03 ジヘッドのお話
―これはどうしようもなく哀れなジヘッドのお話――
―ついに肉体の主導権を得た彼は 狂喜して笑いました―
『身体が動く…やっと やっと終わりにできる…』
僕は真っ暗な洞窟全体に響く笑い声をあげて ジルの首筋に噛みつきました
頭部を片方失ったあと 僕が生きていられるかどうかはわかりません
それでも ジルとの異常な関係が終わるならそれでいいんです
ジルは大量の血を流しながら 僕を見て幸せそうに笑っていました
『ジン…バカな弟… 私たちはずっと一緒だったんだよ
そしてこれからも もう遅いの だってあなたが気付いてしまったから』
僕は初め 彼女が何を言っているのかわかりませんでした
でもその意味がわかったとき 僕の中であらゆる思考が 感覚が 凍り付いてしまいました
『ジルはジンで ジンはジル…』
僕の頭の中はぐちゃぐちゃになっていました
僕をこの洞窟に閉じ込めていたのは、僕が毎日毎日殺してやりたいと憎んでいたのは
他でもない自分だったのです
「ジン」と「ジル」が同一だったと気付いたことで
それまで拒絶し続けてきた彼女の心が少しずつわかるようになりました
今までもこれからも私たちは一緒…僕はこのとき確かに 嬉しいと思ったのです
…僕のことを愛し満足そうに堕落していく私と…
…私を憎み 一刻も早く終わりにしたかった僕は…
とうとう最後まで 自分を大切にすることができませんでした
―これはどうしようもなく哀れなジヘッドのお話――
―自らを殺し、自らを殺めた者の末路―
―誰もいない洞窟で 一匹のジヘッドが命を落としました―
ジヘッドのお話 end