第三十五話:イーブイ争奪戦
「頑張れよ、クライン、タイショウ、セナ」
「頼むよ、ゼロ、トリ、イッカク」
俺はサマヨール、ダゲキ、エルフーンの組み合わせなわけだが……相手は、ストライク、バルチャイ、ヘラクロス。さて、どうするべきか?
「あ、キズナ。クライン……いつの間にかヨマワルから……進化したんだ」
「そうだぜ、格好いいだろ? カズキ」
ヨマワルだった頃と比べると足が生えて二足歩行に。腕はないが、ある程度自由に宙を舞う手だってついていて、かなりのパワーアップだ。無茶苦茶丈夫な相手だし、ゼロが相手ならこいつを出しておけば間違いはないだろう。
さて、あいつの手持ちを考えると……相手は物理攻撃主体も多そうなことだ……ならば!
「クライン、お前だ!」
ねーちゃんから預かったサマヨール。こいつの丈夫さは、正直に言って半端じゃねー。まだ進化の輝石がないのは残念だが、それはおいおい考えるとしよう。今のこいつの持ち物は……手の甲に金属が仕込まれたシキジカ皮の手袋(手作り)だ。単純な防御能力ならこれで問題ない。
「ならイッカク、まずはお前だ!」
初手ゼロじゃないのか……イッカクが相手じゃ鬼火が使えないし…・・・厄介だな。さぁ、初手はなにで来るのか。
「シャドークロー!!」
「む、そんなの……クラインには通じないぜ!」
普段なら根性の特性を安全に活かす為に守っているところだろうが……こいつ、サマヨール相手に守る必要はないと踏みやがったか!? ともかく、クラインはいつでも交代を出来るように、基本的に自陣近くから動かないように教えている。それでも威力の衰えないようなナイトヘッドや呪いを主体に戦うから、困るのは鬼火を当てたい時くらいだ。まぁ、鬼火を当てておきたいようなやつは接近戦が好きだから相手から近づいてきてくれるがな。
「耐え抜いて呪いを掛けろ!!」
ヘラクロス……イッカクの一撃は強力だが、クラインならばそれくらい余裕で耐えられる。左の一太刀で、右手のシキジカの皮は切り裂かれ、生地が傷つく。連続で繰り出された右の一太刀。左手のシキジカに傷がつく、これまた本体には傷無し……しかし、うん。やっぱりポケモンの本気の攻撃を受けると毛皮が傷ついちゃうな……。内部の手甲はさすがに破れないが、イッカクはまだ本調子ではないのが恐ろしい。
「クゥゥゥゥッ!!」
呪われたおかげで強烈な苦痛を感じたのだろう、イッカクの呻き声が聞こえる。よしきた、こっちだって耐久勝負ならイカックに負けてやるつもりはない。相手は、火炎珠によって攻撃力を上げてきているが、その分動けば動くほど火傷は悪化、呪いも動く相手を蝕む力は絶大だ。虚空から浮かび上がった巨大な釘が、クラインの胸を貫いた。だけれど、それに少しだけ遅れてイッカクの体にはヘラクロスの雄の角らしきものが刺さっている。その角に実体はないが、火傷と呪い、二つのダメージを貰ってイッカクがうめき声を上げていることを鑑みればダメージは確実だ。
「退け!! イッカク」
「黒いまな……」
「いや攻撃だイッカク!!」
「……あ、守れクライン!!」
お互い、刹那的な判断で命令が二転三転してしまった。逃げるつもりで背を向けていたイッカクは、身を翻してクラインへと攻撃。振りかぶる爪には、いつもどおりの火傷状態での馬鹿力が発揮されている。幾らクラインの防御力でも、普通に防御したくらいじゃ、そんなの崩されるレベルだ。
イッカクの攻撃に対し、クラインが緑色の障壁を張る。イッカクの爪は見事に障壁の力で跳ね返され、たたらを踏んで3歩後退。イッカクは動き回ったおかげで、火傷の傷は痛んでいるし、さらに呪いの効果でもう一本の角がイッカクの胴体につき刺さる。
強烈な痛みに歯を食いしばりながらも、イッカクはクラインのことをきちんと見つめていた。
「退け!!」
あっちはどうする……もう後に引ける状態ではないが、次は逃げるのか?
