三曲目 ギルド遠征
十二小節目 アクアシンフォニア
「ポケモンズ、ちょっといいか?」
「えっ?あ、うん。」

いつもの朝礼が終わると、ホルトが手招きをしている。
昨晩から帰ってきていないテナのことかもしれない、けど…。

「テナのことだが、ついさっきクイーンズのところから連絡が来て、とりあえず遠征の日までには仕上げる…だそうだ。」
「仕上げる?何をですか?」
「それは私にも分からんのだがな…。まあ、そこはテナに任せようと思う。で、もう一つ。リンゴの森に行ってセカイイチを取ってきて欲しいんだが…。」
「ねぇ、ホルト。つい昨日、僕たちはリンゴの森で酷い目にあったんですけど。気付いてます?」
「んなの百も承知だ。だが、手の空いてる奴らがお前たちしか居ないんだ。セカイイチが無いと知った親方様はー。もうーっ!…あぁ、想像するだけでも恐ろしい…。」
「あぁ、もうっ!取りに行けば良いのよね?なら行ってくるわよっ!」
「ア、アリアッ!?」
「仕方ないじゃない。遠征メンバーに選ばれるにはやるっきゃないわよ。選ばれる、為には…。」

勇ましい事を言っておきながら、膝がプルプル震えている。
まぁ、昨日あんなんなって無理も無いだろう。

「アリア。無理をしなくてもー。」
「そんな…っ!遠征にいきたくないのっ!?」
「そりゃ行きたいけど…。」
「なら行こうよっ!バレなきゃ大丈夫っ!」

無理して笑顔をつくって…。
アリアは常にこのポケモンズというチームを明るくしようと頑張っている。
なら、僕たちもこれに答えなければ…。
僕は少し微笑むと、それを察したアリアの表情はパアアッと明るくなった。

「いいよ。僕たちが行く。いいよね?ソフラ。」
「はい。お二人が出した答えなら、ついていきます。」
「そうか。なら頼んだぞ。リンゴの森の最奥地にセカイイチはある。そこでそうだなぁ…。みっつあればいいかな。あとは我々が取りに行く。じゃ、今回は頼んだぞ。」
「「「はいっ!」」」




「…テナか?」
「…姉さん。」

ポケモンズをしばらく抜けて、テナがやって来たのはとある大陸の森の奥地。
うっそうとしているが、木漏れ日がきれいな森でもある。

「シャルドネ。弟さんですか?」
「ええ。しかし、何の用でここへ来たんだい?」
「…。それはーっ」

シャルドネの目が真ん丸になる。しかし、数秒だけ。
その後は目を閉じた。何かを考え込んでいるように。
あとはすうっ…と息を吐くと、ゆっくりと目を開いた。

「いいだろう。ラース、ヘルモネ、いいかい?」
「私たちは別にいいけれど。ヘルモネも、大丈夫?オスは苦手なんでしょ?」
「そうだが…。シャルドネの弟なら大丈夫だろう。…多分…。」
「まぁ、数日だけだろう。テナ、どのくらい滞在する予定なんだい?」
「それは…。仕上げたら。それまでは…帰る気は無い。」
「ふぅん。随分と覚悟を決めてきたな。ヘタレのテナはどこやらー」
「うるせえっ!…オレはー。アリアと…オレの所属している探検隊の皆を守るために強くなる…。強くならなければ…っ!」

「そうか。」とだけ言うと、シャルドネは大きなアクビをする。
テナもその姿には驚いた。

「うん。お前の覚悟、しかと受け取った。いいだろう。ただし、お前のいるギルド、近々遠征があるようだな。そこまでには仕上げるぞ。仕上げられなかったら、そこまでだ。それ以上は教えない。お前に割ける時間など、無いに等しいからな。」
「それは分かってる。」
「なら、今からだ。ついてきな。」

テナは、強くなるために。
こちらで修行を積むために、姉の元を訪ねたのであった。







「ぎゃあーっ!」
「ちょっ…。アリアッ!?」
「見たことありますねぇ…。この展開。…秘技、放電っ!」
「ちょっ…。ソフラッ!?」
「大丈夫ですっ!加減はしてますからっ!」

ソフラの放った電撃は縦横無尽に大気中を駆け巡る。
それはスピアー達を痺れさせて、大地に打ち落とした。
それは、僕たちも同じだった。

「こ、これは…。改良の余地ありますねぇ…。」
「「う…うんっ…。」」

体が痺れて動けない…。
これは復活までしばらくかかるなぁ…。



しばらく休んで、体の痺れも取れ、元気になったためまた歩き始めた。
でも、結構奥地まで来たんだけどなぁ…。

「ねぇ、あの大木。セカイイチじゃない?」
「そうっぽいね。はやくとって帰ろう。」
「うんっ!」「はいっ!」

近づけばやっぱりセカイイチだ。沢山の実がなっている。
これを三つ持って帰ろう。

プチり…プチり…ッ!

