chapter6 [401号室]
その日はキマイラの目撃情報の整理で忙しく 仕事が終わったのは九時過ぎだった
外はすっかり暗くなっていてよく晴れた綺麗な星空を 街の灯りが曇らせていた
「家に帰るというか…これだけ近いと寮に戻るって感じだな」
ビルから歩いて五分もしないところにある複数のマンション、
強制ではないが グランドレイクに務めている者の8割以上がここを利用している
レナードの隣を歩くサーナイトは 彼の方を見上げて 少し楽しそうに言った
『遠すぎるよりはいいじゃないですか
それにこの周辺なら私がマスターと歩いていても 変な目で見られることはありません♪』
「…昔はそれが当たり前だったのにな 今じゃどこに行ってもポケモンは危険だって連呼する奴らばかりだ」
自分の部屋に戻った青年は 明かりを点けようとした
しかし壁のスイッチを押しても 部屋は真っ暗なままだった
『…電灯が切れちゃってるみたいですね』
「たしか買っておいたのが あるはずだ…」
押入れの上の棚にあるはずなんだが… この暗い中で 探す羽目になるとは
青年が窓からの光を頼りに 手探りで新しい電灯を探していたとき
不意に背中に重さを感じた
「……サーナイト…?」
『申し訳ありません…こうして帰って来られたのに 今になって…あの時のことを思いだして…』
…無理もない 怪物に不意打ちされて 地下水路で死ぬような目に会ったばかりなのだから
サーナイトの濡れた頬が月明かりに照らされていた
『怖い… 私は… 私のせいでマスターの命が危険になることが 怖いんです
マスターをお守りしなきゃいけないのに 敵に人質にとられてしまうなんて
情けない、あってはならない 最大の屈辱です
だから…もしも今後 私がマスターの足枷になってしまうようなことがあったら…』
『その時は 私を助けないでください』
青年は重いため息をつき サーナイトの震える手を握った