02 ジヘッドのお話
―これはどうしようもなく哀れなジヘッドのお話――
―光の届かない真っ暗な洞窟の奥底で―
―彼女はいつまでもこうして寝そべっていたいと願っていました―
私はジンのことが大好きです
ジンと一緒にいられるなら 他にはもう何もいりません
私の大切な弟…私がいなければ何もできない可愛い弟は
ある日 私に向かって言いました
『この体は僕のものなのに どうしてジルが動かしているんだ』
ジンは「あること」に気付いていないみたいで いつも私から離れたいと言っています
私さえいなくなれば自由になれると思っているようで
最近は私に対してまっすぐな殺意を向けてくれるようになりました
今はとても素敵な状態です
だってジンの頭の中には私だけしかいない…
弟は私の首を噛み千切ることで頭がいっぱいなのですから
『仕方ないじゃない ジンが動かせないから私がジンの分まで動かしてあげてるの
だけど心配しないで 歩くことも食べることもお姉ちゃんが全部やってあげるから』
…とはいっても 昨日もその前もあまり食事をしてませんね
でもいいんです 私にはこうして隣にジンがいるだけで十分です
『返せよ…進化する前は一匹の雄のモノズだった、首は一つで僕だけのものだったのに
もう嫌だ…嫌なんだこんなのは …僕はジルから離れて この洞窟を出たいんだ』
雄も雌も 進化前のことも今は関係ありません
ジンの気持ちさえも どうでもいい…どんなジンでも大好きだから
私たちは特別な姉弟で 今のまま何も変わらなくていいんです
『それはダメ ジンは私と一緒にずっとここで暮らして
一緒にここで死ぬの それが二人にとっての幸せなんだよ』
『ふざけるな寄生虫め…許さない…僕はジルを絶対に許さない…
いつか身体が動くようになったら その邪魔な頭を喰いちぎってやる』
泣き叫ぶ弟のかわいい声を聞いて 私はジンといつまでも一緒にいられる方法を思いつきました
明日の朝 早速やってみようと思います
『ジンは私から離れられないよ 絶対に …おやすみ。』