七小節目 助けに
「みーっつ!笑顔で明るい元気なギルド!」
「よしっ!皆、取りかかるよっ!」
「「「「おーっ!」」」」
結局、昨日の叫び声以外に聞こえるものは無く、次の朝を迎えた。
本日もテナは絶好調で不機嫌でー。
「ったく、朝からアレで起こされる身にもなれってんだ…。」
「まぁまぁ。怒んないでって、テナ。」
「オレは怒ってねェぞ?アルト。」
周りから見ればめっちゃ怒ってます。
八つ当たりが来そうで怖いんですけど…。
「で。今日も依頼かな。ソフラにはやってくうちに慣れてもらおう。といっても、僕たちもあんまりなれてないんだけどね…。」
「いえっ!私もすぐ呑み込めるように頑張ります!」
ソフラは常に周りの事も考えて、かつ迷惑にならないようにベストを尽くしている。
あのようになれればなぁ…と僕も常々思う。
僕たちは依頼を受けに、地下一階へと降りた。
お尋ね者掲示板の紙の数が多いな…。前までは無かったゴーストやヘルガーそれからスリープとかが増えたのだろう。
まぁ、僕たちも強くならない限りはあの掲示板に近付くことは無いだろう。
「さて。近くのダンジョンだとー。やっぱりしめった岩場とか?」
「あそこは当分行きたくないんだけれど、テナさん。」
「だろうな。やっぱり安全に海岸の洞窟とかで物探しとかするか?安全に。」
「そうだね。アリアもソフラもいい?」
「うん!」「はいっ!」
はい、決定。
海岸の洞窟だし、あんまり準備も要らないと思うんだけども。
とりあえず広場で下準備。
備えあれば憂い無しってね。
「「いらっしゃいませぇ〜」」
「やぁ、カクレオン。りんご貰えるかな?」
「はい〜25Pです〜」
「はい。」
「まいどどーもぉ〜…おや?マリル君にルリリちゃんじゃないか。どうかしたのかい?」
「カ、カクレオンさん…。僕達の水のフロートとか知りませんか?」
水のフロート?
なんだそりゃ。
「水のフロートってのは、マリルとかルリリとかの専用装備道具なんだよ。で、専用とかなってくると、レア。だから、宝物にするヤツがほとんどだな。そういや、そういうのをグレイがトレードしてるとか何とか。」
「そうなんだ…ありがと、テナ。」
僕の疑問を抱いた顔が分かったのだろう。
それにしても、物知りだよなー。テナって。
「水のフロートですか?それならあっちで見ましたよ?」
「ほ、本当ですかっ!?」
その声を出したのは黄色の少し丸めのポケモン。
どっかで観たことがあるようなー。
「ついてきてください。あっちにありましたから。」
「あ、ありがとうございます!」
僕らの後ろにいた黄色いポケモンはルリリ達の方へ歩いていく。
ドンッ。
「おっと、失礼。」
「いいえ…。っ…」
あの…目眩だ。
これはー。
「あの、ここは…?」
「すまんな。少し君を騙してたんだ…。それでな、………横穴に入れる…………だから………。」
「っ!?」
ーお、お兄ちゃん!助けてっ!ー
この、声だ。
昨日聞こえた声は。
これは、未来なのか?映像が見えたということは、紛れもなく気のせいでは無かったのだ。
台詞も途切れ途切れだけど…。
「テナ。アリア。それに、ソフラ。あの黄色のポケモンはー。
分かった。
あの黄色いポケモンはー。
お尋ね者のスリープだっ!
僕は皆に一連の流れを話した。
誰もが顔を合わせて首を傾げたが、テナがすっと立った。
「まぁ、映像が見えたんなら、気のせいでは無かったんだな。なら、本当かもしれない。根拠としては小さいが本当だったら救えるかもしれない。ーとはいえ、どこに行ったか、だな。」
「それなら、トゲトゲ山ではないでしょうか?」
「「「トゲトゲ山?」」」
「はい。あそこにはとあるお尋ね者が山頂にある財産を獲ろうとしているという噂を聞きました。とはいえ、そいつは強くて手が出せないのだそうです。ですが、アルト。あなたが見た映像にはスリープとルリリがいたのですよね?となると、マリルを巻いた、ということ。となると、そろそろマリルが帰ってくるはずです。」
「ソフラ、すごい推理だねっ!」
「いえ。お褒めにかかるほどではないです。それで、思ったのですが。ここでマリルを待つより2チームに分けてルリリを追うチームとマリンを待つチームと分けた方がいいと思います。」
2チームか。
だが、そうすると負けることだってあるよな?
それを口にすると、ソフラは口を開いた。
「確かにそうですが…。マリルを待っていたらルリリを救うことが出来なくなるかもしれませんっ!…私はここに残ります。残ってマリルから事情を聞いた後、電撃を発します。2回発したらトゲトゲ山合っている。1度だけならトゲトゲ山では無かったということです。そうすれば連絡が簡単です。その合図を見たらー。そうですね。アリア。火の粉を使って狼煙を上げてください。木に火を付けるだけでいいです。スリープのタイプ上、合っていたことを考慮してアルトも残った方が良いかと思います。ですので、残るのが私とアルト。向かうのがテナとアリアです。良いでしょうか?皆さん。悪魔で参考までって事なんですが…。」
「オレは良いと思う。ついでに、アリアの能力の正体も掴めればベストだな。」
「私も、いいよ!頑張るっ!」
「僕も。もし合っていなかったら、僕たちが突撃ってことで良いんだよね?」
「はい。私が電撃を一回発したら広場でマリルに待っていて貰いますから、お二人は着き次第向かってもらえますか?私からホルトに伝えておきます。色んなことは。」
誰もが賛同した。
ということは、テナたちは出撃ということになる。
「頑張ってね…。二人とも!」
「負けねぇから。」
「頑張って、テナを守る!」
「それ、逆じゃねぇか?」
「じゃあ、テナに守ってもらう!」
「それはそれで困るな。」
最後にちゃんとホンワカとした雰囲気でトゲトゲ山へと向かった。
あの二人なら、きっとスリープを倒せるだろう。
マリルが戻ってきたのはそれから暫くしてからのことだった。
結果はビンゴ。
トゲトゲ山だった。
ソフラは海辺から電撃を2回発した。
暫くすると、トゲトゲ山の中腹辺りから煙が上がった。
これで伝わった。
僕らもテナたちを助けに向かわなければならないー!