72話 光と波動と風の覚醒
「......やっと、倒れたか。早いうちにあきらめて、子どもらしく遊んでいれば、
良かったものを。」
レックウザは、倒れているヒカリ達を見ながら、言った。
「............ううっ。」
「ほう。まだ意識があるか。」
ミュウは、レックウザの声で、意識を取り戻し、立ち上がろうとした。しかし、ミュウ
の身体は、全然動かず、倒れたままだった。レックウザは、少し感心しながら言い、
ミュウを見た。その後、ヒカリを見ると、ヒカリも意識があり、必死に動かそうとして
いた。その後、ルーアを見ると、レックウザは、驚いた。ルーアは、少しずつ、持って
いるカバンの中から、回復するための飲み物を出そうとした。
「りゅうのはどう。」
「......シャドー......ボール。」
レックウザは、ルーアに向けて、りゅうのはどうを放った。ルーアは、そのことに
すぐ気づき、力を振り絞って、シャドーボールを放ち、りゅうのはどうにぶつけた。
「...たつまき。」
レックウザのたつまきによって、カバンが吹き飛んでしまった。
「りゅうのはどうは、.........おとり......。」
「そのとおりだ。」
ルーアは、すぐに、体力が限界で、りゅうのはどうを防ぐのに、集中することしか
できない状態だからこその作戦だと気づき、レックウザは、そのことに肯定した。
(こ、ここまでなの。...でも、レックウザは、本当に強い。)
ヒカリは、動くことができない身体を見て、悔しそうに思った。それは、ミュウと
ルーアも同じで、悔しそうにしていた。
(.........でも、このままだと......この世界が.........みんなが........)
ヒカリは、倒れていても、そのことだけは、頭から離れなかった。必死に意識を保ち
ながら、ヒカリは、ライド、ルイ、プロトーガ、アマルス、ズガイドスなどの村の
ポケモン達の顔が、頭に浮かんだ。ミュウも、ルーアも、ヒカリと同じように、意識を
保ちながら、今まで会ったポケモン達のことを、頭に浮かんだ。世界に隕石が落ちて
きたら、今まで会ってきたみんなは..............................。
ヒカリは、目を閉じ、押し黙っていた。
『ヒカリ、あきらめちゃ、ダメだ!!!』
(えっ!?)
突然、ヒカリの脳裏に、誰かの声が響いた。ヒカリは、目を開け、辺りを見渡した。
(............何だろう?.........この、懐かしい感じ。........これは、私の
記憶?.......でも、誰の声なのか分からない。.........もしかして、この記憶
は、ミュウと出会う前の............記憶を失う前の記憶!?)
ヒカリは、脳裏に響いた声のことを思いだし、考えていた。ヒカリは、脳裏に響いた声
が、記憶を失う前の記憶なのではという1つの可能性を思い浮かべた瞬間、ヒカリの
頭の中に、違う声が響いた。
『ヒカリ!名前の由来は、光。みんなを明るくし、みんなの心にある、暖かく輝いて
いる光。誰かの心の光が、輝きを失って、消えてしまっても、その光を、再び灯し、
また暖かみを取り戻し、輝かせることができる、そして、みんなの心に灯る光を
守ってくれる子になってほしいっていう願い。だから、あきらめないで、ヒカリ。』
(............この声.........。)
ヒカリは、頭の中に響いた声を聞いて、聞き覚えがあると思い、少し考えると、
『私は、誓います。私は、強くなり、自分の持てる全ての力を使い、負けないように、
努力します。負けそうになっても、倒れてしまっても、最後まであきらめません。』
ヒカリは、ミュウとルーアと誓い合った丘、誓いの丘(自分達で決めた)のことを思い
だした。
(..........そうだった。私は、あの時、誓った。確かに、自分の持てる全ての力
を使っても、負けそうになっているけど、私は、たとえ負けそうになっても、倒れ
ても、最後まであきらめないって。.....この星が危ないのに、あきらめちゃダメ。
倒れていても、意識はある!!身体が動けば、まだ戦える!!)
ヒカリは、そう思い、手を伸ばし、地面に手をつけて、力をこめて、立ち上がろうと
した瞬間、
『あきらめるな、ヒカリ!!』
『行ってこい、ヒカリ!!』
ヒカリの脳裏に、ヒカリを励まし、応援する声が聞こえた。ヒカリは、その声に背中
を押してもらっているように、ふらつきながら、立ち上がった。
「ほう。まだ戦うのか。」
「「ヒカリ。」」
レックウザは、立ち上がったヒカリを見て、言った。ミュウとルーアは、レックウザの
言葉を聞いて、ヒカリを見て、呟くように言った。
「力の差が、これほどある。だが、まだ戦うのか。往生際が悪いのう。」
「確かに、そうね。でも、私は、最後まであきらめない!!負けそうになっているけど、
自分の持てる全ての力を使い、また戦う!!それに、倒れていても、意識は失って
いないから、まだ戦える!!私達が負けたら、この星が危ない!!みんなが危ない!!
