかできねえ!家を建てようにも下手くそな家しかできねえ体になっちまった
んだよ!お前らはこんな大工もできねえ、ポンコツに仕事を頼もうとしてるんだ!」
「下手くそな家しかできないって言ったよね?下手くそでもいいじゃないの?また少し
ずつ上手くなればいいのよ。私達は貴方に家を作ってほしいの。」
「心を込めて作ってくれるなら立派な家じゃなくていいよ。例え、腕が良くても、
気持ちが入ってない家なんて住みたくないよ。気持ちを込めて作ってくれた家に
私達は住みたいんだ。」
「お願い!貴方にしかできない私達の家を作ってよ!!」
「うううっ.......ぶわっ....!!分かった。家は...建ててやる。」
怪我をして腕が落ち、仕事や世の中に希望を亡くした大工に頼み込み、その大工を
励まし、家を作ってもらえることになり.........
「これが......これが私達の!新しい家だああぁぁぁーーーーーーーーーーーーー!」
僕達全員で協力して、みんなの気持ちが込もった家を作ったり.........
「2匹とも.....私達の仲間にならない?」
「えっ?」
「な、仲間!?」
「うん。僕達、ポケモンパラダイスを作りたいんだ。いろんな冒険をして、お宝も
見つけて...みんなでわいわいしながら楽しく暮らせる....まるで楽園のような
場所を作るのが僕達の夢なんだ!そのためにも仲間が欲しかったんだ。君達みたい
な......仲間を!」
「い、いいんですか?僕なんかで.......。僕、頑張ります!よろしくお願いします!」
「まあ。そうなったからには仕方ねえ......俺も頑張るぜ!」
「あの........ちょっといいかしら?お願いがあるんだけど.....私も仲間に入れて
もらえないかしら?」
「......いいよ。仲間にしよう。でも、仲間になるんだったら、みんなを信じない
とな。みんなと信頼し合うこと。できるかな?」
「ふふっ。努力はするわ。」
新たな仲間と出会い.........
「手紙を読んでみるよ。えーと.....
あなた方のチームをここに認め、その証であるチームバッジをお送りします。是非
冒険に役立ててください。 ーわくわく冒険協会よりー
......だって。」
「わあ...!」
「俺達、チームとしてもう認められたのか!」
わくわく冒険協会(初めに聞いた時は怪しいと思ったが、割とちゃんとした組織
だった)に登録し、チームとして認められ.........
「お前ら、ポケモンパラダイスを作りたいとか言ってたよな?施設を建てたいなら、
俺達がやるぜ!」
「えっ?本当か!?」
「ああ!腕はまだまだだが、気持ちを込めて建てるぜ。あと、施設を建てるのに必要な
開拓もな。ここらは荒地ばかりだ。お前らの土地だって先に進むことすらできない
のが多いだろう?」
「うん。僕達の家の周りとかがそうだよ。岩や木が倒れてたり、段差も激しかったり
全然奥に行けなかった。......確かに、こんな荒地じゃ施設を建てようにも建てら
れないな。」
「ああ。だから、そんな土地も俺達に任せてくれれば、開拓して整地にするぜ。そう
すれば施設も建てられる。ただ、施設も土地の開拓もお金と材料が必要だがな。」
「ありがとう!パラダイス作りにまた一歩前進よ!荒地を開拓して....冒険の役に
立てそうな施設を建てようね!」
「ああ。依頼をどんどんこなそう!」
家を建てた大工に協力してもらい、荒地を開拓して場所場所を広げ、施設を建てた。
お店やくじ引き屋、畑に道場、アトラクション等、さまざまな施設を建て.........
「みんな。少し下がってくれ。いくぞ!」
エンターカードというものを使って、マグナゲートというダンジョンの入り口が現れる
のを見たり.........
「俺達もフウヤ達の仲間に.....入れてもらえないかな?」
「えっ?良いのか?」
「うん。私達の夢を叶えるために協力してもらえたらと思ったの。」
「もしエンターカードが完成して......マグナゲートが完璧に呼べるようになった
その時には....フウヤ達にも俺達と一緒に...大氷河に行ってほしいんだ。」
「「「「「「ええ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!?」」」」」」
また新たな仲間が増え、未知の冒険へ誘われ.........
