一品目
人間が絶滅したこの世界。ポケモンは独自の文化を発達させてきた。その中でも大きな国『ムールス・ルーンウッド』州。中心部には城下町が栄え、城外に進むにつれ豊かな自然を見ることが出来る。ある日、雨の中傘もささずに歩く一匹のポケモンが居った。
あーあ。僕は何をしているんだろ。3年間付き合った彼女には降られ、家を追い出された挙句、傘も着替えもお金も持たないままこの街をフラフラと歩いている。
「ごめん……」
思わず自分の口癖が出てしまう。ふと、彼女の最後の言葉を思い出した。
『貴方のすぐ謝る所が嫌いなのよ!すぐ泣くし……』
確かに僕はすぐ泣いてしまうかも知れない。ただ、捨てなくてもいいじゃないか!
「いてっ!!」
雨に濡れてツルツルになってしまったタイルで転んでしまった。涙が出てきてしまった。周りの人に見られていようがどうでもいい。このまま地面と一体化してしまいたい気持ちになった。
「大丈夫ですか?」
赤いレインコートに身を包んだアチャモが僕を見下ろす。どうして僕なんかに声を……?
「とりあえず運ばないと……」
そう言って僕を背負おうとした。だが生憎僕はピカチュウだ。ぼくよりも小さなアチャモに持てるわけ無い……
ズルっ!
「いてっ!!」
案の定転んでしまった。その時、頭が激痛に襲われ、僕は意識を手放した……