「シャドークロー!!」
なるほど、攻撃か! 持ち前の根性もあってか、イッカクはすさまじい激痛が襲っているだろうに、彼女はまだ立ち上がって爪を振るう。クラインはゴーストタイプだから起死回生の攻撃が通じないのが幸いだ。クラインは、自身の手の平を飛ばして、高速でタッチを仕掛ける。ダイノーズをはじめとする体の一部が取れるポケモンに置いては、この遠隔タッチも技術の一つだ。備えあれば憂い無しだな。
「タイショウ、守りに集中しろ! そのうち相手は自滅する!」
果たして、追いつかれる前にタッチを果たしたクラインはタイショウと交代する。火傷で攻撃力を底上げしたシャドークローを肩代わりだ。
襲い掛かってくる右手の爪を、タイショウは左腕の手首近くで受け止め、左肩から首に掛けてを狙ったその一撃をはじくように手を回し、肘を視点にくるりと回す。
タイショウがイッカクの攻撃を上手くいなしてなお痛そうな音がし、タイショウも歯を食いしばった表情を見せるが、すぐに真顔に戻ったところを見ると、きちんと対処すれば我慢で耐えられるレベルの痛みと言うことか。流石は格闘タイプ、痛みに強い。
しっかりとイッカクの一撃を受け止めたタイショウは、そのまま上体を下げて頭突き、右肩口からのタックル、右肘打ちを同時にぶつける。たまらず吹っ飛んだイッカクが体勢を整える前に、タイショウは地震を起こす。タイショウ……あいつ、守りに集中しろっていったのに、大胆な。
イッカクだが、攻撃を喰らって飛び上がって、着地した直後に地面からの衝撃で目を白黒させる。最後、更に呪いによって出現したヘラクロスの角が、イッカクの体を深々と穿つことで、体力の限界にまで達したイッカクは、もう逃げる力も残されていないからと、特攻を仕掛ける。
自慢の角を相手に向けた、起死回生の一撃。当たれば如何にタイショウと言えども無事じゃすまない一撃であったが、タイショウは上体をそらして、イッカクの頭に足刀。上手く胴という急所を相手から離しつつ、自身の足を肩に当てることで相手の攻撃の威力を潰した。
イッカクはそのまま転ぶと立ち上がらなくなり、刺さっていた呪いの角も消える。倒れた原因は外傷よりも、呪いと火傷による体力の低下によるところが大きそうだ。
「ヘラクロス、戦闘不能。カズキ君はイッカクを回収し、他のポケモンを出してください」
「命令違反されたか……まだまだ俺も未熟だな」
タイショウに命令違反されたけれど、今回はタイショウの動きには非の打ち所がなかった。優れた脚本家だって、俳優にアドリブを掛けられることを思えば文句は言えねぇ。命令違反されたのは俺の指示が悪かったから……仕方のない事だ。タイショウは咆哮をあげて、一つの勝利に奢ることなく気合を入れなおす。勝って兜の緒を締めろと言うことか。
「イッカク……すまない。クラインをどうしても倒さないといけなかったんだ……あいつ、ゼロは苦手そうな相手だからなぁ……まぁ、これだけダメージを与えたならば大丈夫そうだが」
カズキはイッカクをモンスターボールに収納し、優しく声を掛ける。さて、次はなにがくるのやら……
「それじゃあ、サミダレを出すよ……そんでもって、行け、トリ!!」
「そうきたか……そのまま行くんだ、タイショウ」
もう、交換制限の10秒は過ぎているが、初めて見るバルチャイを選出されたとあれば、様子見の必要がありそうだ。どんな状況にも対応出来るセナは、そういう状況のためにとって置くべきだろう。しかし、悪タイプのポケモンがパーティーに居るのか……うらやましいな。
「追い風!」
「タイショウ、岩雪崩!」
とにかく、相手は飛べないけれど飛行タイプだ。あの尻に付けた大きな骨が重いから飛べないけれど、飛行タイプである以上岩が弱点なことに変わりはない。タイショウが放ってきた岩雪崩を、トリはぴょんぴょんと跳ね回りながら避ける。途中で足を踏み外して巻き込まれたが、それでひるむこと無しに追い風を発動した。
あの恐ろしさは知っている。先程のスバルさんの戦闘で見せてもらった、追い風のすさまじさたるや……ポリゴンZが普通じゃない動きで竜星群を交わそうと頑張っていた。残念ながら、スピードだけすごくても動きを読まれてしまったおかげで、先読みで攻撃を当てられてしまったようだが……
セナの追い風にもよくお世話になっているし、あの技本当に恐ろしいんだよなぁ。どうする、出来るだけ早めにタイショウを下げるか? それとも……
「押さえ込め!」
考える前に指示を下す。そう、たとえ追い風を使っても、押さえ込んじまえばこっちのもの。幸い相手にはオムツ代わりの頭蓋骨がある。あんな掴みやすいものを掴んでしまえば、脱出も難しかろう。
「逃げ回れ!」
だが、カズキもそれを許さない。そうこうしているうちに、10秒経っていて、それと同時に退けとの合図。追い風を纏いながら、満を持してゼロが光臨した。