「俺達が......!」
「一緒に....!」
「大氷河に.....!行くだってええぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーー!!」
「ヌオ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
「みんな、隠れて聞いていたの...?なんなのよ、一体......。」
あの時は本当に.....俺達より隠れて聞いていた周りの方がうるさかった.........
「研究の方はもうすぐ終わりそうなんだ。だから、俺達だけで大丈夫。」
「ただ、大氷河は未踏の地.....。何が起こるのか分からない。私達だけで行って、
無事に帰ってこられるかどうか....。でも、フウヤ達と一緒なら...私達も安心して
大氷河を調査できると思ったのよ。冒険中は迷惑かけちゃうかもしれないけど。」
「そんなことないよ!」
「もちろん大歓迎だ!」
「すげえぜ!!大氷河に行くなんてよ!!」
「一体どんな冒険になるでしょう!?わくわくしますね〜!!」
「行ったら新しい商売ができそうだな!」
「大氷河って言うぐらいだから、やっぱ氷がたくさんあるんだよな!?俺、氷の家とか
作ってみてぇ!!施設の材料になりそうなもんがあったらよろしくな!!」
俺達も興奮したが、やっぱり周りがうるさかった.........。
「な....なんだろう、ここは...!?」
「見て!あれ!」
「凄い!!」
未踏の地で見た数々の信じられない光景............
「大氷河も越えたし!氷山の中にも驚いたし!」
「氷の城も見れたしね!ここ!グレッシャーパレスっていうんだね!」
「私は何と言ってもフリズム!私の一番の宝物よ!」
「みんなにもプレゼントしような!」
「もちろんだ。絶対喜ぶだろうしな!」
「よし!じゃあ引き上げるか!」
「うん!みんな!これで私達の.....大氷河の冒険は終わりよ!これから、お宝を
持って......思い出も持って.......パラダイスへ帰ろう!!」
「今回の冒険は........大成功だーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
「「「「「「おおーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」」」」」」
お宝も思い出もいっぱい持って帰った.........。
何だかんだあったが....ここでの生活は悪くなかった...。むしろ楽しい。仲間も
増え、パラダイスはにぎわっていて......冒険だってすげえ楽しかった.....。
だから.......俺は忘れていたのだろう...。ここにいたかったんだろう....。
使命を忘れて.....ウェンディとウォーブ達と......ずっと一緒に.........。
「おはよう!フウヤ!」
「ああ。おはよう。ウェンディ。ウォーブ。」
いつも通りの朝......俺は起きてすぐ、ウェンディとウォーブに挨拶した。それから
家に出て、いつものようにパラダイスを見て、依頼を受ける......そんな変わらない
日々になるはずだった....。
「あっ!ペリッパー!」
ペリッパーが飛んできて俺達の家の前に着くと、紙を何枚も落とし、すぐにどこかに
飛んでいった。俺はそれを見て、慌てているようだが、雑じゃないかと思い、
ペリッパーの飛んでいく姿をしばらく見ていた。
「......なんだろう?」
「何かのお知らせみたいね.....。どれどれ.........。」
ウォーブとウェンディはお知らせの方が気になり、お知らせを読んでいた。俺も気に
なって聞き耳をたてた。
「『別の大陸で、きりのみずうみの時の歯車が盗まれました。これで3つ目です。
皆さん、時の歯車を盗んだ犯人を捕まえることに協力してください。』......
だって。」
「!!」
「時の歯車って何だろう?」
「あっ!ここに書いてるよ。時の歯車は............。」
ウェンディの話に俺は目を見開いて固まった。ウォーブは時の歯車が何か分からず
聞き、ウェンディは時の歯車について書かれている文を見つけ、そこを読んでいた。
しかし、俺には聞こえなかった。聞く余裕がなかった。ここが時の歯車がある場所とは
別の大陸だということは町のポケモン達の話を聞いて薄々勘づき、チームになって
地図を見てすぐに確信した。......それから、時の歯車がある大陸はどこか.....
どうやって行くか....そういったことを調べ...考えていた.......。考えては
いた。だが......いざとなると、俺には迷いがあった。ここを離れることへの.....
「...うん?これ、その時の歯車を盗んだポケモンかな?」
「そうじゃないか。お尋ね者って書かれているし......すごっ!見てよ!ウェンディ!
