悪夢のはじまり
……いつになれば私たちは解放されるのだろうか。はたして
安寧の日がおとずれるのだろうか。どす黒い血の渦巻いたようなこの場所から抜けだせる機会が、くるのだろうか。
私たちはいま、夢を見ている。
否、夢の中に閉じ込められている、といったほうが正しいのかもしれない。もとの世界で過ごせる時間はあの頃と比べて圧倒的に短くなり、徐々に体力を奪われているにもかかわらず、この危機的状況に身を
委ねはじめているのはたしかだ。
錯覚であることはわかっている。しかし、頭では救いを求めていても、身体は境地を悟ったかのように動かない。往生際が悪いのか、
潔いのか、そのあたりの判断もつけられそうにない。
……だが、それでもいいのかもしれない。私たちよりもあの子が無事でいてくれさえすれば。あの子まで巻き添えにしてしまったら一巻の終わりなのだから。
だから、あの子だけでもいい…………!
誰か…………だれか…………!!
たすけてくれ……………………!!