第六十七話:強くなりたい
「あ、電話……」
家に帰って昼寝をしている最中に俺は気付く。いつの間に電波が復活したのか、着信があったので、カズキかと思って携帯電話を見る。しかし、予想と反して、発信してきたのはバンジロウさんであった。少しだけがっかりしたが、一応パルキアと戦ったときに助けていただいた相手なので、お礼をしておかねばなるまい。
「おう、キズナ……キズナ。大丈夫か?」
「あぁ、ご無沙汰しております、バンジロウさん……なんとか、姉妹揃って無事ですよ」
電話の向こうには珍しくしおらしい声のバンジロウさんがいた。
「良かった……シエロ、オイラのラティオスが、お前と一緒にパルキアと戦ったって言って……言ってはいないか、夢写しっていう能力使ってきたからさ……なんというか、キズナも同じ場所にいたんだなって……まぁ、無事ならいいんだ。オイラも、それだけが気がかりでさ……ほら、シエロの奴、お前を助けたらさっさとどっか行っちゃっただろ?
他の所でも戦闘があったし、悪い事ではないんだけれど……その、お前の事が気になってさ」
「大丈夫。シエロが思っている通り、俺はちょっとやそっとで死ぬような女じゃないからさ……本当に、ありがとうございます。シエロにも、シエロを育ててくれたバンジロウさんにも」
「おうよ。キズナ……色々ショッキングだったと思うけれど、その……早い所元気出せよ? オイラと一緒に、互角に戦える日を待っているからな? 少し、声に元気がないから心配だぜ?」
「今は、疲れているだけ……それと、心の整理が追いついていないだけ。あと、パルキアと戦っている時についたアザや擦り傷が痛いくらい。命も心も、危ないほどじゃないですよ……ですから、大丈夫です。お気遣い、ありがとうございます」
「そうか……キズナ。じゃあ、もしも大丈夫じゃなかったら言ってくれよな! キズナ、キズナ」
「えぇ、はい……お気遣い、感謝いたします」
俺はバンジロウさんの言葉に頷き、思わず笑顔になる。
「誰とも話したくないって思っていましたけれど、バンジロウさんでよかったです……まだ、俺達は弱いですけれど、強くなりますので、また一緒にバトルしてくださいね。でも俺、今はちょっと疲れているので……それに、今あなたの電話で電波が繋がっていることに気付いたので、カズキに電話したくって……」
「おうよ! そっか……オイラなんかよりも、友達の方がいいよな。すまなかった……んじゃあ、守ってもらったシエロを超えるくらいの勢いで頼むぜ! じゃあな、キズナ。キズナ、キズナ!」
「はい、バンジロウさん」
笑顔のまま電話を切り、俺は携帯電話を胸に押し付ける。
「キズナ……今のバンジロウさん? わざわざ心配してくれるなんて。いい人だね」
「うん……だけどカズキが……まだ来ないな。本当はすぐにでも来てほしいけれど……やっぱり、ママンが死んでショックだったのか?」
「そっとしておいた方がいいわよ。カズキ君も辛いだろうし……私も、カズキ君には『来たくなったらでいい』って言っておいたから。キズナの傍になら私がいてあげるから。カズキ君の代わりに我慢してくれるかな?」
「よせやい。弟相手にそんな甘い言葉なんて吐いて……はぁ」
カズキに会いたかったが、無理強いも出来ないので俺はため息をつく。これくらいの怪我ならば無視して鍛錬をするのがいつもの日常だというのに、今日はそんな気分が一切起こらなかった。
ボールを破壊してしまったために外に出ているポケモン達の方を見まわしても、今日は皆乗り気ではない様子だ。
◇
家に帰って、育て屋にある回復装置にポケモンを預け、俺は1人お風呂であったまってから、ベッドに突っ伏した。もう涙も枯れてしまったような気分だが、ママンを失った悲しみはいまだに癒えず、何もする気が起きなかった。
それでも、ずっと無気力にベッドに突っ伏していると、いつの間にか意識を眠りに落としてしまうこともあるようで、目覚めたら真っ暗な部屋の中で、ぬくぬくとした布団に包まっていた。現在は18時47分。結局昼からほとんど何も食べていないからお腹がすいているし、今日はクリスマスイブだからと……色んなものを買っておいたけれど……作る気力がまったくわかなかった。
けれど、起きなきゃいけないと思って、のそのそと起きだした。携帯電話を確認すると、いつの間にか電波が復活したのだろう、いくつか連絡が入っている……アオイさんと……ユウジさんだ。アオイさんからは、キズナが会いたがっている事についてを。『けれど、会いたくなったらでいいから』という一文が最後に添えられているあたり、ママンの事はあちらにも伝わっているようである。そうでなければ、もっとメールや着信が来ている事だろう。
ユウジさんからは、ニュースで事件の事を知って安否を心配するメールと……無事だったのならばママンの一周年を明日祝ってあげようという記述だ。