「タイショウ、逃げ――」
と、指示したが無駄だった。まさに神速と言うべき、ゼロの素早さ。一瞬でタイショウが追いつかれたかと思えば急停止。タイショウの肘打ちをかわし、上に避けている。
「タイショウ!!」
跳躍したゼロによってタイショウの後頭部を蹴り飛ばされたかと思いきや、前のめりにたたら踏む間も無く首に峰打ちが当てられる。そのまま追い討ちの金的と前蹴りとでタイショウが押し倒されたら、マウントポジションを取られると同時に首のすぐ横の地面にカマを突き立てられた。
カマを首の皮一枚の場所に突き立てられたタイショウが、恐れを抱いた目でゼロを見上げた。もともと素早いゼロと追い風の合わせ技……速すぎる……
「ゼロが殺す気だったら今ので死んでたな……タイショウはリタイアさせる」
「了解です、キズナさんは新しいポケモンを出してください」
スバルさんの声が無常に響く。淡々としているのが、なんだかやるせない。
「いけ、セイイチ」
「交換と同時に即効で仕掛けろ!!」
セイイチをボールから繰り出すと同時に、カズキが指示する。さて、誰を出すべきか……あいつだ。
「セナ、コットンガード!!」
残念ながら、セナは悪戯心ではなくすり抜けの特性。スバルさんのケセランや、俺のセイイチとは違って相手の隙を突くのは苦手だ。ゼロとの距離は離れていたけれど、あの速度じゃ無理だ。
伏せたセナの綿毛を、カマの峰でひっくり返す。普段のセナならばひっくり返される前に綿を切り離してやり過ごすだろうが、今のあいつは速過ぎる。ひっくり返したセナが、浮かんでいる間に、カマがまっすぐとセナを射抜く。テクニシャンなストライクらしい、一切のブレがない真っ直ぐな突きだ。
そこから、翅の推進力を加えて跳躍し、突き上げられたセナを追撃。コットンガードがようやく発動してきたが、こうも正面から攻撃されては背中の防御力は何の意味も持たない。
綿ごと抱きかかえるように空中で掴まれたセナは、そのまま噛み付かれた。ゼロの虫食いだ……ダメだ、やはりゼロは普通に戦ってもまるで相手にならない。
「セナ、毒々だ!!」
ゼロの猛攻を耐えながら、かろうじてセナが毒を吐く。流石に、噛み付いた状態からのすばやい動作は無理だったようでゼロもそれを喰らったが……セナはそのまま放して貰えない。綿を切り離して何とか開放され、そのままふらふらとセナが伏せる。コットンガードが上手く決まり、流石にこの状態のセナをひっくり返すのはゼロでも難しかろう。
と、思っているうちに、ゼロは退いてしまった。誰だ……誰が来る?
「セナ、追い風!」
いや、誰がくるにしてもきちんと対策をしないとやばい。考えるよりも先に、フィールドに追い風を!
「なるほど。ならばトリ、悪巧み」
「あいつか……セナ、セイイチと交代してくれ」
セナが追い風を使用した状態だから、今のセイイチの素早さならばゼロにだって負けない。すぐさま接近して、悪巧みなんてさせてなるものか! と、言いたいところだけれど……トリへの攻撃一発で相手を倒せるのかどうか。
「トリ、エアスラッシュ」
「セイイチ、嫌な音を出しながら接近して、攻撃を叩き込め!」
セナの嫌な音で、トリの耳をふさがせる……のだが、その前に眉間にしわ寄せながらトリが翼を振るい、空気の刃を飛ばす。一回、二回はセイイチも身をかがめたり上半身をそらしたりではずしたが、三度目の正直で肩口に刃を喰らう。
攻撃力の低いバルチャイの一撃と言えど、悪巧みした後に効果抜群とくれば馬鹿に出来ない威力だ……しかし、追い風で勢いに乗っていたセイイチの攻撃もギリギリで届く。トリの耳をふさいで無防備なその体に向けて、セイイチのとび膝蹴りが突き刺さる。まともに、クリーンヒットだ。
「バルチャイ、戦闘不能。カズキさんは次のポケモンに交代してください」
流石にこれには一撃必殺だったようだ。やはり、嫌な音は強い…・…だけれど、セイイチも肩に浅くない傷を負っている。こう肩が痛むと、走るときに腕を振るのも出来ないだろうし、それはつまり……
「ゼロ、倒せ!」
いくら追い風の効果があったところで、怪我したセイイチじゃ素のゼロから逃げることも叶わないってことじゃないか。あ、セイイチが転んだ。左半身を下にして、ごろりと寝転がるようなポーズだが、怯えたようにうつぶせのまま頭を押さえて震えている。
普通のポケモンならばここで降参させるけれど……セイイチだと演技の可能性もある。ここは、ゼロがセイイチを組み伏せるまでは様子を見るべき……かな? セイイチの性質を分かっているからか、ゼロも流石に警戒していたが、素早く組み伏せてしまえば問題ないと悟ったらしい。ゼロは目にも止まらないスピードでセイイチの後頭部を踏みつける――が。同時に、手に仕込んでいた尖った岩が、ゼロの足の裏を穿っていた。
