三品目
カランコロン
「こんにちは〜」
「いらっしゃいませ!」
ルンの元気な声が響きわたる。後ろではクスノがせっせと料理を作り、シルクが届ける。そんな光景を私は微笑ましいと思っていた。
「?注文はどうしますか?」
おっと、ここに来てから何も注文していなかった。
「いつものを頂こうかしらね?」
「わかりました! 」
元気に返事し、裏の厨房に走り出す。この店の常連になって2年は経つが、元気に走り回る店長の姿は昔と変わらない。
「お待たせしました!ラプサンスーチョンとシフォンケーキです!」
入れられた紅茶を飲み、ケーキを食べる。週に一度の楽しみだ。
「ラプサンスーチョンティーが好きなんですか?」
「んー……味はそんなに好きじゃないわ。ただ、この松の香りが好きなのよ。この国の木の香りもイイけど、やっぱり故郷の木の香りが一番ね。」
前にこんなやり取りをした覚えがある。それ以来この店の店主とは仲良くやってる。愚痴を言いあったり、買い物に行ったり……
「お会計、いいかしら?」
「はい!900円になります!」
カランコロン
また来よう。そう思える店だ。私が空を見た時には、一番星が煌めいていた。
「あ、流れ星」
尾を描きながら星が落ちていった。偶然にも近くの山の方向に。私は嫌な予感を感じつつ、帰宅した。
私は知らなかった。次に店に来たら、いつもと違う光景を見る事になることを。