この賞金.....。」
「えっ?.....本当。凄い大金ね。時が止まっちゃっているから、こんな多額の賞金を
かけているのね...。」
俺は1枚の紙を持っているウェンディとウォーブに近づいた。1歩1歩が重い.....。
「......俺も見せてくれ。」
「うん。いいよ。」
「時の歯車を盗んでいる盗賊って書かれているんだ。.....そのポケモンは........
ジュプトルっていうポケモンらしい。」
俺はその写真を見て目を見開いた。その紙に書かれていたのはジュプトル......俺に
とっては懐かしい顔だ。.........ジェードだ。間違いない。
「この大陸のポケモン達、大丈夫かな?」
「きっと大騒ぎになっていると思う。」
ウェンディとウォーブが何か話しているが、俺はジェードの写真を凝視していた。写真
の中のジェードに現実を見ろ、使命を思い出せと言われているようだった。
「他のみんなにもこのことを聞いてみよう。」
「そうだね。僕達よりも他のみんなの方が詳しいと思うし。」
「........ああ。」
ウェンディとウォーブが他のみんなのところに向かおうと話しているのを、俺は意識が
うわのそらのまま相槌を打った。俺は歩いていても、ウェンディやウォーブ、仲間達と
話していても、意識がどうやっても上の方に行く。俺はいつも通りに振る舞おうと笑み
を浮かべているが、いつものように笑えているか分からない。
「......まあ。別の大陸のことだから、私達は何もしない方がいいかもね。」
「その大陸のポケモン達だって何とかしようとしているんだ。きっと何とかなるよ。」
ウェンディもウォーブも結局何とかなるということで俺達はパラダイスに戻ることに
した。俺はもうジェードのことで頭がいっぱいだったから、ちょうど良かった。そんな
俺達の前に町にいる親子の母親らしきポケモンが来た。
「すみません!お願いします!私の子供を探してほしいのです!」
母親らしきポケモンが目に涙を浮かべてそう言ってきた。これには俺もジェードのこと
を一旦頭の隅に置き、その母親の話を聞いた。
「えっ....?もしかして、いなくなっちゃったのですか?」
「はい......。朝起きていたら既に出かけていて.....たぶんどこかに遊びに行った
と思うんですが...お友達に聞いてみたら一緒じゃないと言うんです。」
「うん。おばさんの話を聞いて.....僕も近所の遊び場所を探してみたんだけど、
見当たらないんだ...。」
ウェンディが尋ねると、母親と近くにいた友達も暗い顔をして言った。
「分かりました!僕達が探してきます!」
「あ、ありがとうございます!よろしくお願いします!私達も引き続き探します!」
ウォーブがそう答えると、母親は俺達に深く頭を下げた。
「...その子が他に行きそうな場所は分かるか?」
「う〜ん.....後は涼風草原と......シキサイの森かな?」
「えっ?シキサイの森?」
「まあ。貴方達、そんな危ないところまで遊び場にしてたの?」
俺は子供に話しかけると、その子は少し悩んで言い、それを聞いてウェンディと
ウォーブ、母親が驚いた。どうやら、子供の遊び場にするには危険な場所のようだ。
「ご....ごめんなさい!だってあそこ、色々珍しい物が手に入るし...。」
「まあまあ。今はそんなことを言っている場合じゃないよ。それより.....。」
「話からすると、涼風草原よりシキサイの森の方が危険なんだな?」
「うん。」
その子が謝っているのを止め、俺達は話を進めた。
「だったら、僕達はシキサイの森の方に行くから、君達は涼風草原を探してみてよ。」
「分かりました。すみませんが、よろしくお願いします。」
ウォーブの指示を聞き、母親達は涼風草原に向かっていった。
「...よし。行くか。」
「「うん!」」
俺達はそれを見送った後、シキサイの森に向かった。
.....................
「だいぶ奥まで来たな......。」
「そうね.....。」
俺達はシキサイの森に進みながらいなくなった子供を探していた。今のところ、その
子供らしきポケモンの姿を見かけていない。
「フウヤ。今日はどうしたのか?」
「どうしたって?」
「惚けないで。今日のフウヤは様子がおかしいよ。朝起きた時はいつも通りだった
けど、みんなに話を聞いてた時も戦っている最中もどこかうわのそらだったし、
ぼーとしていることが多いよ。危なくなっていたし。」
「体調が悪いのか?....それとも、何か悩みがあるのか?」
いつも通りにしていたはずだが、ウェンディとウォーブには気づかれたようだ。確か
に、今日の俺は集中できていなかった。子供が行方不明だからと切り替えたはずだが、
話があんまり頭に入らず、シキサイの森ということしか頭に入らなかった。戦う時も、
いつもなら余裕で避けれるはずの攻撃もぎりぎりで、攻撃のタイミングも遅かったり
して明らかにおかしい。一緒に暮らしているウェンディとウォーブには分かりやすい
よな...。誤魔化せると思ってたんだが.....。
「......まあ。そうだな.........。」
俺は適当に答えながらどう誤魔化すかと考えていたその時............