「ストーンエッジ……!?」
驚く間もない。弱点タイプに傷を付けられる激痛を感じて、慌てて足を上げたところで、セイイチの追撃が始まる。持っていたその石のつぶてを投げ、ゼロへ攻撃。運よく翅に当たったおかげで、ゼロはバランスを取れずに尻餅をつく。マズルから鮮やかな鼻血を噴出していたセイイチは、そのまま血走った目でゼロに覆いかぶさらんとするが、それは尻餅をついたままのゼロの蹴りで阻止される。
蹴られた場所は今現在出血している鼻面だったので、セイイチは更に鼻血を悪化させる。鼻を押さえてうめいている間にゼロも立ち上がってしまい、足から緑色の血を流しながらカマを振り上げた。
「セイイチ、もう無理だ! お前は棄権……」
言い終わる前にゼロのカマが振り下ろされた。そこで、俺は目を疑った。進化が始まっている……まぁ、この状態じゃ進化の途中に攻撃されているだろうから、負けは負けだ。
◇
ご主人は、この戦いでの勝利をいつも以上に望んでいる……だからこそ、勝たなきゃ。そう思って戦いに挑んだけれど、ゼロが相手じゃ……僕の攻撃を当てることは難しいなんてものじゃない。軽い攻撃ばかりだけれど素早く的確なその攻撃は、僕が対処できる範疇を超えている。
瞬く間に僕は滅多打ちにされ、とどめの一撃を刺されそうになるも、気がつけば僕は無我夢中でその攻撃を防いでいた。
<ボーンラッシュ……ルカリオに進化しないと使えない技を、どうして……>
なんだろうか、いきなり誰かの声が頭の中に流れ込んでくる。体が、熱い……
もう、流石にしんどくなってきたので地面に横たわると、体の尋常じゃない熱さで僕は身悶える。目の前が真っ白になって、なにがなんだか分からない。それでもって、気がつけば僕は空を見上げている。カマが僕のすぐ横に突きたてられているのを見る限り、僕は負けたらしい。
「リオル……いや、ルカリオは棄権とします。キズナさんは次のポケモンに交代してください」
ダメだった、かぁ……情けないな、僕。
『たいしたものだな、セイイチ』
ゼロの声が聞こえた。
『僕は負けちゃったのに……?』
『自分の体、よく見てみろ。特に、手の甲と胸をな』
言われてみてみると、手の甲と胸には鋼鉄の棘が生えている。手首から先が若干重くなったけれど、その分当たればかなり痛そうだ。そうやって、自分の体に見とれていると、赤い回収光が僕を包み、僕はモンスターボールの中へと収納される。ボールの中は涼しくて、蒸し暑い外と比べると幾分か楽な気分だ。
動いて熱くなっちゃったし、ゆっくり休もうかな……
「すごいぞ、セイイチ……最後、ゼロの攻撃を防いでいたぜ、お前」
主人の言葉に乗せて、頭の中にも言葉が流れ込んでくる。
<ゼロの攻撃が止められるなんて……>
この声は、何だろう?
<面白い素材ですね。また、クイナ君みたいに育てるのも悪くないかも知れませんね>
クイナ……僕の父さん? けれど、この声は一体……分かんない。どういうことなのか、外の様子、調べなきゃ……ボールから、出なきゃ……
「いけ、クライン! サミダレに呪い!! ってあぁ!? セイイチ……」
どうやら、カズキはサミダレを出してきたらしい。それに対抗するご主人は、クラインに捨て身の呪いを命じている。
「セイイチ、出てきちゃダメだろ……まったく……大人しくしてろよ?」
<進化したから、色々戸惑ってるのか、セイイチは?>
あぁ、さっきから頭の中に響いてくるこの声の正体が分かった……この声、キズナのほうからはっきりと伝わってくる。よく分からないけれど、僕は進化して、声にならない声が聞こえるようになったみたい。そのことに感動を覚えながら、僕は戦闘の状況を見る。どうやらクラインの呪いがサミダレにかけられたようだ。
『あぁ、呪いは痛いわぁ……あぁ、でも相手も苦しみ悶えるなんて、なんて……素敵。私達、繋がるのよ、痛みで』
そうだ、クラインは……呪うのが好きだったっけ。クラインは呪いを成功させてすごく気持ちよさそうに悶えながら倒れてしまった。空を見れば、雨が降ってきている……サミダレは、雨になるとめっぽう強いんだっけか……でも、呪いのダメージはしっかりと受けているな、怖い。
「クラインは戦闘不能ですね。キズナさん、最後のポケモンに交代してください」
スバルが、淡々と試合を進行する。
<さて……セナはコットンガードのおかげでゼロ対策は出来ているとして……すいすい状態のサミダレを、どこまで相手に出来るか……>
ご主人の心の声だ。
「セナ。草結びだ!!」
「サミダレ! 凍える風!」
雨状態のサミダレも早いとはいえ、セナはセナで追い風状態。素早さを下げないとどうにもならないと言うことなのかな、弱点でもある氷タイプで攻撃する。濡れている時にあれをやられると、とんでもなく寒い……セナは、耐えられるのだろうか?