「『少し、電話でお話してもらって、いいですか』」
言葉にしながら、送信する。スバルさんが置いたのだろう、枕元に添えられたモンスターボールに気付き。それを回収しているうちに電話が帰ってきた。
「よぉ、どうしたんだカズキ? 明日はクリスマスだしいいプレゼントもらえるといいなー」
「いや、あの……すみません。俺、ママンを……守れなくって……殺されてしまいました」
ぐっ、と電話の無効で声が聞こえる。寝耳に水だったのだろう。
「な、何が起こったんだ?」
「ルギアのエアロブラストから、俺をかばって……それで、死にました」
「ルギアってお前……戦ったのか、あれに? あれは……ニュースとかを見る限りじゃ、四天王やチャンピオンが相手をするべきレベルだぞ? それとも、ただ通りすがりに襲われただけ……なのか?」
「ルギアと一緒にブラックモールから逃げてきたランドロスを相手していた時に、飛んできたエアロブラストに巻き込まれて……ママンは俺をかばってくれたんだ……」
「そうか……死体は、どうした?」
「みんなで食べた。トリが……ショックでバルジーナに進化したんだけれどさ……その子が食べ始めると、他のみんなも食べ始めたから……俺も食べた」
「食べたって……お前、とんでもないことするなぁ……」
ユウジさんのため息が聞こえる。
「ダメかな?」
「分からないな……人間とポケモンじゃ葬式のやり方も違うだろうし……ポケモンたちがそうしたならば、それが正しいんじゃないのか?」
あの時、スバルさんは何も言わなかった。だから俺は、自分がしたことがどういうことか(少なくとも一般人には奇異に思われたようだが)分からなかったが、ユウジさんに言われたことがそのまま当てはまるのかもしれない。ポケモンたちがそうしたなら、それが正しいのだと。
「そうか、死んじまったのか……一年前の今日に捕まえて、明日に……お前に譲ったんだっけ、あいつは」
「うん……ちょうど一年、俺を守ってくれたの……」
「……なぁ、カズキ」
改まった口調でユウジさんが言う。
「なんですか?」
「ママンは幸せだったと思うか?」
「分からない。苦しまずに死んだことは、ある意味幸運だったよ……俺がきちんと気付いていればよかった攻撃からかばって死んだのだから……そのせいで苦しまれたら、悔やんでも悔やみきれないし……あぁ、でも……」
「でも、なんだ?」
「あいつ何気に野生のハハコモリと交尾して子供も残しているし……そういう意味では充溢していたのかもしれないし、何より……俺を守るってことは、守りたいくなるくらい、誇れる主人だったのかなって……
言いたいところだけれどさ。まだまだ、その域には達していないよね」
「まあな。悪い主人だとは思わないが……誇れるかどうかと言えばなぁ」
「けれど、せっかく命を拾ったんだから……俺も……そういう人になりたい。誰もが認めるくらい、立派に……そうしなきゃ、ママンが浮かばれないし……」
「そうだな」
と、ユウジさんは言う。どこか、満足そうなこえでった。
「幸せ者だよ、ママンは。お前みたいな奴のために、命を使えたんだ……」
「そうかな……」
「確かに、まだ幸せかどうかは分からんな。お前が宣言通りに立派になれたのならば……そうかもしれないけれど。まぁ、要はあれだ。ママンがどんな気持ちでお前を守って、死んでいったか考えてみて、その気持ちにどう向き合うか……だ。
死ぬ事になんて、それそのものには価値も意味も無い。だけれど、死んでまで成そうとした事に意味はあるはずだ。それでもって、その意味に価値を与えるのは、紛れも無くお前なんだ。そこまで言えば、お前が何をするべきかは、自ずと分かるはずだぜ? ママンがした事に、どんな価値があったんだ? それをきちんと、考えてやれ。お前がここで腐っちまったら、ママンは腐ったダメ人間のために命を捨てたことになっちまう」
ユウジさんの言葉は、誰でもわかるような簡単な言葉で、そのおかげだろうか。俺の胸の中にも容易に入り込んで、すっきりとした気分にさせてくれた。
「はい……」
少し、安心したように電話の向こうで吐息が漏れた。
「ほら、俺は恋人もいないし、お前にプレゼントでもやろうと思っていたが……その様子じゃ、心の整理に時間が掛かりそうだな。まぁ、カズキ……いつでもいいから、家に来てくれよ。俺、プレゼント用意して待っているからさ」
「……ありがとうございます」
ユウジさんの言うとおり、まだママンを失ってしまった事を受け入れるには時間が足りていないと思う。けれど、電話をして本当によかった。ママンのことで、罰を受けなきゃういけないような気分になっていた俺に、幸せに生きてもいいんだと言ってくれるような気がして……すごく、心が楽になった気分だ。
「なに、こんな話し相手くらいお安い御用よ」