木の上ではドクローズ達がリンゴを食べている。
残骸が沢山。
木の実も沢山あるとはいえ、すぐに食べ尽くされそうだ。

「お前達。セカイイチだかのリンゴが欲しいか?」
「そ、そりゃ勿論。」
「ならくれてやるさ。」

ドクローズのリーダー、スカタンクはセカイイチの残骸をアルトに投げつけたら。
あまりの不意打ちで回避しきれずに倒れた。

「お前たちは遠征メンバーに選ばれる資格が無いんだよ。」
「なっ…何でさっ!」
「何でって?俺様を怒らせたからだ。俺の子分を懲らしめるとはいい度胸してるよなァ。でもなぁ、怒りをかってたんだよ、俺様のォッ!俺様を怒らせたからには、遠征メンバーに選ばれねェようにトコトン邪魔してやるよォ」

スカタンクはセカイイチを食い尽くすと、残骸だけを残して、その場を去った。
とても、悔しい。
これで遠征メンバーに選ばれなかったら、悔しすぎる…ッ!
でも、遠征メンバー発表はもう明後日だ。
終わった。
僕たちはプリルの怒りをかって、遠征メンバーに選ばれることは無いのだろう。
これはもう、絶対に近い。

「元気出して、アルト。セカイイチ、残ってるかもしれないよ?」
「そ、そうですよっ!一つくらいはっ!」
「…そうだよね。ありがとう、二人とも。」

僕は崩れた体制を立て直して、周囲を見回す。
回りにはセカイイチの残骸だけ。


ー私の歌で、何とか出来ないかなぁ?ー


すっ…と射す一筋の光。

「わ、私が歌えば、何とかなるんじゃないかなぁっ!」
「ア、アリア。」
「うんっ!頑張ってみる!」


〜♪〜〜♪〜 〜♪〜〜♪〜

すると、一つのセカイイチの残骸が浮いた。
次の瞬間、どこからともなくやってきた水が残骸に向かって降り注ぐ。
これは、一体ーっ!?

しばらくすると、大きく熟したセカイイチが出来上がった。
木になっていたセカイイチよりも断然ツヤが良く、美味しそうだった。

「ペルジスの力ー。別名、アクアシンフォニア。」
「っ!?プリルっ!?」
「やぁ、ポケモンズの皆♪」

後ろから、聞きなれた声がしたものだから、焦って振り向く。
案の定、ギルド長のプリルの姿があった。
でも何故プリルがここに?

「ペルジスの力ってのはね、昔は水を操る力だったんだよ。その動かされる水と歌声が美しい、と言うことでアクアシンフォニアと呼ばれているんだ。まぁ、長いからペルジスの力って僕は呼んでるけど。今のは、ペルジスの力の本来の姿。ただ、この力は強すぎる。故にコントロールが難しいと聞いてたけど…。案外出来るものなのかい?アリア。」
「え?あ、はい。案外出来ちゃったりする。」
「そっかぁ。まぁ、セカイイチを探しに来てくれてありがとう。何だか胸騒ぎがしてね。ホルトに内緒で来ちゃった。ま、いっかぁ。」

相変わらず不思議なテンポだ。
ちょっとついていけなかったりする。

「ささ、はやく帰ろ。」

プリルに連れられて、僕たちはギルドへ戻った。




「アクアシンフォニアかぁ…。綺麗な名前だよね。」
「そうだよねっ!私も気に入ったの!私はこっちで呼ぼうかな♪」
「このことはテナにも話さなければなりませんね。テナ、はやく帰って来ないでしょうか…。」
「うーんー。いつ帰ってくるんだろうね?」






「…出来て来たんじゃないか?」
「…はい。」

はぁっ…はぁっ…。と、息切れしたテナは、姉のシャルドネと向かい合っている。
テナの手には緑色に光る剣のような物がある。

「うん。少し休憩しようか。…それにしても、お前は昔から随分と成長したね。」
「…あぁ。」
「何がきっかけなんだい?やっぱりアリアちゃん?」
「…それもあるが、それ以上にアルトというリオルのおかげだ。アイツがいたから、アリアがギルドに入ろうとしたし、滝に突っ込もうだなんてバカも言うが、肝は座ってるし…。それにー」
「お前が認めるっていうのは、スゴい相手なんだな。会いに行こうかなぁ…?」
「いや、会わなくていい。」
「はは、冗談だよ。でも、会ってはみたい。お前が気に入った相手に間違いはいないはずだからな。きっとアルトくんもそうなんだろう。…アルトくんで合ってるか?」
「あぁ。アルトは、正義感が強い。その…。尊敬している。」
「うん。そうか…。さて、長話が過ぎたね。稽古を再開するよ。」
「…はい。」



■筆者メッセージ
テナの修行も書いてみました。
テナも頑張ってるんですねぇ(*´∀`)

あと、後程気づいたのですが。
私の方がパクっているような感じになってますが、私は真似ている訳ではありません…!
不快に思った方がいらっしゃいましたら、ここで謝罪させていただきます。
うに。 ( 2018/03/13(火) 20:37 )