セナは、あのモコモコの綿で凍える風を必死に耐える。空気を程よく抱き込んだあの綿ならば、そう簡単に冷気を通さないであろうけれど……セナはそのままの体勢で、上目遣いにわずかな隙間から相手の位置を確認し、素早く動くサミダレを草結びで捕らえにかかっている。
雨にぬれた綿の表面は霜が降り、セナの周りの水溜りも凍ってゆく。大丈夫なのか……? という心配も、無用だったようだ。サミダレが少しばかり跳躍したところを、その着地点にあわせて草結びが絡む。それによって転んだサミダレは、そのまま絡め取られて、縛り上げられ音を上げた。サミダレの胸には大きな木の枝の幻影が突き刺さっている。おそらくあれは呪いの効果でダメージを受け過ぎたせいで足がもつれたのだろう。呪われてさえいなければ、すいすい状態のサミダレがあんな程度の低い草結びには引っかからなかっただろうな。
「やめてくれ……サミダレを放してくれ!! 棄権させる」
「了解です。それでは、カズキさん。最後のポケモンに交代してください」
スバルが試合を進行する声を発したところで、セナが綿を持ち上げて周囲を確認する。
「セナ……あと一人、頑張ってくれ!!」
<あと、一人……行けるかな?>
キズナの声掛けと一緒に、不安の混じる心の声が頭に届く。しかし、そんな本心とは裏腹に、セナは強がって元気に声を上げる。
『任せてよ、ご主人』
ピィッと甲高い声をあげて、セナは言った。
「よし、気合たっぷりだな!」
「最後だ、頼むぞゼロ」
そして、向こうではカズキが最後のポケモンを出す。それとほぼ同時に追い風も消えてしまった。素早すぎるゼロに対して、機動力を奪われたセナ……コットンガードのおかげでそう簡単にカマは通らないだろうが、綿の表面に霜がこびりついて、アレだけ機動力を奪われたら……
毒に侵されつつもしっかり休んだゼロが、セナに駆け寄る。セナが飛ばしたヤドリギの種を、ゼロは意に介すこともなく避ける。そして、綿にカマを突きたてる。
ガシャ、と言う音がした。凍っているからだろう、普段は綿を押し潰してもほとんど無音だと言うのに、今日は木の葉を踏みしめるのにも似た音だ。ゼロはカマを突きたてたまま、もう一方のカマでセナの背中のヘタの部分を狙う。なるほど、綿を突き刺して逃げられないようにすればそんな事も出来るのか……だけれど、セナの特性はすり抜け。綿を切り離せば、カマに絡みついた綿のせいでゼロの機動力も落ちるはず。
ましてや、水分を含んで凍ってしまった綿ならきっと重いはずだから、カマの動きも鈍るはず「。
<何で? 切り離せない?>
しかし、想像とは裏腹にセナは焦り、甲高い悲鳴を上げた。切り離せない……まさか、凍ってしまったせいで……? そうやってまごついている間にも、セナのヘタはもう一度カマに切り裂かれている
『も、もうやめ……ゼロ』
ヘタが割れ、その切り傷からは痛ましい鮮血が流れ落ちる。セナが弱音を吐いたその時、ゼロはカマの動きを止めた。
『……すまんな、やりすぎた』
勝負が決まってからもカマの動きを止めなかったことを詫びながら、ゼロはカマを引き抜く。
『だ、大丈夫……さすがゼロ。強いや……』
ゼロは、セナの綿からカマを引っこ抜き、冷たかったのだろうか外気にさらすようにカマを振ると、ゼロの体はすでに毒でふらふらなのだろうその場に座り込んだ。セナは、キズナに駆け寄ってその足に擦り寄って泣きついた。
「エルフーン、戦意喪失。よって、この勝負はカズキの勝ちといたします」
「マジかよ……」
ご主人は、悔しそうに歯を食いしばっていたが。やがて頭を振って気を取り直すと、屈んでセナの手をとった。
「よくやったよ、セナ」
<負けたけれど、誰のせいでもないしなぁ……誰かを怒ることなんて出来ねーや>
そう、ご主人の心の声が聞こえてきたのが、僕には嬉しかった。
「それと……大人しく見ていたから忘れてたけれど……セイイチ。お前、よくまぁ、進化してくれたな……お前のためにも、悪タイプのポケモンをゲットしたかったが……。また、別の機会に考えるか」
<あー……セイイチの進化は嬉しいけれどブラッキー……欲しかったなぁ……>
ご主人、言葉とは裏腹に、イーブイの事少し引きずっているみたいね。まぁ、僕が進化したおかげで少なからず気はまぎれているみたいだけれど……ご主人の本音と建前が違いすぎてちょっと寂しいな。
「さて、カズキ」
そう言って、ご主人はポケモンをねぎらっている最中のカズキのほうに小走りで向う。
「今日は対戦ありがとうな。負けちゃったし、イーブイはもらえなかったけれど……楽しかったよ」