「あっ!あそこに少し広い場所が!行こう!」
ちょうど良いタイミングで森を抜けれたようだ。森を抜けた先には子供らしきポケモン
の姿があった。
「ここにいたのね。」
「うわあ!?」
ウェンディの声にその子は驚き、俺達を警戒した。
「あっ、ごめんな!驚かすつもりはなかったんだ。」
「ど、どうしたの?」
ウォーブの言葉で少し警戒を緩めてくれた。
「君を迎えに来たんだ。早く帰るぞ。」
「僕を......?僕、ちょうど今から帰ろうと思ったんだよ?ここにもよく来るし....
いつも平気だし...そんなに心配しなくても大丈夫だよ?」
「お母さんが心配しているのよ。あまり困らせるのも良くないんじゃないかな?」
「.....うん。」
母親は心配している様子だったが、その子にとってはいつものことだったんだろう。
だが、ウェンディの言う通り、母親は心配しているからな....。
「さあ、帰ろう。」
俺達はシキサイの森から母親のところに向かって歩いた。
.....................
「お母さん.......。」
その子供は母親を見て、泣かせてしまったことに罪悪感を感じているようだった。
「大丈夫?心配したのよ....。」
「ごめんね、お母さん...。僕、これを取って来たんだ。」
「これは.....?」
涙ぐむ母親に子供は謝りながら何かを母親に渡した。それは赤くて少し透き通った綺麗
な石だった。
「赤い石。なんか宝石みたいで綺麗でしょ?お母さん、誕生日だから...なんか
プレゼントしなきゃと思って....。」
「なんて子......馬鹿ね.....。でも、ありがとう...。」
子供の話を聞き、母親はその子供を抱きしめた。誕生日プレゼントを探すために誰にも
言わずに行ったんだな.....と俺は1匹で納得していた。俺の目にはその親子の姿が
昔のヒカリと俺の姿と重なったように見えた。
「僕も心配したんだよ〜!なんで1匹で行ったんだよ〜。プレゼントを探しに行くの
なら行ってくれよう〜。僕も一緒に行ったのに!」
「ご、ごめん。」
その子供の友達は目に涙を浮かべながら言い、その子は友達に向けて素直に謝った。
親子に近づくその友達の姿がよく俺達のそばにいてくれるジェードの姿と重なり、その
後ろをルーアさんが遠くから見守っているような気がして、俺はそこで目を擦ると、
その姿は消え、親子とその友達の姿だけがあった。
「フウヤさん....ウェンディさん...ウォーブさん.....。この度は本当にありがとう
ございます!では、失礼します。」
「心配かけてごめんなさい。」
「ありがとう!フウヤさん!ウェンディさん!ウォーブさん!」
その親子と友達は俺達にお礼を言い、家に帰っていった。
「........仲が良いよね....。うん。見ててなんか和んじゃったよ。良い物ね。家族
や友達って.........。」
(家族や友達か......。ヒカリとジェード、元気かな.....。ん?...そういえば、
ウェンディやウォーブの家族って....どうしているんだろう.....。今まで考えた
こともなかったけど......。)
ウェンディの呟きを聞きながら俺はヒカリやジェードのことを思い出していると、
ウェンディとウォーブの家族のことが気になった。気になったが、今は聞かない方が
いいと思い、聞かなかった。
..................
