第1章
第4話  ポケモンじいさんの家
 30番道路を歩いていき、僕とリナはポケモンじいさんの家の前に到着していた。一緒に旅をすると決めたこともあり、リナは僕のお使いにも付いてきてくれるらしい。

 ハァハァッハァ……

 すでに僕の息はあがっていた。それは、ここまでくる間に多くのトレーナーからバトルを挑まれたからだ。なんたって僕は、今日ポケモントレーナーになったばかりだから、まだバトルには慣れていない。

「エイト、もうばてたの? 」

 なんと、リナは平然とした顔で僕を見ているではないか。

 見た感じ汗はかいているものの、あまり疲れていないようだ。そういえば、先程のポケモンバトルの手際も僕よりよかったよな。

 それにしても、僕のほうがばてているなんてなんだかみっともない。

「リナは元気だね。でも、僕は大丈夫、早く中に入ろう 」

僕は内心焦っているのを隠し、『ポケモンじいさん』の住む家のドアノブに手をかける。

「ねぇねぇ、私って一緒に入ってもいいのかなぁ? 」

 リナはためらいがちに言う。そういわれてみればそうだよな。僕はウツギ博士に頼まれたからここに来たわけだけど、リナはそうではないしね。うーん。

「別に入ってもいいんじゃないかな。それに、もしなにかあったら、リナと僕二人でお使いを頼まれたことにでもすればいいよ 」

「それもそうだねー。それじゃあ、早速入ろーう! 」

 リナは、僕に代わって扉をあけようとする。おいおい、"遠慮"という言葉を知らないんだなぁ。

 リナは僕がこんな風に思っていると知ることなく、ポケモンじいさんの家の中へ入っていった。

 僕はリナを追いかけるために、続けて中に入ろうとした。しかし、そうする前にリナが外にでてきた。

 部外者だから追い出されたのかなぁ、と少しだけ思ってしまったが、そうではなかったようだ。

「ねぇエイト、中には誰もいなかったよ。もしかして家間違えたのかなぁ? 」

 誰もいないだって?でも、家を間違っていないはずだけどな。

「いや、確かにここのはずだよ。ちょっと確認してくるからここで待っていて! 」

「わ、ちょっと待っ…… 」
 リナが言いかけていたが、僕は、それに構わずポケモンじいさんの家に入った。後でリナには何か言われるかもしれないが、今は考えないでおこう。


……ギィーッ



 ドアを開けると、なんともいえないきしんだ音がした。

「失礼します 」

 遠慮がちに中に入る。うーん、少し緊張するなあ。


 中を見渡してみたら、いかにも渋いという感じのリングマの置物があったり、気味の悪い黄緑色の液体があったりするだけで、やはり誰もいなかった。

 リナの言ったことは、本当だったらしい。

 本当に誰もいないみたいだね。ウツギ博士はこの事は知らなかったのかな。

 ポケギアでウツギ博士に連絡しようと思ったが、テーブルの上に紙きれが置いてあることに気づいた。

 一番上には『ウツギ博士へ 』と書いてある。まあ、僕が見てもいいよね。

『珍しいタマゴが見つかったから取りにおいでといっておきながら留守にしていて悪いのう。タマゴはタンスの上に置いておるから、持っていっておくれ 』

 ポケモンじいさんからウツギ博士に宛てた手紙にはそう書かれていた。

 ということは、僕はそのタマゴを受けとればいいのか。
 テーブルの近くにあったタンスの上にタマゴは置いてあった。それは、白をベースにしたもので、その中に赤や青の不思議な模様が描かれている。
 一体どんなポケモンが生まれてくるのだろうか。僕には、とても想像できなかったが、不思議とわくわくした気持ちが沸き上がってきた。

 僕が助手としてお使いにきたことを伝えたほうがいいだろう。そう思ったので、僕は、

『タマゴをお預かりしました。 〈ウツギ博士の助手より〉 』

 と、自分が持ち歩いているメモ帳に書いて、テーブルに置いた。

 さぁ、終わったことだし戻ろう。リナをこれ以上待たせる訳にはいかないからね。

 僕は、タマゴをリュックの中に入れ、急いでポケモンじいさんの家を出ることにした。

snow white ( 2013/03/29(金) 13:51 )