「それを言うなら、こっちも楽しかったよ。というか、ごめんね……イーブイ、かぶっちゃって」
「大丈夫だよ。文句の付けようもない、真っ当な勝負だったじゃないか?」
二人の考えを感じてみる。お互い、褒めあっているのが感じられた……しかし、なんというかこの感じ、すごく便利だ。他人の感情がうかがい知れる……。
「だから、イーブイはお前が持ってけよ……俺は……そうだな。フカマルにしようと思う」
「うん……。じゃあ、その分俺は、キズナのフカマルに負けないように、立派にサンダースを育てるからさ」
「そういうことだ、バンジロウさん!」
イーブイへの執着も吹っ切れたのだろう、感情も声もさわやかに、ご主人の声が高らかに響いた。
◇
「そういうことだ、バンジロウさん!」
結局、負けてしまったとはいえ……カズキの元気な姿を見られてよかったと思う。楽しかったしな。
「おうよ、二人とも最高の戦いだったぜ!! 俺のポケモン、何でも持ってけよ!」
「おいおい、なんでもなんて言われたら、ラティオスもってっちまうぞ」
「いいねー、キズナ。ラティオスの親離れにはちょうど良いかも」
「おいおいおい」
バンジロウさんが戸惑っていた。
「どっちもオイラの大事な戦友なんだ。いずれお嫁さんかお婿さんが見つかって子供が生まれるまでは、ラティオスもラティアスも意地でもやらねーからな?」
「大丈夫ですよ、本気で言っているわけじゃありませんので」
「俺も……フカマルをもらえるだけでも、十分ありがたいことですし……えと、その。大事に育てますね」
カズキも俺も、あまり悪ふざけを続けるようなことはせず、まじめな口調になってバンジロウさんに言う。バンジロウさんは安心したのか、満面の笑顔になっている。
「そうかそうか、頼むぜ二人とも!! カズキもキズナもカズキもキズナも!」
バンジロウさん……なぜ2回言うのか、あなたは。
「そうですよ。他人から貰ったポケモンは大事にしませんとね。どちらも、素晴らしいバトルを繰り広げるだけの実力があるので、信頼は出来ますが……万が一のことも無いようにね、お2人さん」
そして、スバルさんが纏める。なんだかんだで、この人も俺達の闘いを褒めてくれているわけだし……嬉しいね。
「ふー……」
今日のイベントが一区切りついて、俺は大きくため息をつく。
「遅くなっちまったな……もう8時だし……今から帰るのはちょっと危ないかな?」
気分は良いけれど、そこがちょっと心配だな。カズキを探す時も、それが心配で結局長く探索できずに帰ってきたんだっけ……まぁ、カズキはそんな夜でも野宿していたそうだから恐ろしいとしか言いようがないけれど。
「ん、だったら今日は……スバルさん」
そんな俺の独り言から、きちんと何が言いたいのかを感じ取ってくれたのだろう。カズキはスバルさんのほうを見上げて、そう尋ねた。
「お泊り、ですか? 構いませんよ」
スバルさんも、俺の言うことが分かるらしい。この2人、なかなかやるなぁ。
「だってさ、キズナ。どうする?」
それなら、答えは決まっている。
「前は、俺がお前を泊めたからな……今日は、その逆ってのも悪くないな」
「おいおい、お前ら仲いいんだな……オイラなんて、他人の家に泊まったことはあっても、旅の途中に立ち寄るくらいで友達の家にっていうのは一度もないってのに……まぁ、男同士、仲がいい方がいいよな!」
流石に、旅慣れているだけあってバンジロウさんは他人の家に泊まった経験があるのかぁ。仲のいい知り合いの家に泊まったことがないというのはちょっと寂しいかも。……というか、俺は男として認識されているのか。バンジロウさんは何となく野生の勘で俺の性別くらいわかるかと思っていたが。
「俺、友達少ないからさ。その分、1人と親密になっちゃうのさ」
「キズナに同じく……色々あって、初めて出来た友達だよ。だから、すごく大切な人」
お互い、横目で見合いながらバンジロウさんに視線を戻す。
「……誰とでも仲良くなれるってのは良いことだけれどよー」
バンジロウさんは、間を置いて微笑む。
「たとえ1人でも本気で信頼出来るやつがいる。そういうのも、良いと思うぜ。オイラはまだ、そういう友達を見つけていないからな」
バンジロウさんは高らかに笑っていた。こうやって、褒めてもらうと嬉しいな。
「ところでみんな、お腹すいてない? 今日、材料が大量にあるからものすごくたくさん用意しちゃったんだけれど……」
