01 ジヘッドのお話
―これはどうしようもなく哀れなジヘッドのお話――
―光の届かない真っ暗な洞窟の奥底で―
―彼はいつものようにここから出たいと叫んでいました―
……
…
僕はジルのことが大嫌いです
殺したいほど憎んでいます
だけどどれほど憎んでいても僕はジルに歯向かうことができません
この身体を動かしているのはジルの脳で 僕は頭部以外を、首さえも動かすことができないからです
『この体は僕のものなのに どうしてジルが動かしているんだ』
僕はジルに向かって叫びました
声を出すこともできないので頭の中で叫びました
ジルがいないと何もできない、そんな僕を笑うような声でジルは答えました
『仕方ないじゃない ジンが動かせないから私がジンの分まで動かしてあげてるの
だけど心配しないで 歩くことも食べることもお姉ちゃんが全部やってあげるから』
…全部やってあげる…ずっと面倒をみてあげる…
ジルはいつもこんな感じで 僕を解放してくれる気なんてないのです
最近ジルはろくに食事をとっていません
動くことも面倒だといった様子で 満足そうに一日横になっているのです
…このまま僕は何もできずにジルと一緒に衰弱していくのだろうか
そんなことを思うと 深い絶望と共に ジルに対しての激しい怒りと殺意がこみ上げてくるのです
『返せよ…進化する前は一匹の雄のモノズだった、首は一つで僕だけのものだったのに
もう嫌だ…嫌なんだこんなのは …僕はジルから離れて この洞窟を出たいんだ』
どんなに僕が叫んでも ジルの心には届きません
『それはダメ ジンは私と一緒にずっとここで暮らして
一緒にここで死ぬの それが二人にとっての幸せなんだよ』
なぜ洞窟から出ようとしないのか なぜ生きるために食べることをしないのか
なぜそれで笑っていられるのか 僕には理解ができません
…ジルさえいなければ 自由になれるのに…
『ふざけるな寄生虫め…許さない…僕はジルを絶対に許さない…
いつか身体が動くようになったら その邪魔な頭を喰いちぎってやる』
『ジンは私から離れられないよ 絶対に …おやすみ。』
ジルは僕の頭を撫でて目を閉じました
僕は抗うこともできずに 深い眠りにつきました