「そう言ってくれるユウジさんだからこそ、話してよかったと思います……では、さようなら」
「おう、じゃーなー」
電話をする前は、涙が止まらなかったのに、今は不思議と涙も止まっている。そんな自分の心境の変化に驚きつつ、俺は電話を切る。
さて……これからどうしよう。昼寝をしてしまったから、目もやたら冴えているし……もしも、三河家の家族が迷惑じゃないのなら、キズナに……会いに行こうかな。
母さんは、何時の間に用意したのか、七面鳥のもも肉や、二層に分かれたスポンジをイチゴとホイップクリームでデコレーションし、チョコで書かれた文字でメリークリスマスと書かれたケーキなどを用意していた。お腹もすいているだろうに、すっかり冷え切ったそれらを目の前にしても一切手を付けずに待ち続けていて、その顔はどこか沈んでいた。
「カズキ……すまんな。私も色々レシピを身ながら作ってみたんだが、お前の料理ほど美味くない」
俺の気持ちを察してくれているのだろうか、本来ならば盛大に祝っていたであろうこのめでたい日に、母さんの顔は浮かない。
「……大丈夫だよ、母さん。匂いだけでも、美味しそうってわかるし……ケーキも、作ったんだ」
「材料だけはあったから見よう見まねでな」
「嬉しいな」
「そうか……そう言ってもらえると、こっちとしてもやってよかったと思うが……」
照れているのか、母さんは頭を掻いた。顔が熱くなって、痒いのだろうか?
「俺さ、実の親に食事を作ってもらうことなんて無かったし、ましてやこういうイベントなんて全然付き合ってくれなかったからさ。だから、母さんがこうやって、俺のために何かを作ってくれたこと……本当に、嬉しい」
「本当は、お前に作らせるつもりだったんだがなぁ……」
子供に褒められることが慣れていないのか。母さんは困惑した表情で、少々顔を赤らめている。こんな可愛い顔もできるんだな……母さんって。
「まぁいい。とにかく、クリスマスは家族で過ごすには最適の日だ。お前がよければ、一緒に過ごそう……」
「うん……ありがとう」
面と向かって家族と言われると、なんだか少しむずがゆい気分だ。普通の家族でも、こんな風に言われると顔が少し赤くなるものなのだろうか……ちょっとだけ気になって、すぐに馬鹿らしいと気付いた。
「今日のうちに立ち直れないと思っていたんだけれどな……お前は、強いな」
「まだ、立ち直ってないよ……母さん。まだ少し強がっている……」
「そうか……」
母さんは深く追究することはしなかった。
「ママンを殺さずに済む方法があったはずだとか……考えても仕方のない事を、延々と考えちゃう。……多分、実際にあったのだと思う。そして、殺さないで済ませる方法はすごく簡単なことで、服にボタンを掛けるかかけないかぐらいの違いでしかないのだと思う。1メートルずれた場所にいる……とかさ。
それで……それだけで、ママンの生死が決まるんだから……現実って厳しい……って思っちゃう。つまり、なんていうのかな……そういう考えても無駄なことを考えないようにしていられるようになるまでは立ち直れていないんだと思う。今の俺は、後悔している……反省じゃなくって、後悔している……
反省するべき点なんて……まだルギアを倒していないのに、油断していたこと。ただそれ一つしかないはずなのにね。なのに、うじうじと何時までも悩んで……そんなことしていちゃいけないって分かっていても、その思考から抜け出せない。まるで、考える事が義務になっているみたいに……これが、ただの練習試合で、死んだ振りをした相手に不意打ちを決められただけなら、『次回は気をつけようで済んだのに』」
「カズキ。自分が自分で、異常である事を自覚しているのならば、大丈夫だ」
「やっぱり、異常なんだ……」
スバルさんの目にもそう見えるのならば、きっとそうなのだろう。
「……気が済むまで、泣くといい。そして、ママンの死に納得できるようになるまで、その死に向き合っていけばいい。
けれど、死ばかりを見つめるのはいけない。何より大事なこととして……ママンは、お前の中で生きているからだ。それは、お前がママンの死体を食べたからじゃない……ママンがいなければ、お前は死んでいたから。これに尽きる。
お前の中でママンが生きているのならば、やることは一つ……お前はお前のために生きる。それだけだ。もう、ママンのために生きようとか考えるな……お前がお前のために生きること、幸せになることが、ママンの願いだよ……きっとな」
「同じようなこと……ユウジさんにも言われたよ……なんだか、言葉にするとただの冷たい人みたいだけれど……死んだ人の分の命まで背負って生きろって……そういうことなんだよね、きっと」
「そうだな。だから、気に病むなとは言わない。ママンが死んで悲しんでばかりいたら、本当に何のためにあいつが死んだのか分からなくなる。でもまぁ、気張る必要はないさ……いつか乗り越えられる。
