chapter1 [トバリシティ 地下水路]
手にしたライトの明かりを頼りに 青年とサーナイトはトバリシティの暗い地下水路を走っていた
短い黒髪に筋肉質な体格の彼は レナード・ティーガー
今回の任務を任された…というか押し付けられたグランドレイクの戦闘員である
「なあサナ 俺らはいつまでこの真っ暗闇の迷路を走らなきゃならないんだ?」
『ベトベトンのキマイラを見つけるまで…目撃情報が正しければそう遠くはないはずです
気を付けて下さいマスター』
「しかしこれが戦闘員二人に任せる任務かよ ナナちゃんは高みの見物だから実質一人だし 大体…」
青年は愚痴を続けようとしたが サーナイトのテレパシーが運んできた女性の声に遮られた
『誰が高みの見物だ 西側にはキマイラの反応は無かったよ
未熟なレンが敵を取り逃した場合に備えて 東の狙撃ポイントに向かってやる』
…忘れてた サーナイトを無線代わりに使ってちゃ愚痴も言えやしない
声の主の名は ナナ・ティアーシャ
艶のある長めの黒髪に青い瞳の小柄な女性、レナードより年下だが立場は上である
穏やかで物静かな振る舞いをするが 気性は荒い
ほとんど無言で走ること十数分、青年とサーナイトは立ち止まって顔を見合わせた
『…マスター こちらのルートはここで行き止まりですね
いったん分岐点まで戻りますか』
「…そうだな」
キマイラどころかポケモンの姿もないとは
いい加減このジメジメしたとこから抜け出したいんだがな
来た道を引き返そうとしたその瞬間 青年は背後にいたものに気付いた
だが遅かった
サーナイトの悲鳴は途中で遮られ 身体を締め上げられるようにして固定され
顔は恐怖で強張っていた
「畜生…探したぜ、化け物」
ライトの明かりは 暗闇の中に 紫色の毒々しい怪人を照らしていた