一小節目 はじめまして
「アリア、あれに乗るだけだぞ?大丈夫だって。」
「う、うんっ!この、不思議な石が…ある…からっ…!」
プクリンギルド、という所の前で二匹のポケモンは悶々としている。
いや、正しくは一匹。
もう一匹はイライラしながら、相手を見ている。」
「ねぇ、テナ。あなたからなら行けるんじゃない?」
「バカ言え。そもそもここに来たいって言ったのはアリアじゃないか。」
アリアと呼ばれたポケモンーアチャモはなにやらピョンピョン跳ねている。
テナと呼ばれたポケモンーツタージャはハァとため息をつくと、くるりと方向転換をした。
「ちょ、テナッ!どこ行くの!?」
「お前がギルドの前で悶々としてるから日が暮れちゃったじゃないか。全く。オレはもう海辺によってから帰るからな。じゃあな。」
「ーっ!私も行くっ!」
「っんでお前も来んだよっ!」
テナとアリアはギルドの近くの海辺へと足を運んだー。
「わぁぁ〜!今日も綺麗ね…」
「そうだな。クラブ達が吐く泡が夕日の光を反射してー。」
「あれ?テナってロマンチスト?」
「るせぇっ!…ん?」
テナが視線を向けた先には何か、いる。
あれはー!
「アリア!ポケモンが倒れてる!」
「えっ!?本当っ!速く助けなきゃっ!」
倒れているポケモンに向かって駆け寄る。
これはー。
リオルと言われるポケモンだ。
「ねぇっ。大丈夫?ねぇっ。ねえってば!」
「んんっ…。」
アルトはムクッと体を起こし、周りをキョロキョロと見渡す。
ここは…?
「気がついたのね…良かったぁ…。」
「ここは、どこ…?僕は…。」
「なぁ、アリア。コイツ、記憶喪失じゃないか?」
「ええっ!?」
アリアはじぃぃっとアルトの顔を間まじまじと見つめる。
アルトは視線を反らす。
「ねぇ、あなた。目が、綺麗な色ね。普通は赤…よね?あなたの目の色…。瑠璃色ね。綺麗…。…じゃなかった。あなた、名前は?」
「名前…。名前は…。」
ーアルトー
「へぇっ!アルトっていうのね。私はアリア。こっちはー。」
「テナだ。よろしくな、アルト。」
「アリアに…テナ。よろしく。…で、ポケモンが…喋ってる…?」
「へ?私たちが話すのはいけない?」
アルトは近くのため池に顔を近づけた。
「これ…はぁ…っ!?」
(ポケモンになってるじゃないか!?)
「アルト?どうしたの?」
「なんか、隠してる事があるんじゃないか?」
「えっと。信じられないかもしれないけど。僕はー。」
ー僕は、人間なんだー
「に、に、に、っ!」
「「人間だってぇ〜っ!?」」
アリアとテナは目を真ん丸にして驚いた。
「確かに。人間てのは、幻でしかないと思ってたし。信じがたい…けど。」
「でもね。本当に人間だったのなら、この世界はあなたにとって知らない土地だし、そんな所に放り出されたようなモノなのよね…。よしっ!」
「なぁ?アリア。変なこと企んでないか?」
「変なことって失礼ねっ!?ねぇ、アルト。」
ー私達と探検隊を組まない?ー
「アリア!こいつはこの世界の事を知らなー。」
「いいよ。アリア、テナ。」
「アルト!?」
アルトは一息、大きく深呼吸をした。
「二人には申し訳ない、けど。僕はこの世界の事を知らない。で、君達といた方が、身を守れるし。何より、この会話を通して。君達といた方が楽しいと思うんだ…!」
「「アルト…」」
二匹が感動したようにほぉ…と声を上げた。
少しすると、アリアが切り出した。
「でね、明日。プクリンギルドっていう所に弟子入りしようとしてたんだ。アルトも来るよね!」
「え?あぁ、うん!」
「とかいって、明日も尻尾巻いて逃げるんだろ?」
「あ、あ、明日は逃げないもん!」
「その言葉、何度聞いたことか…。」
二匹の話す姿を見てクスクスと笑う。
「な…。アルト!何で笑ってるの!?」
「い、いやぁ…。二人が面白くて、つい…」
「アリアのせいで笑われた。気分を害したので、オレは帰るからな。アルトもオレの家に今日は泊まるといい。じゃあな、アリア。」
「え、あ、うん。じゃあねぇ!明日、ギルドの階段の前に集合ね!」
必死に叫ぶアリアに手を振る。
「ヘド。アイツの石、何か模様描いてたよな?」
「あぁ、ロド。明日奪ってやるか。」
「その前にボスに、だ。」
「そうだな。」
海辺の岩影でクスクス笑う姿が、あったー。