そうか、今日はまだ乗り越えられていないんだな……それでいい。ゆっくり乗り越えろ」
「うん……」
控えめに頷いてから、考えることが多すぎて味が分からない夕食を食べる。美味しいはずなのに、その味を素直に味わえない……本当にもったいないことだと思うのだけれど、味わう気分にもなれなかった。
「ご馳走様……母さん、美味しかったよ」
「そうか……」
なんのけなしにそう言ってから、母さんは一瞬遅れて安心したように微笑んだ。
「そう言ってもらえると、作ってよかったな」
食が進まなかったおかげで、長い時間をかけて俺は胃袋を埋め立てた。母さんにはああいったけれどやっぱり、ほとんど味なんて分からなかった……美味しいのだけれど、記憶に残らない。
こんな気持ちであんなに美味しいものを食べるのは、本当に失礼なことだと思う。
「ねえ、母さん」
ともかく、それは口に出さず、美味しかったと、よく味わったという事にして話を進める。
「なんだ?」
「こんな時間だけれど……キズナに、会いに行きたいんだ……」
「気をつけていけよ」
母さんは、俺の気持ちを汲み取って、茶化す事も止める事もせず、ただ一言身を案じた。それでも、ポケモンがいれば身の危険が少々起ったくらいじゃ問題が無いと、安心しているのだろう。
母さんは、俺よりも先にキズナに会いに行っている。その時は、アオイさんが相手をしたようで、今もキズナは俺以外の誰とも話をしたくないらしい……何が起こったのかはわからない。アオイさんは大丈夫なのに、アオイさんよりもメンタルが強そうな絆のほうが参ってしまうと言うのも不可解だ。
けれど、キズナが助けを求めているのなら……行ってあげなきゃ。女を支えるのは男の役目だとか、そんな高尚なことは考えちゃいない。ただ、大切な人を守ってあげたい。その気持ちに、余計な固定観念は必要なかった。
俺は、下駄箱から鳥系のポケモンに空を飛ばせる際に必要な道具を見る。足爪でつかみやすい滑り止めの付いたシリコン式のバーをポケモンに掴ませ、縄梯子のように伸びた足場につかまって乗るためのものである。
ドラゴンならば背中の上に乗るのが一般だが、鳥系のポケモンの場合は重心の関係で、足につかまる形で乗るのが理想的である。とはいえ、ただ掴まるのは腕が疲れるし、落ちて大怪我をする事故が多発するなどの事情があるため、このような器具が開発されたのだ。
一応練習はしているが……トリに出来るかどうか。ランドロスは……まだ懐いていないし、すぐに乗っかるのは危険かな……。
「いいや、やっぱり自転車で行こう」
バルジーナが飛べないなんてことは無いだろうが、それでも今までまともに飛んだことが無い彼女にいきなり俺を吊るして飛べと言うのも酷だろう。自分の足で行って、そしてキズナと話をしてこよう。
寒いけれど、頑張ろう。
「夜遅くに、すみません」
21時12分、キズナの家に到着した。玄関には母親が出迎えに来てくれたが、今日はめでたい日だと言うのに顔は少々老けて見える。理由なんてもちろん分かっている……キズナに何かがあったのだろう。病院に行っていないということは、それが怪我が原因というわけではないということだ。
話を聞いたり、ニュースを見たりしていれば、なんとなく分かる……キズナの性格上、殺してしまったのだろう。プラズマ団の人間を。
「いえいえ、こちらこそ……キズナが会いたがっているからって、こんな夜遅くにきてもらえて……そちらの方がむしろ申し訳ないと」
「どうも。でも、それはどうでもいいですよ。ちょうど、俺も話したいことがあったところですし……」
俺の言葉に、キズナの母親が無理して笑顔を作る。
「そう、ありがとう。キズナにもこんな友達がいてくれてよかったわ。ほら、寒かったでしょう? 早く入って」
「そう言ってもらえると、助かります……お邪魔します」
軽く会釈をして、室内に入る。流石に玄関近くは寒くてまだコートを脱げそうにないが、子供部屋にはきちんと暖房が効いている。子供部屋では、アオイさんがレポートを纏めていた。その周りには、ポケモン達がずらりと外に出ている。どうにも、ボールからポケモンを出すことが出来なくなっていたとかで(ランドロスとの戦いの最中にボールの調子が悪かったのもそれが原因だろう)ボールを壊してポケモンを外に出したらしく、そのおかげでポケモン達が入るボールがないそうだ。
一応、家に置いておいた予備のボールに再び封じているものの、数が多くなかったせいか、すべては入りきらなかったらしい。とりあえず、いても邪魔にならないセナやコシ。そして外に出ている時間が長いコロモや、毛が飛び散りにくいために外に出ていてもあまり問題のないタイショウなどが外に出されたままになっているようだ。それに、見慣れないチラチーノがいる。新入りだろうか?