私は、あの時、誓ったから!みんなを守るって誓ったから!!だから、ここで、
あきらめたくない!!!」
「「!?」」
レックウザは、ばかにしたように言った。ヒカリは、レックウザをしっかり見て、迷い
なく言った。ヒカリの言葉に、ミュウとルーアは、反応した。
「意識を失わない限り、戦うのなら、今後は、意識を失わせてやろう。永遠にな。」
レックウザは、そう言うと、口を開けた。
「はかいこう............!?」
レックウザは、はかいこうせんを放とうとしたが、止めた。レックウザが見たのは、
ヒカリと同じように、立ち上がろうとしているミュウとルーアだった。
「お前達もか。」
「ええ。私も、誓いました。たくさんのポケモン達のために、自分のできることを
して、守れるように、精いっぱい頑張るって。私ができることは、倒れてあきらめて
いることじゃない!!それに、やっと兄さんが認めてくれたのに、ダメだったという
ことにしたら、兄さんにも、姉さんにも、申し訳ないから、精いっぱい戦わないと、
期待に答えられないわ!!!」
「僕も、どんなことがあっても、倒れてあきらめていることは、正しくない!!僕達が
負けて、みんなに迷惑かけるのは、後で怒られるから、プロトーガに。」
レックウザがそう言うと、ミュウとルーアは、ヒカリと同じように、迷いなく言った。
ミュウの言葉のプロトーガには、さすがに、それはないよと、ヒカリとルーアは、
思っていた。ヒカリは、ミュウとルーアを見て、笑顔を浮かべた。
「私は、ヒカリ。ヒカリは光。みんなを明るくして、みんなの心にある光、暖かく
輝いている光。」
ヒカリは、レックウザを見て、そう言いながら、一歩踏み出した。
「レックウザの心にある光は、消えてしまっています。私は、レックウザ、あなたを、
あなたの心を助けます。心の光を、再び灯して、助けます。」
「フン。助けるものなら、やれるものなら、やってみろ!!」
ヒカリは、レックウザを見つめながら、そう言い、レックウザは、ヒカリの言葉を、
鼻で笑い、口を開けて、力を溜めた。
「.....レックウザを助ける。..........確かに、あのままの状態のレックウザを、
ほっといてはいけない。隕石がぶつかった時も、レックウザも危ないのは、変わら
ないから、助けないとね。」
「でも、メガシンカしたレックウザは、すごく強いよ。作戦ある?」
「作戦はないよ。、でも、あきらめているわけにはいかない。自分のできることを、
全て使って、戦うの。何もしないよりは、いいでしょ。」
ヒカリ達は、レックウザを見た後、お互いを見て、話し合った。ヒカリ達は、普通の
会話のように話し、レックウザに攻撃されそうなのに、笑いながら、話していた。
「うん。技だけではなく、能力も使おうよ。」
「そうね。攻撃も、能力も、全て使って、お互いに協力しないと。」
「それだけじゃないよ。戦って強くなるの。戦っている中、強くなっていくの。私達
は、戦いながら強くなっていくの。技も、能力も、私達は、それを活かして、強く
なっていくの。それに、今も、ミュウとルーアと話しているだけで、力が湧いて
くる。頑張れる気がする。」
「それ、僕も同じだよ!」
「私もよ。」
ヒカリ達は、話していくうちに、だんだん希望が湧いてきていた。心が一つになって
きた。レックウザは、その様子を見て、イライラしていた。
「無断なことを。...終わりだ!!はかいこうせん。」
「無断じゃないよ。」
レックウザは、そう言うと、はかいこうせんを放った。ヒカリは、レックウザの言葉に
対して、反論した。
「私達は、助けるから、レックウザ!!心の光が消えてしまっているのなら、私が、
再び灯す。暖かさと輝きを、またあなたの心に、取り戻してみせる!!!」
「うん。」
「ええ。」
ヒカリは、レックウザに向かって、そう宣言した。ヒカリは、レックウザに宣言する
と、ミュウとルーアを見た。ミュウとルーアも、ヒカリを見て、頷いた。ヒカリ達に、
レックウザのはかいこうせんが近づいてきた。ヒカリ達は、そのことに動揺せず、
真っ直ぐに見ていた。
「10万ボルト。」
「はどうだん。」
「"氷精の風"」
はかいこうせんは、ヒカリ達の攻撃を跳ね返し、ヒカリ達に当て、それに続くように、
ヒカリ達に当たり、激しく爆発した。辺りが煙で、包まれていた。
「フン。まったく、無断でしかなかったな。」
レックウザは、そう言いながら、笑みを浮かべていた。だが、煙が晴れると、
「!?何だと!?」
レックウザは、驚いた。なぜなら、煙が晴れると、そこには、ヒカリ達が立っていた。
だが、そこにいたのは、いつものヒカリ達と違っていた。ヒカリは、瞳が黄色に変化
して、身体は、金色のオーラを纏い、ミュウは、瞳の色はそのままだが、青く光って
いて、身体は、青色のオーラを纏い、ルーアは、瞳が銀色に変化して、身体は、銀色の
オーラを纏っていた。ヒカリ達の身体には、ダメージがなくなり、回復していた。
ヒカリ達は、静かに、レックウザを見ていた。