「.........ねえ、フウヤ.....。まだ起きてる....?今夜は少しむしむしして
寝苦しいね......。」
「ああ。...そうだな。」
その夜、湿気があって俺達はなかなか眠れなかった。まあ。俺には別の理由もある
けど.........。
「フウヤ......。今日、あの親子を見て思ったんだけど.....フウヤの家族っている
のか?どんな感じなんだ?みんなで仲良く暮らしていたのか?」
「........ああ。俺には双子の妹がいる。それに......信頼できる相棒と...尊敬
する先生や親のような存在もいる.....。苦労とか色々あったが、みんなで仲良く
助けあって暮らしていたよ....。」
「そうなんだ.....。」
ウォーブに聞かれ、俺はヒカリとジェード、ルーアさんのことを思い出し、少し笑みを
浮かべて言った。俺の話を聞き、ウォーブもウェンディも何故か黙っていた。
「.......私達には....親はいないの。兄弟も...。物心ついた時から親はいなかっ
た。同じの境遇のウォーブと何故か会って、ずっと一緒にいた....。ウォーブの他
にも友達がほしかったけど、できなかったの。見た目は仲良さそうでも、実は
違っていたり、本音を言い合わなかったり、そういうのが私達は嫌だった.....。
互いに寄り添っていたけど......他にも友達がずっと欲しかったんだ....。上っ面
のつき合いじゃなく、心から信頼しあえる.....そんなウォーブのような本当の
友達を...いっぱい.......。」
「そして、そんなたくさんの友達と一緒に何かやりたい!と思いついたのが、この楽園
作りだったんだ。.....だから、今は毎日が楽しいんだよ。ありがとう。フウヤ。
これからも......よろしくな...。」
俺はウェンディとウォーブの話を黙って聞き、未来世界でのことを思い出した。あの
世界で俺達はよくディアノ達に狙われていた。たった一人の妹を失うんじゃないかと
恐怖も感じていた。家族がいなかったら.....それは悲しくて...寂しいよなあ....。
「....なんか眠くなってきちゃったね......。」
「うん。.....フウヤはもう寝たかな...。僕達も寝よう。じゃあね。フウヤ。」
「「.......お休みなさい.....。」」
ウェンディとウォーブはそう言い、しばらくして寝息が聞こえてきた。
「............家族...か......。」
きっと俺と同じように....ウェンディとウォーブもあの家族を見て思い出したん
だな.......。俺は外に出ることにした。少し外の空気を吸いたかった.....。
「...ルーアさんとセラフィは無事だろう。.........ジェードは時の歯車を集めて
いるのかな....ヒカリも一緒にいるのか.....?.....あ!この世界のルーアさんは
大丈夫か?......怪我も何もなかったらいいな...。」
星を見ながら俺はヒカリ達の無事を祈っていた。吹く風は気持ち良く、俺はその風の
おかげで冷静になり、考えやすくなった。
「........俺もジェードの手伝いをしに行った方がいい....いや、そもそも俺は
そのためにこの世界に来た.....。だが.........。」
俺はそこまで言ってウェンディとウォーブの顔を見た。ウェンディとウォーブ達と
過ごした楽しかったこと、つらかったことや嬉しかったことが頭の中で通り過ぎた。
「ここでの生活は楽しい.......ウェンディやウォーブ達ともっといたい......!
けど、この世界は........星の停止が起きる...あの未来と同じ世界になって
しまう.....!どうすれば....。」
未来世界であった俺の覚悟もすっかり揺らいでしまった。俺はこの過去の世界で
このまま暮らしたい.....。しかし、星の停止が起きて...この世界はあの未来と
同じ世界になる......俺はそれを止めるために来た.......。あの未来を変える
ために.........!
『ここからいろんな冒険をして、仲間も集めて、みんなが力を合わせて暮らせる....
そんなみんなが心が踊るような生活ができる.....まるで、楽園のような場所を
作りたい!それが私達の夢なのよ!』
『.....だから、今は毎日が楽しいんだよ。ありがとう。フウヤ。』
ウェンディとウォーブの声が聞こえた気がした。星の停止が起きて....あの未来に
なったら、ウェンディとウォーブの夢は叶わぬものになるだろう。ウェンディと
ウォーブのみんなが心が踊るような生活ができる楽園を作る夢も......この楽しい
毎日も...全部........。
「.....そろそろ覚悟を決めた方が良さそうだ。ここを離れ...ウェンディとウォーブ
達と別れよう!.....決めたからには....明日の依頼が終わった後、ウェンディと
ウォーブ達に話そう!例え信じてもらえなくても......ここを出て行くということ
を話して納得してもらわないとな!」
俺は夜空を見上げ、目を瞑った。覚悟を決めて自身の頬を叩き、家に戻って寝た。先程
まで眠れなかったのが嘘のようにぐっすり寝ることができた。