ポケモン達を見る限りだと、特にキズナについて心配しているらしく、しきりに様子をうかがっている。
「こんばんは、カズキ君」
「こんばんは……キズナは……あそこ?」
すでに床には布団が敷かれ、それは妙に盛り上がっている。キズナは布団の中に潜っているのだろうか?
「うん……キズナなら、カズキ君がきたって事気付くはずだけれど……寝てるのかしら」
「案外、中に入って来いって誘っているのかも」
「カズキ君、貴方はまだ11歳なんだからそういう事を考えちゃダメよ」
「はは、手厳しい」
アオイさんと交わした会話なんて、それくらいしかなかった。アオイさんも元気である風を装おうと頑張っているけれど、ものすごく疲れているな。まぁ、死ぬかもしれないような場所にいたのならば、それが普通なのかもしれない。
「コロモ、大変だったって聞いたよ……その、二人を守ってくれてありがとうね」
別に、コロモだけが守ってくれたわけではないだろうが、この子の事だ、役立たずだったわけはないだろう。ポケモン達の代表として、お礼を言っておく。コロモは手話でありがとうと言って、力なく微笑んでいた。挨拶くらいはきちんと覚えておいてよかった。
「ところで、アオイさん……あのチラチーノは?」
「あれは……ブラックモールで警備員のお兄さんが使っていた子なんだけれど。その人、撃ち抜かれて死んじゃって……だから、キズナが連れて帰ってきたの」
「そう……大変だったね」
なんといっていいのかわからず、ごくごく適当な返答を終えて、俺はいよいよキズナの方に向かう。
「こんばんは……」
キズナが包まっている掛け布団をめくり上げ、中にいるキズナに声を掛ける。
キズナの顔は暗くて見えなかった……なんというのか。恐らく、姉と相部屋でなければこんな風に布団に包まっているなんて事も無かったのだろう。
「ありがとう……来てくれたんだな」
ただ、口先から出したような覇気の無い声。キズナだとは思えないくらいに元気が無い。
「うん……キズナのためなら、くるさ、そりゃ」
「そりゃ嬉しい……」
言うなり、キズナは俺をベッドの中に引っ張り込む。力は弱かったから、嫌なら逆らえる程度ではあったけれど……まぁ、扉一枚隔てて親がいるし、すぐそこに姉がいるから聞かれたくない話をするために布団にもぐりこみたいのは分かるけれど……なんだかなぁ。葵さんが見ている前でこれは、流石に落ち着かない
しかし、結局俺は暖かさへの誘惑に負けて布団の中へ。今まで寒空を走ってきたから、布団の中は流石にありがたい。
「ごめんな、こんなところで」
中は、キズナの匂いが充満していた。ただ、それに混じって血の匂いがする……キズナの血の匂いじゃないのも明らかにある。何があったのだろうか、容易に想像がついた。
「カズキ……俺さ、人を殺しちまったんだ……」
「まぁ、そういうこともあるよね。俺も、経験あるし……」
気にする必要はないよ。とは流石に言えなかった。
「……だからお前を呼んだんだ」
「そうなんだ」
布団の中で、キズナの腕を抱く。キズナがそっと肩を寄せてくる。
もちろんだけれど、キズナの表情は見えない。もしかしたら酷い表情で、俺に見せたくないのかもしれない。
「血の匂いが、少しだけするね」
「まだ残ってた?」
「多分、布団の中じゃなきゃ気付かなかったと思う程度しか残ってないけれど……」
「よく洗って、服も捨てたのに……髪も、切ったんだけれどな……」
「そんなに……」
人間の血の匂いがよっぽど嫌だったのだろう。ポケモンの血ならついてもまったく気にしないキズナだっただけに、俺も驚きが隠せなかった。布団の中で、キズナが動く。彼女が覆いかぶさってきた。
「なぁ、カズキ……俺がやったこと、聞いてくれるか?」
「うん、もちろん」
キズナが消え入りそうな声で耳元に口を当て語る言葉に、じっと耳を傾ける。今回の件、キズナもなんとなく全体を把握しているらしい。恐怖の感情を集めてムウマージに力を与え、夢と現実の境界を薄くする。そのためにプラズマ団は絶望的な恐怖が必要だったと言う事を、彼女は知っていた。
そして、キズナもその恐怖を与えるために人質にされかけたらしい。だけれど、ギーマさんが流した情報のおかげで、モンスターボールが故障した状態でも壊せば外に出せるという事を知っていたため、それを実践した。
キズナが生き残れたのは、プラズマ団が一般客がポケモンを出していない事を前提に訓練していたため、強いポケモンをたくさん持ったキズナに対応することができず……また、キズナ自身の訓練の賜物でもあったのだろう。
それで、キズナはプラズマ団を拘束するだけでいいものを、殺してしまったらしい。怖くて半狂乱に陥っていた部分もあるのだろうけれど、それが今になって非常に強い後悔を生んでいるようだ。
