はがねの騎士団 - 1章
1 はがねの戦士
 はがねタイプに、どんなイメージを持っている?と聞かれたら、頑丈、強固、硬くて強いなどの印象が思い浮かぶだろう。あと、光を跳ね返したボディにかっこいいという印象を持つポケモンも多いはずだ。ただ、はがねタイプの攻撃は半減されることが多いし、使い勝手も悪いという印象が思い浮かんだ人はポケモンガチ勢だろう。

 実際、硬いのは事実である。『はがねタイプ』を名乗るだけあって、はがねタイプのポケモンは金属を身にまとい、丈夫なポケモンが多い。実際、11タイプの攻撃に耐性を持つ。中にはそうでもないポケモンもいるが…

 我が軍でも、はがねタイプのポケモンは非常に重宝される。何故なら耐性を多く持つはがねタイプのポケモンは死ににくいからだ。軍の司令部は重い俺たちを駒のように戦場へ向かわせる。…戦場という言い方は大袈裟すぎた。このセレルウォントという国は別に他国とバチバチの戦争なんてしていない、平和な国だ。

「おーいリオ。また前衛なんだって?まったくー。俺も火花散る戦場で暴れてみたいぜ」
「痛い思いをするこっちの身にもなってほしいね…まあ、お前ら支援部隊がいるから戦う側も楽に戦えるんだけどさ」

 俺の名を呼んだモクローは、支援部隊である。まだ未熟な種族ゆえ、戦線には立てないが、彼の属する支援部隊も、立派な軍の戦力である。

「まっ、俺たちの分まで頼むよ」
「あっ、ここにいた。リオ、召集かかってるぞ」
「ああわかった。悪いなシュルツ。じゃ、行ってくるぜルーファ」
「おう、頑張って来いよ!」

 俺はルーファに軽く手を振り、俺を呼んだエンペルトについていった。

「聞いたか?今回の暴動、過去最大なんだってよ」
「知ってる。俺にとっては朗報だな」
「俺もだ」

 理由は単純。暴れられるから。俺もシュルツも、軍隊に属す割には自己中心的な考えの持ち主だ。
 シュルツも、俺と同じ前衛だ。理由は…はがねタイプだから。別に前衛全員がはがねタイプというわけではない。ただ、5割を占めている。いいように使われているというか、重宝されているのか…複雑なところだ。
 また、シュルツはみずタイプでもある。みずタイプは臨機応変に対応できる印象が強く、そこを司令部に買われたのだろう。

「まったく、毎度毎度特攻隊の俺の身にもなってほしいぜ!あの司令部め」
「まあ、痛い思いしている分金も入るのは良いことだがな。また3人でどこか食べに行こうや」

 俺とシュルツとルーファは幼い頃からの仲である。喧嘩が弱くて泣き虫だったルーファを俺とシュルツで庇っていた。いつの間にか喧嘩と正義感が強くなっていた俺とシュルツは、何かを護ることがしたいとこの騎士団に入団した。ルーファも追う形で入団した。
 シュルツは前衛の仕事を良く思っていない。というより、後衛でのんびり迫撃かます方が性に合っていると彼は言う。やはり自己中心だが、エンペルトという種族はそれができてしまうからすごい。ちなみに俺はできない。


 戦闘部隊隊長のルイス――ウインディ――が、先頭に立ち、声を張り上げた。

「お前ら準備はできてるかあ!今回の暴動は過去最大だ。心してかかれ!!」
「はい!」
 
 ルイス隊長が前衛部隊と声をあげ、それを合図に前衛部隊は反乱軍に向かって突入していく。だが、俺とシュルツは行かない。ルーティンがあるのだ。

「みずのはどう!」
「はどうだん!」

 遠距離攻撃は一発ぶちかまし、そして突入する。そうやって俺たちはスイッチを入れる。

「アクアジェット!」
「しんそく!」

 先に突入した前衛部隊に瞬で追いつき、敵を前に俺たちは暴れだした。


 はどうだん。しんそく_____

 俺の種族が分かっただろうか。

 ルカリオ。はがねタイプと名乗るには、あまりに脆すぎるポケモンである。


rr-TaX ( 2019/07/16(火) 21:31 )