02
暖かい風に吹かれて桜の花びらが舞っている 冬は終わりこの村にも春がやってきた
大きな桜の木の下で 栗色の髪の少女がワタッコと話していた
彼女の名はハル 多くの人が他の所へ移っていく中 待っている人がいるからと
桜のほかに何も無いようなこの村に留まり続けている
昼の休憩時間、畑仕事が終わった後、買い物の帰りなど暇さえあれば西のほうを気にしている彼女を
ワタッコは心配しているようだった
「来るよワタッコ リオンは必ずわたしのもとへ戻ってくるの」
そう、ここはいつかリオンが帰ってくる土地 だからわたしはここを離れるわけにはいかない
あの人のことだから今頃 あの日の自分を責めて苦しんだりしてるんだろうな
わたしはリオンを待つのなんて全然 苦にならないのに
ワタッコが白いふわふわした綿毛を風に乗せて飛ばしはじめた
遠く離れてしまった相手に 自分の居場所を伝えるために行う習性らしい
「綺麗…ありがとうワタッコ リオンに気付いてもらえるといいね」