そして、極めつけの話は強烈だった。一部の一般客が暴徒化したという話は聞いていたが、それを引き起こしたのは……キズナだった。もちろん、キズナ以外にもきっかけを与えた人はいるのだろうけれど、確実に絆が発端となっている客もいるそうだ。
キズナは、『テロリストに対しては拷問しようと強姦しようと罪にならない』と言う嘘をつき、それで人を奮起させたのだ。
その惨状は言うまでもなく酷いものだったようで。ボールを割ってポケモンを繰り出した一般客に捕まえられたプラズマ団は、女性なら服を引き裂かれて路地裏やトイレに連れ込まれ、その先は知らない。男ならまるでゲームのように殴られ蹴られ、縛り付けて肉食のポケモンに齧らせるとか、割れたビンで突き刺すとか、そういう行為が平然と行われていたそうだ。
その話については俺も少しだけ伺っていて……プラズマ団を鎮圧するよりもよっぽど苦労したらしい。キズナはその隙に走って逃げたそうだ。入り口を黒い眼差しで塞いでいたムウマージたちはすでに一般人が倒していたらしく、パルキアを撃退してアオイさんに追いついたら、そのままアクスウェルに乗せてもらって、家まで走り付いたそうだ。
「俺、ねーちゃんを助けるためにとんでもない事を……して……」
「……別に、いいんじゃない? 相手はテロリストだし」
「それ、ねーちゃんにも言われた」
「それに、一番効率的だと思うよ? プラズマ団からしてみれば、立ち向かったら絶対負ける相手が、絶対に許してくれない状況で迫ってくる……立ち向かうと言う選択肢をなくせば武器を放棄して逃げるか、命乞いをするか、自殺するしか手はなくなる。特に、自殺してくれるなら非常に都合がいいじゃない。
下手に人質を取って逃げられるよりも、ずっと」
「命乞いをしても、同じような事をやられていたよ……『都合のいい事を言っているんじゃねー』ってさ。それが分かって、銃を自分のこめかみに向けてたやつもいるけれど……誰かがマジックルームを使っていたのかな、銃が不発で、そのままもみくちゃにされてたのも見たよ」
「いいんじゃないの? 厳罰って言うのは反省させるためにあるんじゃない……見せしめと後悔させるためにあるもんだ。それだけの恐怖を体験した後なら、生き残った団員ももう二度と同じことはやらないだろうし、これからプラズマ団になろうとしていた人たちも、踏みとどまるでしょう?」
「お前は、割り切ってるな」
「割り切らなきゃ、親を殺すなんて出来ないもの。殺せば、二度と悪い事は出来なくなる。それに間違いはないでしょ?」
「そっか……」
それっきり、キズナは俺の胸に顔を押し付けて泣く。
「あのね、キズナ。俺さぁ……スバルさんと話をしたことがあるんだ」
「どんな話?」
俺が切り出した話題に、キズナは食いつく。
「キズナは、部屋は綺麗な方が好きかな? なるべく汚れはないほうがいい?」
「そりゃまぁ……多少なら気にならないけれど、流石に埃とかが積もってきたら嫌だな」
唐突な質問に若干戸惑いながら、キズナはそう答える。
「じゃあさ、雑巾は汚いと思う?」
「新品ならばともかく、使い込んだ奴は……汚いだろうな」
「うん、それじゃあ、雑巾は家に置いときたくないと思う?」
「いや、それはないだろ……そういう奴もいそうだけれどさ……使い捨ての紙の掃除用具だけしか使わないとか……金がいくらあっても足りない。ってほどでもないのかな? 俺としては、なんかゴミ箱がすぐにいっぱいになりそうでいやだけれど」
「そうだね。でも、君も雑巾同じ……ここでさ、『汚れ』を『悪』と言う言葉に置き換えてみて……汚れた雑巾は、社会になくてはならないものなんだよ。それはなぜか? これだけ科学が進んだ現在でも、埃やゴミを発生させなくする装置が一般向けに開発されていないからだ。研究所レベルでなら存在するけれど、それは専用のスーツと蚊を着用する必要もあるし、一般家庭への導入は現実的じゃないね。
社会だって、同じ。放って置けば悪いやつが発生しちゃう。それを殺したキズナは確かに悪い事をしたのかもしれない……けれど、それは必要悪と言われるものなんだ。この世界に、『雑巾を家に置くなんて信じられない』って思う人がどれくらいいるのかな? 俺は大丈夫だよ、キズナ……雑巾があったっていい」
「俺、雑巾か……」
「いいじゃない。キズナ。俺はそんな雑巾でも受け入れるよ……君のことならば」
俺の胸に押し付けられたキズナの後頭部を右手でそっと押さえ、反対の手は背中に回した。
「ありがとう……」
