chapter0 [スタルカ]
朝陽が雪に覆われた大地をまぶしく照らし 冷たい風が吹き始めた
今朝もまた集会が始まる
一人の少女が人々の前に姿をあらわした
真っ白な少女 ――…
「姫」と呼ばれる名を持たない彼女は 可憐で 美しい、人とはかけ離れた者だった
白い髪をなびかせながら 雪の積もった道を歩き 小柄な彼女は演壇に立った
人々は息をすることさえ忘れて 彼女が発する言葉を待った
風が止み 辺りは静寂に包まれた
少女は朝の冷たい空気を吸い込み 明るく 温かい声でこう言った
「おはよう 同志諸君、 再開しよう 我々の闘いを」
彼女こそ スタルカのすべてを支配する独裁者
かつてバトルゾーンと呼ばれていた島に ひとつの国を築きあげた 神様のような化け物である
長い年月を経てシンオウは変わってしまった
かつての 人とポケモンが穏やかな暮らしをしていたシンオウはもはや存在しない
本土の人々は新たに発生した化け物、人間とポケモンが融合した「キマイラ」を恐れ
ポケモンまでも社会から遠ざけていった
これはキマイラと戦ったシンオウの人々の物語
スタルカの姫とともに戦ったキマイラの物語
「シンオウ本土の平和ボケした連中に 無慈悲な現実を教えてあげよう
私のスタルカがすべてを滅ぼすその時まで 戦ってくれ
私は君たちが大好きだ」
スタルカの姫は無邪気な笑顔でそう言った