一曲目 はじめまして
四小節目 初めての依頼と刺客
「起きろーっ!朝だぞーっ!」
「…うっさい…。」

元々起きていた僕はドゴームが来るときから耳を塞いでいた。
うるっさいな。

「…おはよ…。アルト、テナ…」
「…。うるっせぇな。あいつ。」

テナは寝起きの不機嫌さといったら無い。
普通に八つ当たりが飛んでくる。

「とりあえず、朝礼に行こっか。」
「うん…。」
「…めんどくせぇ。」

あ。
ホントに機嫌悪いぞ、コイツ。



「みーっつ!笑顔で明るい元気なギルド!」
「よしっ!皆、今日も取りかかるよっ!」
「「「おーっ!」」」

ギルドの皆様は今日も元気ですこと…。

「さて。ポケモンズ。今日は依頼をしてもらう。」
「「「依頼???」」」
「あぁ。まぁ、地下2階に行くぞ。」


「これが、依頼掲示板というものだ。左が物を取ってきて欲しいとかのお助けする掲示板で。右側がお尋ね者が張り出される、お尋ね掲示板だ。まぁ、お前たちにはこの掲示板は早いんだな。…さて、と。お前たちにはこれをやってもらう。」
「ん?バネブーから、か。何々?真珠を探して欲しい…と。」
「場所はしめった岩場?どこだ?」
「しめった岩場は比較的簡単なダンジョンだ。お前たちなら出来るだろう。じゃ、行ってこい!」
「「「は、はいっ!」」」

そしてポケモンズ一行はしめった洞窟へと足を運んだ。



「さて、と。とりあえず、手当たり次第探すか。」
「「おーっ!」」
「おーっ!って何だよ…。」

さて、真珠のある階層はもう少し上だ。落ち着いて行こう。
しめった岩場は簡単なダンジョンだと言ったが、僕たち個人の力はあんまりない。
数で攻め落とすのが一番いい得策なんだろうな。

「ん?どーしたの?アルト?」
「ん?いやぁ、別に。ポケモンズの弱点は個々の力量不足なんだろうな…と思って。」
「確かにそうだな。俺だって強い訳じゃない。それはアルト、アリアだって同じだ。だから、俺たちは数で勝たなければならないんだ。俺たちがこの強さのままで、数でも負けたらー。」

ー俺たちの勝ちはない。ー

テナは言い切った。
だって、確かにそうだ。僕たちは弱いんだ。奇襲などで勝たなければ。僕たちは、強くないんだ。
テナの言い分は、分かる。
そして、テナの言い分は合ってる。

「まぁ、暗い顔になるなって。そろそろ真珠のある階だろ?探さなきゃなんねぇぞ?」
「え?あ、うん。そうだね。行こっか。」
「…アリア?どうかした?凄い浮かない顔だよ?」
「気にすんな、アルト。アリアは考え事をすると悩みごとがあるかのように凄い浮かない顔になんだよ。ほっとけば何とかなる。」
「そう…なのか?」

テナがそういうのなら、そうなのだろう。
アリアの性格とかも一番理解してるんだろうし。

「なぁ、アルト、アリア。あったぞ、真珠。」
「!ホントだ。ピンク色だね。早速持って帰ろっか。」
「あぁ。」

僕が真珠をもった、その時。

「ねぇ、アルト、テナ。あれ、何?」
「「?」」

アリアの見る方向には、これまた綺麗な色の緑の宝石があった。
アリアは吸い込まれるように宝石に近づいていくー。

「アリア!分からない物だよっ!不用意に近づいちゃあー!」
「?アルト、どうしたの?」

アリアは平気だ。
普通の宝石のようだ。

「アリア。今回はただの宝石だったから良かったものの…。不用意に近づいたら変なことになるかも知れないんだよっ!」
「…ごめんね…。心配してくれて、ありがとう。アルト。」

なんか、アリアがおかしい。
いつものアリアは活発で、こんなに微笑むように笑わない。
おかしいっ!

「アルト!離れろっ!」
「っ!」

後ろからテナの声がして、すっとアリアから離れる。
テナが警戒した瞳をアリアに向ける。
やっぱり、おかしいと思ってたんだ、テナも。

「?どうしたの?二人とも。私は、アリアダヨ…?」
「うそつけ。アリアは…そんな笑い方しねぇ。アリアは…。笑うときはガッツリ笑うんだよ…。あいつは、これまでで一度も微笑んだことが無いんだよっ!」

そう、なんだ。
内心、アリアは微笑まないんだなぁ…と。そう、思った。

「ネェ…?アルトモテナモハナレテ…クノ…?」
「…ちっ。さっさと正体現しやがれ…っ。」
「やっぱり、アリアじゃないよな。」

ばさっ。

次の瞬間、アリアは倒れて後ろからは大きな豚みたいなポケモンが姿を現した。
あれが、アリアを変にしたヤツか…っ!

