第3話 騒動と突然の出会いと
30番道路へ行くためには、ワカバタウンから西へ行った所にある29番道路を通り、ヨシノシティに行く必要がある。そして僕は、29番道路にいるのだが、今なんとコラッタの大群に襲われていた。
「ヒノアラシ、体当たり! 」
「ヒノーッ! 」
僕の指示で、ヒノアラシは自身の身体を大群の中の一匹にぶつける。
その攻撃によって、大群のうちの一匹は倒すことができた。
だが、大群というだけあって数があまりにも多すぎる。これではいくら倒してもキリがない。
そもそもなぜこうなったのかというと、僕が歩いているときにコラッタのしっぽを思いっきり踏んだからである。 それに怒った仲間たちが一斉に駆けつけ、僕とヒノアラシを追いかけてきているわけだ。
要するに"自業自得"という言葉がふさわしい。
でも、こうなったら最終手段しかない!
「ヒノアラシ、逃げるぞ! 」
僕たちは、猛ダッシュで29番道路を駆け上がった。
僕は、特別足が遅いわけではないからなんとかなると思っていたが、コラッタも速い。おそらく体が身軽だからだろう。
今は、そんなこと考えている場合ではない!早く逃げないと!
僕は、走る速度を速めようとした。しかし、ヒノアラシを見ると、ゼイゼイと息をあげて辛そうにしている。
「戻れ、ヒノアラシ! 」
僕は、ヒノアラシをボールに戻した。これ以上走らせたらヒノアラシの体力が切れてしまうし、そんなことしたらトレーナー失格だと感じたからだ。
でも、どうすればいいんだ?どうしたら止めることができるんだ?
僕は、コラッタから逃げながら、退ける方法を考える。しかし、焦っているせいもあって全く思い浮かばない。 このままだと僕がやられてしまう。
僕は、トレーナーになったからって浮かれていたんだ。と、後悔の念に駆られたその直後、
頭になにかがよぎった。
そうか。この方法があった。よし、早いところ撃退しよう。
僕は、リュックからあるものをとりだした。
あるものとは、遠足の時にお弁当を詰めたりするバスケットケースのようなものだ。
それは、一般にポフィンケースと呼ばれていて、その中には"ポフィン"と呼ばれるポケモン用のお菓子をいれる。おもにシンオウ地方で普及しているものだ。
でも、なぜジョウトに住む僕が持っているのかって?
それは、シンオウ地方の友だちが僕にくれたからだ。
僕は、ケースの中から"まろやかポフィン"と呼ばれるポフィンを10個ほど出して、コラッタたちのいるほうに思いっきり投げた。
甘いにおいにさそわれて、コラッタたちはポフィンのほうに集まっていく。そして、次々にそれを食べ始めた。コラッタたちの満足した様子から、この作戦が上手くいったことがよくわかる。
はぁ、これで助かった。一時はどうなることかと思ったよ。
さぁ、コラッタたちがポフィンを食べているうちに、早いところヨシノシティに行ってしまおう。
僕は、ハイスピードでヨシノシティへと向かった。
そう、ここがヨシノシティ。はぁ、やっと着いたよ。猛スピードで走ったから疲れたなあ。
おっといけない。確かに疲れてはいるけれど、早くポケモンじいさんの家に行ってお使いを済ませないと。
僕は、30番道路の方へと足を進めた。しかし、
ドスンッ!
いたた……急いでいたせいか、僕は誰かとぶつかってしまった。早く謝らないと!
「あいったぁ〜 」
はっきりとした甲高い声が聞こえる。ぶつかった相手は、どうやら女の子らしい。
「いきなりぶつかってごめん! 」
僕は申し訳なくて、とっさに謝った。
「ううん、大丈夫だよ。心配しないで! 」
女の子はにっこりしていて、怒りだす様子ではないようだ。優しそうな子でよかったよ。
「あ、そうだ。私は、リナ。突然だったけどよろしくね。あなたは? 」
「僕はエイト。こちらこそよろしく 」
女の子――リナちゃんに自己紹介をされたため、自分も名前を伝える。
「ねぇ、エイトくんはトレーナーなの? 」
リナに問われた。にしてもなんかいきなりだよね。
「うん。そうだよ。といっても今日から旅立つ新人だけどね。あっ、あと"エイト"って普通に呼んでよ。なんだか堅苦しいのもね 」
「そう?それじゃあ、エイトって呼ぶね。私のことはリナでいいから! 」
「うん、じゃあ、"リナ"ね 」
リナとは初対面なのに、すぐに打ち解けたな。とはいえ、旅立ちの日にいきなり友だちができたのはうれしいことだ。
「それでさ、エイトも新人トレーナーなんだよね?実は私もそうなの。しかも今さっきからね。……あのさ、いきなりで悪いだけど、い…一緒に私と旅したりしてみない? 」
「えっ! 」
思わず衝撃が走った。リナは僕に一緒に旅をしようと言ったのである。今のは本気でいってるのかな。
「あのさ…… 」
突然のことだったために、混乱してこの先の言葉がてない。
「やっぱりダメ? 」
リナが僕の顔をまじまじと見ながら言う。しゅんとした表情にピクリとしてしまう。うーん、リナは僕なんかと一緒でいいのだろうか?でも、こう考えても答えはでない。ええい、もういいや!
「リナがそう言うならいいよ。一緒に旅しよう 」
「え、いいの?やったぁ!エイト、今日からよろしくね 」
ぴょんぴょん跳ねたかと思うと、リナは僕のいる方に思いっきりダイブしてきた。
「わわっ、ちょっとやめてよ 」
僕は困り顔で後ずさりした。
こうして僕は、ヨシノシティでいきなり出会った女の子――リナと一緒に旅をすることになったのだ。
これからの旅は一体どうなることやら。