第5話 戦闘!赤髪の少年
ポケモンじいさんの家をでるとリナには、
「遅かったね。なにかあったの? 」
と言われた。
遅かったのかな。5分くらいで終わらせたつもりだったんだけどな。と思ったが、声にはださない。
「ポケモンじいさんが不在だったから、どうすればいいのかちょっと困ってね 」
「そっか。問い詰めたみたいでごめんね。そういえば、ポケモンのタマゴは預かってきたの?エイト見せてよ! 」
リナの目が輝く。ポケモンじいさんの家に入ったときにタマゴを見なかったのかな。
「分かった。ちょっと待ってて 」
僕はリュックの中からタマゴをだそうとした。しかし、
プルルルルルル――
突然、ポケギアが鳴り、それは遮られてしまった。一体誰からだろう。
僕は、急いでポケギアをとりだした。電話してきたのはウツギ博士だ。
「もしもし、エイトです。博士、何かあったのですか? 」
「エイトくん、大変なんだ! 」
ウツギ博士の声色から明らかに焦っていてるのがわかる。
「何かあったんですね! 」
「とにかく大変なことになったんだ!だから、早く研究所にもどってきて欲しいんだ。急なことでごめんね 」
何が大変なのかはわからないまま、電話がきれてしまった。でも、早いところワカバタウンに戻らないとだよね。
「リナ!急いでワカバタウンに戻らないといけなくなったんだ。着いてきてくれるよね? 」
「もっちろん! 」
リナはなんとも思わずに、「いいよ 」と示した。彼女らしい答え方だ。
「まずはヨシノシティまで戻ろう! 」
「うん、行こうエイト! 」
二人はヨシノシティへ向けて走りだした。
それにしてもウツギ研究所でなにがあったのだろうか?それが、気になって気になってしょうがなかった。
「ちょ、ちょっと休憩……しない? 」
僕は、疲れに負けて言ってしまった。今日は走ってばかりだから、すぐにばててしまう。リナは、今でも普通な感じだから、羨ましい。
「うん、急がないといけないのはわかるけど、休憩も大事だからね! 」
リナも了承してくれたので、僕たちはいったんベンチに座って体を休めることにした。
「そういえば、リナがつかっていたポケモンってジョウトのポケモンではないんじゃない? 」
リナがバトルのときに繰り出した水色を基調にしたポケモンを僕は見たことがなかったため、尋ねてみた。
「あっ、この子のことかぁ。でてきて、ミズゴロウ! 」
「ガヤガヤー 」
リナの持つポケモンは『ミズゴロウ』というのだったな。
「あ、それでね、ミズゴロウは、ホウエン地方のオダマキ博士っていう人からもらったポケモンなの。だから、ジョウト地方では珍しいのかな? 」
リナの説明だと、ミズゴロウはホウエン地方のポケモンらしい。ホウエンかあ、ずいぶん遠い場所だな。ちょっと待った。ということは……。
「リナってホウエン出身なの? 」
「うん、そうだよ。いってなかったっけ? 」
リナはさらりと答えるけど、僕は初耳だよ。
「最初会った時は、お互い名前くらいしかいわなかったからね。じゃあ、リナは最近ジョウト地方に来たの? 」
「うん、一週間くらい前にここ、ヨシノシティに来たの! 」
「そうだったんだね。僕は、生まれも育ちもワカバタウンだから、生粋のジョウト人だよ 」
「そっかぁ。あ、結構話こんじゃったね。そろそろ行こう?博士が待ってるよ! 」
「そうだね。行こうか 」
僕たちは、29番道路へといこうとした。しかし、前方から見知らぬ少年が僕の目の前にやってくる。
その少年は真っ赤な髪をしていて目付きが悪い。いかにもガラの悪そうなやつだ。
「……おまえウツギ研究所でポケモンもらってたよな 」
僕は、知らないふりをして先を急ごうとしたが、見知らぬ少年が口を開いたため、踏みとどまる。
「………… 」
僕は内心怯えているからか、黙りこんでしまった。考えても言葉がでないのだ。