ひとしきり立ち話が終わると、職員達はバーベキューパーティーを前にしてお腹を空かせているようで、カズキの言葉に全員が『もちろん』というようなニュアンスで返す。スバルさんやバンジロウさんから今日の戦いを見た上でのアドバイスやら、初めて観戦したローテーションバトルの感想やらを話しながら、俺は職員やカズキ、バンジロウさんとそろってバーベキューパーティーを楽しんだ
バンジロウさんからは、旅をしている際の体験談をたくさん話してもらい、スバルさんも数年前に旅をしていた時の記憶を嬉々として語る。そんな話をされているうちに俺達も旅を始めていい年齢だけれど……どうするべきかな、なんてちょっと真剣に考えていた。
カズキは、スバルさんに旅に出たいなら援助してやると言われていたけれど、俺は……あぁ、ジムの練習生をやめることになるからその分の月謝で旅に出ることも出来るかもな。なんにせよ、来年のローテーションバトルの大会が終わったら、カズキと一緒に旅立ってみたい。そんな言葉が自然と出て、なんというか少し照れくさかった。
一人で旅をするのは流石に心細いし寂しいけれど、カズキとならばどんな場所でも大丈夫だと……そう思うことが、惚れているんじゃないかとスバルさんにからかわれたせいで、照れ臭いを通り越して恥ずかしい気分だった。最後に、スバルさんが『私もそうしていたい相手がいましたよ』と、付け加えて微笑んだのが少々印象的であった。
やがて、食事も終わって俺とカズキは寝室に入る。もちろん、親には連絡済みだから、心配されることはないだろう。
カズキは床で寝るのが慣れているからと(俺の分の布団がないらしい)、固い床に寝ようとして……レディーファーストなのは良いけれど、俺は男として生きているんだからそんなこと考えなくても良いのに。着替えを持ってきていないから、汗ばんだシャツとぐっしょりぬれた下着で寝なきゃいけないため、ベッドに匂いとかが移りそうで申し訳ない。
結局、カズキに言われるがままに俺は布団に横たわり、クーラーで腹を冷やさないように腹だけ隠して、残りは半そで半ズボン。
その状態で目を閉じて寝ようと頑張ってみるが、何だか眠れない。幾ら俺が男だと名乗っても、なんだかんだで体は女。カズキの事を異性だと意識してしまうと、ちょっぴりむずがゆい緊張感のようなものが走っている。俺の家にカズキが止まりに来たときはねーちゃんもいたけれど、今は2人っきりだもんなぁ。
その緊張感はお互い様だったのか。俺達はすぐに寝付けなかったので天井を眺めながら、話を始める。
「今は2人っきりだけれど……今日の戦い、本当のところどうだった? なにか、スバルさんの前とかじゃ言えなかった事とかあったりする?」
話は、まずカズキから振られた。
「うーん……2人っきりにならないと言えないこととかは特にないかな。ただまぁ、ちょっと悔しかったけれどな、イーブイ……名前はもうきめたか?」
「サンダースに育てるつもりだからね……
36って名前にするつもり。そっちはどう?」
「俺のフカマルは男の子だからなぁ……そうだな。ガブリアスは、その強さから、神話ではしばし神の代わりに強大な敵を倒す英雄として描かれるんだ…・・・うん、神の代わりということで……こいつの名前は、
権現にしようかな。
一応、後でねーちゃんにも相談しようと思うから、まだ決定ではないけれど……うん。決まったら、連絡するよ」
「そっか……そうだよね、家族になるわけだし、変な名前には出来ないかぁ……俺も、スバルさんにちょっと相談してみるかな」
「ま、結局相談しても、俺もねーちゃんもお互いがつける名前に特に反対しないで『それで良いんじゃない?』って感じで決まっちゃうんだけれどね」
実際、アキツ以外のポケモンは大体そんな感じで決まっているしね。
「あぁ、スバルさんに相談してもそんな感じかもしれない……」
そう言ってカズキがくすくすと笑う。なんか、こういう時間が幸せだ。
「ところでさ……結局、バトルには影響を与えなかったけれど、セイイチ……進化したね」
「うん……悪戯心を野放しにしたまま進化させると、性格が変なことになってしまう可能性があるから、今までそれなりにしつけしてきたけれど……進化しちゃって、セイイチが他人の心を読めるようになったら、今後どうなる事やら。まぁ、健全に育ってくれれば良いかな、取り合えず。進化して、セイイチは正義の心になったけれど……まだ、正義の心のルカリオの育成は例が少ないから、手探りで頑張らないと」
「正義の心のルカリオって……そんなに、珍しいの?」
