04 Gardevoir's grave
レイヤー4(final)
あの後 俺と姉さんは同じところで暮らすようになった
川も近くにあって木の実も豊富なおかげで食料には困らないが
問題は縄張りの周りをうろついているグラエナだ
野生のグラエナが戦い慣れてないサーナイトの足を噛み砕くことは難しくない
だから姉さんにはなるべく洞窟の側を離れるなと言っておいたのだが
「…いない…」
十日ほど経った日の朝、姉の姿はなかった
「なんでだよ……
もう終わったことだからここには来ないってあの時そう言ったじゃないか
いつまで姉さんはそいつに縛られなきゃいけないんだ…!」
走っている間 俺はそんなやり場のわからない不満を叫んだ
朝霧が立ち込める墓地で姉さんは一人で声をあげて泣いていた
男の墓を抱きしめるようにして泣いていた
「………。」
その時 姉の心の中の風景が流れ込んできた
それは男が息を引き取る少し前の時間
肝臓を患って古いベッドに横たわった男がサーナイトを呼んでいる
もう目もほとんど見えていないようで 宙に伸ばしたその手は小刻みに震えていた
『サーナイト お前、そこにいるのか……』
それは荒々しく 苛立ちと寂しさの混じった声だった
サーナイトは小さな両手で ゴツゴツしたその手を握った
『…ここにいますよマスター 私はずっとあなたの側にいますから』
しばらくの間 二人ともただ黙って泣いていた
涙の理由は大切な人との別れが近いからではない
その男とサーナイトの心はある種の「後悔」に満ちていた
記憶の中の姉は 今墓の前にいる姉さんと同じように頬を濡らしていた
彼女はしばらく前から俺に気付いていたようで 嗚咽混じりの声で言った
「…本当はね もうあの人のことをどう思っていたのかなんてわからない」
私は嘘を吐きすぎた…マスターと偽りの関係を続けてきて…終わったら何も残らなかった
ここはあの頃の私の墓よ マスターと一緒に生きた私もここに埋もれてしまった」
湿った風が木々を揺らす中 姉さんは墓の前で立ち上がり
冷たく澄んだ空を見上げて呟いた
「…あの人を愛しておけばよかった
…もう遅いのにね」
赤い眼に浮かべた涙が朝陽に輝いていた
Gardevoir's grave end.