第7話 波乱のポケモンゲット大作戦
僕とリナは再びヨシノシティに戻ってきていた。ヨシノシティへ行くのは二回目だったから、道順は完璧。すぐに到着できた。
「そういえば、リナは家に戻らなくても大丈夫なの? 」
「うん、だって私はエイトとぶつかる三十秒前くらいに旅立ったんだから! 」
リナの話からすると、どうやら僕たちは同じ日に旅立ったらしい。それにしても、旅立ってすぐに僕なんかと衝突するなんて思ってもいなかっただろうな。
「あのさ、私たちってまだポケモン一匹ずつしかもってないよね?だから、30番道路で探さない? 」
確かににそうだよね。僕は、ウツギ博士にもらったヒノアラシしかもっていないわけだし。リナの手持ちもミズゴロウ一匹だけのようだからね。
「僕も仲間を増やしたいからね。早速30番道路に行こう! 」
「うん! 」
30番道路。ポケモンじいさんの家までお使いにいった時にはあまり周りを見ずにいたけれど、改めて見てみると。
「ポケモンっポケモンっいないかなー 」
リナは何かの音楽にのせて歌っている。きっと気分がいいのだろう。
「それは、何の歌なの? 」
「ん?これは作詞作曲は私の歌だよ!いい感じでしょー 」
「……うん、そうだね 」
あの歌はリナが作ったものだったようだ。しかし、曲の良さを尋ねられると困る。そんなに感動しているわけでもないことが顔に出ていないか心配だ。
ガサッ
そんな時、近くの草むらから物音がした。
「あっ、コラッタだ!」
リナの指差す方向には一匹のコラッタがいる。……コラッタかあ。僕は、前にコラッタの大群に襲われたのを思い出して少し複雑な気分になった。
「さあ、ゲットするよ!ミズゴロウ、お願い! 」
「ガヤガヤー! 」
リナのミズゴロウが威勢のいい鳴き声とともにボールからとび出した。
「ミズゴロウ、体当たり! 」
ミズゴロウは、コラッタのいる場所の方へと駆けていく。コラッタは、攻撃を避けようと横にずれようとしたが、それよりも先にミズゴロウの技がダイレクトに決まった。コラッタはフラフラとよろける。
「やった、これってチャンスだよね!モンスターボール、ゴー!」
リナは、ボール状の物をコラッタへ向けて投げた。
……ちょっと待った。
今、なにを投げてた?僕の目で見たものはモンスターボールではなかったような気がするのだが。
コラッタにクリーヒットしていたものは、なんと、
ナナシの実であった。
ナナシの実をもろにうけたコラッタは、痛がっているのか涙目にみえる。そういえば、ナナシの実ってとてつもなくかたいって習ったな。僕は、そんなものを投げつけられたコラッタに同情した。
その後、コラッタはナナシの実をあてられたことに怒ったのか、逃げていってしまった。
「あちゃー逃げられちゃったぁ 」
リナは、ガッカリしている。でも、そうなったのは自分のせいだよ。
「一体何をしているのさ! 」
僕は、思わずダイレクトに言ってしまった。ここまで言わなくてもよかったと発言してから後悔する。
「へっ? 」
リナは辺りをキョロキョロしている。もしかして自分がやった行動のことをわかっていないとか。
僕は、さっきリナが投げたナナシの実を拾いにいき、そしてそれをリナに押し付けながら言った。
「さっきリナが投げたものは、"モンスターボール"ではなくて"ナナシの実"――つまりきのみだったんだよ 」
「えっ、ウソ!? 」
リナは、僕が押し付けたナナシの実を一瞥した。
「ええええーッ!これ、モンスターボールじゃないじゃん! 」
リナの叫び声が、30番道路中に響きわたった。
「リナ、今気づいたんだけどさ、僕モンスターボールを持っていなかったんだ 」
「私も持っていなかったみたい 」
なんだんだいって、二人してアホなことをしていたんだね。
「じゃあ、ヨシノシティへ戻ってモンスターボールを買いにいこう 」
そういうことで僕たちは、ヨシノシティまで引き返し、フレンドリィショップでモンスターボールを買うことになった。
「モンスターボールを買ったことだし、今度こそ新しいポケモンをゲットしないとだね! 」
リナは、僕にさっき買ったばかりのモンスターボールをみせびらかす。
僕たちは、また30番道路へ戻ってきた。これで三回目だよね。
「今度は失敗しないようにね 」
「もう、エイトひどいよー今度は失敗しないんだから! 」
「本気で言ってるわけじゃないって 」
僕が冗談めいた口調で話していたその瞬間、
ガサガサガサッ
「あっちに何かいるよ!行こう! 」
「うんっ! 」
物音のした方向へ行くと、そこにはポッポとオタチの二匹がいた。
「僕はポッポをつかまえたいな 」
「奇遇だね!私はオタチが欲しいって思っていたの 」
「じゃあ、それぞれゲットしよう! 」
「りょーかいッ 」
僕は、いったんリナと別れ、ポッポとの戦闘を開始した。
「いけっ、ヒノアラシ! 」
「ヒノーッ! 」
ヒノアラシが、背中から炎を燃え上がらせながら登場する。
「ヒノアラシ、あのポッポを仲間にしようと思うんだ。協力して欲しい 」
「ヒノーッ! 」
了解の合図なのだろう。ヒノアラシの背中の炎がより大きくなった。
「いくぞっ!ヒノアラシ、体当たり 」「ヒノーッ! 」
ヒノアラシは、声をあげながら、ポッポのいる方向へ向かっていく。
「 ポポーッ…… 」
ヒノアラシの体当たりは命中したようで、ポッポは少し苦しそうな鳴き声をあげた。
「ヒノアラシ、次はにらみつけるだ! 」
ヒノアラシは、ポッポをガンつけるような目付きで見た。
ポッポはビクリとふるえあがる。怯えてひるんでいるんだな。
「今だ!いけ、モンスターボール! 」
チャンスと思い、僕はモンスターボールを投げた。ポッポはボールに吸い込まれてゆく。
クイックイッ……
モンスターボールにポケモンが入ったからといってすぐに捕獲が完了するわけではない。最初はボールが揺れていて、中央のボタンが赤く点滅するのだ。そして、揺れと点滅が止んだら捕獲成功ということだ。
僕がポッポに向けて投げたボールもしばらくは揺れと点滅がみられたが、やが、それは止まった。よし、成功したぞ。
「ポッポ、ゲットだ!」
僕は、ポッポの入ったボールを拾い上げる。また仲間が増えて僕はうれしかった。隣にいたヒノアラシも、喜びを表しているのか、僕にほほえみかけているようだった。
「エイトーッ!見てよ!」
後ろから声がしたので振り向いてみると、リナがこちらに走ってきていた。その表情からするとリナも上手くいったみたいだ。
「オタチ、ゲットしたよ! 」
「オター! 」
リナは、オタチを抱え、僕に見せる。
「僕もゲットできたよ。いけ、ポッポッ! 」
「ポポー! 」
勢いよくポッポはモンスターボールからでてきた。
「ポッポ、僕はエイトだよ。これからよろしくね 」
「ポッポーッ! 」
ポッポは、うなずきながら声をあげる。ポッポなりの挨拶なのだろう。
「さあ、新たな仲間も増えたことだし、キキョウシティに向かおうか! 」
「オオーッ! 」
こうして波乱なポケモンゲットは幕を閉じた。