「弱いヤツがトレーナーだとポケモンがかわいそうだぜ。おまえらみたいなヒョロヒョロしたヤツらにはもったいないだろうな 」
今の言葉に僕は、カチンとくる。リナの表情もこわばっているあたり、僕と同じ気持ちを味わっているにちがいない。
「なによ!調子にのって!ふざけないでくれる? 」
僕より先に、リナがヒートアップしていた。リナはこんな風にケンカ腰に言われたら黙って置けなさそうだからな。
「ふざけている?笑わせるな。……だがそこまで言うのならわからせてやろうか? 」
赤髪の少年は、懐からモンスターボールをとりだす。
「バトルってことだね!のぞむところだよ! 」
「ちょっと待てよ、リナ!いくらなんでもバトルなんて…… 」
「エイト、止めないで!あんなエラソーなヤツ早いところ倒してしまうんだからッ! 」
リナは、何がなんでも戦うつもりらしい。仕方ない。ここはリナを見守ろう。
「ミズゴロウ、お願い! 」
「ガヤガヤガヤー!」
リナは、ヨシノシティから一緒に連れていたミズゴロウに呼びかける。
「いけ、ワニノコ 」
「ワニャワニャワニャワー! 」
対する赤髪の少年のポケモンはワニノコ。
ちょっと待った。ワニノコはウツギ博士の研究所にいたポケモンではないか。こいつウツギもウツギ博士からポケモンをもらったのだろうか。でも、何かがひっかかるような気がする。
「みずタイプ同士か。でも、私は負けないよ! 」
リナは気合いが皆切っているようで、いつも以上にたくましく見える。
「先攻は譲るぜ 」
僕は、何も言わずに攻撃してくるとばかりおもっていたが、赤髪の少年はそこまでひどいわけではなさそうだ。
「じゃあ、遠慮なくいくよ!ミズゴロウ、体当たり! 」
ミズゴロウは、全速力でワニノコに近づいていく。
「ワニノコ、かわせ! 」
ワニノコは、横に素早く移動し、ミズゴロウは、元々ワニノコのいた場所を通りすぎていった。
「うーん、、正面からの攻撃は通用しないかぁ 」
リナは、悔しそうな表情を浮かべる。
「今度はこっちからいくぜ!ワニノコ、ひっかく! 」
「ワニャーッ! 」
ワニノコは、ミズゴロウに接近し、爪を立てる。
「ワニノコが近づいた今がチャンス!ミズゴロウ、泥かけ! 」
「ガヤーッ! 」
リナの指示で、ミズゴロウは、ワニノコにありったけの泥をかけた。
「なんだと! 」
突然の展開に赤髪の少年は驚いている。
ワニノコは目に泥が入ったらしく、フラフラしているばかりだ。……よし、リナ、いけるよ!
「ミズゴロウ!とどめのフルパワー体当たり! 」
「ガヤ――ッ! 」
ミズゴロウは、雄叫びのような鳴き声をあげ、猛スピードでワニノコへ激突した。
「ワニャァ〜…… 」
ワニノコは、衝撃に耐えられず目を回していた。
これで、リナの勝利だ!
「どうやらわたしの勝ちみたいだね。アンタ、たいしたことないじゃん !」
リナの強気な態度が何とも勇ましい。
「フンッ……そんなに勝ってうれしいか? 」
「負け惜しみなんてカッコ悪いだけだよ 」
「負け惜しみなんかじゃねーよ。ちょっと手を抜きすぎただけだ 」
負けたわりには、余裕そうな態度をとっているあたり、やつの言っていることは間違いではないのかもしれない。
「次会ったときにはオマエらの弱さをバトルで証明してやるよ。二人まとめてな! 俺はシルバー。世界一のトレーナーになる男さ 」
赤髪の少年――シルバーはそれだけいい残して僕たちの前から去っていった。
「本当イヤなヤツなんだから! 」
リナはシルバーの去っていったほうに向かって叫んでいた。
僕もなにか言ってやりたい気分に駆られたが、それよりも研究所に急がないといけないことに気づいた。
「リナ、アイツが気になるのはわかるけど、今は研究所に急ごう! 」
「うん、わかった 」
僕たち二人は、ウツギ博士の研究所へと道を急いだ。