「うん……有名どころじゃ、シングルでは中堅程度のいつ力にとどまっていた新人だけれど、ダブルバトル界に殴り込みを掛けると同時にみるみる実力を付けて殿堂入り目前って奴がいるんだ……ヒノキっていうやつでね。ダブルバトル中に、ミヤビってマニューラがハルカっていうルカリオを蹴り飛ばすんだ。
そうすると、悪タイプの技を受けて正義の心って特性が発動するというか、ルカリオに悪タイプの技を放つ馬鹿はいないから味方の攻撃を受けるしかないんだけれどな。そうやって無尽蔵に攻撃力を上げたハルカが、縦横無尽に暴れまわるって事だ。
ほら、ローテーションバトルはポケモン同士のタッチで交代出来るから……もらい火にはニトロチャージ、貯水にはアクアジェットで交代するように、正義の心には……そう、辻斬りでも不意打ちでも、取り合えず悪タイプの攻撃の何かで交代したかったんだ。そのためのブラッキーだったんだけれど……まぁ、仕方ないな。
セナや、ゴンゲンに悪タイプの技を覚えてもらって何とかするよ」
「そっか、ちょっと悪いことしちゃったかな」
「何度も言ってるだろ? 正々堂々戦って負けたんだから文句はないってさ……それに、セイイチは素の状態でもそれなりに強いから。だから、大丈夫……お前も、早いところトリを進化させてやれよ? バルジーナになったら、もっとてこずらせてもらって、楽しませてもらうんだからな」
それで負けたら悔しいけれど、カズキとの戦いならばそれでも楽しめる、そんな気がする。
「キズナもね。アサヒちゃんをコジョンドに。ゴンゲンをガブリアスに進化させたら……また、戦おう。大会の時、最高のメンバーで臨めるように」
「うん……一緒に、決勝まで行けると良いな」
お互いの姿が見えていないのに、俺はカズキの言葉に頷いた。もしかしたら、カズキも横で頷いているかもしれないけれど、それを確認するには遅すぎた。ちょっとだけ残念だと思いながら、俺は横目にみやった視線を天井に戻す。
「そうだ、今月の19日にさ……この街でお祭りがあるじゃないか。カズキ……そのお祭りで、お前のトリ……俺と一緒に戦って欲しいんだ」
「お祭り……って、ビリジオン・ダークライ感謝祭のこと?」
「うん……悪と格闘一体ずつのダブルバトルか、もしくはマルチバトルで出場できるお祭り大会があるの……それに、セイイチとトリで参加したいんだ……正義の心の特性……試してみたいんだ。せっかく、悪タイプの友達もいることだしね」
「……分かった。明日、スバルさんに行けるかどうか聞いてみる」
「頼むぜ!」
そう言って、再び目を瞑る。
「うん。マルチバトル、楽しみにしてるよ」
まだ眠れる気はしないけれど、カズキの言葉を聞いて、話す前よりもはるかにすっきりとした良い気分になった気がした。しかし、明日もきっちり学校があるんだよな……早起きして一度家に帰らなきゃいけないのはちょっときついかも。
◇
----
昨日書けなかったレポートを今日書くことにする。
とりあえずまぁ、なんと言えばいいのか……レベルの高い人の戦いはやることが違うなぁ。
スバルさんとバンジロウさんの戦いでハンデのようなものはあったとはいえ、エルフーンを出すことでウルガモスを呼び込み、その上でサザンドラを出して諸刃の頭突きで圧倒する。
その手腕の見事なこと……相手の手持ちがある程度割れているのであれば、そのための駆け引きも重要なんだな。あと、スバルさんとの戦いを見ていて思ったのは、互いが互いに相手の目を見ていると言うこと。
相手の命令のタイミング、指示のタイミングを相手の目を見てきちんと見切っているって感じ。なるほど、強者と言うのはこういうところでも差がつくものなんだなぁ。
さて、キズナとの対戦だけれど……キズナも強くなっているなぁ。俺は、スバルさんにたまに指導してもらったりしながら実力をつけたつもりだけれど……キズナもオリザさんに指導してもらっているのかな?
さてさて、初めてトリを実戦投入してみたけれど、やっぱり進化していない分少し戦力的に不安だな。でも、追い風の素晴らしい効果をかんがみると……使い勝手の良さは折り紙つきって感じ。
バルジーナに進化するまでは、戦いが嫌いにならないように、トリにはきちんと活躍できる機会を作ってあげなきゃ……と思っていたら、ダブルバトルで進化したばかりのセイイチと一緒に使う……ということに。役に立ってくれると良いな。
しかし、キズナが学校に通っているけれど、いまだに自分が通う気分になれないことについてスバルさんに相談したら、俺の転校の手続きを取ってくれるとのこと。
どうやらそれはキズナと同じ学校にしてくれるとのことで……毎日顔を合わせられるのだとしたら、すごく嬉しいかも。
9月12日