「どういたしまして。というか、キズナは俺のこと受け入れてくれたじゃない? 雑巾どころか、鼻をかんだティッシュにも劣るかもしれない俺を。大丈夫、俺はキズナを信じてる……あの時、俺がやったことを、君がやっても大丈夫」
「畜生……」
悔しげにキズナが呻いた。それっきり、彼女はすすり泣くばかりで何も言わない。ずっとずっと、俺の胸に体を預けて涙を流している。その声をずっと聞いていると、だんだんと静かになっていく。息をしているのがわかるので死んでしまうわけではないのだとわかるが……それでも、少々心配になってしまう。
「なぁ、カズキ。起きてる?」
「この状態で眠るのは気が引けるよ」
「そっか……最後まで付き合ってくれたんだな」
「当然でしょ?」
「まぁ、そうかもしれないけれどさ……」
そう言って、キズナ手を付いて顔を持ち上げは被っていた布団を引き剥がす。俺は部屋の白い明かりが眩しくて、思わず目を細めた。それに、一気に流れ込んできた冷たい空気のせいで酷く寒い。
「あら、お暑いのね? 衣服は乱れていないかしら」
「見ての通りですよ、アオイさん」
「そうだよ」
俺はおどけながら力のない笑顔を向けた。キズナもまた同じような反応をしていた。
「なぁ、カズキ……突然話が変わるけれどさ……俺、強くなりたいんだ」
そう言ってキズナは完全に布団を払う。パジャマ着用で、目は腫れぼったい酷い顔だった。なるほど……この顔を見せたくなかったのかな? 変なところで女の子っぽいんだから。男の子っぽい理由を考えるならば、醜い顔を見られる事ではなく、泣いているところを見られたくなかったのかもしれないけれど。
「俺も強くなりたいよ……今日、そう思うような出来事があった」
「そうか……カズキ。お前は、何のために強くなりたいんだ? 俺は、ねーちゃんとか、他の誰かを守れるようになりたい。あんなやり方じゃなく、もっと綺麗に……そりゃ、殺しちまったのは仕方ないさ。正当防衛の範囲内だろうし。でも、あんな言葉で、人を煽動までして助かろうとしたのはやっぱり間違いだったと思う……だから、強くなりたい。
俺が満足できる人生を歩めるように、強くなりたい」
座って対面する俺の手を握って、キズナが言う。
「出来るよ……キズナなら」
「あぁ……」
月並みすぎて、言う意味もないような励ましでも、今のキズナにはうれしかったようで、すごくありがたそうにゆっくり頷いていた。
「俺はさ、今日……自分の不注意でママンが死んでしまったんだ」
「ルギアに、やられたんだっけ……スバルさんから聞いた」
「そう、ルギアのせい。その代わり、ランドロスが手持ちに加わったけれど……」
「すごいじゃないか……そんなポケモンが手に入っただなんて」
「そうだけどね……それはそれとして……大切な家族を失う悲しみは……もう嫌だから。だから、俺は大切な家族を守れるように強くなりたいよ。キズナはもちろん、今はまだ守られる立場だけれど、母さんだって守りたい」
「俺の事なんて、守る必要ないのに……そんなこと言われたら、俺もお前を守らないとな」
言い終えると、二人で見つめあう。ぎゅっと握っていた手の力が強くなった。
「仲が良いわね」
そんな俺達を茶化すように、横から声が届いた。そういえば、ずっと同じ部屋にいること忘れてた。さっき話しかけられたばっかりなのに。
「まーね。そういうわけで……ねーちゃんも応援してくれよ?」
「あぁ、俺の事も出来れば」
キズナと俺で頼むと、アオイさんは微笑んだ。
「うん。一緒に頑張りなさい。あんた達なら、まだまだ強くなる予知なんていくらでもあるでしょ」
アオイさんの言葉を受けて、俺達2人は顔を合わせて微笑みあう。明日のために、また頑張れる気がしてきた。
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今日は、大切なママンを不注意で失ってしまった。
キズナが心配で心配で、いてもたってもいられずに出かけたその先で、ルギアとランドロスに鉢合わせした俺とスバルさんは、襲われている人たちを助けるために、成り行きでそれらのポケモンと戦う事になった。
ランドロスは単独で撃破できたけれど……でも、ルギアの放ったエアロブラストの流れ弾に俺が当たりそうになったときママンは俺をかばって死んでしまった。ランドロスの捕獲に夢中になって、周囲への警戒を怠っていたことが原因だろう。
これについてはいまさらどんなに悔やんだところで遅いのだ。死んでしまったということを受け入れて、前に進まなければどうしようもない。
……ともかく、ママンが俺を守ろうとした真意は分からない。ポケモンなんて、結局は自分の命が一番大事だと思っていたけれど、そうでもないんだろうか。本能的に子供を守ろうとしたのだとしたら、俺の事をそこまで大事に思っていたのだろう。
