第8話 到着!キキョウシティ、そしてとある噂話
短いが起伏にとんだ小道の続く31番道路をようやく抜けた僕とリナは、最初の目的地であるキキョウシティに到着していた。
キキョウシティは、『古き里の景色が今も残されている町』と呼ばれていて、その名の通り古い建造物がみかけられたり、昔ながらの家が多く見られたりする。
「やっとキキョウシティに着いたね。お腹がすいたからポケモンセンターで夜ごはんを食べにいこうよ 」
「うん。私もお腹ペコペコだからそうしよう 」
僕たちがキキョウシティに到着したのは、もう太陽が沈んでからであった。それで、今はちょうど夕食をたべる時間帯だということだ。
一般的に、ポケモンセンターは傷ついたポケモンを回復してくれる施設であるが、それだけでなく、レストランで食事ができたり、バトルフィールドでポケモンバトルができたり、宿泊施設があったりとトレーナーにはもってこいの場所でもある。
しかも、ほとんどのせつびが無料で使えるため、多くの人に支持されている。
僕たちはポケモンセンターの中にあるレストランに到着し、案内された席に座る。
「さあ、なにを食べようかなー 」
リナは、夢中になってメニュー表を見る。さて、僕はどれにしようかな。
「僕は、このキキョウ風スパゲッティにするよ 」
「えっと……私は、ハンバーグセットかな! 」
「ハンバーグもなかなかおいしそうだね 」
「うん、私ハンバーグ大好きだもん 」
「じゃあ、注文を取ろうか 」
「うん!あの、すみませーん…… 」
僕たちはレストランで最高のひとときを送り、宿泊施設で有意義に過ごすはずたった。
ある話をきくまでは……。
注文した料理のほとんどを食べ終わった頃、ちょうど僕たちのとなりで食事をしていたトレーナーたちの話が耳に入ってきた。
『最近、マタツボミの塔でオバケがでるらしいな 』
『オバケ?……ゴーストタイプのポケモンでもでるのか? 』
『まあ、そういうことだろうけど、前、夜にマタツボミの塔に行ったやつ、相当ひどい目にあって帰ってきたらしいんだ 』
『結構ヤバそうだな。オレは絶対行きたくねー 』
そんなやりとりを聞いていた僕は、ふーん。そんな場所があるんだ。いう気持ちでしかなかった。しかし、
「ねぇ!マタツボミの塔ってどこにあるの? 」
と、リナがトレーナーたちに興味津々に聞いていた。
うわあ、リナは行く気満々じゃないか!怖いもの知らずを通りこして、無謀さがにじみ出しているようでなんだか落ち着けない。
「うん、わかった。教えてくれてありがとね 」
リナは、トレーナーたちにお礼をいうと、僕のところへ戻ってきた。
「エイト!今からマタツボミの塔に行こう! 」
リナは目は、キラキラ輝いている。やっぱり行くつもりなのか。
「あのさ、リナはオバケをみにいきたいの? 」
「うん、もちろん! 」
ダメだ。予想通りの答えしか返ってこない。
「ひどい目にあったらどうするのさ 」
「エイト、お願い!行こうよー!私たちなら大丈夫だってー 」
大丈夫だという根拠はどこにあるのだろうか。しかも、僕たちは、旅立ってから数日しか経っていない新米トレーナーなのに。
「絶対行くつもり? 」
「行く行く!絶対行く! 」
リナは、だだをこねる幼い子のように何度も同じ言葉を繰り返す。
はあ。やっぱり僕には、これを断ることは不可能だ。
「わかったよ。行けばいいんだろ? 」
仕方がないから認めよう。
「やったー、それじゃあ、早速出発ー! 」
リナは、強引に僕を連れ出してマタツボミの塔へと向かった。本当に生きて帰れるのだろうか。
僕は、密かに命の危機を感じていた。