許嫁を取り戻せ6:それぞれの旅路、後編
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「えーと、みんな。そういうわけだから、皆さん丁重におもてなしをお願いしますね。私も、おもてなしがわり今日はこの子とバトルをします。あぁ、そうそう……このドワイト君なんですけれど、ものすごく強いから注意して下さいね。私、久々に公式試合以外で本気を出しちゃうかもしれません。
 なのでみなさん、貴重な資料と思って、闘い方や指示の出し方など、どんどん観察してくださいね」
 四天王にこんなことを言わせるとか、やっぱりドワイトは普通じゃない。いったいどんなバトルをするのやら、楽しみで仕方ない。ドワイトがそんなにも強いトレーナーには見えないのだろう、ジム生たちは半信半疑の目でドワイトを見ている。
 無理もない、あんなトレーナーを始めたてのような年齢のドワイトが強かったら、それより年上なのに成長できないトレーナーとしては面白くないだろう。
「それじゃ、早速始めちゃう?」
「おいおい、俺達一応知り合いだけれど、なんというかこう……もうちょっと四天王とかジムリーダーらしく振る舞うとか、そういう心がけは無いのかよ?」
「ははん、大事な友達の一人息子ですもの。そんなの、私の子供と変わりませんし、ラフな態度でいいの」
「えー、そりゃおかしいんじゃねーの。確かに親父の友達に会いに来たつもりだけれどよ……もっと四天王の威厳も欲しいぜ?」
「ふふん、いいじゃあないですか、威厳だなんてそんな難しいことは気にしないでも。どちらにせよ、勝負は本気でやるから。手加減なんて期待しないでね、ドワ」
「手加減しねーのは嬉しいけれどよ、俺のポケモン……旅を始めるにあたって新しく育て直した奴らばっかりで、まだ育て途中だから、さすがに手加減してくれねーとエース以外は相手にならないかもだぜ? さすがにそうなったらジム生を失望させちまう」
「おやおや……そういえば貴方のお父様が、貴方のポケモンを大切に預かっているだとか、そんなことを言っておりましたね、でしたら、私も育て途中の子が二匹いますので、その子と達戦った後……改めて、お互いのレギュラーメンバー同士で戦う。こんなところでどうかしら?」
「良いぜ。それくらいなら俺のポケモンも大暴れできる……」
 ゲッカさんも、育て途中のポケモンでドワイトに挑む……それならお互いハンデなしの真っ向勝負だ。しかし、如何にドワイトが強いと言えど、四天王と真っ向勝負なんて大丈夫なのだろうか?

 そんな私の心配をよそにバトルはあれよあれよという間に始まってしまい、まずは先鋒として出たハッサムのアビゲイル。ゲッカさんの育て途中だと言うバリヤードが相手になったが、炎タイプの技を持っていないのが痛かった。アビゲイルは高い耐久力で相手の攻撃を耐え、剣の舞で強化された攻撃力で、一撃で相手を追い詰める。
 このジムがフェアリータイプのジムということもあり、バレットパンチがとりわけ有用なようだ。

 一匹目、バリヤードはリフレクターを張って力尽きる。二番手はクチート、威嚇の特性が来ると思って身構えていたが、その心配はなし。しかし、不味いことに、そのクチートは珍しい特殊型、しかも命の珠を所持した力ずくのクチートだ。火炎放射を放たれたアビゲイルは見事に丸焼けにされて力尽きる。
 後続で出てきたガブリアスのニドヘグは、クチートに向かって地震を放つ。跳躍して冷凍ビームを放とうとするクチートだが、ニドヘグは地面を隆起させて、その陰に隠れて冷凍ビームをやり過ごす。
 そのまま腕で抉った地面を弾き飛ばしてクチートをけん制し、クチートがかわしつつ距離を縮めたところで、待ちの体勢に入った。じゃれつこうとするクチートの動きを冷静に見切り、ニドヘグは地面から岩を突きだしてクチートを転ばせる。
 地面に手をつくことこそしなかったが、よろめいたらその一瞬で十分だ、相手がこちらへの意識を少しでも手放した瞬間にニドヘグは地震を放ち。隆起した地面の一撃でクチートは吹き飛んだ。
「ひゅう、あぶねぇ。特殊クチート、以外と侮れないんだよなぁ」
 ともあれ、これでドワイトは二対一で勝利。さて、ゲッカさんの相手のポケモンは何が出て来るのだろうか? 少しでもダメージを与えるために、有利なポケモンが出て来てくれると助かるが……。
「お見事、育て途中のポケモンでは相手になりませんね。ではでは、ドワイトさん。私の真打ちとの対戦をお楽しみください」
 ゲッカさんが不敵に笑んで繰り出したポケモンは、ピクシー。マジックガード、天然、メロメロボディと防御向け(天然は攻撃にもやたら強いけれど)の特性を多く持つポケモンだ。
 人間にも分かるほど濃いメロメロボディ特有の匂いはしないから、恐らく特性はマジックガードか天然か。

Ring ( 2017/01/16(月) 22:30 )