それほど大事に思われて、期待されているからこそかばったのであれば……俺はその期待に応えてあげる義務があると思う。もうポケモンを失ってしまうなんて出来ないとか弱音を吐いて、ポケモントレーナーをやめてしまうとか、そういった選択肢はありえない。
だから、強くなりたい。
キズナも、姉を助けるためとはいえ、色々と酷い嘘をついたようで、それをとても気にしている。どれほどの状況だったか知らないけれど、それを恥じているから、強くなりたいと語った。
だから、とにかく一緒に強くなろうと、そう思った。これからも、一緒に
それと、今まで頑張ってくれたママンへ。レポートとは違うけれど、今の気持ちを忘れないためにも、書き記しておく。
最初に出会った日はクリスマスの朝。ユウジさんが俺のために捕まえてきてくれたのを、今でも覚えている。
ワクワクして繰り出された時には、安定したエサと引き換えに、こいつを守ってやってくれとユウジさんから頼まれていたそうで、俺の事を守るべき対象だとすぐに認識してくれたね。
それから、暴力を振るってきた男を殺すときも、両親を殺すときも、君に頼っていた。
思えば、俺が命を救われた回数は、きっと一回や二回ではない。そして、君がいてくれなければ、きっとイッカクやゼロとも出会うことはなかった。それはすなわち、ローテーションバトルと出会うこともなかったというわけで……キズナにも出会えなかったんだね。
だからママン。君が与えてくれたものは、すべて大切にしていきたいと思うし、君がくれたこの命も、無駄にはしない。
それに、君のように死んでしまうポケモンを今後作らないためにも、強くなるよ。
もし天国のようなものがあるのならば、見守っていて欲しい。お前が誇れるようなポケモントレーナーになって見せるから。
12月24日
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昼寝をしたせいなのか、キズナの母さんが用意してくれた布団にはいっても眠れなかった俺は、キズナの家の玄関の植え込みに座り、寒空の下で冷たい空気を味わいながら、携帯電話にレポートの下書きをする。
傍らにはトリがいた。
「なぁ、トリ。お前は強くなりたいか?」
尋ねると、トリがクエェッと力強く鳴き声をあげる。今よりもはるかに逞しい、そんな様子のバルジーナのイメージが頭の中に浮かんだ。
「そっか、強くなりたいんだな、お前」
地面に立っているトリの頭をそっと撫でる。この日のために綺麗な頭骨や太い骨をたくさん集めておいたから、進化した時は裸だった彼女の体にはすでに骨が飾られていて、その感触を確かめた。
もちろん、胸を守るための骨も忘れていない。丈夫な骨に守られた彼女の耐久力は、それ相応のものになっていることだろう。
ママンを失うことで、悲しみによって進化したトリは、今何を思っているのか。俺の不注意で死んだけれど、恨んではいないようだが……真意はあまり語らないので分からない。ただ、たまに悲しげに泣いて体を摺り寄せてくる時に伝わってくるから……もう少し甘えたかったと、全身で語っていることが分かる。
そんな彼女をぎゅっと抱きしめ、ママンの代わりに守っていこうと誓う。ポケモンを指揮する力、ポケモンを育てる力……自分自身が戦う力。全部鍛えて、守っていかなければ。寒空に、1人1羽が吐く息が、白く上ってはすぐに消えていった。
そうして、座ったまま呆然と息をしていると、俺の瞼には意味もなく涙があふれた。ママンが死んでしまって悲しい事や、キズナが無事で嬉しい事が、全く整理しきれずぐちゃぐちゃな感情のまま涙になる。静かに声を押し殺して泣いていると、ふと後ろに気配を感じて振り返る。
「なんだ、コロモか……」
キズナかと思って振り返ると、予想外にも姿をあらわしたのはサーナイトのコロモであった。コロモは俺に対して赤いイメージと布団のイメージを伝える。寒いから布団に戻れということだろう。分かってる。
けれど、なんというか、自分は涙を流してしまうことを分かっていたようだ。こんな顔をキズナにみられるのも恥ずかしいから、一人でいたいのだが。コロモはどうもそれを許してくれないらしい。コロモの見立て通り寒くて冷え切った俺の体を温めるように、そっと抱擁してくれた。
思えば、夏にこうして抱きしめられた時には、拒絶してしまったものだ。すごく暖かくって、心地よい。安心して、身をゆだねてしまいたくなる気分だ。そのぬくもりにすがるように、静かに涙を流す。他人のポケモンに慰められるだなんて情けないとも思ったが、自分のポケモンに自分が弱いところを見せずに済んだことを、今は安堵しておこう。