九小節目 ペルジスの力
「ペルジスの力ってのはね、とある一族にしか伝わらない。しかも、その一族の誰もが持っている訳ではないと言われているんだ。まぁ、その名の通り、ペルジスという一家のほんの一部のポケモンだけが所持をしていた力なんだって。でもまぁ、さっきみたいに何でも出来る力…。つまり、アリアのような強い力は相当だよ?」
「…つまり、アリアはペルジス家の一人って事なんですよね?おとうさんとおかあさんって誰だっけ?」
「…おかあさんは…バシャーモで、おとうさんはルカリオだよ。殺されたけど…。」
「ご、ごめんっ!アリア…。」
「…ううん!ほら、テナもいたし、テナのお姉さんもいたし!ね?もう大丈夫だよ!」
そうか。
アリアの両親は亡くなっていたのか。
話を聞くと、結構早くに。
「僕がね、ギルドを創る前にとあるチームとして活動してたんだけど、その時にペルジスの遺跡ってのを探索したことがあって。まぁ、ダンジョンじゃないから色んな本とか資料があるんだ。…ちょっと持ってくるよ。」
プリルはいそいそとギルド長の部屋に戻った。
アリアの顔が曇る。
「アリア…無理、しなくて良いんだよ?」
「…うん。大丈夫。ただ、ね?物心ついたときには両親が殺されて、さ?もう、耐えらんないよね…。」
僕は何も言わずにアリアの背中をこすった。
一定のリズムで、落ち着くように。
「あ、ありがとう…。アルト。」
「ううん。」
「アリア…。やっぱりこの話、やめにします?」
「大丈夫!皆が…皆がいるからっ!」
「…そうか。なら、頑張れ。お前の気持ちは…分かるから。」
テナも父と母がいなくて、姉がずっと母代わりをしていたらしいから、テナもアリアの気持ちがわかるのだろう。
僕にはまず記憶が無いから分からないや。
「よいしょっと。はい、コレ。」
「「うわあっ!?」」
「…とんでもねぇ量だな。」
「そう、ですね…。」
「これが資料とかモロモロ。調べてみるといいよ。僕が知ってることも、ここに全部書いてるから。後は調べてねー。僕は仕事があるから。じゃ。」
「ありがとう!プリル!」
プリルは去り際に手を少し振った。
「さて、調べよう!」
「「「おーっ!」」」
僕はまず、一番上の本を手に取った。
題名は…。「ペルジスの記憶」。
ピラッ。
ー始めに。
ペルジス一家は古代ポケモンの王家である。
昔、王家ということで、全知全能の「アルセウス」より神の力を授かった。それ
がペルジスの力である。
ピラッ。
ーペルジスの力には様々な力がある。
ほとんどの力は「ペルジスの唄」を歌うことによって発動される。
一番弱い力でも治癒の力を持ち、最上級の力はアルセウスと同じー。
それ以上の力を発動する者もいる。
これまでに発見された、最上級の力として分類される物は「治癒と仲間の強化」
が多いとされる。
しかし、最上級の力を授かるものは多い訳では無いので5匹とかだという。
(中略)
132代目バシャーモ(メス)は仲間の強化、治癒、そして意図した物を動かしたり
することができた。
要するに全知全能ということである。
その夫、リザードンは何の力をも持ってはいないが、その娘のアチャモも全知全
能の力を持ち合わせていた。
しかし、古代ポケモンも滅びー。
ペルジスの遺跡は王の家であるー。
「と、いうことは。ここに意図的にこの本を置いたということになるよな…。」
「?どうした?」
「あぁ、いや。この本は、遺跡となった後に置かれた可能性が高いんだ。だってここ。この遺跡は王の家である。って言ってるってことは遺跡になった後ってことだよね?」
「そうだな。…このアチャモはアリアか?」
「ううん。おとうさんはルカリオだし、仲間の強化なんて出来ないし…。」
「やったのか?」
「うん。テナに。」
「おいっ。」
僕はまた、本を読み始めた。
皆もじっと各々見ている。
ーペルジス家には、とある呪いがあるとされている。
ペルジスの力を授かるときに53代目王のエンブオーがアルセウスとの約束を破っ
たことから始まった。
死ぬ際にその力をアルセウスへ返上しなければならないものを破ったのだ。
ペルジス家はアルセウスの怒りを買い、力は奪われ。そして古代ポケモンが滅ん
だのだ。
しかし、先ほど出たアチャモはバシャーモとなり、アルセウスへ直談判して能力
を授かったのだ。
そのバシャーモと夫のルカリオのイノチト引き換えに。
そして、娘に。
力が授けられたのだー。
「これは、アリアなのか!?」
「そしたら、これはいつの本なんだ?」
「あ、ごめ〜ん!その、アルトが読んでるやつだけ、とある友人から受け取った物だから、凄い新しいよ。…そして、アリアの事も書いてるらしいからねぇ〜!」
「そ、そうだったんだ…。アリアの両親は…。」
「知ってるよ…。両親はアルセウスに命を奪われた事くらい…。知ってるよ…。」
アリアにも、限界が来ている。
これは、打ち切らねば…
「よしっ!皆、そろそろこれをプリルに返そう!てことで、返してくるよ!」
「あ、ありがとうございます。」
「あんがとな。」
「…ありがと。」
まとめると、プリルの元へ向かった。
「ごめんね〜。あの最新の本だけ、アリアにはキツいかな?とか思ったんだけど…。やっぱり、アルト。君には人を思いやる、優しい心があるんだね。アリアを気遣う心が。また、真相を知りたくなったらいつでも。」
「ありがとう。でも、もういいや。これでもうお腹一杯だよ。もう、見なくていいかな…。」
「…そっかぁ。アリアの事、守ってあげてね。」
「!うんっ!」
確かにアリアの家系は知りたいと思う。
でも、それでアリアが、思い出したくない過去が蘇るのならー!
僕は知りたいとは思わない。
アリアの家系より、アリアとの関係が大切だから…。