「全く。君たちが邪魔をしなかったらプクリンギルドに仕返しができたものを…っ!計画をズタズタにしやがって…っ!お前らは叩きのめすっ!」
「やっぱりな。あいつはブーピッグだ。お尋ね者の掲示板の張り紙があった。依頼主のバネブーとも関連性はありそうだが…。まぁ、いまはこっちだ。」

テナって常に僕たち以上の物を見ている。
周りを正確にとらえ、アリアの変化にも気づいていたのだ。
僕より、断然凄い。

「あいつは超能力とかで相手を操る。…アリアがなった感じだ。さっきも言ったが、俺たちは力では勝てない。俺が囮になるから、その内に背後をとれ、いいな。」
「え、ちょっ…。テナっ!?」

話し終わらない内にブーピッグの方に駆け出した。
テナも覚悟を決めているのだから、僕だって答えなきゃならないよな。
僕も、頑張る…っ!

「くっ…。こいつ、意外に速いな。かわすので精一杯だ…。動きが止まった瞬間に叩くか…。」
「…っ!でやあぁぁぁぁっ!!」

僕は完全にブーピッグの背後をとり、でんこうせっかをぶちこんだ。
不意を突かれたブーピッグはバランスを崩し、転倒。
その隙を突いてテナがつるのムチでブーピッグを捕らえてとりあえず、気絶するまでどかどかしてた。


「…。ありがとう、テナ。囮になってくれて…。」
「囮になってくれてって感謝されるのって、何か変だな。…いや。助かったのは俺の方だ。囮になる!とかいってたけど、ぶっちゃけあれはかわすので精一杯だったんだよなー。お前の機動力、凄かったぞ。」

僕はアリアと依頼の真珠を。
テナは指名手配のブーピッグをツルで縛り上げてそれを運んでいた。

「とりあえず、ギルドに戻ろうか。お腹空いちゃったし…。」
「はは。そうだな。俺はこれをジバコイル保安官に引き渡してから行くかな。先に行って、アリアを寝かしといてくれ。」
「了解、テナ指揮官。」
「なっ…っ!」

テナの顔が真っ赤だ…!
もしかして褒められるの慣れてない?w



テナもジバコイル保安官にブーピッグを引き渡し、ギルドに戻って来ててもアリアは目を覚まさなかった。
目を覚ましたのは僕たちがご飯を食べた後。
宝石を触る所付近から覚えていないというので、そこら辺から操られていたのだろう。

「まぁ、目を覚まして良かったよ…。」
「ごめんねぇ…。迷惑かけちゃって…。」
「…ちょっとお邪魔致しますわっ!」
「「「っ!?」」」

来たのはギルドの先輩達だった。
明るいキマワリのサフラ。
調子がいい!のヘイガニのギロウ。
暗いグレッグルのグレー。
下から二番目の弟子、ビッパのビダ。
他にも沢山要るらしいが、ここに来たのは四人だけだった。

「そうですわねぇ…。ハイスやディッタやディルトスも…あとベルもいるわね…。まぁ、このギルドには沢山の弟子たちがいるですのよ、キャー!」
「ヘイヘイ。うるさいぜ、サフラ。いちいち叫ばなくてもいいじゃねぇか。」
「そうでゲスよ。結局ホルトに怒られるんでゲスから。」
「そ、そうでしたわね。ごめんなさいね、ポケモンズ。今日は挨拶をしに来たのだけれど…。お休みのようでしたから私たちはいなくなりますわね。また今度話しましょ!」

そう言って引き取ってくれた。
確かに僕たちは疲れていた。から、気の利く先輩方だー。と思った。
あぁ、もう眠い。


そう言って僕は、深い眠りに落ちたー。


「…うおっ!大丈夫かっ!」

「離しては、ダメだ…っ!もう少し…何とか頑張るんだ…っ!」

ズキャァァーン!

「「「うわぁぁぁっ!!!」」」



これは、誰?
誰なんだよ…っ!


うに。 ( 2018/02/23(金) 21:01 )